2019年地理B本試験[第3問]解説

2019年地理B本試験第3問                                     

 

都市と村落、生活文化に関する大問。最近のセンターでとくに強調されるようになったジャンル。問1と問5は考察問題として解けるかな。問6は簡単。問2は過去に似たような問題が出題されているが、今回はクアラルンプールを特定するのが厳しいかな。問3でも同じく東南アジアのヤンゴンが登場していてビックリ。東南アジアは国の数も限られているので、首都ぐらいは知っておいた方がいいかもね。問5は宗教だけど、これぐらいは何とかクリアして欲しいな。1問ロスで乗り切ればベスト。

 

<2019年地理B本試験第3問問1>

 

[インプレッション]「大学入試センター」のサイトからこの問題をダウンロードしているので、イの写真がわからないんですよ(著作権の関係ですね)。ただ、それでも解答は可能に思いますので、やってみます。パリの市街地はセンターによく登場するので、本問も意外な感じはしませんね。写真から都市内部の街区の様子を判定する問題はよく出ていますので、変わった問題というほどでもないと思います。

 

[解法]パリ市内の景観について写真を用いた問題。とはいえ、各写真の下に説明する文章が付されているのでそちらが大きな手がかりになる。

図1からACの各地点の特徴をみていこう。

Bがわかりやすいような気がするな。「主な鉄道」が交差していて、大きな鉄道ターミナル駅になっていることがわかる。東京でいえば新宿みたいな感じかな。東京同様にパリも巨大な都市圏を有する都市であり、都心へ向かって通勤する人々が利用する鉄道網が発達している。Bは交通の結節点として成立し、そして新宿などのように都市化が進んだ地点と考える。

されにCはどうだろうか?「河川」に沿っているようだ。環状の高速道路に囲まれており、ここがパリ市街地の中心なんじゃないか。Bほどではないが、「他の主な道路」の密度もそれなりに高い。

一方、Aは道路密度も低く、町外れっていう感じがするね。Cが都心、Bが都心へ通じる鉄道の結節点と考えれば、Bは郊外とみていいと思う。

これを踏まえて写真を判定しよう。アは「現代的な新都心」、イは「近年開発された住宅地区」、ウは「旧市街」。

おそらくCがウの旧市街なんじゃないかな。パリの都心に近く、歴史的な建造物や街並みが残されているはず。多くの観光客を集めているだろう。さらにBがアではないか。鉄道のターミナルであり、近代的な新都心地区となっているにふさわしい。

そしてAがイである。都心から離れており「郊外」と考えれば「住宅地区」とみて間違いないだろう。比較的新しい時期に開発されたことも納得だろう。パリの場合はこうした郊外に、一般の住宅地以外に、移民の集住地区も形成されている。

 

[最重要問題リンク]パリはよく登場しますね。主なものを挙げておきます。

 

(1998年地理B追試験第3問問1)

次の写真1(省略)は、パリの市街地を示したものである。これについて説明した下の文①〜④のうちから、誤っているものを一つ選べ。

 

① セーヌ川が市街地を貫くように流れ、その中ほどにはパリ発祥の地といわれる(シテ島)が見える。

② 市街地の西部には鉄道の一大ターミナル駅があり、ここがパリのあらゆる交通の中心になっていることがわかる。

③ もともと囲郭都市であったことを示す城郭(城壁)の跡が、直径約10kmの環状の帯となって見られる。

④ いくつかの地区では、広場を中心に、そこから放射状に伸びる道路網が計画的に作られているようすが見られる。

 

写真がなくて申し訳ないですが、正解は②なのです。写真が収めている範囲は、本問よりはるかに小さいエリアで、Cを中心とする環状道路がなんとか含まれる程度。だからBは入っていないんですね。それでも確かに写真にターミナル駅のようなものは見えるのですが、しかしさすがにここが「あらゆる」とは言えないでしょう。パリの市街地は雑然としていて、各所に交通の結節点となる大きな駅が分散しているのです。東京でも、新宿、品川、上野、池袋など多くのターミナル駅がありますね。

