2020年地理B追試験[第4問]解説

[19]2020年地理B追試験[第4問問1]

 

気候判定問題。難易度は高いけれど、極めて良問だと思う。センター試験の長い歴史の中でも選りすぐりの優れた問題。

問われているのは降水量のみ。しかも年間の値だけ。月ごとの降水量ではないので、雨季や乾季は関係ない。他のグラフと比べて相対的に雨量が「多い・少ない」とみることも大切だが、目盛りの数字を読み取り、具体的に何ミリの降水量が年間で生じているのか、そういった「数字に基づく思考」も重要となってくる。

問われているのは4箇所。いずれも経線に沿う南北の地点を連ねたもの。Aは地中海沿岸(アルジェリア)から内陸部で。サハラ砂漠が広がるところだろうか。降水量は南に向かうにつれ減少するはず。

Bはサハラ砂漠からサヘル地帯を越えてギニア湾方面へ(ただし沿岸には達していない)。アフリカ大陸の最西端(セネガルのヴェール岬)を目印として、ここから東方に伸びる帯状の一帯がいわゆる「サヘル」。サハラ砂漠の南に沿う草原(ステップ)地域。ちょうど「B」と書かれた付近かな。マリの北東部の巨大な「直角三角形」のような部分はサハラ砂漠に当たるのだろうが、南西側の出っ張った部分全体はサヘルに含まれるとみていいだろう。こちらは南ほど降水量が多そうだ。

Cは赤道付近。Cの東側の狭長な湖はアフリカ大地溝帯の断層に沿うもの。Cはこれより西側であるため、コンゴ盆地を通過する線であることが想像される。熱帯雨林が広がり、全体として降水量は多いだろう。

最後はD。ボツワナから南アフリカ共和国の南西部へ。Lはケープタウンと思われるが、この付近は南半球の代表的な地中海性気候地域。地中海性気候は「大陸西岸、緯度35°付近」に必ず出現する。夏(南半球は1月)に亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響によりほとんど降水がみられない。冬(同じく7月)は偏西風帯や寒帯前線(高緯度低圧帯)の影響下に入り、一定の降水がある。Dは最南部がこの地中海性気候であることが非常に重要(というか、唯一絶対のポイント)。

地中海性気候について「夏に少雨、冬に多雨」と考えている人がいるかもしれないが、それは誤解。地中海性気候は「夏に降水がみられず、冬も降水はあるが少量」なのである。例えば、日本列島の太平洋側では「冬の降水量が少ない」わけだが、それでも12月や1月の降水量は50ミリほどある。典型的な地中海性気候がみられる南ヨーロッパや南カルフォルニアでは、たしかに冬は雨が降るのだが、それでも月の降水量は50ミリ程度。つまり「日本で雨が少ない」と感じる冬の雨量と、「地中海性気候で雨が多い」と感じる冬の雨量が、変わらないのだ。

地中海性気候で分かりやすいイメージは「ブドウ」と「オリーブ」だろう。いずれも比較的乾燥した気候に適応する。ブドウは「天然のポンプ」と呼ばれる作物であり、根を地下深くに張り、地下水を汲み上げる。山梨県や長野県など内陸部で盛んに栽培されているが、これらの地域は日本国内でも降水量が少ない地域(年降水量1000ミリ程度)。さらに地表面に河川水がみられにくい(地下に伏流する。水無川)扇状地での栽培に適するのも、ブドウがむしろ水が得られにくい地域での栽培に適することが想像できるだろう。

さらにオリーブだが、こちらは常緑広葉樹の硬葉樹に分類される。葉は細長く葉皮は硬い。水分蒸発を防ぐ性質を持つ。こちらも、乾燥に強く、少雨気候に適する(もちろん本当に「乾燥気候」ならばそもそも樹木がみられないので、さすがに砂漠やステップでは栽培されない)。温帯の中でも降水量が少ない地中海性気候でこそ栽培される作物なのだ。

地中海性気候の年降水量のイメージとして「500ミリ」という年降水量を意識しよう。日本の年降水量の平均は1500ミリである。多雨である南西諸島で2000ミリ、少雨である瀬戸内海地方や中央高地、北海道で1000ミリほど。サンフランシスコの年降水量がまさにちょうど500ミリである。樹木農業が営まれ、オリーブとブドウ(そしてワイン)の生産が盛ん。

