2020年地理A追試験解説

たつじんオリジナル解説[2020年地理A追試験]          

 

[1]②

北緯66度34分(北緯66.6度)は北極圏の南限。夏至の日はこれより高緯度では白夜となる。

南緯23度26分(南緯23.4度)は南回帰線。回帰線上の地点では夏至の日の正午の太陽高度が天頂に達する(90度)。「秋分」ではない。

 

[2]③

J;インド北部。ヒマラヤ山脈が連なる。①が該当。

K;華中。日本と同様の温暖多雨な気候がみられ、米作が行われる。一部では裏作として小麦栽培も(冬小麦。二毛作)。②が該当。

L;中国北部〜モンゴル。降水量が少なく、ステップや砂漠が広がる。④が該当。

M;中国東北地方〜シベリア。冷涼な気候がみられる。日本の東北地方を想像してみよう。落葉広葉樹と針葉樹の混合林がみられる。③が該当。

 

[3]④

良問。消去法で考えた方が解きやすい。

カは石灰岩地形。南東部(右下)が分かりやすい。閉曲線となっている等高線の内側に矢印が入り込んでいる。中央部分が凹んだ地形であり、これは石灰岩が雨水によって溶食されることで形成される、③が該当。

クは火山地形。中央に「噴火口」がみられる。この付近の標高が「1206」であるのに対し、周辺部には「1250」や「1408」などの数字(標高を表す)がみられ、噴火口を中心とした火口部分が大きく凹んでいることがわかる。火口の周辺には「岩の崖」の記号もみられ、断崖となっていることも伺える。①に該当。

ケでは石材の切り出しが行われている。図中に多く見られるブロックのような記号が「採石場」である。また多くの「土の崖」も見られ、人工的に土地が大きく削り取られていることが分かる。②が該当。

キは残った④が正解。氷河によって侵食された「カール」が見られる。

図の西端に「1869」メートルの山頂がある。この点を細い等高線が一つ囲み、さらに太い等高線(計曲線)が描かれている。「69」という数字と重なっている曲線である。これが「1850」mである。そこから東に向かって、1本目の太い線が「1800」、2本目が「1750」、3本目が「1700」、4本目が「1650」。この「1750〜1650」までの等高線が、大きく湾曲している様子を読み取って欲しい。スプーンで丸くえぐり取ったような、丸みを帯びた谷となっている。これが「カール」であり、日本語で「圏谷」という。最終氷期である数万年前に日本列島の標高の高いところには山岳氷河が存在した。これが山頂付近から下り落ちる際に斜面の土砂を大きく削り取り、このような「椀状」の谷が形成されたのだ。

標高の高い方向に向かって円形に等高線が張り出している場合、カールであることが多い。

 

[4]④

人口が分かるのはPの人口分布図。

 

[5]①

図法の名称が出たのはセンター試験40年の歴史上初めて。地理Aの追試験でもあり、無視していいと思う。

①;グード図法。低緯度(赤道側)はサンソン図法、高緯度(極側)はモルワイデ図法。両者を組合せている。

②;メルカトル図法。正角図法。グリーンランドが極大となるなど、高緯度側の陸地の面積が大きく表される。

③;距離と方位が正しい。って、答え書いちゃってますね(笑)。正距方位図法。

④;サンソン図法。正積図法。経線がサインカーブで描かれる。

 

[6]③

XとYについては寒流の影響を考えればいい。寒流は「クーラー」である。夏の間のみ効力を発揮する。まずZについては判別が容易だろう。最も低緯度であり、水温は高いはず。28℃である。

残るは21℃と24℃であるが、XとYはほぼ同緯度である。寒流の影響で同緯度の海域ならば、日本海より太平洋の方が水温が低い。Xが24℃、Yが21℃である。③が正解。

 

[7]④

砂防堰堤(砂防ダム)は、河川上流部に設けられた防災施設。上流側から河川に沿って流れ落ちてくる土砂や火山噴出物をせき止め、下流側への被害を防ぐ。津波とは無関係。写真が出る可能性があるので、画像検索しておこう。

 

[8]②

海水が河川を逆流した際に、市街地への被害を防ぐために設けられたものが「水門」。

①;農業用の施設。雨が少ない時期などに水田への灌漑(かんがい)のために利用される。

③;洪水対策。大量の降水により河川が氾濫しないように、水を貯める。

④;堰そのものは砂防ダムと同様に上流からの土砂の流下を防ぐものであるが、これは「取水口」があることからおそらく農業用だろう。堰によって水をためておき、それを取水口から周辺の農地へと供給する。位置的に考えてみても、市街地からさらに河川上流側にあり、海から迫ってくる津波を防ぐ施設ではないだろう。

 

