2011年度地理A本試験解説

2011年度地理A本試験解説                                 

 

<第1問>

 

問1 例えばこうした時差の問題っていうのは中学地理でもあるんじゃないかな。地理A特有の問題ではあるけれど、地理Bで出題されたとしてもあわてないように。時差は経度(北極から南極まで描かれている縦の線)で判定する。図に「緯線・経度は15度間隔」とある。ロンドンを通過している経線は経度0度。そこから数えていってAは西経45度。Aで1月1日午後1時ならば、ロンドンは1月1日午後4時。日本(東京)は東経135度。ロンドンより9時間進んでいるので、1月2日午前1時となる。「地球一周(360度)で24時間なのだから、15度の差ではその24分の1で1時間となる」ことが最大のポイント。「日出ずる国」である日本は日の出が早い(つまり最も時計が進んでいる)ことをイメージする。

 

問2 ケッペン気候区分の問題。地理A特有でしょう。温暖湿潤気候は、温帯で年間を通じて降水があるパターンで、日本の気候が典型的。日本に近いG(シャンハイかな)を考えればいいでしょう。

ただしこの問題の最大のポイントは、むしろHかな。「経度35度付近・大陸西岸」には必ず夏季乾燥型の気候(地中海性気候)が現れる。オーストラリア南西部のHもその典型的な例の一つ。

 

問3 安定陸塊はどこですかといったような直接的な問われ方は地理Bではされないでしょう。問題自体も難しいし、どうでもいいかな。

 

問4 国境線の問題。これも地理A特有。アメリカ合衆国とメキシコの間の国境の一部は河川ですよっていうネタ。

 

問5 インドネシアで信仰されている宗教はイスラム教。宗教も地理Aで頻出だが、地理Bでも知っておいていいかも。

 

問6 都市の航空写真。ヨーロッパの伝統的な都市であるパリ。多くの放射状の道路が交わる複雑な街区の形状。

 

問7 これ、ちょっと難しかった。砂浜海岸に沿ってみられる●が防風林である針葉樹林でしょう。田についてはとにかく低地を考える。★の分布地域と▲の分布地域の高度差を観察しよう。全体として▲の方が低地にあり、★は斜面の上の台地状の地形に分布している。▲が田、★が畑。標高を表す数字の情報が少ないので、ちょっと難しかったなぁ。

 

問8 これも難しい。パズル的な問題だが、かなり考えさせる。75歳以上の年代をみると、明らかに女性の方が多い。女性の方が平均寿命が長いのだから当たり前のことなんだが、実はこれが最大のポイントになっているのに気付くかな。50歳代ぐらいならわからないが、70歳を越えた年代ならおそらく女性の方が多くなっていると考えていいんじゃないかな。男性の平均寿命は日本でも70歳代であるし(女性は80歳代)、70〜74歳の間に亡くなる男性は少なくないと思う。最上段が明らかに「男性<女性」となっているチが50〜74歳でしょう。

タとツの判定については、いわゆる少子化を考えればいいと思う。人口増加率が低い(ほぼ0%)ヨーロッパは、日本と同様に少子化が進んでいると思われ、0〜5歳の割合が低くなっているはず。最下段の値が小さいタが0〜24歳となる。

 

 