残った3つの選択肢は全て正文です。パリの市街地を貫く河川、セーヌ川は本問の図でも描かれていますね。Cはセーヌ川に沿っています。そしてCのすぐ西に、川中島(中洲)があるのがわかるでしょうか。これがシテ島。ここに最初に戦争に備えた砦(とりで)がつくられ、それがパリの原型となっています。

③は、まさにCの周囲の高速道路です。かつてここに壁があったんですね。壁を取り壊して、跡地に高速道路が建設されています。

④はどうなんでしょうね。写真ではよく分かるのですが、本問の図ではちょっとわかりにくいかな。パリにはいくつか凱旋門があるのですが、それぞれが広場の中心に位置し、そこから放射状に周囲に向かって道路が伸びています。最も有名なエトワール凱旋門は、図1ではCの北西側の鉄道や道路が混み入っている地点にあります。

 

(2007年地理B追試験第3問問1)

パリと東京の都市圏における人口分布の様子が比較され、考察問題として出題されました。東京の方がより規模が大きな都市圏となっています。

 

(2004年地理B追試験第3問問3)

より直接的にパリが問われた問題も紹介しておきましょう。

 

パリについて述べた文として下線部が適当でないものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。

 

① 川中島を中心に古い歴史を誇る市街地が発達しており、多くの観光客が訪れる。

② 北アフリカやインドシナ半島など、旧フランス植民地からの移住者が集中して居住する地区がみられる

③ 郊外にニュータウンが建設されており、多くの住民が鉄道などによってパリの中心部に通勤している。

④ 都市再開発事業によって巨大な副都心が形成され、そこに中央官庁と主要企業の本社の大部分が移転した

 

正解(誤り)は④です。さすがに副都心に管理中枢部門の「大部分」は移転しないでしょう。あくまで副都心は都心の機能を一部補うだけです。

逆に①〜③は正文です。①について。シテ島の川中島を中心に旧市街地が広がり、観光地として整備されています。本図のCを含むエリアですね。ルーブル美術館など有名

④について。旧市街地の再開発が制限された中で、パリ市内ではオフィスや商業施設などの用地不足が生じました。そのため、市街地の外側に新たに副都心が建設され、これが「ラデファンス」。本問の図1でBに該当します。高層ビルが林立し、行政機関やオフィスなどが集まっています(前述のように、あくまで「副」であるため、「大部分」というわけではありません)。

さらに②について。パリ郊外には移民の集住地区があります。無機質な団地が立ち並び、アラブ系やアフリカ系のみならず、アジア系や東欧系など多様な地域からの移民がそこで暮らしています。いわゆるスラムではないのですが、失業率は高く、治安はよくありません。もちろんパリ市街地に近いところにも移民街はありますが、このような郊外に移民地区がある例は珍しく、パリ特有のものと考えていいでしょう。それだけフランスは移民の流入が顕著にみられる国なのです。

 

(2015年地理B本試験第5問問3)

世界の大都市に関する問題。パリに関するものだけピックアップしておきます。

 

⑤ パリでは、北アフリカ系の移民を含む低所得者層が郊外に集住する傾向がみられる。

 

これは正文です。普通ならば、「先進国の大都市のスラム=都心付近」なので、郊外に移民地区があるのはおかしいのですが、パリは例外です。むしろ都市計画の一環として低家賃の団地群がつくられ、そこに住む移民系の人々が多いのです。

例えば、サッカーファンならば、フランスW杯の決勝の地、スタッド・ド・フランスというスタジアムを聞いたことがあると思うのですが、これは本問の図でいえば、Cから真北へ線を伸ばし、Aから真東に線を伸ばし、両者が交わった付近にあるのですが、このエリアをサンドニと言います。アフリカからやってきた移民が多い地域であり、実はパリ近郊で最も治安の悪い地域とも言われています。

 

[今後の学習]問題そのものはパリについての知識がなくても解けたと思う。しかし、パリは本当によく取り上げられる都市であるので、周辺知識を固めておいた方がいいかなとも思う。以下に一覧にしたので、参考にして欲しい。

 

