2004年度地理B追試験[第5問]解説

2004年地理B追試験[第5問]

とりあえずユカリさんとケイタくんって名前が結構特殊だと思うんだが、っていうか、そもそもこの二人の関係は!?まあ、そんなゲスなかんぐりはなしとして(笑)、純粋に問題だけを検討していこう。

個人的には問5の写真判定問題がちょっとキツイかなと思うが、それ以外はさほど難易度は高くない。人によっては問3のような問題を苦手とする者もいるかもしれないが、最悪でも1問のミスで乗り切ろう。

 

問1 [評価] 中学レベルの問題と言っていいと思う。そういった意味では簡単でもあり、難しくもある。中学生(場合によっては小学生でも)解ける問題であるのだが、君たちの中にはこういった中学レベルの学習を軽視し、高校地理の勉強だけしかしていなかったりして、実はこういった問題を苦手としてしまっている者も多い。この問題を見て「簡単やなぁ」と思った君は、中学レベルの知識がしっかり自分のものとなっているわけで、自分の勉強方に自信を持っていいと思う。逆にこれを見て「うわぁ、難しいやんけ」と思ってしまった君は、やっぱり勉強法をもう一回見直さないといけない。中学社会はマスターできているか。

[解法] 中学までの学習の中で、北九州工業地帯については鉄鋼業が中心であること、そして現在は衰退が激しいことを学ぶと思う。最初の官営製鉄所が北九州の八幡に建設された。これは福岡県北部の筑豊炭田に近いため石炭の調達が容易で、しかも中国からの鉄鉱石輸入に適しているという有利な立地条件を生かしたものであった。しかし、近年鉄鉱石の主な輸入先がオーストラリアに移り、さらに筑豊炭田も衰退しついに全ての炭田が閉鉱になると、北九州は鉄鋼業における優位性を完全に失ってしまう。この結果、北九州市を中心とする北九州工業地帯は、高度経済成長期までは四大工業地帯の一つとして大きな存在を示していたものの、近年はその地位を低下させ、とくに目立った工業地区とすら考えられないようになった。

以上のことを頭に入れておけば解答は簡単だろう。まずアであるが、これは全国での出荷額が最大(99年は福岡県でも最大である)ということで、機械工業と考える。自動車を例に出すまでもなく、機械という高価格のものを製造しているのだから、割合が高くて当然である。ほとんど変化していないイが食品。そもそも人間が食べるものなので、人間がいる限りこの工業には変化ないであろう。全国でみると71年から99年にかけて若干増えているのが疑問だが、無視していいと思う。そして注目のウであるが、これは高度経済成長期までは福岡県の主要産業であったのに、現在落ち込みが激しいことから北九州の鉄鋼業を考える。もちろん金属工業に該当。

ちなみに化学工業はほとんど変化がない。どうでもいいが。繊維工業の衰退はかなり発達している。現在の日本ではほとんど見られない工業ともいえる。このことは重要。

[関連問題] 中学レベルではあるが、実はセンター試験でこの北九州工業地帯についての問題は多いぞ。

00B追第1問問4参照。北九州工業地帯の中心都市である北九州市の工業統計が問題となっている。近年斜陽化が著しいこと、鉄鋼業が中心であることがポイントとなっている。

97B本第3問問7参照。北九州の製鉄所は75年までは2か所存在していた。しかし94年には1か所に減少している。

98B追第3問問4選択肢1参照。北九州の製鉄所が縮小し、レジャーランドがつくられたことが述べられている。

98B追第1問問4参照。「四大工業地帯のうち、北九州工業地帯の相対的地位が低下した」とある。まさにその通り。

新課程導入後だけでこんなにある。旧課程まで含めればかなりの数に上るのだ。いかに中学レベルの問題が出題されているかわかるだろう。

またついでと言っては何だが、福岡県のキャラクターについてもまとめておこう。02B本第2問問7がわかりやすい。Xは人口1人当たり工業出荷額なのだが、福岡県はむしろ低い値にとどまっている。日本最大の工業県愛知県などと比べると違いが明らか。Yは人口1人当たり商業販売額であるが、こちらは福岡県の値が高い。北海道や宮城県、広島県なども高いことを確認しておく。いずれも、札幌、仙台、広島、そして福岡と、その地方の首都とも言える大都市が位置する道県である。流通業の中心となり、物や金が集中するのである。このように現在の福岡県については、工業はたいしたことないが、九州地方の「首都」として経済機能がとくに発達した都市であると解釈する。

[対策・今後の学習] 言うまでもない。中学の問題集をやりなさい。

 

問2 [評価] こういったあいまいな問題が実は難しかったりする(涙)。解説しようがないんだよなぁ~。でも僕が案ずるまでもなく、意外と君たちはあっさりと解いてしまったりする。簡単?