どうだろうか。この数値一発で考えてしまっていいと思う。①〜④のそれぞれについて最南端の降水量をチェック。①と④は1000ミリを越え、これでは多雨すぎる。②はほぼゼロ。さすがにこれでは乾燥気候となってしまうだろう(乾燥気候は「降水量<蒸発量」。地中海性気候など湿潤気候は「降水量>蒸発量」)。③の値は500にやや足りないぐらい。どうかな、これぐらいなら許容範囲ではないか。③がDとなり、これが正解。

他は判定の必要はないが、参考までに。①がC。全体的に降水量が多い。②がA。北端が地中海性気候で内陸部の砂漠気候に向かうにつれて降水量が減っていく。地中海性気候の年降水量が約500ミリとなっていることにも注目。④がB。南に向かうほど降水量が増えていく。1000ミリを超え、多雨地域である。

 

 

[20]2020年地理B追試験[第4問問2]

 

鉱産資源の分布に関する問題。取り上げられている資源は「金鉱」、「石油」、「銅鉱」、「プラチナ鉱」の4つ。石油(原油)が最も簡単な気がする。これ、OPECの国をチェックしておけば大丈夫なんじゃないかな。サハラ以南の中南アフリカにはOPEC加盟国が多いが、とくに重要であるのが「ナイジェリア」。ギニア湾の奥に位置する国で、アフリカ最大の人口を有する。この地域に集中して描かれている①を「石油」とみていいだろう。ニジェール川の河口三角州(デルタ)に多くの油田が分布し、かつてこの原油資源を巡っての内戦も生じた。

ここまでは高校地理Bレベルなら確実に知っておいて欲しいことなのだが、以降がちょっと難しいかも。マイナーネタが含まれる。

コンゴ盆地の南に△が集中していることに注目。アフリカの銅鉱の産地としては「カッパーベルト」が有名。コンゴ民主の南部からザンビアにかけての一帯で、銅鉱は両国の重要な輸出品の一つとなっている。このカッパーベルトから銅鉱を運び出す鉄道がインド洋側、大西洋側奏法に建設された。カッパーベルトを流域に収めるザンベジ川には巨大なダム(カリバダム)も建設され、水量発電によって得られた電力は銅の精錬にも用いられている。③が「銅鉱」である。

さて、残ったのが「金鉱」と「プラチナ鉱」。さぁここからが難しい。君たちの多くはこう考えるだろう。「金鉱といえば南アフリカ共和国じゃないか。簡単だ」。でも果たしてそうか?プラチナ=白金なわけだが、実は南アフリカ共和国の主要な輸出品目に白金がある。金や金鉱の輸出は貿易統計に現れていない(政府が発表していないのだ。金鉱は貨幣の代わりに輸出、というか支払いに使用されているのかも知れない)。そもそもアフリカ南部には②の□も、④の▼も両方あるじゃないか。これでは決め手に欠ける。

さぁどうする?アフリカ南部以外で判定しないといけないわけだ。アフリカで南アフリカ共和国以外で金鉱の産出に特徴がある国があるのだろうか。そう、実は有名な国が一つ存在するのだ。それが「ガーナ」。

ガーナチョコレートのイメージが強すぎて「ガーナ=カカオ」と考えている人もいるかも知れないが、それはあくまでガーナの一面でしかない。カカオの世界最大の生産国はコートジボワールであり、典型的なモノカルチャー国。カカオの生産と輸出に国内経済が過度に依存している。コートジボワールの最大の輸出品目はカカオである。

それに対し、ガーナは決してカカオのみに依存する国ではない。もちろんギニア湾岸が世界最大のカカオ生産地域であり、カカオもランキング上位には入ってくる。しかし、カカオの最大の輸出品目はあくまで「金(非貨幣用)」である。カカオの順位はされに低い。むしろ「ガーナ=金鉱」と覚えておくぐらいでいいと思う。

ガーナの正確な位置は分からなくていい。おおまかにギニア湾岸に位置することさえ知っていれば十分。なるほど、ギニア湾岸には先ほど述べたようにナイジェリアの油田が目立っているが、そこにはしっかりと□も描かれているではないか。そう、これがガーナの金鉱山なのだ。②こそが金鉱となり、これが正解。