・パリ大都市圏には1000万人以上の人口が集まり、フランスはパリを中心とした中央集権国家である。

・パリの起源は、セーヌ川の川中島(中洲)であるシテ島につくられた砦にある。また古い時代は市街地の周囲が城壁で囲まれていた(囲郭都市)。

・パリの街路は複雑。囲郭の後を利用した環状の道路網、凱旋門を中心とした放射状の街路。キャンベラやモスクワと同様に放射環状路型の街路を有する。

・パリ中心部の旧市街地は歴史地区であり、観光地としての整備が進む。一方で、過度の再開発が制限されており、例えば景観を損なう高層ビルの建設は認められない。

・パリの郊外に副都心のラデファンス地区に副都心がつくられた。旧市街地と鉄道や道路で結ばれる。オフィスや商業施設、マンションなど。

・旧市街地に隣接した地域にも特定の民族による集住地区があるが(アラブ人街、ユダヤ人街など)、郊外にも移民の集住地区がみられる。低家賃の団地が並び、治安は悪い。

 

<2019年地理B本試験第3問問2>

 

[インプレッション]何と!過去問とほぼ同じ問題なんじゃないか?クアラルンプールが問われているのがちょっと難しいけれど、過去問研究っていうか、過去問をそのまま覚えてしまえってことか。

 

[解法]過去にもほぼ同じ形で出題されている。クアラルンプールを特定するのがちょっと難しいかも知れないが、他の3つがメジャーな都市なので消去法でいけるんじゃないかな。

 

本問については先に類題を上げてしまおう。

 

(2011年地理B本試験第3問問3)

次の表1は、いくつかの都市について、売上高が世界の上位500位以内の企業本社数、国の総人口に占める市域人口の割合を示したものであり、①〜④は、シャンハイ(上海)、ソウル、ニューヨーク、プラハのいずれかである。ソウルに該当するものを、表1中の①〜④のうちから一つ選べ。

 

表1

 

売上高が世界の上位500位以内の企業本社数

国の総人口に占める市域人口の割合(%)

20

2.9

13

21.0

2

1.1

0

11.5

統計年次は、企業本社数が2008年、市域人口の割合が2000年または2001年。

中国の総人口には、台湾、ホンコン、マカオを含まない。

FORTUNEなどにより作成。

 

答えは②。ソウルは巨大都市であり、人口は1000万人。人口が1億人に達しない国で、これだけの巨大人口を誇る都市が存在するのは極めて珍しい。ソウル以外ではイスタンブール(トルコ)とブエノスアイレス(アルゼンチン)だけ。韓国は総人口5000万人。ソウルには20%の人口が集中。

①はニューヨーク。世界経済の中心地であり、大企業が多く集中。③がシャンハイ。こちらも巨大都市で人口1000万人を超えるが、中国は総人口が多い(14億人)ため、国の総人口に占める割合は低い。④がプラハ。チェコの首都。小国である。

 

(2012年地理B本試験第3問問1)

次の表1は、いくつかの国にうちで、人口規模の上位4都市における人口を示したものであり、首都を★で表している。表1中の①〜④は、イタリア、オーストラリア、トルコ、メキシコのいずれかである。トルコに該当するものを。表1中の①〜④のうちから一つ選べ。

 

表1

(単位:万人)

 

1位

1820.5

1082.3

433.6

262.7

2位

383.4

395.3

380.6

130.6

3位

347.3

258.4

185.8

98.0

4位

188.8

159.7

155.5

90.1

統計年次は、イタリア、オーストラリア、トルコが2007年、メキシコが2005年、メキシコが2006年。

『世界人口年鑑』により作成。

 

正解は②。イスタンブールは巨大都市で人口1000万人超だが、首都ではない(首都はアンカラ)。

①はメキシコ。メキシコは巨大都市にて、首都。③はオーストラリア。総人口は2500万人だが、シドニーとメルボルンの2大都市に人口が集中する一方、首都キャンベラは人口数十万人程度の小都市。④はイタリア。ヨーロッパでは「人口最大年=首都」。ローマは人口300万人程度。

 

さて、これら2つの問題内容をマスターしておけば、本問の解答は容易だろう。

 

「国の総人口に占める人口割合」が20%近くに達する②が「ソウル」。同じく割合が極めて低い①と④がシャンハイとキャンベラ(巨大企業が多い①がシャンハイ)。残った③がクアラルンプール。

