2020年地理B追試験[第1問]解説

[1]2020年地理B追試験[第1問問1]

 

アラビア半島とアフリカ大陸の間の「紅海」はプレートの広がる境界。方向が誤っている矢印はAであり、①が正解。アフリカ東部を南北に走行する大地溝帯は「大地の裂け目」。プレートの広がる境界であり、その北側の延長上に紅海がある。さらに紅海からユーラシア大陸へと入り込んだところには死海があり、この湖も大地の裂け目である深い断層に形成されたもの。

Bの矢印の先にあるのはヒマラヤ山脈とチベット高原。インド・オーストラリアプレートがユーラシアプレートにぶつかることによって大規模な褶曲山脈がつくられた。衝突帯であり、Bは正しい。

ニュージーランドの北につらなるトンガ海溝、ケルマデック海溝を地図で確認しておくといい。プレート同士が衝突し、狭まる境界を形成。ニュージーランド島には火山も多くみられる。Dの方向は正しい。

これらとは別に知っておいて欲しいのがC。太平洋プレートは全体として東から西へと移動している。日本付近でユーラシアプレートの下に潜り込むことで日本海溝を形成している。プレートの沈む込み帯である。Cの東側に島が一列になっているのがわかるだろうか。これはハワイ諸島。地下のマントル対流の上昇点であるホットスポットに火山が形成され、島になっているのだ。マグマがプレートを突き破って地上(というか海底だが)に噴出する。マントル内のホットスポットの位置は変わらず、その上に乗っているプレートのみが西へと移動する。一列になった火山島のうち、西方が古い火山であり、最も東に位置するものは今まさに溶岩の噴出している新しい火山なのである。

 

 

[2]2020年地理B追試験[第1問問2]

 

地球の表面の7割は海洋である。この問題も「海」の面積が重要である。

①〜④について、「標高0〜500mの陸地の割合」と「標高500mより高い陸地の割合」を合計してみよう。①が「45」、②が「21」、③が「32」、④が「60」である。ということは、海洋の割合は①が「55」、②が「79」、③が「68」、④が「40」、それぞれパーセントである。これは大きなヒントになりそうだね。

それぞれの緯度帯において、海陸分布はどういった割合になっているか。地球全体の図すなわち問1の図1をみながら考えてみよう。

まず赤道に線を引いてみる。アフリカの中央部の円形の湖(ビクトリア湖)、マレー半島の先端(シンガポール島)、アマゾン川の河口がそれぞれ赤道直下。どうだろう?海の割合が高いように思えるが、キミはどう思う?

先に北緯40°を判定しよう。日本の東北地方を通過する緯線が北緯40°。ちょうと秋田県の八郎潟付近を通過しているね。スペイン、トルコなどが同じ緯度帯にある。北アメリカ大陸においてもアメリカ合衆国のほぼ中央を横断している。こちらは陸地の割合が比較的高そう。

さらに北緯60°。これはスカンジナビア半島を通過。かなりの高緯度。ユーラシア大陸を北欧からカムチャッカ半島(日本の北東にある、ユーラシア大陸から南へ飛び出した形の半島)まで長駆横断し、さらに北アメリカではカナダ全体を横切る。太平洋北部や大西洋北部も通過しているが、こちらの距離はそれぞれの大洋の中央部に比べればさほど長いものではないのでは。陸地の割合が高い緯度帯に思える。

最後に北緯20°。赤道と北緯40°の間なので、見当をつけて欲しい。サハラ砂漠やアラビア半島、中国南部を通過する線で。はるか太平洋を渡ってメキシコ付近を通過するのではないか。北アメリカを通過する長さが、北緯40°や北緯60°に比べて短くなっているよね。比較的海の

割合が高いんじゃないか。

以上より、大まかに当てはめてみよう。海洋の割合がとくに高い②を[赤道]、陸地の方が多い④を「北緯60°」としてみよう。これで矛盾するところはないか、検討してみよう。

②では「〜500mより高い〜」が4%しかないが、なるほど、この緯度帯で標高の高い地形はアンデス山脈や東アフリカの高原など限定されている。こんなもんだろうね。

④はどうだろうか。こちらも「〜500mより高い〜」は限定的であり、「〜500mより低い〜」方が圧倒的。ロッキー山脈のように険しい地形も通過しているが、シベリアの平原など低地の割合も高い。なるほど、この数値には納得である。これで②と④が決定した。

①と③についてはちょっと微妙なのだが、あえていえば北緯40°の方が陸地部分の割合が高いように見えるんだよなぁ。とりあえず①を北緯40°、③を北緯20°としてみよう。同じく矛盾がないか確認。

