2004年度地理B追試験[第2問]解説

2004年地理B追試験[第2問]

低緯度地域をテーマとした問題なんだが、扱っている範囲は異常に広く、強引な感じもするぞ!?取り上げられている国を挙げてみただけでも、マレーシア・インドネシア・エチオピア・ケニア・ガーナ・ナイジェリア・カメルーン・コンゴ民主・パナマ・コロンビア・ガイアナ・ベネズエラ・エクアドル・ペルー・ボリビア・ブラジルと節操なし(笑)。さらにジャンルとしても、緯線経線(問1)・気候(問2)・農産物(問3)・貿易統計(問4)・鉱産資源(問5)・旧宗主国(問6)・民族宗教(問7)と、よくもまあこれだけバラバラのジャンルの問題を一つの大問にぶちこんだなと呆れるばかり。いかにも追試特有のことなのかな。とはいえ難しい問題はないので、ここはぜひとも全問正解を狙ってほしいな。

 

問1 [評価] 断面図の問題。しばしば見受けられる形式ではあるが、ちょっと難しいような気もする。ただし、同じ冊子中に含まれている地理Aの問題に世界地図があるので、それを見て、赤道や経度0度の位置を確認できれば大きなヒントになったかも。。。

[解法] 「目盛りは20℃間隔の経度」を表しているのだから、まず図1において目盛りの数を数えてみよう。18個ある。20×18=360°、つまり図1は地球一周の範囲を全て収めていることがわかる。

赤道が通過している陸地を考える。南アメリカとアフリカの両大陸、そして東南アジアの島々。大きくこの3つの地域がこの断面図において、標高の高い地形として表されているはずである。1という番号から東へ地形が複雑になっているところがあるが、これは陸地の一つだろう。番号2の辺りは平坦な地形となっており、こちらは海底だろうか。番号3の手前にも標高が高い部分があり、これも陸地と考えられる。3と4の間は低地であり、ここは海だろうが、その東側には盛り上がった地形があり、これは陸地だろう。

以上、3か所に明確な陸地がある。これらがどれに該当するのか考えていこう。まず、番号2を中心とする平坦面が重要。これは世界最大の大洋である太平洋と考えてみていいだろう。そうなると太平洋の西に当たる番号1付近の複雑な地形は東南アジアの島々なのではないか。平坦なテーブル状の地形もあるが、これはとくに水深の浅い大陸棚を示しているのかもしれない。たしかにこの海域には大陸棚が発達している。

番号3と4の間の狭い海域は大西洋と考える。そうなると、3の西側の大陸は南アメリカで、たしかに大陸の太平洋沿岸には急峻な地形があるが、これはアンデス山脈であると考えられる。4の東側にあるのがアフリカ大陸。こちらは大陸の東側(インド洋に面するところ)に急峻な地形がある。これは東アフリカ大地溝帯に沿う高原地帯であり、具体的にはキリマンジャロ山やケニア付近の高原地帯だろう。

さあ、これで経線0度を判定できるだろう。イギリスを通過する経線が0度であり、これは赤道上ではギニア湾(アフリカ西岸の巨大な湾曲部)を通過する。よって答えは4となる。この位置がわかりにくい人は、世界地図(地理Aのものでもいいし、地理Bならば第1問図1にもある)を参照し、イギリスを通過する経線がアフリカの西方を縦断していることを確認しておくといいだろう。

(おまけ)海溝や海嶺などの海底地形がはっきり表されている点も興味深い。太平洋の南米大陸沿いにはやや深い切り込みのようなものがあるが、これは「プレートの狭まる境界」である海溝だろう。また、そのやや西方に海底山脈のようなものがある(よく見ると2列になっているように見えるのだが、どうだろう?)。これは「プレートの広がる境界」である海嶺。

同じく大西洋に目を移すと、その中央にやや複雑な地形がある。中央がパックリと口を開き、その周囲が山脈のようになっている。大西洋中央海嶺であり、新しくプレートが誕生し、両サイドに広がっていく。