なお、ギニア湾の海岸沿いには植民地時代2ヨーロッパの列強によって開かれた港が並び、その交易品にちなんだ名称が付けられている。シエラレオネが「胡椒海岸」、コートジボワールが「象牙海岸」、トーゴやベナン、ナイジェリアが「奴隷海岸」、そしてガーナが「黄金海岸」なのだ。鉱山で採掘された金鉱が海岸まで運ばれ、港から積み出されていた歴史があるのだろう(というか、現在も、だね)。ガーナを植民地支配したのはイギリス。アメリカ合衆国、オーストラリア、南アフリカ共和国といった金鉱の産出国の多くはイギリスの支配下にあったが、ガーナもその例外ではない。イギリスが19世紀に世界に覇権を誇ったのも、世界各地の「金」をその手に握っていたからなのである。

残った④が「プラチナ鉱」つまり白金。上述したように、南アフリカ共和国の主要輸出品目である。白金は21世紀の社会において最も重要な鉱石資源と言われている。今後、自動車の主な動力源になることが計画されている水素燃料。これは水を分解することによって生成されるのだが、その際に溶媒として必要になるのがこの白金なのだ。水素燃料車の普及とともに白金が重要性を増し、そして南アフリカ共和国の存在感がさらに高まるのだ。

 

 

[21]2020年地理B追試験[第4問問3]

 

産業構造の問題。第1次、第2次、第3次それぞれの産業の特徴がテーマとなる場合、それぞれの従業者割合が問われることが多いのだが、本問の場合、それぞれの産業がGDPに占める割合がテーマとなっている。GDPGNIと同じであると考えてよく、単位は「ドル」。つまりそれぞれの産業の売り上げのようなものを考え、どれぐらい儲かっているのか、といった観点で捉えていけばいい。

例えば南アフリカ共和国はどういった国だろう。アフリカ諸国の中では1人当たりGNIが高い国であり、「アフリカの先進国」である。金鉱やダイヤモンド、白金(問2でも登場しているね)、さらにクロムやマンガンとったレアメタルの世界的な産出国であり、鉱業国として知られている。それに加え、主要輸出品目には機械類や鉄鋼、自動車などの工業製品も含まれ、アフリカ随一の工業国でもある。

どうだろう?1人当たりGNIが高いことから、商業やサービス業、金融業といった第3次産業の発達はみられるはず。さらに資源産出や工業生産も多く、第2次産業の売り上げも多いはず(*)。

相対的に、農林水産業を中心とした第1次産業の値は低くなるはず。どうかな。一貫して第1次産業の数値が低いウこそ南アフリカ共和国なんじゃないか。

そしてボツワナ。どうかな、この国の名前、聞いたことないかな。実は統計では有名な国だったりする。アフリカ大陸がダイヤモンドの産出の多いところだって知識は君たちにもあると思う。その代表的な国が、コンゴ民主共和国であり南アフリカ共和国であり、そしてこのボツワナなのだ。

図1を見ればボツワナの位置がわかる。南アフリカ共和国の北に接する内陸国である。問2の図3から、南部アフリカは貴重な資源の産出が多い地域であることがわかる。ボツワナには何も描かれていないようだが、この国はダイヤモンド鉱なのだ。1970年代以降に産業構造が大きく変化し、1990年代以降第2次産業が主産業に成長していったイがボツワナ。第3次産業については南アフリカ共和国には及ばない。あくまでダイヤモンド鉱の産出と輸出に経済が依存する国なのだ。

残ったアがマリ。西アフリカの乾燥地域に位置する国でとくに資源産出に特徴があるわけでもなく、経済レベルは低いと思われる第1次産業が国内の主産業である。正解は③。

本問はマリやボツワナという国名を知らないと解けなかった問題。捨て問の一つだと思う。対策の仕様がないので、本問で失点したとしても気にする必要はない。あくまで平均点調整用の問題に過ぎないのだ。

(*)とくに断りがないが、鉱業については第2次産業に含めてしまっていいだろう。鉱業を第2次産業として捉えている国は実は少数派で、主な国では日本のみだったりする。もちろんこの試験は日本で行なわれているものであり、鉱業を第2次産業に含めることは当たり前なのだが、世界基準でみると、工業(製造業および建設業)のみを第2次産業と考えることのあるのだと知っておいて欲しい。

 

 

[22]2020年地理B追試験[第4問問4]

 