①(北緯40°)では、とくに「〜500mより高い〜」の割合が高くなっている点が特徴的。これ、どうなんだろう?北アメリカでは西部はロッキー山脈が走行しているとはいえ、中央(小麦地帯)から東部にかけては平原地形であり、標高は低いはず。そうなるとユーラシア大陸がカギとなるのだが、ここは中央アジアを大きく通過している。たしかに中央アジアは高原が広がる地形であり、極端に標高が高い山脈が連続しているわけではないが、500m程度の小高い地形ならば全体に広がっていると解釈もできる。

その一方で③(北緯20°)も比較的「〜500mより高い〜」の割合が高い。インド北部は平坦な地形であり(北緯20°はヒマラヤ山脈やチベット高原は通過していないだろう)標高は低いと思われるが、メキシコは高原であり、さらにサハラ砂漠も決して平坦な地形ではない。比較的標高が高く、500mぐらいの高原ならばそこかしこに見られるはず。とくにおかしいところはないようだ。

そうなると結局、海洋と陸地のバランスで考えて、それがそのまま答えになる。北緯40°は①に該当するんじゃないかな。解答確認。たしかに①でした。良かった、ホッとした。これ、難しいな(涙)。

 

 

[3]2020年地理B追試験[第1問問3]

 

問題文が長いので、まずはしっかり読んでみよう。

「上空の偏西風(ジェット気流)の蛇行は、地上の気温変化に影響を与える」とある。なるほど、そういうこともあるのだろう。

さらに「図1中のFとGは、北極周辺のジェット気流の蛇行を模式的に示したものであり」とある。なるほど、ジェット気流は蛇行するものなのか。全然知らなかったがそういうものなんだろうね。

「Fは平年の12月の位置を、Gは蛇行の大きかった201712月の位置を示したものである」とある。これこそ全然知らなかったが、ジェット気流の位置って年によって異なるのか。理由は書かれていないので全く分からないが。

「また、図1中のア〜エは、201712月の月平均気温が平年より高い地点か低い地点のいずれかである」ともある。これもよくわからないが、そういうこともあるのだろう。冒頭の文にあるように、ジェット気流の動きが気温変化に影響を与えているのか。

「平年より高い地点に該当する組合せとして正しいものを、次の①〜⑥のうちから一つ選べ」で終わり。選択肢を見ると、いずれも2つの地点の組合せ。その変化は「平年値から3℃以上高いまたは低い地点」なんだそうだ。そのなるほど、平年より高いところが二つ、低いところが2つあるわけか。

では、ここで図を見てみよう。たしかに北極周辺に蛇行するジェット気流が示されており、蛇行の度合いが小さいFが平年の動き、大きく湾曲しているGが2017年のものなんだそうだ。

4つの点を確認してみよう。アとイはそれぞれユーラシア大陸西部と東部、ウとエは同じく北アメリカ大陸西部と東部。なるほど、これ、よく見ると気づくんだが、アはFより北側にあるがGより南側。ウも同じ形になっているね。それに対しイとエはFから見てもGから見ても北側。どうなんだろうね。明確に変化しているのはアとウということになる。ジェット気流の流れが、極側の「寒気団」と赤道側の「暖気団」の境界とすれば、通常の流れの時は寒気団の範囲に含まれるアが、2017年には暖気団の範囲となる。同様のことはウにも言える。どうだろうか。2017年に気温が明確に上がった地点としてアとウがふさわしいのではないか。②が正解。細かい理論はわからないし、おそらく知る必要もない。単に図から読み取ることのできる情報だけで判断して解答することが求められる。そういった問題だったと思うよ。

 

 

[4]2020年地理B追試験[第1問問4]

 

Jの地域はシベリア。イの左側にバイカル湖が描かれているが、これがシベリア最南部。これより北にあるので、まさにシベリアの中央部であることがわかる。

シベリア最南部のバイカル湖に接する都市がイルクーツクだが、この都市の気候を知っておくといい。最寒月である1月の平均気温はマイナス20℃、最暖月である7月の平均気温は20℃。つまり気温年較差は40℃に達する。シベリアの南端でこのような数字なのだ。シベリア中央部のJではさらに大陸性の気候の度合いが高まるだろう。気温年較差が40℃以上になるとみて間違いないと思う。①は正文。