[関連問題] 断面図を用いた問題として形式が類似しているのは02B本第3問問1。大地形を扱ったものはこれぐらいだが、地形図問題で小さな地形の断面図は非常によく出題されているので、センスを養っておこう。

これ以外では旧課程ではあるが、96追第7問問2で南アメリカ大陸の断面図が取り上げられている。今回の断面図と比較してみよう。大陸の西端に沿ってアンデス山脈が走り、太平洋には海溝が刻まれる。

[対策・今後の学習] かつては大陸断面図の問題など、地形図問題でしか扱われなかったのだが、近年はこのように大地形についても断面が問われるケースが増えてきたので注意が必要。しかも決して簡単ではない。

小地形の断面図のように、丁寧に時間をかけて、ポイントとなる箇所を一つ一つ確認しながら解いていくという姿勢が大事。本問も焦って解けば必ずミスをするはず。しかし逆にいえば、ゆっくりじっくり解いていけば確実に得点できる問題でもある。前述のように、同じ冊子の中に世界地図が含まれているのだから、これを利用しない手はない。赤道の位置さえ確認できれば、陸地と海洋の分布がわかるし、またイギリスを通過する経度0度が赤道ではどこを通過しているのかも調べられる。せっかくなんだから、あるものは利用しないとね(笑)。

緯線経線に関しては細かいものは覚えなくてもいいけれど、赤道だけは確実にチェックかな。出題例多いぞ!

 

問2 [評価] 難度も適当な(ちょっと簡単すぎる?)気候グラフ問題。キトやリマなど特徴ある気候が見られる都市が取り上げられてはいるが、あえてブラジリアを答えさせている点が心憎い(笑)。気温変化にさえ注目すれば解ける思考問題であることも好ましい。

[解法] 赤道の位置はわかるだろうか。キトやアマゾン川河口を結んだライン。つまりジョージタウンは北半球、リマやブラジリアは南半球。このことを季節的な気温の変化を結びつけて、それぞれのグラフに見当をつける。

7月の気温がやや下がってはいるが、全体としては4月から9月ぐらいまでの気温が高く、12月や1月の気温が低い選択肢1のグラフは、北半球の都市のものであると考えてみていいだろう。それに対し、7月を中心とした時期に気温が下がっている2や3のグラフについては南半球と判断する。4は、年間を通じ全く気温の変化がないので、赤道直下の都市と考える。

以上より、1はジョージタウン、4はキトとなる。キトの気温が大変低いのは、標高が高いところに位置する高山都市だからだろう。衛生環境などの悪い低地を避けて、このように高原に都市が成立することがある。

さらに2と3であるが、今度は降水量に着目する。2はほとんど降水がなく、おそらく砂漠となっているはずだ。このような降水パターンが見られるのはリマとブラジリアどちらだろうか。

もちろんリマ。ここは沿岸を流れる寒流の影響で大気が安定し、雲が生じにくい少雨の気候が見られるというのはあまりに有名な話。チリ北部からペルーにかけての太平洋沿岸には、乾燥の度合いの大きい地域が分布している。よって2はリマとなり、ブラジリアは3が該当。

ブラジリアは南緯10度付近に位置するため、夏季(1月を中心とする時期)には南下する赤道低圧帯に覆われ雨季となり、冬季(7月を中心とする時期)には北上する中緯度高圧帯の影響によって乾季となる。草原に背丈の低い樹木が点在するような荒地が広がっている。

[関連問題] もちろん雨温グラフを用いた気候判定問題は毎年のように出題されているので、ここでは本問で取り上げられた4つの都市について過去問から出題例を探っていこう。

ジョージタウンは初出。ちなみにガイアナという国の首都なのだが、このガイアナという国も00B本第2問問7で登場したのみ。不要だろう。地理Aでは99A追第1問問6で登場。旧イギリス領であることが話題とされている。