 

[難易度]★★★

 

[最重要問題リンク]すでに2つ挙げているが、ここではクアラルンプールが登場した例を挙げておこう。2006年地理B本試験第4問問5の文章正誤問題にこのような選択肢がある。

 

④ マレーシアのクアラルンプール近郊では、情報通信産業を誘致するために、サイバージャヤという計画都市が建設されている。

 

正確にはクアラルンプールが直接問われたわけではないが、雰囲気は掴めてもらえたと思う。クアラルンプールはマレーシアの都市であり、マレーシアでは先端産業の発展もみられるということ。

 

[今後の学習]過去問にそのままの問題があったとはいえ、クアラルンプールが問われたことは問題の難易度を上げている。実は難しかったんじゃないか。とはいえ、過去問の重要性は再認識できたわけだし、非常に興味深い問題といえる。

消去法で解くにしても、オーストラリアとキャンベラの人口規模が分かっていないと③と④とで迷うわけで(①がシャンハイであることは巨大企業の本社数から判定できると思う)、やっぱり簡単ではない。

キャンベラ同様に出題されそうな都市を以下に挙げておくので参考にしてほしい。

 

首都名

人口

国の人口

国の人口に占める割合

特徴

アンカラ(トルコ)

500万

8000万

6%

・・・

オタワ

(カナダ)

100万

3500万

3%

・・・

ワシントン
(アメリカ合衆国)

70万

3億3千万

0.2%

計画的に建設(放射直行路型街路)

ブラジリア

(ブラジル)

300万

2億2千万

1%

計画的に建設(翼を広げた鳥の形の市街地)

キャンベラ

(オーストラリア)

40万

2500万

2%

計画的に建設(放射環状路型街路)

 

計画的に建設された政治都市ではないが、キャンベラと規模が近い都市にカナダのオタワがあるので、知っておくといい。オタワは河川沿いに自然発生した集落を起源とした都市であるが、かつてのイギリス領とフランス領の境界に位置したため、植民地政府が置かれた歴史がある。

 

また、本年はヤンゴンも出題されているので、東南アジア各国の首都名も覚えておいていいかも。

 

フィリピン・マニラ(1000万人)、ベトナム・ハノイ(国内人口最大都市はホーチミン)、ラオス(ビエンチャン)、カンボジア(プノンペン)、ミャンマー・ネーピドー(計画都市。旧首都は人口最大都市でもあるヤンゴン)、タイ・バンコク、マレーシア・クアラルンプール、シンガポール(シンガポール)、ブルネイ・バンダルスリブガワン、インドネシア・ジャカルタ(1000万人)

 

<2019年地理B本試験第3問問3>

 

[インプレッション]うわー、都市名だ!こりゃキツい。しかもヤンゴンっていきなり言われても???そもそもこの都市がミャンマーにあるっていうことすら知らないよね。捨て問か?それとも消去法で考えれば意外とスムーズに解答に達するのか?とりあえずやってみるか〜。

 

[解法]河川と都市との関係に関する問題はしばしば登場している。それだけ都市の成立には河川の存在が重要ってことだね。ただ、本問の厄介なところは、わりとマイナーに偏った都市が登場しているっていうこと。せめて国名を表示しておいてくれたら何とかなりそうなんだが。

都市について全くわからないっていう人は本問はスルーした方が良さそうですな。捨て問っちゅうことです。

さて、ヤンゴンを当てる問題。そもそもヤンゴンってどこなんだ?他の都市なら何とか聞いたことがある?では、そちらを先に解いて、ヤンゴンは消去法で行きましょうか。

まず、この都市は絶対に知っておいて欲しいっていうのが「ヴァラナシ」。これ、宗教都市の代表例。インドのガンジス川に沿い、ヒンドゥー教の聖地となっている。「宗教的に神聖とされる河川」こそまさにガンジス川。④がヴァラナシ。「沐浴」もヒンドゥー教の儀礼の一つ。