貿易に関する問題のセオリー。まずは貿易額に注目し、それがGNI(経済規模)に比例するという原則を考える。GNIは1位アメリカ合衆国、2位中国、3位日本、4位ドイツ。貿易額(輸出額と輸入額の合計)は1位アメリカ合衆国、2位中国、3位ドイツ、4位日本。貿易額上位4カ国は、その内側で順位の上下はあるものの、GNI上位4か国と一致している。

このことからみて、全体の輸入額が大きい(矢印が太く描かれる)カを中国とみていいだろう。近年、アフリカ地域への中国からの投資が増加している。とくにアフリカには原油を始めとする資源産出国が多く、それらの国と結びつくことは中国の利益ともなる。現在、原油の産出量がアフリカで最大の国はアンゴラだが、その様子は問2図3でも確認できる。南半球低緯度の大西洋岸に多くの○(石油)が集中しているが、ここに位置する国がアンゴラ。ナイジェリア同様OPECのメンバーであり、石油モノカルチャー。原油(石油)の産出と輸出に依存し、最大の輸出品目ももちろん原油。そしてその多くは中国へと輸出されているのだ。中国は世界最大の原油輸入国でもある(近年、アメリカ合衆国を逆転した)。

残った2つについては旧宗主国と旧植民地の関係を考えればいいだろう。イギリスとフランスは経済規模(GNI)がほとんど同じなので、貿易額で判定することはできない。アフリカに多くの植民地を有していたのはフランスの方。とくに代表的なフランス植民地だった国にアルジェリアがある。地中海を挟んでフランスの対岸に位置する砂漠の国。アラブ民族から構成され、イスラームが多数派。原油や天然ガスを産し、その多くはヨーロッパへと輸出される。現在でも旧宗主国フランス都の関係が強く、貿易額も大きい。アルジェリアの含まれる北アフリカからの輸入が多いキがフランスである。残ったクがイギリス。キと比べて、南部の値が大きくなっているのがわかるだろうか。南アフリカ共和国はかつてのイギリス領である。やはりここでも旧宗主国と旧植民地との関係が貿易にも現れているといえるだろう。正解は⑤となる。

先程、イギリスとフランスはGNIがほぼ同じなので、貿易額にも差がないと言ったが、キとクを比べてみるとフランスの方がアフリカとの貿易額が大きくなっているようだ。これもやはり、かつてフランスがアフリカの広い範囲を植民地支配していた影響だろうか。

 

 

 

[23]2020年地理B追試験[第4問問5]

 

「言語や宗教の地理的分布」と聞くとずいぶん大げさだなと思ってしまうのですが、どんなもんなんでしょう。J〜Mの4つの都市が、①〜④のいずれかに該当する。いわゆる正誤判定問題ではなく、あえて言えば全ての文章が「正文」なわけです。かえって解きやすいかも知れませんね。

 

【解法】都市が問われているが、名称が聞かれているわけでもない。周辺のキーワードに注目していけば解けそうな気がするな。

あえて先に文章から見ていこうか。変わったアプローチかもしれないが、意外に有効だったりして。

まず①から。「植民地開発における交易の拠点」とある。アフリカの殆どの地域は欧米の植民地になっていたわけで、「植民地」がキーワードになるとは思えない。ただ、「開発」や「交易」はちょっと興味深い言葉。これ、港湾都市なんじゃないかな。ヨーロッパ人がアフリカを植民地として支配し、交易を始める。それって港があることが絶対条件何じゃない?沿岸部の港湾都市。おそらくこれが①のポイント。さらに「フランス語」とある。フランスはアフリカの広い範囲を植民地としていたのはよく知られている。さて、フランス語ってどこだろう?旧フランス植民地としてセンター試験によく登場するのはアルジェリアとコートジボワール。そもそもアフリカは50カ国以上もあるのだから全部覚えていたらキリがない(僕も知りません・笑)。重要な国だけピックアップし、それらについて必要最低限の情報を確実に知っておく。アフリカのメジャー国(こんな言い方したら他の国が全部マイナーかい?ってなるんですが、あくまでテストにおける便宜上の言い方なので、お許しをば。先に謝っておきます・・・)でフランス領のキャラを有するのはアルジェリアとコートジボワールの2カ国のみ(今回登場したマリや、重要な河川と同じ名称を持つニジェールもフランス領ではありますが、やっぱりちょっとマイナーだし、そもそも内陸国であるしね)。そのうち、アルジェリアはアラブ民族から構成される国で、アラビア語がそもそも使われており、フランス語は公用語とはならなかった。「アルジェリア=アラブ=アラビア語」は大丈夫かな。アルジェリアの「アル」はアラビア語の定冠詞。英語でいえば「ザ」だね。「アルカリ」や「アルコール」と同じ。アルジェリアの国名は首都アルジェに由来している。「アル・ジェ」なんだが、この「ジェ」というのはアラビア語で「島」。アルジェリアは「島国」って意味なんですよ。思いっきり大陸の国なんですけどね(笑)。