[9]③

消去法で考えた方が容易。トナカイは寒冷地域であり、イが該当。ラクダは砂漠であり、アが該当。リャマはアルパカと並ぶアンデス山脈で遊牧される家畜。エに該当。残ったウが正解。水牛はモンスーンアジア(湿潤アジア)の米作地域に多い。

 

[10]②

A;スペイン南部。パエリア。オリーブ油で炒める。

B;南アジア。カレー。香辛料とバターを使用。

C;朝鮮半島。ビビンバ。

D;東南アジア。魚が料理によく使われる。

 

[11]⑤

カカオ豆の生産は熱帯アフリカ。西アフリカのギニア湾沿岸のコートジボワールが主生産国。プランテーションで栽培される。

コートジボワールを植民地支配していたのがフランス。この商品作物を輸入し、加工している。

フランスでつくられた一次加工品はさらに世界中に輸出されている。それには北アメリカも含まれている。

 

[12]①

日干しレンガは乾燥地域。Jはカ。

モンゴル周辺のステップではテント式の住居。Kはキ。

太平洋地域ではヤシを建材とする。Lがク。

 

[13]③

①;トルコ。穏健イスラーム国家。

②;カザフスタン。中央アジアはイスラーム地域(シルクロード)だが、旧ソ連の一部であり、当時ロシアからの移住者も多かった。彼らはキリスト教徒。

③;フランス。カトリック国だが、北アフリカのアラブ地域、西アフリカのサヘル地帯などに多くの植民地を有していた歴史がある。イスラム教徒が多い地域であるが、そこから移民を多く迎え入れることでフランス国内のイスラム教徒も近年やや増えている。

④;ブラジル。ポルトガルによる支配の過程でカトリック化された。

 

[14]④

マレーシアはイスラームを国教とする国だが、先住のマレー系住民がイスラム教徒であり、アラビア語とは関係ない。

マレーシアの民族構成は、マレー系(70%),中国系(20%),タミル系など(10%)。宗教はイスラム教が半数以上を占め、他には仏教やヒンドゥー教など。

 

[15]②

①;カンボジア。王国である。宗教は仏教。

②;フィンランド。キリスト教。高緯度であり、国土の一部が白夜や極夜となる。夏の日照の長さを祝う。

③;ニュージーランド。旧イギリス植民地で、イギリス連邦というグループに含まれており、国家元首はイギリスの王(エリザベス2世)。

④;イラン。産油国。断食はイスラームで行うべきことの一つ。

 

[16]④

Dは中緯度大陸東岸で日本と同じような気候であり、植生も似ている。落葉広葉樹林など。

 

[17]③

低緯度のイとウが高温の①と②、高緯度のアとエが低温の③と④、気温年較差を比べた場合、「西岸<東岸<内陸部」である。気温年較差は西岸のアで小さく、③が正解。

アはシアトル。沿岸を暖龍が流れ、冬の気温がとくに高い。緯度は北海道より高いが、最寒月平均気温は約5℃であり、東京と同じ。ただし、夏の気温は高緯度であるため冷涼となり、気温年較差は10℃程度しかない。

降水パターンについては夏に少雨となる地中海性気候であるが、世界の他の地中海性気候の地域とは異なり、年降水量が比較的多い(約1000ミリ)。他の地中海性気候の地域は南ヨーロッパ、カリフォルニア州、チリ中部、オーストラリア南部などいずれも年降水量が500ミリ程度で少雨。地中海式農業がみられブドウなど耐乾性の果樹(ブドウやオリーブ)の栽培がみられる。それに対し、多雨であるシアトル周辺は森林地帯となっており、林業が発達。豊富な降水量によって水力発電も盛んでアルミニウム工業が立地。

他は重要ではないが、参考までに。

イはラスベガス。外来河川コロラド川に沿う砂漠の町。降水量が少ない。内陸部で気温年較差も大きい。

ウはマイアミ。アメリカ合衆国本土で熱帯気候がみらえる。オレンジの栽培など園芸農業。

エのカナダ東部の沿岸部は寒冷な地域。沿岸を寒流が流れ、漁業が行われているが、港湾は冬季凍結。

 

[18]④

カはカントリーエレベーター。ミシシッピ川の河口近くなどにあり、穀物が集められ、保管される。正文。

キは写真はないが、文章の正誤は判定できるだろう。近年の綿花栽培地域はカリフォルニア州やテキサス州など西部の乾燥地域へも広がっているが、いわゆる「南部」(実際には南東部。ジョージア州からルイジアナ州)も依然として綿花栽培は行われている。奴隷の子孫であるアフリカ系の多い地域。正文。

クはフィードロット。広大な牧場(放牧地)に設置された集中肥育場。濃厚飼料が与えられ、肉牛が肥育される。正文。

エはセンターピボット農法の散水機。地下水を組み上げ、回転式のアームにつけられた散水機で円形に農地に水が与えられる。センターピボット農法による農地が上空から見ると円形になることはよく知られているだろう。テキサス州やグレートプレーンズの乾燥地域において、穀物などが栽培されている。「地下水」が利用されるのであり「河川」ではない。これが誤り。