さらにチョンチン。漢字で書かれているし、これが中国の都市であることは想像できるんじゃないかな。中国には中央直轄市が4つあり、他の3つはよく出題されているので、この機会にチョンチンも覚えてしまおう。中央直轄市は、市域人口最大のシャンハイ、首都のペキン、そのペキンに近接する外港都市のテンチン、そしてこのチョンチン。長江を遡ったところに「スーチョワン盆地」という巨大な盆地があり、そこに位置するのがチョンチン。かつては、スーチョワン盆地一帯を含むスーチョワン省の一部だったが現在は分離し、独立した市となっている。市とは言っても、面積は九州全域ほどあり、名目上、市の人口は3000万人ではあるが、市域人口(実際の市街地)はシャンハイなどには及ばない。

さて、残る選択肢の中で中国のキーワードをどこかにないか?そう、「ダム」がそうなのだ。環境に与える負荷が大きすぎる(魚の遡上や土砂の流下を妨げる)ため、日本では1950年代を最後に巨大ダムの建設は行われていない。21世記になり巨大ダムが建設された国は中国だけと思っていい。長江沿いに建設されたサンシャダムがこれに該当し、治水(洪水を防ぐ)や発電など多目的に利用されている。このことから①がチョンチンである。なお、長江は可航河川としても重要。ダムが建設されたが、その横に船舶の通行路も確保されているそうだ。なお、「河口から2500km」という規模に注目してもいい。日本や中国を通過する北緯30°の緯線の一周が34000km。その10分の1に近い距離なのだから、極めてスケールが大きい。

そしてリヴァプール。これ、イギリスの都市なんだが、分かるかな?サッカーが好きな子なら聞いたことがある都市名だと思うし、ザ・ビートルズの結成された場所としても有名。イギリスであることさえ分かれば、「奴隷貿易」がキーワードとなる。西アフリカのギニア湾岸。奴隷海岸とよばれる地域を植民地としていたのはイギリス。現在のナイジェリアだね。「三角貿易」っていうのがよくわからないけれど(すいません、歴史に弱くて・苦笑)、奴隷を扱うような船舶もイギリスにはあったんだろうね。③がリヴァプール。リヴァプールがイギリス本島の中央に近い西岸に位置する都市なのだが、一帯をランカシャー地方といい、中心都市はマンチェスター(それこそサッカーで有名な都市だね)。インドから輸送した綿花をリヴァプールの港から内陸のマンチェスターに運び、工場での綿織物の大量生産が始まった(工業手工業=マニュファクチュア)。これが産業革命。「産業革命発祥の地」としてランカシャー地方そしてマンチェスターは重要。

以上より、残った②がヤンゴンに該当。かつてミャンマーの首都だったが、現在は内陸部の小都市ネーピドーに首都が移転している。とは言え、国内人口最大都市としてミャンマーの中心的な存在であることに変わりはなく、産業の中心となっている。エーヤワディー川の三角州に面し、付近では米作がさかん。木材は熱帯の高級材であるチークの取引がなされる。ところで「工業開発や年整備により著しく発展している」とあるけれど、これはさすがに言い過ぎなような気もするなぁ(笑)。とはいえ、パゴダ(仏塔)など仏教関連の観光施設は多く、少なくとも観光コースについてはインフラ整備も徹底されているので、物価が安い(1人当たりGNIは東南アジア最低の2000$/人程度)こともあり、旅行には適しているかも。

 

[最重要問題リンク]1998年地理B本試験第3問問4でヴァラナシが説明された例を紹介しておこう。「聖なる川の水で象や大きなこぶのある牛が水を浴び、多くの人々が神聖な沐浴を敬虔につとめていた」。大きなこぶのある牛は水牛のことだろう。やはり「聖なる川」であるガンジス川や「沐浴」がキーワードになっているね。

 

[難易度]★★★★

 

[今後の学習]難しかったと思う。都市名はやみくもに覚えても仕方ないが、登場したものについては確実に知っておくべきなので、今回もヤンゴンは必ずチェックしておこう。東南アジアではあるが、気候的には南アジアの一部と考えるべきで、インド洋からのモンスーンによって夏の降水量が大変多くなる反面、冬は全く降水がみられないという極端な雨季と乾季がみられるパターン。樹木も、乾季に葉を落とす落葉広葉樹林(これを雨緑林という)が中心で、熱帯雨林が常緑硬葉樹であるのとは対照的。