キトは赤道直下で高山都市という特異なキャラクターであるため、非常に出題率が高い。と思っていたのだが、センター試験では出題例はないようだ。今さっき一生懸命探してみたのだが、旧課程時代までさかのぼっても見当たらない。とはいえ、やはり重要な都市には間違いないので、今回の出題を機会に、確実にチェックしておこう。4のグラフ参照。気温年較差は全くない。標高は2000メートルを超えているため、同緯度の低地で気温が30℃近くに達したとしても、この地ではせいぜい15℃程度となってしまう(100メートルで0.55℃気温が変化するので、キトの標高ならば(キトは2400メートル)15℃ぐらい気温が低くなる)。

降水量については、気温が低い分だけ全体的にやや少なめとなり、1000mm程度。これについてはとくに考慮しなくて良い。

リマの気候については出題例多し。

98B追第5問問2選択肢4。南アメリカ大陸の西岸では、太平洋から吹く暖かい湿った風とアンデス山脈の影響により、全域にわたって降水量が多い。

99B本第4問問2。本問でも取り上げられたグラフと全く同じものが選択肢2として登場。もちろんリマ。

実はリマの気候グラフは地理Aでも取り上げられており、01A本第2問問1参照。

ブラジリアは98B本第1問問7が代表的。ブラジル高原のこの地域は荒地であったが、首都ブラジリアを建設するなどして積極的な開発が進められた。とくに日本が協力したことによって農業もさかんとなり、大豆などの栽培が増加。

[対策・今後の学習] 気温の変化にさえ注意すれば簡単に解くことができる。このように、センター試験の気候判定問題は、気温や降水のパターンから考える問題ばかりで、決してケッペンの気候区分などいらないのだということはしっかり意識しておこう。

 

問3 [評価] 多くのキーワードがちりばめられているが、とくに「天然ゴム」「コーヒー」など農作物に注目すれば間違えることはないだろう。農作物の生育条件はその地域の自然環境と結びつき、その自然環境を中心に考えていくことこそ地理という科目の絶対的鉄則なのだ。

[解法] ア;「先住民」がキーワード。もちろんインディオのことであるが、人口に占めるインディオの割合が高い国としてはペルーとポリビアが重要。かつてこの2つの国にまたがるアンデス山中に先住民族による巨大国家であるインカ文明が栄え、その子孫たちが残る両国においては現在も人口の約50%がインディオである。。このことからアに当てはまる地域としてCが適当となる。また「ジャガイモ」も同じくキーワードの一つである。この地域原産の作物として重要。ちなみに「南アメリカ大陸最大の淡水湖」というのはチチカカ湖のことであろう。比較的穏やかな気候というのは、低緯度でありながら高原に位置するため常春の気候となることを表している。

イ;「天然ゴム」がキーワード。これは高温湿潤な栽培条件を持つ農作物。A・B・Cの3つの地域のうち、この気候に当てはまるのはBだけである。AとCはアンデス山脈に沿う地域であり、標高が高く冷涼な気候が見られるはずで、これでは天然ゴムなど栽培できるはずがない。

ウ;「地震や火山噴火」は新期造山帯を表すものだと一応考えていい(新期造山帯と一致しない火山などいくらでもあるのだが)。これによりアンデス山脈に沿うAとCにまず絞られる。さらにキーワードは「コーヒー豆」。世界最大のコーヒー豆生産国はブラジルであるが、南アメリカ大陸でこれに次ぐ国としてコロンビアを押さえておきたい(世界全体では2位がベトナム、3位がコロンビア)。とくにコロンビアはコーヒー豆が重要な輸出品目の一つともなっているので、統計資料でチェックしておこう。Aが該当。

[関連問題] ア;南アメリカ大陸の人種構成については地理Aで出題例が多いが、ここではとくにアンデスのインディオについての問題を重点的にピックアップしてみよう。

01A本第2問問5参照。ペルーのアンデス地方の伝統的な衣装に身をまとった女性の写真が用いられている。

99B本第3問問4参照。選択肢4の写真はアンデス高原における伝統的な家畜であるリャマ・アルパカ。

99A追第1問問1参照。アンデス山脈に見られる文化。またこの問題の断面図ではチチカカ湖やラパスなどの地名も登場しているのでチェックしておこう。さらに問2ではペルーやボリビアとは関係ないが、さまざまなラテンアメリカの国の人種構成が問題となっている(旧フランス植民地のハイチは黒人が多く、ラプラタ川河口に巨大な港湾を持つウルグアイは白人が多い)。