それに対し、コートジボワールは民族構成が複雑なため、そもそも彼らが共通で使用できる言語がなく、フランス語が公用語とされた。このように旧宗主国の言語が公用語となる例は多く、ナイジェリアの英語がその代表的な例。コートジボワールは「コート・ディ・イボワール」。コートはフランス語で「海岸」、ディは前置詞、イボワールは「象牙」。そもそも国名からしてフランス語だからね。①はコートジボワールの都市(とくに海岸に接した港湾都市)を説明しているんじゃないか。Mが該当。

そして②。おっと、ここでは「スエズ運河」が登場。入試問題に限らず、そして地理という科目に限らず、世間一般的に「運河」といえば2つしか考えられない。一つが「スエズ運河」、一つが「パナマ運河」。逆に言えば、地理を勉強していない人でも知っていることなのだから、君たちは必ずこの二つを知っておかないといけない。スエズ運河はインド洋側の紅海から地中海を結び、パナマ運河は太平洋と大西洋をつなぐ。

ただ、本選択肢はスエズ運河とは直接関係ない。「スエズ運河が開通するまで」ヨーロッパからアジア(あるいはその逆)への航路の重要な中継地だったというわけだ。日本からヨーロッパに船で向かうことを考えてみよう。今ならスエズ運河を利用するのだろうが、そうでない場合はどこを通る?アフリカの南側を迂回してヨーロッパに向かわないといけないよね。おそらく本選択肢が説明するのは大陸の最南端に近い、これまた港湾都市なんだと思う。ケープタウンなんじゃないかな。L煮該当。

そして③。ここまで来て、取り上げられている都市に「港湾都市」縛りがあることに気づいた(笑)。なんだ、全部海岸沿いの街だったのね。内陸部のナイロビとかないわけだね。

気を取り直して、改めて③に。「大河川の河口」とある。アフリカで大河川と言えば、ナイル川やコンゴ川、ニジェール川などだろうか。ただしここでは「アラビア語」というキーワードは登場。「言語=民族」であるので、もちろんこれはアラブ民族ということ。先のアルジェリアもアラビア語を用いるアラブ国家だったね。サハラ砂漠以北の北アフリカが、アフリカにおけるアラブ圏に該当する。具体的な国名でいえばエジプト、リビア、アルジェリア、モロッコなど。この地域の大河川は、世界最長のナイル川。赤道直下やエチオピア高原を水源とし、かつては洪水も頻発させていた。「ムスリム」はイスラーム教徒。アラブ民族の大多数はイスラーム教徒(もちろん100%一致するわけではない。レバノンのようにアラブ民族によるクリスチャンの国もある)で、やはり北アフリカ中心。ナイル川のデルタに位置するカイロがこれに該当しそう。J煮該当。

ラストは④だが、ここまで①から③については比較的具体的に都市が判定できたので、消去法でもいいと思う。図1参照。①がMのギニア湾の都市。コートジボワールの詳細な位置は全く知る必要がないので、おおまかに「ギニア湾岸」と覚えておけばいい。内陸部のサバンナで狩猟された象から象牙が採られ、この港からヨーロッパへと積み出されたのだろう。②がLのケープタウン。先ほど問1では「大陸西岸、緯度35°」の条件を満たす地中海性気候地域として登場してきたが、ここでは重要な海路の結節点として登場。スエズ運河が開通する前は、ヨーロッパからインド洋に達しようとする船は、このケープタウンに寄港するのがベストのルートだったのだ。

③はL。エジプトの都市を考えればいいだろう。首都で圧倒的な人口規模を有するカイロについては三角州の中央に位置し、ちょっと内陸部なので、Jは他の都市だと思うのだが、ナイル川の形成した三角州に接しているのは間違いない。