 

[19]⑥

アメリカ合衆国の産業の中心は「北東から南西へ」と移動。戦後は、国土の南半分の3ベルトや、太平洋沿岸地域の工業化が著しい。南西端のカルフォルニア州や、面積が大きいテキサス州、北西端のワシントン州(シアトル)を確認すればいい。「付加価値」とは要するに値段を考えればよく、機械や自動車、航空機、そしてコンピュータなどの工業製品こそ付加価値が高い。ス<シ<サの順でこれらの州で円が大きくなっている。

 

[20]④

まずGがアメリカ合衆国。カナダにとって貿易額の半分以上を占める。さらにチが現在。中国の地位が上昇し、日本が低下。

 

[21]②

アメリカ合衆国で割合が高いのがスペイン語。メキシコなどからの移民(ヒスパニック)。カナダで割合が高いのがフランス語。公用語の一つで東部ケベック州で使用される。

 

[22]④

先住民であるインディアンは北アメリカ大陸の広い範囲に居住。ヨーロッパ人の植民の過程で、彼らが主に住んでいた東部の森林地帯から追われ、土地を奪われ、迫害された。西部の乾燥地域に設けられた保留地に封じ込められた。

 

[23]④

ア;C。OPEC加盟国であるアルジェリアから、ヨーロッパ方面へ。アルジェリアはフランスの旧植民地。

イ;A。旧ソ連時代に、ソ連(ロシア)の油田から当時友好国だったポーランドなど社会主義国へと多くの原油が送られた。現在はこのパイプラインが延伸され、かつて対立していた西ヨーロッパ諸国(ドイツなど)にも送油されている。

以上より正解は④。Bはとくに知る必要はない。カスピ海沿岸(バクー油田)からトルコを通過し、地中海に至る。

 

[24]②

中国ではそれまでは海外旅行について所得制限があり、富裕層のみに許されていた。しかし現在はその制限が緩和され、中間層や学生の旅行者が増えた。日本の入国制限が緩和され、中国を中心の多くの旅行者を迎え入れることになった。近年の値が急増している②が日本。

①がロシア。ヨーロッパ諸国との関係が深い。④がトルコ。ヨーロッパからの観光地となっており、入国が多い。

残った③がフィリピン。多くの出稼ぎを送り出している国であるが、彼らは長期滞在者である。短期の観光やビジネスにおいては入国・出国ともに少ない。

 

[25]③

EU加盟国である。

 

[26]②

2015年の15歳未満の人口割合に注目。「アフリカ」は人口増加率が高く、出生率が高い。①がナイジェリア。「東アジア」と「ヨーロッパ」は人口増加率が低く、出生率も低い。③と④が韓国かドイツのいずれか。残った②がマレーシア。

 

[27]④

ディーゼル車は窒素酸化物の排出により大気汚染を招くが、オゾン層破壊の原因ではない。上空のオゾン層の破壊は、冷蔵庫の冷媒や精密部品の洗浄などに用いられる人工物質のフロンガスが原因。なお、モントリオール条約によってフロンガスの使用はすでに禁止されている。

 

[28]①

「1人1日当たりカロリー供給量」は原則として1人当たりGNIに比例。唯一の例外は日本で、1人当たりGNIは高いが低カロリー。

「人口増加率」は原則として1人当たりGNIに反比例。ただし、中国は一人当たりGNIが低いが人口増加率も低い。アメリカ合衆国は1人当たりGNIが高いものの、人口増加率は低くない。

「穀物輸入依存度」は商業的な農業が営まれるヨーロッパや新大陸で低い値になり、プランテーション農業が中心のアフリカ諸国で高い。一般的に食料自給率が高い先進国としては例外的に日本は穀物の輸入が多い国である。米はほとんど自給しているものの、小麦やとうもろこしは輸入。

以上のことを踏まえて図を解析していこう。

アメリカ合衆国で「低」となっているキが「穀物輸入依存度」だろう。日本が「高」となっている。中国も「中」である。アフリカに「高」が多いのも特徴的。

アメリカ合衆国やヨーロッパ諸国で「高」となっているカが「1人1日当たりカロリー供給量」だろうか。とくに西洋的な食習慣は肉や乳製品、油脂の摂取量が多くなる。

残ったクを「人口増加率」と判定。ヨーロッパに「低」が集まっているようだ。先進国としては人口増加率の高いアメリカ合衆国と、発展途上国としては人口増加率の低い中国がいずれも「中」。アフリカに「高」がある。

 

[29]〜[34]は地理B追試験の[30]〜[35]と共通。