98A本第1問問6選択肢1参照。アルパカ。

98A追第1問問2図1参照。モンゴロイドがはるかベーリング海峡を越えて、アンデス地域にまで達したことが図示されている。

イ;天然ゴムについての問題は01B本第1問問6で出題。ここでは現在タイが生産1位であることが取り上げられている。また94本第3問問4では原産地に関する知識が問われた。03A追第3問問3でも名前だけ登場している。

さらにアマゾン低地に関する問題を挙げてみよう。02B追第1問参照。問5ではマナウスを中心とした範囲が図示され、問6ではアマゾン川河岸の家屋の写真が用いられている。

01A本第2問問3参照。この地域の熱帯雨林の減少について。

99B追第1問参照。問1では豊かなアマゾン川の流量が問題とされ、問6では国際河川として内陸水運の要所となっていることが出題されている。

97B本第2問問3参照。ブラジルの先住民インディオについて。アマゾン低地における熱帯林の減少と現在の生活の変化が問われている。

97A本第3問問6参照。アマゾン川における熱帯林の減少の原因について。

ウ;コロンビアについては03B本第2問問7で貿易統計が出題されている。コーヒー豆がこの国の重要な輸出品の一つであることは確認しておこう。またコーヒー豆の栽培されている地域も98B本第1問図1で話題とされているのでチェックしておいてほしい。bがコーヒーなのだが、南アメリカ大陸ではコロンビアやブラジル南部の高原が主生産地となっている。

また01A本第2問問2ではコロンビアにみられる高度ごとの農業が取り上げられている。標高1000mを超えた高原でさかんに栽培。

[対策・今後の学習] センター地理ではこのように農産物の生育環境が問題を解くポイントとなることが多い。それぞれの農産物のキャラクター(生育条件だけでなく、生産上位国や原産地なども含め)を整理しておくといいだろう。

 

問4 [評価] 簡単だと思う。Dはガーナとわからなくても何となく雰囲気で解けるはず。問題はFがケニアだとわかるかどうかなんだが、この国は実はセンター試験常連国なので知っていて当然。Eなんてどうせどこの国かなんて誰もわからないだろうし(笑)。

[解法] 白地図上で国の位置だけが示されている。それぞれ国名はわかるだろうか。Dについてはギニア湾に面していることだけ確認できればいい。この地域の国としてはコートジボアールとガーナが代表的なところなのだが、まあ、そのいずれかであると見当が付けられればベスト。

Eなんてわかるわけない。どうでもいい。

問題はFなんだが、わかるかなあ。ちょっとキツイ?赤道直下の東アフリカに位置する国なのだが。

ではここで表1を見ていこう。カカオが主な輸出品になっている国がある。キだが、これがガーナだかコートジボアールだか知らないが、とにかくDであることは間違いないだろう。

さらにカとク。カは原油が輸出品目の1位であるが、カもクもOPECに加盟しているわけでもなく(注)、これは手がかりとはなりにくい。一方、クでは茶が主要輸出品目となっている。アフリカで茶を産する国といえば、それはケニアである。ケニアはホワイトハイランドと呼ばれる高原上に位置する国なのだが、それはEとFのいずれだろう?

これについてはアフリカ大陸全体の地形(問1の図1でもアフリカ大陸の断面図が示されているのだが、さすがにこの小ささとアバウトさでは参考にならないかな)を考慮しながら想像する。アフリカは全体としては台地状の地形であるが、それでも地域ごとに高低ははっきりしており、とくに赤道直下においては、コンゴ民主共和国が位置するコンゴ盆地はコンゴ川流域低地となっており、それに対し東アフリカでは巨大な断層が大地を切り裂く変動帯(地震などがしばしば起こる不安定な土地)が南北に貫き、標高が高く、大きな火山(キリマンジャロ)なども存在する。このことから、「ホワイトハイランド」ケニアは東アフリカのFであると考える。以上より、クがF、残ったカがE。