 

<2019年地理B本試験第3問問4>

 

[インプレッション]おっと、問題文をしっかり読まないと間違えてしまうぞ。①から④は、いずれも「かつての宗主国と植民地」という関係は正しい。その中で「信仰する人々が最も多い宗教が共通する」組み合わせが一つだけ存在するということ。植民地そのものより宗教に関する問題っていうわけだ。ただ、その宗教の伝播についてもやはり植民地政策と大きく結びつくものであり、総合的な理解が必要は箇所ともなっている。

 

[解法]いずれの選択肢も、宗主国とそれが支配した植民地の関係になっている。宗主国が「親」、植民地が「子」。親の影響を受けて宗教が決定した子はどこかっていう問題。

ここで日本を例にとって考えてみようか。銀鉱の産出が際立って多かった戦国時代の日本。当時、銀鉱は絹と並んで日本の重要な輸出品目だった。

その銀鉱を狙ってやってきたのはスペイン。ヨーロッパ最強の艦隊を有し(無敵艦隊)、世界各地へとその覇権を伸ばしていった。この際に彼らが利用したのが宗教。カトリックを広める組織としてイエズス会を結成し、宣教師を世界中に送り、スペインの影響力を高めていった。イエズス会については宗教組織というより、軍隊とみなすべきだという学説もある(クリスチャンのみんなは気を悪くしないでください。当時のキリスト教と現在のものでは相違があるのです。ご了解くださいませ)。

なるほど、日本にもイエズス会からフランシスコ・ザビエルが送られ、キリスト教が紹介された。多くの宣教師が派遣され、各地でキリスト教が広まっていった。

しかし、これは将来的なスペインの侵略の準備段階だったことは間違いない。キリスト教を伝え、スペインの理解者を増やし、やがて軍隊を送り、一気に制圧する。スペインが狙ったのは豊富な銀鉱だったのだ。

ただし、この目論見は露と消える。織田信長の有する軍隊は当時世界最強レベルであり、スペインが日本を侵略するとすれば、いくらキリスト教の布教があったとしても、本格的な軍隊の出動が必要であり、それであっても大きな犠牲を払うものである。豊臣秀吉の時代には禁教令が発布され、スペイン人宣教師のみならず日本人のクリスチャンも迫害された。そして徳川時代には鎖国によって、カトリックの布教は不可能となった(プロテスタントのオランダは交易を認められていた)。これにより、日本はスペインによる植民地化を免れたのだ。

さて、そういった観点からして、スペイン(それとポルトガルも)は植民地支配のために宗教を利用したとは言えないだろうか。仏教が農業の宗教、イスラム教が商業の宗教ならば、キリスト教は「武力の宗教」である。侵略の道具としてカトリックの宣教師が送られ、キリスト教に「洗脳」することで、以後のスペインによる支配を容易にした。

スペイン(およびポルトガル)の植民地はことごとくカトリック化されていったのだが、それは彼らの植民地支配の方法に由来するものなのだ。スペインはカトリックであり、そしてアルゼンチンもカトリックである。正解は③。

それに対し、スペインとポルトガル以外の国々は宗教については寛容。というか、そもそも宗教を植民地支配の道具にするまでもなく。近代的な軍隊を送り込み、直接的な武力によっての支配が可能となった。イタリアとフランスはともにカトリックの国であるが(スペインと同じくラテン民族の国である、ラテンにカトリックが多いことはぜひ知っておこう)、北アフリカのリビアはイスラム教であり、インドシナ半島のベトナムは仏教が主である。アラブ民族による国家であるリビアは、アラブ民族に信者が多いイスラム教を信仰。インドシナ半島の米作地域に位置するベトナムは、豊かな自然のもと、仏教文化が栄えた。

さらにオランダはプロテスタントであり、インドネシアはイスラム教。先ほども述べたが、鎖国をしていた江戸時代に日本との交易を許されたのいはオランダ。小国であるオランダは、武力は拙いものの、商業的センスにはあふれ、貿易によって国が成り立っていた(だから、オランダ人が金銭にガメつくなって、ヨーロッパでは嫌われているんだそうな)。宗教を伝えることに全く興味がなく、インドネシアも彼らが植民地になる以前から信仰したイスラム教がそのまま残された。