[解法] 1;市役所に行くとたらい回しにされて、結局のところ話は聞けません。

2;そんなアンケートに答えてくれる親切な観光客はいません。

3;職業別電話帳に記載していない土産品店もあります。

というわけで解答は不明です。

なんていう大嘘はどうでもいいので、マジメに考えよう(笑)。

もちろん答は4。地形図とは基本的に航空写真と考えよう。とくに1/25000地形図は航空写真から作られている(これを実測図という。1/50000地形図は、1/25000地形図を4枚貼り合わせて、50%縮小コピーしたもので、こちらは編集図という)。飛行機から見たとして、それぞれの建物の用途の判別ができるだろうか。

もちろん航空写真とは違って、実際の地形図には地図記号なども書かれているが、それは公共機関などに限られている。市役所や警察署など。宿泊施設といった営利目的の施設については地図記号もない。

[関連問題] そのまんまの問題として、03B本第5問問5があるのでこれを参照してほしい。ここでもやはり地形図の限界が示されている。空中写真と地形図は同じものと考え、空中写真で石垣まで判定できるものなのだろか、と疑問を持ってほしい。

[対策・今後の学習] 対策できないところなんだよなぁ(涙)。あっさり解けた人は別に構わないんだが、そうでなかった人にとっては意味不明の問題だと思う。とりあえず関連問題に挙げた以外でもこの手の問題は多く出題されているので、センター過去問を通じて解く感覚といったものを養ってほしいな。素直に考えれば解けるんだから、例えば「市役所ってそんなに親切ちゃうやんなぁ」なんてひねくれた考え方はしないこと(笑)。

 

問3 [評価] これ意外と難しいかも。どうなんやろ?でも僕はすごくいい問題やと思うで。これができた人は自分の地理センスに自信を持っていいと思う。

[解法] 結局一番引っかかるのは「米作より機械化が容易であり」っていうところ。どう思う?米なら田植え機もあれば刈り取り機もあるよね。手で一本一本苗を植えたり、稲穂を刈ったりする風景は今ではほとんどないと思う。想像できるかなぁ。それに対し野菜はどう?種植えはともかくとして、わりと一つ一つの野菜を人間の手で切り取っているイメージない?白菜でもキャベツでもトマトでもナスでもイチゴでもスイカでもメロンでもカボチャでもネギでもダイコンでもジャガイモでも何でもいいけど。どうかなあ。このことから2を誤りとできるはずなんだが。

で、さらに発展編なんだが「労働時間も短縮できる」というのも怪しいとは思わない?いや、もちろん機械化を導入すれば労働時間を短縮できるよ。文章自体に矛盾はない。でもここで考えてほしいわけだ。野菜農家において、「労働時間を短縮」することは最優先事項だろうか。野菜をつくっている農民たちは「働く時間を短くしたいなあ」と思っているのかっていうこと。もちろんそれに越したことはないけれど、それよりも手間がかかってもいいから、少しでも高品質あるいは高価格で売れそうな商品を作ろうと必死なんじゃないかな。労働時間を少なくすることよりも、良いものを作ってそれが大きな利益をもたらすようにすることこそ、最優先で考えられていることではないだろうか。とくに日本の農家なんかそうだと思うよ。価格では安価な大量生産による外国からの輸入農作物に対抗できないかもしれないが、品質や安全性によって勝負を挑もうとしている。決して労働時間を減らすことが彼らの優先課題ではない。

他の選択肢についても検討していこう。

1;これは問題ないだろう。野菜の生産は近郊農業といって大消費地である東京圏や大阪圏あるいはその近隣地域でとくにさかんとなっている。ただしトラックなどによる輸送手段の高速・効率化によって、四国や九州(高知や宮崎が有名)から大都市へと運ばれる野菜も増加した。

3;「収益性が高い」とはすなわち「金になる」ということ。面積1haの耕地(運動場ぐらいの面積)を想像して、そこが一面水田になっているのと、野菜畑になっているのを考えてみよう。どちらがより「金になる」と思われるか。結論は一つ。

米など穀物は価格が安いため地価の高いところでは栽培されにくい。これに対し、野菜は価格も高く、都市近郊の地価の高い畑で栽培しても十分に採算が取れる。オランダでなぜ園芸農業が行われているかを考えてみたらいい。園芸農業とはそもそも穀物を栽培しない農業であるが、オランダのような人口過密国においては耕地面積も限られているため少しでも高価格のものを栽培し、収益性を高めようとしている。穀物より野菜の方が収益性が高いのは常識。