<第2問>

問1 簡単な問題ではあるんだが、奥は深いと思う。貿易は基本的には「隣の国と行う」のが普通。カナダやメキシコにとっては最大の貿易相手国はアメリカ合衆国であり(NAFTAを持ち出すまでもないだろう)、スペインにとってはフランスであり、オランダやポーランドにとってはドイツ。これも別にドイツがEU最大の経済規模(GNI)を有することをわざわざ言うまでもないと思う。ただ、この問題のおもしろさはそこにあるんじゃない。「隣国との貿易が盛んでない例」もこの図から観察できるのだ。例えば中国はアメリカ合衆国が最大の貿易相手であり、韓国は表示がないがおそらく中国が最大なんだと思う。日本という世界第2位の経済大国があるのに、それは重視されていないのだ。またアフリカに目を移すと、フランスが重視されているが、これは宗主国と植民地の関係。フランスはかつてアフリカに多くの植民地を経営しており、現在も経済的(もちろん政治的、文化的にも)なつながりが強い。しかし、スペイン領やポルトガル領だった南米大陸においてはほとんどの国がアメリカ合衆国を最大の経済的パートナーとしている(アルゼンチンはブラジルだろう)。「宗主国←→植民地」の関係も絶対的なものではない。また社会主義国でありアメリカ合衆国とは微妙な関係にあるはずのキューバも、現在の最大貿易相手国はアメリカ合衆国となっており、時代は変わったのだなと思わず感じ入ってしまう。

で、実は最高に興味深いのは日本を最大貿易相手国とする国。これが意外と少なくて、主なところではインドネシア、オーストラリア、イランぐらい。いずれもエネルギー資源産出国(インドネシアは天然ガス、オーストラリアは石炭、イランは原油)であるのがおもしろい。ちなみにイラン以外のOPEC加盟国(サウジアラビア、アルジェリア、ナイジェリア、ベネズエラ)の多くはアメリカ合衆国が最大の貿易相手国。アメリカ合衆国はイランをテロ国家に指定しており、原油を輸入していないのだ。

日本を最大貿易相手としている国で一つだけおもしろいのが、タイなんだよね。その規模(人口は7千万人)に比して日系企業の進出数がたいへん多い国であり、経済的なつながりの密度が極めて高い。

他にもいろいろなことが観察できる非常もおもしろい図だと思う。

 

問2 これは難しいよ。高度な問題であり、単なる暗記じゃ解けないっていうやつ。統計は暗記で覚えてしまうものではあるけれど、それにしてもやっぱり理論の裏付けはしておかないと。まずインドネシアについて。すでにOPECを脱退しているとはいえ、わが国にとって重要なエネルギー資源の輸入先であることに変わりはない。液化天然ガスと原油のAが該当。残ったBとCがマレーシアとタイ。マレーシアとタイはいずれも東南アジアを代表する工業国であり、いずれも機械類が最大の輸出品目となっている。ポイントはCの米と天然ゴム。タイは世界最大の米の輸出国であり、また世界最大の天然ゴムの生産国。Cがタイとなる。

ちなみに、実は現在わが国の最大の天然ガス(液化天然ガス)の輸入相手国はマレーシアだったりするんだよね。だから天然ガスについてはインドネシアとマレーシアと両方知っておかなくてはいけない。ただし、両国の経済レベルを考えた場合、インドネシアは工業の面においてはまだまだ開発途上であり、決して機械類の輸出がさかんなわけではないのに、マレーシアは新興工業国としての地位をすでに確立している中堅国。輸出に占める機械類の割合は当然高いものとなっている。かつては「インドネシア=合板」と覚えさせたものだが、むしろ本問はそれが有効ではない。

 

問3 交通ネタは地理Bでは出題されない。でも、それにしてもおもしろすぎる問題。これ、できた?

ポイントは「国際線」であること。国際線の反対語は国内線。空港には国際線の割合が高いもの(これをとりあえず国際空港と呼びますね)と国内線の割合が高いもの(同じく国内空港と呼びます)があるんだが、注目すべきは国内空港。国内空港が主である国ってどんな国だと思う?国土面積が広く、そして国内に多くの大都市が存在する国なのだ。発展途上国が首位都市といって、特定の大都市にのみ経済や産業などの機能、そして人口が過度に集中するのはみんなも知っていることだと思う。逆に言えば、先進国こそ複数の大都市が国内に並立するっていうことなのだ。国際空港が実は少ない国ってどこだと思う?つまり空港のほとんどが国内空港っていう国。「国土が広い先進国」がキーワードだよ。そう、アメリカ合衆国だよね。アメリカ合衆国において実は国際航空路線は発達していないことを見破れば、この問題はすんなり解けるわけだ。④がニューヨークとなる。