インドネシアがイスラム教地域となったのは、やはり商業の影響。インドネシア東部の島々は「香料諸島」と呼ばれる。肉の臭みを取るための香料が多く得られ、肉食を主とするアラブ人やヨーロッパ人にとって非常に重用された。これを取引するアラブ商人が訪れるごとに。インドネシアはイスラム化されていった。この「香料の道」は「海のシルクロード」とも呼ばれ、バングラデシュやマレーシアなどインドネシア以外にもイスラム教徒が多数を占める国がこれに沿う。前述したように、インドネシアがオランダ領となった時も、そのままイスラム教が保存された。

 

[難易度]★★★

 

[最重要問題リンク]リビアが登場しているね。ちょっと昔の問題なので、丸ごと引用して紹介しよう。1998年地理A追試験第1問問7。

 

宗教が発祥地とは異なる環境を持つ地域に伝えられ、そこに定着した例として適当でないものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。

 

① インドネシアのイスラム教

② フィリピンのキリスト教

③ ブラジルのキリスト教

④ リビアのイスラム教

 

これ、結構おもしろいでしょ?「環境」って要するに「湿潤」か「乾燥」かっていうこと。西アジアに起源を有するユダヤ教、キリスト教、イスラム教が乾燥地域の宗教であり、インド発祥の仏教とヒンドゥー教が湿潤地域の宗教。

①は「湿潤」のインドネシアで「乾燥」のイスラム教。

②も「湿潤」のフィリピンで「乾燥」のキリスト教。

③も同様に「湿潤」のブラジルで「乾燥」のキリスト教。

この3つはいずれも環境が異なった地域で信仰される例となっている。

正解は④で、「乾燥」のリビアで「乾燥」のイスラム教。これこそ「宗教が発祥地とは異なる環境」について「適当でないもの」になるね。

そもそも湿潤地域の宗教が乾燥地域に広がることはあり得ないので(仏教もヒンドゥー教も豊かな自然における農業が基盤となっている)、取り上げられている宗教は全て「乾燥」になっていることにも注意。

フィリピンは旧スペイン領であり、スペインの植民地化の過程でカトリック化された。ブラジルは旧ポルトガル領で、同じく植民地になった影響である。

インドネシアは、「海のシルクロード」沿いにやってきたアラブ商人によってイスラム教が伝えられた。イスラム教は「商業の宗教」である。

 

[今後の学習]問題文が分かりにくかったと思う。問われている内容は簡単(南米がカトリックであるということ)なので、本問をミスした人は問題文の読解が足りなかったのだと思う。簡単そうに見える問題だが、慎重に当たろう。

 

<2019年地理B本試験第3問問5>

 

[インプレッション]地形図問題の一種ではあるけれど、思考問題としてその場で考えれば十分に解答できたと思う。

 

[解法]地形図を用いた問題。それぞれの図に付された文章の方が重要であるが、地形図の中にもヒントがある。

カ〜クについて時代別に並べる。カでは「中央分離帯のある幅の広い道路」はまさに自動車の普及に伴ってつくられたもの。「大規模な工場」も併せて、これは新しい時期につくられた街並みだろう。奈良に大規模な工場なんてあるのかな?(笑)

さらにキ。「直交」なんてキーワードをみると新しい時代のような気もするが、よく見ると違うよね。図中には「九条町」という地名がみられる。これ、「条里」集落に起源をもつ集落によくある名前だね。なるほど、奈良時代につくられた条里集落は、計画的なものであるため、周囲に四角形の耕地を持ち、そのため道路は直交している。

そしてクだが、「堀」や「丁字路」は江戸時代の城を中心とした城下町に特有のもの。堀はわかるよね。丁字路は「遠見遮断」と言って、見通しを悪くすることによって防御機能が高められている。敵が攻めてきた時に、こちら側の軍勢を隠しておくことが容易になるからね。また城下町には武家屋敷が集まるエリア、町人が集まるエリア、そして寺社が集まるエリアなどが明確に分かれていることが特徴的。「城跡」の地図記号が「柳沢人社」の「柳」の文字のすぐ上にある。「城見町」という地名もあるね。寺社を城の周囲に集めることで、敵が攻めにくいという効果もある(神仏のたたりは恐ろしいのだ!)。クは江戸時代でしょう。