4;「栽培可能期間を長くする」ことはビニールハウスの使用によって十分に可能である。冬であっても、ビニールハウス内の気温を高く保つことによって夏野菜を育てることができる。市場への出荷時期をずらすことで、商品価値を上げる。

[関連問題] 思考力が重要となる文章正誤問題であるが、今回のように野菜がテーマとされることがしばしば見られ、そういったものを紹介してみよう。

04B本第2問問3参照。パキスタンにおいて野菜の生産が主穀を上回るか。

01B追第4問問1参照。野菜が出題されているわけではないが、農産物の価格に関する問題。

98B本第4問問4参照。日本から韓国へと野菜を輸出?

98B追第4問問4参照。都市近郊における農業の変化。

98B追第4問問5参照。図から野菜が栽培されていることを読み取る。

[対策・今後の学習] 「カネ」に関する問題は多いので、十分に慣れておくこと。例えば「収益」などという言葉は普段の生活ではあまり使わないものだが、試験にはしばしば登場するもの。こういった言葉に対するセンスが合否を分ける境界になるぞ!

 

問4 [評価] シンプル(すぎる?)な統計問題。間違えようがないぞ。

[解法] X;オーストラリアから輸入されているので石炭。

Y;インドネシアが1位。天然ガス。

Z;アラブ首長国やサウジアラビアなど西アジアの国に集中。原油。

[関連問題] 鉱産資源に関する問題というのは本問のように単純な形になりやすい。とくにこういった単に統計を問うだけというパターンは多い。関連問題はたくさんあるので自分で探してください(ゴメン!)。

[対策・今後の学習] センター過去問に登場する統計については、必ず自分が持っている統計資料をチェックしておくこと。本問の場合は、日本の貿易の分野から主要品目の輸入先という項目を探し、石炭・天然ガス・原油についてその上位国を蛍光ペンなどでマークしておく。とにかく統計資料は常に手元において、いつでも使える状態にしておくこと。

 

問5 [評価] これは難問ではないでしょうか!?センター試験でしばしば写真を撮影した方向を問う地形図問題が出題されてはいるが、本当に難問が多い。せめてカラーだったりしたらまだマシなんだろうが、それ以前に白黒であっても印刷が不鮮明な場合もあるもんなぁ。この問題もちょっと(かなり?)キツイよ(涙)。

[解法] 写真1参照。中央部の平坦な部分が「石灰石の採掘のために山頂部が削り取られた」ところなのだろう。これを図4で探すと、下の方にある「一ノ岳」付近だと思われる。「せっかい」の採掘場の地図記号もみられる。

これが中央に収まるような矢印を探す。そうなると自ずと選択肢3が候補として挙がってくる(あえて「自ずと」と表現してみたけれど、これが全然分からない人っているよね~、実は僕もかなりキワドイのだが(涙)。そういう場合は潔く間違えましょう!?)。よってこの3の撮影方向を中心に検討してみよう。

まず写真1における左手の二つの山は地形図ではどれに当たるのだろうか。最も左の山は、地形図において「香春岳」の「香」の文字のすぐ左上にある岩場を伴った(この付近に集中している「イモ虫(?)」のような模様は、岩が露出した地形を表す。これに類似したものとして岩石海岸があり、例えば98B本第4問図1の地形図で探してみるといいだろう)山頂があるが、これが該当すると思われる。また写真で左から2つめの山については、地形図中央部の「466(?)」の三角点を伴う山頂と考えればいいだろう。この図の中で最も標高も高い地点であり、これは明らかだろう。以上より3を正解とする。

[関連問題]地形図問題で、写真に示された撮影方向を問う問題とそれに類するものを挙げる。いずれも難しい。

03B本第1問問1参照。中央部のえぐられた部分をはっきり認識できるかどうかがポイントだが、難易度は高い。

00B追第4問問1参照。矢印で視線の方向が示されていないのが難しいが、とりあえず写真(図2)の中央に直線を引いて、自分の視線の中心がどこにあるか定めてから考えるのが妥当だろう。

99B追第3問問2参照。写真中の地点がどこかを問う問題。どの方向から撮影されたかはっきりしないため難しい。

98B追第4問問3参照。これは容易。

若干パターンは違うが、03B追第4問問4もある。写真からでなく、地形図から十分に読み取れる事項でもあるので、さほど難しくない。

[対策・今後の学習] これは難しいなあ。諦めるしかないような気もするが(涙)。実は僕も非常に苦手とする問題パターンなのだ。

とりあえず解法の基本としては、写真の中央に縦線を入れて、自分の視点の中心はどこにあるかをはっきりしてみたらいいんじゃないかと思う。そしてさらに地形図の方で、矢印を延長して直線を引き、具体的にどういった地形をどのような角度から眺めているのか明確にしておく。それだけでもずいぶんと見やすくなると思うのだけれども、どうかな。