というわけで、残った④がKとなるね。これが正解。

一応④の文章を検討すると、なるほど、ここに「スワヒリ語」という言葉が登場する。これ、センターでは3回目の登場なので知っておいた方がいいよ。東アフリカで使用されている言語であり、インド洋を中心とした交易で用いられた商業語でもある。ケニアでは、旧宗主国の言語である英語と、先住系の言語であるスワヒリ語がいずれも公用語となっている。

Kはケニアの沿岸部の都市。首都ナイロビは高原上に建設された都市であり、ヨーロッパ人によってつくられたもの。こちらのKの方が古くから交易で栄えた都市というわけだね。

「モンスーン」は季節風のことだが、これが話題になるのは東アジアから南アジアにかけてのアジア沿岸部のみ。南アジアの季節風の影響がこのアフリカ東岸にまで及んでいる。夏は南西風となり、K付近からインドへ向かう船舶は追い風の中を進むことになる。逆に冬な北東風が卓越し、インドからアフリカへと帰る船はこれを追い風として利用することができる。

 

 

[24]2020年地理B追試験[第4問問6]

 

先に選択肢からみてしまおう。まずは「モノカルチャー経済」と「輸出指向型の工業化」。なるほど、中南アフリカにふさわしそうな言葉は前者かな。

モノカルチャーを直訳すれば「単一栽培」。特定の一次産品の生産と輸出に国内経済が過度に依存する状態で、経済的には不安定。プランテーション農業に呼応する言葉として認識している人も多いんじゃないかな。プランテーション農業とは特定の商品作物の栽培に特化した農業形態。欧米の資本家が、それらが支配する熱帯や亜熱帯の植民地、保護国に大農園(プランテーション)を開く。独立や革命によってそれら大農園は欧米人の手離れ、国や現地資本の経営となるが、商品作物の生産は継続され、当該国の経済の中心に居座る。コートジボワールのカカオが代表的な例だろう。サには「モノカルチャー経済」が入る。このようにモノカルチャーの対象となるのは主に農産物だが、先に「一次産品」と述べたように広い意味では鉱産資源も含まれる(大地から直接採掘されるので、鉱産資源も「一次」産品なのだ)。OPECの多くの国は石油モノカルチャーである。

モノカルチャーの問題点として、経済の不安定化がある。不作や国際価格の暴落によって、その国の財政に深刻なダメージが与えられる。

 

さらにシについて検討しよう。「南南」問題か、「南北」問題か。「北」は先進国、「南」は発展途上国と考えると理解が容易じゃないかな。先進国の多くは北半球に位置し、逆に南半球の国の多くが発展途上国であることに由来する呼称である。例えば南北問題といえば発展途上国と先進国との経済格差に関する問題。たしかに問題文中に「経済的な格差」という言葉がある。おっと、だからといって焦って答えを決めつけてはいけない。南南問題とはたしかに発展途上国同士の問題なのだが、その中にも格差があることがさらに深刻な事態を招いているのだ。

ここで話題となっているのは「サハラ以南の国々」。先進国の定義は「1人当たりGNIが30000ドル/人以上」の国々。スペインの1人当たりGNIが約30000ドル/人なので、目安としてはスペインが境界線となる。韓国や台湾の1人当たりGNIは20000台であり、先進国にはやや足りない。

サハラ以南のアフリカで工業が発達しているのは南アフリカ共和国。しかし、それでも1人当たりGNIは6000ドル/人程度であり、世界平均(約10000ドル/人である)にも達しない。つまりこの地域に先進国は存在しないのだ。

サハラ以南のアフリカ諸国は全て発展途上国である、しかしその中にも格差があるのがわかるだろうか。文章中にも「経済成長の度合いは国際貿易の変化や国内外の紛争の影響などによって国ごとに異なり」とある。問3に登場したボツワナのようにダイヤモンド鉱の輸出によって国内経済が潤っている国もある(しかし、だからといって国民全てが豊かな生活を送っているわけではない。それはまた別の話)。一方でルワンダのように内戦を経験し、さらにプランテーション農業などの国内の経済基盤が崩壊することによって極めて厳しい状況に追いやられている国もある。南アフリカ共和国は製造業の発達だけでなく、レアメタルの産出もみられ、経済規模の大きな国となっているが、中には資源に恵まれず、特定の農産物の輸出に依存するようなモノカルチャー経済によってさらに貧困化が進む国もある。同じ発展途上国とはいえ、その格差は大きい。中南アフリカで生じている問題は「南南問題」であるはずだ。以上より正解は①。