以上より、キ→ク→カの順となります。

 

[難易度]★★

 

[最重要問題リンク]奈良盆地における市街地の景観が出題されたのが、2010年地理B追試験第2問問5。ただし、こちらの問題では条里集落は登場していない。とはいえ、図中にため池が多く示されているので、読み取ってみよう。

 

[今後の学習]条里集落を見抜くのがポイントだったかな。みんなが知っておくべき集落はいずれも計画的につくられたもので、集落に周囲に四角形の耕地をもつ。つまり直交する道路に囲まれているということ。

以下に要点だけまとめておくので、各自確認しておこう。

 

(計画的な集落)

 

時代

名称

形態

特徴的な地名

分布する地域など。

古代(奈良)

条里集落

集村(塊村)

九州から東北地方南部までの各地。特に奈良盆地。

近世(江戸)

新田集落

路村

散村

新田

新開

台地の上や扇状地の扇央などの乏水地

干拓地

近代(明治)

屯田兵村

散村

方角や数字を用いた道路名

北海道

(アメリカ合衆国中西部の開拓方式であるタウンシップ制を参考)

 

<2019年地理B本試験第3問問6>

 

[インプレッション]中学受験に出そうな問題だね。あ、中学受験ってことは小学生が勉強している範囲ってことね。これもまたセンター試験の一つのスタイルってことかな。

 

[解法]日本地理がテーマとなっているが、簡単に解けると思う。この手の問題は自分の住んでいる都道府県に注目するのが最もいいんだが、とりあえずここは分かりやすいところで北海道で考えてみようか。

サには北海道は点がないが、シでは全体的に分布。とくに多いのがスで、東部の知床半島にもいくつか点が打たれているのが特徴。北海道にとくに多いのは「国立公園の広報・展示施設」じゃないかな。自然があふれ、国立公園も多いはず(「知床半島」は世界遺産だけどね)。これで一つ決定。

さらに選択肢をみると「国宝(建造物)」というものがある。国宝となっている建造物といえば、やはり寺社仏閣だろう。奈良時代や平安時代に建造された建物が国宝に指定されていることが多いと思う。その点、北海道の歴史は新しく、国宝に該当するような建物はないんじゃないかな。やはり古い寺社仏閣が存在するのは京都や奈良だろう。五重塔など多そうだ。京都や奈良に点が集まるサが「国宝(建造物)」となる。

「公立の劇場・音楽堂」は消去法でシ。全国に散らばっているが、各自治体が運営するものだろう。県立劇場や県立音楽堂って感じかな。

 

[難易度]★★

 

[最重要問題リンク]これ、ちょっと思い当たる問題がないんやなぁ。最初にも言ったけど、中学受験の問題でありそう。

 

[今後の学習]まず日本全体の図が頭に入っているかどうか。中学地理の問題集をたくさん解いて、日本地理の問題を解く感覚を養おう。

あ、一応言っておくけど、「中学受験」と「中学地理」は違うからね。「中学受験」は小学生対象、「中学地理」はもちろん中学生。でも、問題そのものは「中学受験」の方が難しいから注意してね。小学生と言ってもただの小学生じゃないからね。有名私立中学を受けるような勉強熱心な子供たちだから、かなりハイレベルの学習内容になっているよ。例えば、本問に絡めていうならば、国立公園の場所と名前なんか全部覚えているぐらいだから!

もちろん君たちにはそこまでは要求しない、最低限、中学地理の内容だけは完璧にしておいて。それで本問はじめセンターに出てくる日本地理の問題はしっかりカバーできる。

知識量的には「中学受験>中学地理>センター地理」って感じかな。もちろん思考力が必要になるから、センター地理が一番簡単ってわけじゃないけれど、知識量というか暗記量で比べると、やっぱり中学受験が圧倒的に難しい。やっぱり小学生の暗記力は凄いよ。余裕があればチャレンジしてください。

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