 

問6 [評価] 最近ちょっと見ないパターンの問題だと思う。難易度は低いので良問ではあるけれど。

[解法] 特殊な地形についての知識がある程度求められているという点において珍しい。97年度以降の地形図問題は思考問題的側面が強く、決して知識が重視される問題でないことが一般的であったのだが。

「カルスト地形」とは何だろうか。石灰岩の溶食地形であり、表面にはドリーネとよばれる小凹地がみられ、地下には鍾乳洞が形成されている。これを地形図で判断するならば、さすがに地下の地形まではわからないので、表面に現れる小さな凹地を探すことになる。

1の地形図に注目してみよう。「西山」という文字のやや上に、矢印が入り込んだ閉曲線が確認できるだろうか。これはこの閉じた曲線(等高線である)の内側に向かって、地形がへこんでいるということを表している。つまり小さな穴が開いているということだ。これがドリーネ。

また同じく「西山」の右側2センチ程度のところに、等高線が二重丸のようになっており、内側に向かって細かなケバケバ線が見られるものがある。このケバケバ線は「斜面の印」であり、等高線の部分が高く、このケバケバ線がそこから下りていく斜面となっていることを表す。この二重丸の地形は、周辺が最も高く、中央に向かってへこんでいる地形、つまり凹地となっているわけだ。やや大規模なドリーネを解釈できるだろう。

このように1の図には無数の凹地が存在することが明らかで、これを石灰岩地形つまりカルスト地形と判断することができる。

他の図についてもそれぞれ特徴的な地形なので確認していこう。

2は河岸段丘。河岸段丘とは河川によって削られた地形なので、まず川の流れを探してみよう。図の最も下部を横切っていることが確認できる。段丘とは階段状の地形であり、平坦な部分(段丘面)と急斜面の部分(段丘崖)の組合せから成る。

北部が最も高く(「264」の数字から高さがわかる)、そこから等高線がいくつかあり(これが段丘崖。急斜面になっていることを想像する)、「貝沢」の集落が位置する段丘面に達する。標高は「188」や「205.4」の数値からわかるようにおおよそ190mぐらいだろう。さらにそこから等高線を数本はさんで河川沿いの低地へとつらなっていく。この急斜面も段丘崖。階段のようになった地形である。

4は火山地形。「新岳」に「噴火口・噴気口」の地図記号がみられる。

残った3が氷河地形と思われる。ただしわが国には大規模な氷河は存在しない(存在しなかった)ので、ここでみられるのは小規模な山岳氷河による地形であろう。「杓子平」の部分が大きくえぐられていることがわかるだろうか。あたかも巨大な彫刻刀で削ったかのような。「2550」から「2250」にかけて深い谷になっていることがわかれば、この「えぐれ」にも気付くはず。これは氷河の侵食作用によるもの。「固体」である氷河がずり落ちていく過程で、地形が大きく削り取られてしまうのだ。この地形を「カール」とよぶ。似たような地形にフィヨルドがあるが、これは海岸付近の地形が氷河によって大きく削られ、U字型の谷となった部分が沈降し、複雑な入り江となったものである。氷河による侵食地形は、このようにU字型というかお椀型となることをイメージしておこう。

[関連問題] カルスト地形については、98B本第4問図1参照。サンゴ礁による地形であるが、凹地がいくつも見られ、石灰岩地形の一種であることが分かる。

河岸段丘については、04B本第5問問5参照。河川による侵食地形であり、川の流れに沿って等高線が平行に走り、段丘面と段丘崖が組み合わさった地形であることが分かる。

山頂部を氷河によってえぐられた地形については、03B本第1問問1参照。Vから東の方向に向かって山岳氷河によって斜面がえぐり取られている。02B本第1問問3参照。Pの付近は大きな谷となっているが、氷河によって削られたため、湾曲した形となっている。

火山については、99B第3問問2参照。こちらには噴火口は見られないが、円錐に近い形状はまさに火山だろう。

[対策・今後の学習] 地形図を見慣れておくこと、と言ってしまえば当たり前すぎるだろうか(笑)。まあ、実際にセンター過去問の中に類似した地形図がいくつも取り上げられているのだから、これらを十分に研究しておいたらとくに戸惑うほどの問題ではなかったと思う。