さらに②。シベリアは大陸性気候であり、冬季に極端に寒冷となる。大気は収縮し、気圧は上昇する。シベリア高気圧の発生により、冬季の降水量はほぼゼロである。「冬に少ない」のはその通り。正文である。夏については気温が上昇するため気圧が下がる。低気圧の発生により比較的降水量は多い。小麦や大麦の栽培が行なわれている。シベリア内陸部と太平洋の間には新期造山帯の険しい山々がそびえているのだが、平坦な地形が続く北極海方面から水分がこの地へと入ってくるのだそうだ。これも正文。

そして③。土壌が問われている。土壌は「成帯土壌」と「間帯土壌」に分けられる。ここでまとめてみよう。

 

(成帯土壌)

気候帯に沿って広く分布する。湿潤土壌や乾燥土壌に分類されるが、その間にある半乾燥土壌も大切。

 

・湿潤土壌・・・酸性。そもそも雨水は二酸化炭素を溶かし込み、pHは5.6となる(完全な中性はpH7.0である)。わずかであるが酸性を呈し、湿潤土壌であるポドゾル(冷帯)やポドゾル(熱帯)は酸性土壌となる。北極海沿岸の「ツンドラ土」は強酸性(ツンドラ地域は蒸発量が極端に少なく、雨水の影響を強く受ける)、温帯の褐色森林土は弱酸性となる(温帯は熱帯地域に比べ降水量は少なく、その分だけ酸性度は下がる)。

 

・半乾燥土壌・・・乾燥気候であるステップ(草原)気候のうち、やや降水量の多い地域に分布。年降水量500ミリ程度。草が枯れて形成された腐植土が地表面を多い、肥沃な黒土となる。黒土には、ウクライナのチェルノーゼム、北アメリカのプレーリー土、アルゼンチンのパンパ土があり、いずれも小麦栽培に利用されている。企業的穀物農業。弱アルカリ性の土壌である。

 

・乾燥土壌・・・ステップ気候のうち、降水量が少ない地域に分布するのが栗色土。年降水量250500ミリ程度。それより少雨の植生が全く見られない砂漠地域に広がるのが砂漠土。いずれもアルカリ性の土壌である。表層には薄く肥沃な土壌もみらえるが(雨水で流されないので)、そもそも降水量が少ない地域であり、農業には適さない。

 

(間帯土壌)

 

・玄武岩土壌・・・頻出は玄武岩の風化土壌であるレグール土と、玄武岩と輝緑岩の風化土壌であるテラローシャ。前者はインド半島西部に分布し、綿花栽培に適する黒色の土壌。後者はブラジル高原南部に分布する暗紫色の土壌で、コーヒー栽培に適する。

・石灰岩土壌・・・石灰岩の風化土壌であるテラロッサは、世界の石灰岩(カルスト)地形の分布に対応。国内ならば秋吉台。またサンゴ礁に由来する土壌でもあり、沖縄本島や南西諸島にみられる。赤色の土壌。南ヨーロッパのオリーブ栽培地域に分布することがテストではよく出題されている。

 

以上より、シベリアの冷帯地域に対応する土壌は「ポドゾル」であり、褐色森林土ではない。③が誤り。

 

 

[5]2020年地理B追試験[第1問問5]

 

湖の問題だが、問題文が長く、さらに図もちょっと複雑で、じっくり腰を据えて解かないといけないんじゃないかな。

問題文と図を読解していこう。「世界の湖沼」と「日本の湖沼」について「湖沼面積と最大水深」が問題を解くカギになっているようだ。

世界の湖沼についてはカとキの2つのタイプの湖が登場している。「過去の大陸氷河の侵食によるもの」と「地溝帯の運動など地殻変動によるもの」のいずれか。

日本の湖沼については「かつて海の入り江などであったもの」と「火山のカルデラにできたもの」なんだそうだ。なるほど、合わせて4つのタイプの湖が登場しているわけだね。

 

どれが一番判定が簡単だろう?「海の入り江」なんじゃないかな。入り江だったところが、砂州などの砂の堆積地形によって海と隔てられ形成された湖。そもそもが浅い入り江なのだから、水深はかなり浅いだろう。水深が10mほどであるLがこれに該当するとみていい。おっと、今気づいたけど、「最大水深」の目盛りは対数になっているんですね。Lの湖の水深ってグラフから感じるより、めちゃくちゃ浅いんじゃない?