(注)アフリカのОPEC加盟国は3か国で、リビア・アルジェリア・ナイジェリア。北アフリカに位置するのがリビアとアルジェリアで、前者が旧イタリア領、後者が旧フランス領というキャラクターを持つ。ブラックアフリカと呼ばれる中南アフリカにあるのがナイジェリア。こちらは旧イギリス領。アフリカ大陸最大の産油量を誇るが、経済レベルは低い。

[関連問題] しかし本当に最近はこういった発展途上国の貿易統計ネタがよく出るものだ。ここまで徹底して出題されていると、ヤマを張るとかそういった次元ではなく、絶対に知っておかないといけないマストアイテムと考えるべき。

97年度以降、国ごとの貿易品目(あるいは相手国)が出題された例を挙げてみよう。

04B本第3問問6参照。イスラエル、エジプト。

03B本第2問問7参照。エクアドル、カナダ、コロンビア、チリ。

03B本第3問問5参照。スリランカ、パキスタン、バングラデシュ。

03A本第3問問6参照。ポーランド。

02B本第1問問5参照。アイスランド、デンマーク、ノルウェー。

02A本第2問問5参照。カナダ、ジャマイカ、マレーシア、南アフリカ共和国。

01B本第1問問7参照。インドネシア、フィリピン、マレーシア。

01A本第1問問6参照。カナダ。

00A本第1問問6参照。マレーシア。

99B追第2問問6参照。ブラジル。

98B本第3問問3参照。イエメン、シンガポール、中国。

97A本第3問問7参照。シンガポール、ブラジル。

以上のように見てくると、実にさまざまな国が話題にされていることに気付く。普段からマイナーな国の存在も考慮しておくべきなのだろう。

さらに国別に考えていくと。。。

ガーナに関する問題はちょっと記憶にない。コートジボアールならば94本第6問問3。ただしこのギニア湾岸地区のカカオ栽培に関しては98B本第1問図1で取り上げられており、チェックしておきたい。

カメルーン(そういえばここまで一回も言ってなかったけれど、この国はカメルーンなのだよ)は全くの初登場。サッカーワールドカップで注目された国だから登場したのか。まあ、はっきり言って私大ですら取り上げられることはまず無い国だからどうでもいいでしょ。

ケニアはセンター最重要国の一つ。00B本第2問問5参照。ケニアの土地利用について。キーワードは「サバンナ」。

99B追第5問問7問8参照。首都ナイロビが取り上げられている。キーワードは「ホワイトハイランド」。

98A本第2問問4参照。ケニアの都市人口など。キーワードは「発展途上国は特定の大都市以外は発展しない」。そしてケニアは発展途上国である。

98A本第2問問5参照。まさにケニアについて!キーワードは「植民地」。

[対策・今後の学習] とりあえず白地図を用意して、それぞれの国の名前と位置を一致させておこう。と言いたいところだけど、さすがにカメルーンまで知っておけとは言えないなぁ(笑)。

 

問5 [評価] ちょっと珍しいタイプの問題。解きにくいかもしれないが、逆に案外簡単に思う人もいるんじゃないかな。

[解法] 石炭は古期造山帯で多く産出される資源なわけだが、アフリカ大陸にはこれに該当する山脈はほとんどなく(南アフリカ共和国のドラケンスバーグ山脈ぐらい。もっともこの国は世界第4位の石炭産出国であり、アフリカは決して全く石炭の取れない大陸というわけではないのだが)、このことから1を誤りと判定するのは難しくないのではないか。

では各選択肢についてコメントを。

1;前述のようにアフリカにとって石炭は「重要な地下資源」ではない。また「ほぼ底をついた」という点も疑問。たしかにイギリスのような古くからの石炭国についてはそのようなこともあるかもしれないが、アフリカ唯一の産炭国南アフリカ共和国についてはそんなことはない。