 

問7 [評価] 一見、オーソドックスな地形図問題であるが、果たしてその実態は?正文指摘問題であるので、逆に誤文を3つ指摘しなければいけないところが面倒だが、それもさほど難しい作業でもないだろう。

[解法] 問題文参照。「干拓地」と示されている。これが大きな手がかりとなっている。干拓とは遠浅の海に堤防を作って、その内側の海水を抜き、新たに土地を作り出すことをいうが、この新しい土地は低湿地(もともと海中だったのだから、標高も低い)なので、主に水田として利用されることが多く、住宅地などには利用しにくい。

図6を見ても、この干拓地の特徴がはっきりと現れているようだ。沿岸部には干潟が広がり(干潮時は陸に、満潮時は海中になるところ)、遠浅の海岸であることが分かる。陸と海の境に沿って堤防が築かれていることも明らか。海に面する側は「垂直の壁」で、陸地側は「斜面」となっていることも地形図から読み取れる。「6.9」というのは堤防の標高である。「0.8」は低い数値なのでその内側の低地の標高だろうか。「+6.0」は堤防の比高。下から見てどれくらい高いかということで、例えば低地が標高0.8メートルで、比高が+6.0メートルだったら、堤防の標高は6.8メートルとなる。さらにその下の「6.5」は堤防の標高。

堤防の内側は広い範囲にわたって干拓地となっている。明治開と昭和開の間に古い時代に造られた堤防の跡がある。かつてはこの部分までが干拓地だったのだろう。有明海にはこのように段階的に干拓地が広げられたところがいくつもある。

1;「昭和開」を探す(文字通り、昭和に開かれた土地なのだろうか)。道路が直交し、等しい面積に区切られた区画がいくつも存在する。しかしそれらは住宅地ではなく「水田」として利用されているようだ。

2;「深倉開」を探す。南は「三井金属」の工場がある(ちなみに工場の地図記号もあるが、わかるだろうか)。さらに茶畑を探してみよう。点3つの組合せによる土地利用記号であるが。しかしどうにも見当たらないようだ。

3;「黒崎樋門」の東側の地域(この際「200メートル」にこだわる必要はないだろう)ということは、水田などが広がっている部分である。たしかに標高は低いようであるが、果たして満潮時にここまで海面下となるのだろうか。そのためには満潮によって海水が、干拓のために設けられた堤防を越えて内側に侵入してこないといけない。果たして海面は「6.9」メートルを上回って上昇するのだろうか。いくら何でもそんなことはないだろう。

ちなみにこの黒崎樋門というのは、干潮時は開かれていて、川を流れてきた水を海へと流し込むが、満潮時になると閉じられて、海水が河川へと逆流するのを防ぐために設けられていると思われる。せっかく堤防によって海水が仕切られているのに、河川を伝わって低地へと水があふれてしまっては元も子もない。

一方、南側を流れるやや規模の大きな河川の方にはこの樋門に該当するものはない(河口部分を横切る線があるが、これは送電線)。こちらは河川堤防がしっかりと造られており、多少の海水の逆流には耐えられる形となっているようだ。

4;数字を読み取ればそんなことがないのがわかる。というかそもそも干拓地なのだから、堤防が高く、背後の水田の標高は低い。

というわけで、あれっ?全部間違ってるやん???どこかで読み誤ったかな(涙)。というわけで文章を読み返したら、ありました、選択肢3の文。「東」じゃなくて「西」やん。すまん、延々と書いてきたことが全然無駄となりました~。っていうか、そうなるとこの選択肢ってすごく判定簡単やん。黒崎樋門の西って干潟が広がっているだけやん。そりゃ満潮時には海面下となりますよ。ちなみに5万分の1地形図なので、200メートルは4ミリメートルに該当。

[関連問題] 干拓地については、古い問題ながら、90追第4問地図イが興味深い。本問と同様に、何段階かに分けて次第に干拓地が造成されていった様子がうかがえる。

[対策・今後の学習] 問題そのものは難しくないと思う。ただしこういった低地が地形図問題として取り上げられることは少ないので、その点だけ注意しないといけないか。関連問題として紹介した問題はかなり古い時代のものだが、これに目を通しておいただけでも本問がずいぶん解きやすくなっただろうということは言うまでもない。このように、地形図問題というのは時代を問わない問題ばかりであり、しかもそれぞれの問題にセンター試験特有のクセのようなものが垣間見えるので、過去問で入手可能なものについては全部解いてみるようにしたらどうだろう。さほど問題数は多くないし、かなり古い時期までさかのぼってみたとしても大きな負担とはならないはずだ。