残ったMの方は「火山のカルデラ」。こちらは100mぐらい。なるほど、2000mや3000mの火山の山頂付近が陥没(あるいは爆裂)して凹地になれば、それぐらいの深さになるんだろうか。

 

では世界の湖沼について。こちらはあまり差がないね。ただ、どちらかといえば広くて浅いのがカ、狭くて深いのがキということになる。これ、どっちなんだろうね。

氷河湖の成因を考えてみよう。氷河湖がよくみられる地域としては北欧があり、また北米五大湖も氷河によるものとして知られている。

スウェーデンやフィンランドには無数に湖がある。とくにフィンランドは自国語で自身の国を「スオミ」と呼ぶが、これは「湖」のこと。まさに「森と湖の国」なのだ。

かつてこの地域は大陸氷河によって覆われていた。氷河の流動によって土地が侵食され無数の凹地ができ、そこに水がたまって湖となった。氷河という「固体」によって土地が削り取られていることを考えると、凹地つまり湖はさほど深いものとはならないのではないか。水によって鋭く削られた谷はV字谷となるが、氷河の侵食による谷はU字谷。底面は「椀状」となっており、鋭い谷が底まで続いているわけではない。氷河の侵食による湖はさほど深いものではないと考えていいのではないか。

また氷河の運んできた堆積物(土砂)によって河川の流れがせき止められ、湖となる場合もある。ただ、これもよく考えればわかるのだが、「湖の深さ=堆積物の高さ」だよね。ダムのような感じを考えればいい。土砂がダムのように川の流れをせき止め、上流側に「ダム湖」のような湖ができる。ダムの高さが10mならばダム湖の深さも10m。本図を見る限り理、キには最大水深が1000mを越えるものがある。果たしてこれほど大量の土砂が堆積することがあるだろうか。高さ1000mのダムだなんて。

成因から考えるに、氷河湖は「浅く」なるんじゃないか。氷河の削った谷は「椀状」となり、そして河川をせき止めたとしても1000mを越える土砂は運ばれないだろう。カが「大陸氷河の侵食」となる。

 

これにより残ったキが「地殻変動」となる。地殻変動はプレート境界に近い新期造山帯特有のものであるとイメージする人も多いが、意外に古い時代に形成された大地でも一部では地殻変動は生じている。安定陸塊であるアフリカ大陸において東部で地殻変動がみられるのがその例だろう。アフリカ大地溝帯は、形成年代の古い古大陸であるが、最近になって新たに地殻変動が始まり、大地が2つに裂け始めた。「切り込み」状の断層に水が溜まって形成された「断層湖(地溝湖・構造湖)」がいくつもみられるのが東部アフリカの特徴。タンガニーカ湖、マラウイ湖など。形がわかりやすいので地図帳で確認してみるといい。

世界で最も有名な断層湖として、シベリア南部の「バイカル湖」がある。地殻変動により形成された断層に水が蓄えられた。世界最深の湖である。おそらく、本図において「最大水深」の元も大きなキの点がバイカル湖を示しているのだろう。シベリアを含むユーラシア半島東部は最終氷期にも大陸氷河に覆われなかった。そもそもシベリアはさほど湖の多い地域でもないが、もちろんそこに氷河湖は存在しない。以上より正解は④である。

せっかくなので面積にも注目しよう。カ(氷河湖)とキ(断層湖)を比較した場合、面積が大きくなるのは氷河湖の方である。例えば氷河の侵食によって湖が形成される場合、氷河は地表面を「薄く広く」削り取るのだから、凹地の面積は大きくなるだろう。また、氷河の堆積物によって河川がせき止められて湖ができる場合も、そこが低平な地形ならば湖の面積は広大なものになる。北米五大湖はいずれも氷河湖であるが、なるほど確かに面積は大きい。

一方で、カッターナイフや彫刻刀で削ったような深い「切り込み」に水が蓄えられてできたものが断層湖(地溝湖・断層湖)なのだが、こちらは面積が狭いわりに水深が深くなる。そして形状は断層に沿った「狭長」なものとなる。湖水量を比較した場合、バイカル湖一つに蓄えられた水量と、北米五大湖全体の水量とがほぼ同じというデータもあるようだ。いかに深い湖かがわかるだろう。

 

[6]2020年地理B追試験[第1問問6]

 

自然災害に関する問題。自然災害の種類としては「地震」、「暴風雨」、「洪水」、「地すべり」、「強風」、「熱帯低気圧」、「津波」、「強風」がある。熱帯低気圧や津波が特徴的。

選択肢の国は「スリランカ」、「チリ」、「ボリビア」。いずれも、誰でも知っているというメジャー国というわけではないが、しかし知る人ぞ知るマイナー国というわけではない。むしろ地理という科目においてはいずれもはっきりとしたキャラクターを持っている。

 

以下に整理してみよう。

 