後は経度で考えればいい(第1問図1が利用できるね)。③がロンドン、②がドバイ、①が東京。赤道直下のシンガポールの空港がエントリーしていることにも注目。

 

問4 新潟とロシアの関係って出題されやすい。福岡は韓国とのつながりでしょう。沖縄は消去法でいいですが、あえていえばアメリカ合衆国の割合が比較的高いことかな。米軍基地だよね。

 

問5 選択肢を見て「誤っていそうな選択肢」を探るのもポイントになっているよ。ボクは、ざっと全体を読み通して②が気になったわけだ。「旧宗主国」ってかなり限定されるし、判定がしやすい。コロンビアやペルーが挙げられているが、これらの国から出稼ぎ者が国外に向かうとして、具体的にどこの国に行くんだろうか。第2問問1でも取り上げられていたけれど、南アメリカ諸国は経済的にはアメリカ合衆国との関係が強いわけであって、出稼ぎにしても「近隣の先進国」であるアメリカ合衆国が最大の送出先になるんじゃないかって予想が容易にできる。コロンビアやペルーは旧スペイン領でスペイン語が使用されている。②が誤りとなる。

ちなみに、④についてはインドでしょう。インドはコンピュータソフトの開発がさかんな国でありソフトの輸出(サービス貿易であり、一般の輸出品目には含まれないが)も多いが、1人当たりGNIの低い国であり、労働力の先進国への移動も積極的に行われている。

 

問6 これも地理Aの好きな問題だが、地理Bの話題としても重要。こうした問題はまず総人数がポイントになるんだが、人数が多い①と④、少ない②と③に分けられる。それで見当を付けてしまうのがベター。ただ、ボクなら政府関係職員や報道関係者なんて数が限られているんやろなって想像できるんだが、キミたちはどんなもんなんだろう。ちょっとイメージしにくいかな。

では、割合に注目していこう。留学生は「1人当たりGNIの低い国→高い国」への向き(ベクトル)がとくにはっきりしているものであり、日本からも(研究施設が整い、教育水準の高い)欧米へと留学生が向かう例が顕著。経済レベルの低いアジアの割合が低い④が該当する。他は不問。

 

問7 あまり国名とか地域名にこだわらないでください。「地理」って科目は実は「国名」とはあまり関係ない場合が多いんです(笑)。貨物を航空機ってのがおかしいんじゃない?

 

<第3問>

 

問1 黄河は出題されやすい。なぜなら外来河川であるから。2003年地理B本試験では「泥の川」として紹介された。流域の降水量は少なく「豊富な水資源」が不適。

 

問2 高緯度(ウラジオ)は寒く、低緯度(ホンコン)は寒い。中緯度のシーアンと福岡はその中間となるが、海洋の影響を受ける福岡は気温年較差が小さく、内陸部のシーアンは寒暖の差が激しい。なお、本問については標高差は考慮しなくていい。高度による気温の低減がポイントになる場合には、その旨が問題の中で示されている。

 

問3 オアシス農業は旧大陸(アジアやアフリカ)で行われる灌漑農業のこと。乾燥地域に適応し、Fがウに該当。中国の北半部が米作地帯でないことは、問1でも言及されている。中国南部(というか最南部)の華南地方で米作がみられ、Hがイに該当。

 

問4 これ難しいな。そもそもモンゴルの人口増加率がよくわからない。1人当たりGNIは高くないだろうから、人口増加率は高くなるだろうという想像はできるけど。とりあえずはっきりしているものから行きましょうか。1人当たりGNIと人口増加率は原則反比例。1人当たりGNIの高い日本や韓国は、それぞれ④と③になるはず。残った①と②だが、一人っ子政策を実施している中国はその1人当たりGNIの低さ(約3000ドル)に比して、人口増加率は低めの値となる。このことから②を中国とし、残った①をモンゴルとする。っていうのが地理Bの解き方だけど、地理A的にはその一人っ子政策に注目させる意図があるんだろうね。跡継ぎとして男子を重要視する風潮も根強く、新生児が男子に偏る傾向ある。女性人口の割合が50%を明らかに下回っている②が中国となる。