2;モノカルチャー経済を考える。特定の一次産品の生産と輸出に国内経済が依存しているモノカルチャー国が多いのもアフリカの特徴の一つ。たとえばセネガルやコートジボワールでは、商品作物としてそれぞれ落花生とカカオを生産し、それを輸出して得た外貨によって穀物を輸入して国民の生活を成り立たせている。この輸出農産物の価格が低迷することにより、窮乏する国も多い。

3;かつてのナイジェリア(ビアフラ戦争。イボ族がハウサ族やヨルバ族に対し、独立を宣言して内戦に突入)や、近年のルワンダ(ツチ族とフツ族の内戦。多くの難民が生じたことは重大な問題となった)など。これ以外にも内戦にあえぐ国はいくつもある。

4;発展途上国であり、さほど開発が進んでいない。インフラ(道路や港湾など、都市施設)もなかなか整備されない。

[関連問題] このように文章をしっかり読んで、感覚的に解く問題というのは例年いくつか見受けられる。

その典型的なものは「インドの福祉の問題」だろうか。02B本第4問問2参照。難しくはないが、こういう問題を苦手とする者もいるんだよなあ。注意。

[対策・今後の学習] 問題慣れが必要。こういった問題を間違えて、よく「考えすぎてしまった」という言い訳をする者もいるが、果たして本当にそうなんだろうか。「考えすぎた」のではなく、「考えが足りなかった」のではないかと思うよ、やっぱり。慎重に時間をとってじっくり考えるクセを普段から付けておかなくてはいけない。そういう習慣を身につけておくことで、本番のセンター試験においても自然と深く考えることが可能となるわけだ。

 

問6 [評価] これまたえらくマイナーな国が並んでるなあ(笑)。いや、僕はこういったセンスは好きだけどね。国そのものの知識が問われているのではなく、その位置(インドネシアならアジア)さえわかっていれば十分に解ける問題。それなのに、あえてこういったちょっとひねった国名を持ってくる作問者のセンスに脱帽!おもしろいと思うよ。

[解法] ОDAについては、単純に「近隣国」から受け取ると考えておけばいいんじゃないかな。同じアジアのメンバーである日本から多くのОDAを供与されていると考え、インドネシアは4となる。

以上のように「位置的な近さ」を重要視して解いていけばいいわけだが、これ以外の要因として「宗主国と植民地」のつながりをも考慮に入れておかなければならない。例えばインドネシアについては3位にオランダが入っているが、これなどはまさに旧宗主国。かつての支配関係が現在も影響を及ぼしているということだろうか、昔の縁は今でも強いのだ。

この旧宗主国からの供与額の多さをキーワードとすれば他の国々も特定できる。1はスペインが1位であるので、旧スペイン領パナマ(パナマが含まれる中央アメリカの広い範囲はかつてスペインの植民地支配下にあった)。2はイギリスが入っているのでナイジェリア。3はベルギーが上位にランクインしており、コンゴ民主。4は前述のようにインドネシアとオランダとの関係。

パナマはともかくとしてコンゴ民主やナイジェリア、インドネシアはそれぞれ旧ベルギー領、旧イギリス領、旧オランダ領がキーワードとしてしばしば問われる国であり、作問者もそのことを十分に意識して取り上げているのは明らか。意味なくマイナーな国を選んでいるのではないということ。

[関連問題] ОDAの目的については、01B本第4問問5で出題されている。その国のためにならないことはどれだろう?という視点で考えられば、解答できると思う。

さらに01B本第4問問6参照。援助する側から見た問題で、本問とは逆の立場と言えよう。ただし問題の解法としては全く同じで、位置的な近さや植民地・宗主国の関係(この問題の場合はさらにユダヤについての知識も求められているが)さえわかれば十分に正解に達することができると思う。

地理Aではあるが、97A追第3問問2に今回と似た形式の問題がある。ここで話題にされているのは、アルジェリア、エジプト、パプアニューギニア、フィリピンの4か国で、これまた濃いメンツがそろっている(笑)。位置的な近さや植民地関係(とくにアルジェリアの旧フランス領というキャラクターは非常に出題率が高い)で解いていけばいいのだが、そうするとエジプトの判定が実は手強かったりする(涙)。ちなみにこの問題には「受取額」も表中に示されているのだが、それはあまり参考にならないかな。