スリランカ・・・南アジア。インド半島の南に浮かぶインド洋の島国。熱帯気候がみられ、モンスーンの影響によって降水量も多い。イギリス植民地時代にプランテーションが開かれ、現在も茶は重要な輸出品目の一つ。仏教徒であるシンハリ人とヒンドゥー教徒であるタミル人との対立がみられ、かつて内戦状態にあった。

チリ・・・南米大陸の太平洋岸。中緯度から高緯度にかけて細長い国土を持つ。北部は寒流の影響などによる砂漠。鉱産資源が豊富でとくに銅鉱の産出は世界最大。中央部は地中海性気候で人口も集まる。ブドウの栽培。南部は偏西風の吹き込む風上斜面であり多雨。森林地帯となっている。沿岸はフィヨルドで波の静かな入り江ではサーモンの養殖。スペイン語でカトリック。

ボリビア・・・南米の内陸国。アンデス高原にはインカ帝国が栄え、現在も人口の多くは先住系のインディオ。首都ラパスは標高4000Mに位置し「常冬」の気候。鉱業が盛んでスズ鉱の産出が多い。スペイン語でカトリック。

 

さて、どうだろうか。ボリビアは内陸地域で海に面していない。「津波」は生じないとみていいだろう。また温暖な海域で発生し沿岸に上陸する「熱帯低気圧」もこの国とは関係ないはず。スはボリビアではない。

というか、そもそも南米は熱帯低気圧の発達がみられる地域ではない。とくに南米大陸の西岸は寒流であるペルー海流が流れ込み、赤道直下であっても水温は比較的低い(20℃程度)。熱帯低気圧の発生のためには一般に海水温が27℃以上であることが目安。チリも「熱帯低気圧」の国ではない。スは「スリランカ」一択(いったく)となる。

スリランカが位置するインド洋では熱帯低気圧のサイクロンが発生する。南アジアだけでなく、その影響の及ぶ範囲は東アフリカ(マダガスカル)やオースラリア(グレートバリアリーフ)など。いずれも水温が高く、巨大な低気圧が発生、発達する。

 

残りはサとス。そもそも南米で位置が近いため災害の種類も似ている。ただし、ここでのポイントはやはりチリが「沿岸」国であり、ボリビアが「内陸」国であることだろう。さて、サとス、どちらが「沿岸」?どちらが「内陸」?

やはりここは「暴風雨」と「強風」の違いが気になるのだ。そもそも暴風雨と熱帯低気圧の違いが良くわからないのだが(注)、とりあえず巨大な低気圧が発生して、それによって強い風に加え激しい降雨がもたらされているということだろう。どうかな、このような大きな低気圧の来襲は沿岸部の方が多くみられることなんじゃないか。サを「チリ」と決めてしまっていいと思う。正解は⑤。

そう考えてみると、いろいろと頷ける(うなずける)点は多い。チリは日本同様に海溝に沿う国である。南米大陸の太平洋岸には海溝が走行している。太平洋側のプレートが南米大陸のプレートの下に潜り込み「狭まる境界」となる。チリ海溝やペルー海溝。どうだろう?海溝は「地震の巣」であり、地球上で最も地震が発生しやすい地形である。チリにおける主な災害が「地震」であるのはおかしくはないと思う。もちろんこのグラフは「割合」を示したもので「実数」はわからないので、「チリで地震が多い」とは判定できないのだが。

一方でシは内陸の山岳国ボリビアである。国土に傾斜地が多く、建物も山地斜面に多くつくられているのではないか。「地すべり」によって失われる建物が多いことには納得。「洪水」が多いのはどうしたことだろう。南半球の低緯度に位置するボリビアは雨季と乾季の明瞭な国で、そのことが要因となっているのだろうか。(気温年較差は小さいものの)雪解けの影響なのか。あるいは、ボリビアの東部はアルゼンチンやパラグアイに接する低地であり、こういった地域を流れる大河川による氾濫なのだろうか。この部分はちょっとよくわからないが、需要できる点は多いと思う。

 

(注)この暴風雨は一般の低気圧(それでもかなり勢力が強いことは間違いないが)によるものなのだろう。熱帯低気圧の普通の低気圧(温帯低気圧)の違いは何か。熱帯低気圧は「前線を伴わない」低気圧のこと。例えば日本付近に低気圧(つまり温帯低気圧)が発生した場合、高緯度側に歓喜団、低緯度側に暖気団があり、両方から風が吹き込み両気団が接することで境界面に「前線」が形成される。低気圧が前線を伴うことが温帯低気圧の特徴。これに対し、低緯度地域ならば周辺は全て暖気団であり、前線は形成されない。このようなところで発生し成長するものが熱帯低気圧。