 

問5 これもざっと選択肢を眺めて、誤っていそうな部分を探してしまう。あまり国名にはこだわらずに。そうなると気になるのは「急速な経済成長」をして「自動車」のような重工業製品の輸出が増えるのはわかるのだが、「水産加工品」ってどうなんだろう。これ、食品工業であり、どちらかといえば軽工業製品であり、経済発展するほどにその割合が低下するものなんじゃないか。

 

問6 地理Aの問題とあなどることなかれ。実は家屋・住居の問題は地理Bでも新課程以降重要視されている。

サは朝鮮半島。オンドルという床暖房がみられる。シはモンゴルや中国・内モンゴル地方。移動式住居。スは日本列島の日本海沿岸。季節風の影響によって世界有数の豪雪地帯となっている。

 

問7 これ、難しいんだよね。国の規模(人口)が最初のポイントにはなると思う。人数が最も少ない(それでもその規模(1000万人)に比べれば高めの値だが)ツがホンコンでいいと思う。問題はタとチなんだよなぁ。何でもかんでも成長率が高いのが中国とみていいんだが、そうだとしても実に判別が難しい。観光客受入数の増加率はタの方が高い(約2倍)のだが、観光客送出数の増加率はチの方が高い(10倍以上)。全然わからないので、その増え方が極端である方を中国としてしまっていいと思う。チが中国なんじゃないかな。そもそも中国は人口も多いわけだし、送出数(これってつまり中国人ってことだしね)も多くて当たり前なのだ。

 

<第4問>

 

問1 カ;酸性雨というと中国を思い出すのだが、「国境を越えてきた」ってのがちょっと腑に落ちないよね。ドイツなど西ヨーロッパの工業地域からの大気汚染物質が偏西風によってもたらされている北欧が該当。カはE。湖沼(大陸氷河の影響)が多い地域でもある。

キ;熱帯林の商業伐採(熱帯林は硬材であり、高級材として利用されることもある)や農園造成(近年、油ヤシ園が増加している)。マレーシアやインドネシアのGがキとなる。

ク;「世界最大規模の水力発電ダム」は長江のサンシャダム。とりあえずここにダムがあることだけ知っておいてください。

 

問2 これ、スマトラなんだよね。津波かぁ。他も十分に考えられるものなのだが。地理では珍しい時事問題。

 

問3 この4カ国中ではカナダは水力発電に特徴のある国。石炭が中国、石油が日本、原子力がフランス。

 

問4 ①;平均寿命の伸びによって老人が増加し、出生率の低下によって子供が減る。いわゆる少産少子ですね。②;これはよくわからない。ただし「政策」のような政治的な要素が地理でテーマとなるわけがない。間違ってはいないでしょう。③;また一人っ子政策ネタですか。まさにその通りです。④;人口移動の問題。1人当たりGNIの低い国へは、人口が移動しない。

 

問5 ジャカルタはインドネシアの首都でありプライメートシティ。人口が減少することはない。

 

問6 軍事政権のミャンマーが問われる例は珍しい。「国家体制変革」は社会主義のソ連が崩壊して資本主義のロシアなどに移行したことを言っているんでしょう。Pがロシア。「干ばつ」はサヘル地帯のキーワードと思っていい。アフリカの北緯10~15度一帯。これがスーダン。

 

問7 コートジボワールは旧フランス植民地。Tがフランス。日本は近隣のアジア諸国へとODAを供与する。Sが日本。アメリカ合衆国は中東地域(イスラエル周辺)への供与が特徴だが、この表からはわからないね。

 

<第5問>

 

地理Bの第6問と同じ。