さらに同じく問3ではОDAの意味が問われている。重要。「日本のОDAを分野別にみると、道路や港湾の建設などの経済基盤の整備よりも、教育や保健医療などの社会的分野への支出額の方が大きい」とあるが、正しいか否か。

[対策・今後の学習] 問題そのものは植民地について知っていれば解けるものなのでさほど難しくはない。東南アジアやアフリカの主な国については、植民地時代の宗主国についてまとめておくべきだろう。

とはいえ、ОDAの意味についてはやはり知っておかないといけないと思う。「政府」「開発」「援助」なのである。政府が行う公式のもので、例えばNGО(非政府組織)の行う活動とは意味が違う。

また「開発」ということで基本的にはインフラ(社会基盤)整備が目的。道路や港湾などを整備し、その国の発展に役立てる。というか、とくにわが国の場合には、自国企業の工場が進出しやすいように道路や港湾を整備することが重要となってくる。日本にとって重要のОDA供与国として中国があるが、インフラを整備し工場を進出させるというしくみがそこに見えるようだ。インドネシアをはじめとするアジア近隣諸国への援助が多いのもそれが理由の一つ。「青年海外協力隊」のような活動とは意味合いが異なってくる。

「援助」であることも重要。本来ならば相手国に対し、利害を考えず援助することが本来の目的であろう。しかしわが国のアジアへの供与を見ればわかるようにそこに明らかに「下心」がある。とくに日本のОDAは「ヒモ付き援助」と呼ばれ、相手国の利益よりも日本の利益のために(先にも述べたが日本の工場を進出させるために基盤作り。さらにはその工事を請け負うのも日系企業であるため、結局建設費用などはそのまま日系企業の収入となってしまう)資金が費やされるなど、非常に大きな額を援助しているわりには、国際社会における評判は低い。

 

問7 [評価] 地理Bの問題としては特殊。難しいと思う。旧課程時代や地理Aにおいては、決して見かけない種類の問題ではないが、地理Bではキツイなあ。どうなんかな、みんな?できたのかなぁ~???

[解法] この中で最もおなじみなのはマレーシア。ブミプトラ政策による先住民マレー系の優遇などによって、国教(国の宗教)がイスラム教とされているのは有名な話。しかし国民のそれぞれ3割と1割を中国とインドからの移民の子孫が占めており、もちろん彼らは先祖代々の宗教を生活の基盤としている。このことからシをマレーシアと判定してみよう。「西アジア起源の宗教」というのはイスラム教のことだろう(もっともユダヤ教やキリスト教も西アジア起源ではあるのだけれども)。「外国からの移民」というのは中国やインドからやって来た人々のこと。彼らの多くが、イギリス人によって経営されていた天然ゴム園や鉱山の労働力として流入したことを考えれば、「植民地期以降に活発化」したのも納得できる話。「複合社会」も多民族国家マレーシアのキーワードである。

さらにスについて。「ヨーロッパからの移民の子孫、またはそれらの人々と先住民との混血」という部分から、スペインやポルトガルによって植民地支配されていたラテンアメリカ地域を思い浮かべるのは難しくないだろう。ベネズエラ特有の民族構成を考える必要はない。この国がラテンアメリカの構成国の一つであり、民族的にもヨーロッパからの移民や先住民との混血などからなるこの大陸で一般的に見られるパターンだと想像できればそれでいい。「宗教」はカトリックだろう。スペインやポルトガルの植民地はほぼ例外なくカトリック化されている。

残ったサがエチオピアである。これは難しいな。消去法で行きましょう。

[関連問題] 最近出題された宗教に関する問題をピックアップしてみる。

04B本第3問問3参照。おおまかに「北部ヨーロッパ=ゲルマン=プロテスタント、南部ヨーロッパ=ラテン=カトリック、東部ヨーロッパ=スラブ=東方正教」であることがわかれば解答できる。

03B本第3問問6参照。スリランカの民族構成と宗教。これは難問でしょう。とくにいらないと思う。

03A本第2問問3参照。例えばポーランド。スラブ民族でもポーランドやチェコなど西スラブの諸民族はカトリック教徒。地理Aだけにやや特殊な知識が問われている。

03A本第2問問4参照。これはまさに「ラテン=カトリック」。

03A本第3問問1参照。東南アジア各国の宗教は要チェック。

03A本第3問問1参照。3つの宗教の建造物について。モスクはかなり特徴的。

02B本第3問問4参照。南アジア各国の宗教について。写真も興味深い。

02B本第4問問4参照。ヒンドゥー教は多産を奨励する。

02B追第3問問3参照。エルサレム(イスラエル)を聖地とする3つの宗教とは?

02A本第2問問1参照。南アジア各国の宗教に相違があるということ。

02A本第3問問4参照。選択肢2;イスラム教の範囲は広く、決してアラブ民族の範囲にとどまっていない。選択肢3・4;ラテンアメリカはカトリック、アングロアメリカはプロテスタント。

02A追第1問問6参照。イスラム教の範囲。

このように並べてみると、いろいろなことが分かるのではないか。例えば、地理Aでは重視されている宗教に関する問題が、地理Bではさほどでもない。キリスト教については、正教・旧教・信教がそれぞれどこで信仰されているのか知らないといけない。南アジアや東南アジアにおいては国別に信仰されている宗教を整理するべき、などなど。

とはいえ、地理Bにおいてはさほど難しい問題が出題されているわけでもなく、宗教を知らなくては解けない問題も例年せいぜい1問程度であるため、思い切ってカットしてしまってもいい分野ではある。

[対策・今後の学習] 苦手な人は諦めてしまっていいと思うよ(笑)。

まあ、とりあえず東南アジアと南アジアの宗教を。

(東南アジア)

フィリピン・東ティモール;キリスト教カトリック

ベトナム・カンボジア・ラオス・ミャンマー・タイ;イスラム教

シンガポール;仏教・儒教・道教(中国の伝統宗教)など

マレーシア・ブルネイ・インドネシア;イスラム教

(南アジア)

インド・ネパール;ヒンドゥー教

バングラデシュ・パキスタン;イスラム教

スリランカ;仏教

これがおおまかなもの。これに加え、マレーシアのような多民族国家ならば仏教徒やヒンドゥー教徒も多く、スリランカでは北部のタミル人がヒンドゥー教を信仰しているなど、やや特殊な事例もある。

さらに最後になったけれど、一応エチオピアについてもコメントを。

この国にキリスト教が伝来したのは非常に古く、ヨーロッパに伝播するより前。伝統的なキリスト教が保存されているとも言えるわけだが、褐色の肌のマリアなど、もちろんエチオピア風に改変された部分も多い。サの文章に注目。「ヨーロッパで広く信仰されているある宗教」というのはキリスト教のこと。「一宗派」というのは、正教でも旧教でも新教でもない、エチオピア独特にアレンジされたキリスト教であることを示している(注)。

エチオピアの高原部は外界から隔絶された世界であり、古代のキリスト教が独自の進化を遂げるに適した環境とも言えたのに対して、紅海に面する国土の西部では、頻繁に行き来するアラブ商人たちなどによってイスラム化が進められ、むしろイスラム教徒が過半を占める地域となった。サの文章では「国の縁辺部」で「西アジア起源の宗教」が支配的であると述べられている。

このことによりエチオピアは国内に宗教的な対立を抱えていたのだが、こういった宗教問題は国家の分離独立にまで発展することがある。紅海に面するイスラム地域はエチオピアから分離し、「エリトリア」として現在のところアフリカで最も新しい独立国として彼自身の道を歩み始めた。

(注)ちなみに、ヨーロッパのキリスト教徒たちからすれば異質に思えるエチオピアにおけるキリスト教を、コプト教とも言うので興味のある人は知っておくといいだろう。