2019年地理B本試験[第2問]解説

2019年地理B本試験第2問                          

 

資源と産業に関する大問。例年この第2問は統計が中心となり、非常に時やすい。問題を解く際はこの大問から取り掛かると気分よくスタートできるんじゃないかな。とくに今回は第1問の問1と問2が極めて難しい(全問中、最も難しい2問になっていると思うぞ)ので、それらは後回しにして第2問から解き始めるのが正しい。

今回も、問2と問3以外は全て統計問題で、しかも易問。問6の日本地理は苦手にしている人もいるかもしれないけれど、これぐらいは解きましょう(笑)。問2も必須知識であり、絶対に得点する。問3も考察問題であり、必ず解ける。この大問はぜひとも全問クリアで。

 

<2019年地理B本試験第2問問1>

 

[インプレッション]農産物統計そのまんまですね。統計が本当によく出題されている。統計を徹底的にマスターしておけばかなり高得点が狙えるっていうこと。難易度は低いけれど、だからこそ確実にゲットするべき問題。

 

[解法]4つの農産物の統計。国名ではなく、地域(大陸)別になっているが、さほど混乱はないんじゃないかな。それぞれ1990年と2016年の統計が示されているが、現在のもののみに注目し、過去は無視するのがこういった問題を解くセオリー。2016年の統計から読み解こう。

選択肢はオリーブ、オレンジ類、コーヒー、トウモロコシで、コーヒーを当てる。これは簡単なんじゃない?コーヒーの最大の生産国、それはブラジルだね。ブラジル高原南部にはテラローシャという土壌が分布し、コーヒー栽培に利用されている。

「南アメリカ」の割合が最も高い④をコーヒーとみていいだろう。考えすぎず、シンプルに解く。統計はそのまんま出題されるのです。

 

[難易度]★(簡単)

 

[最重要問題リンク]農産物統計に関する問題は多く出題されている。ここはあえてベトナムの変化に関する問題を紹介しよう。

 

2011年地理B追試験第2問問6は文章中の下線部のうち誤っているものを指摘する問題であるが、その文章の前半部がベトナムに関するものである。

 

ベトナムでは、写真カ(エビの養殖池の写真)のような①集約的なエビ養殖の拡大が1950年代からみられ、日本などにエビが輸出されている。写真キ(工場内で作業する人々の写真)のように現地で多くの人を雇用し、生産されたエビに下処理・加工を行う理由は、②製造にかかわる技能・知識をもった安価な労働力が多く存在するためである。

 

これ。①が誤りなのがわかるかな。ベトナムが経済成長を果たし外国への輸出産業に力を入れ始めたのは2000年代以降。1980年代後半がドイモイ政策(市場経済化)、1990年代にASEAN加盟、そして2000年代に経済成長を始めるという流れを考えよう。

そもそも1950年代は現在のベトナムが生まれる以前。ベトナムは1960年代のベトナム戦争によって現在の形である「ベトナム社会主義共和国」が生まれた。

なお、②の選択肢にも注目。2000年代のベトナムの様子。「安価な労働力」がもちろんポイント。スタートが遅れた国であるだけに、まだ1人当たりGNIが低いのだ(2000ドル/人)。決して高い技能や知識を持っているわけではないが、このような単純労働に関する「製造にかかわる技能・知識」は十分に有している。

 

[今後の学習]こうした問題は簡単に解いてしまった方がいいので「解法」での説明は最小限にとどめたが、せっかくなので、他の選択肢も含め、細かく見ていこうか。

まず④のコーヒーから。これ、南米が圧倒的なシェアを占めている点は1990年も2016年も変わらないけれど、アジアが異常に伸びてるのが面白いでしょ?これ、1990年っていう年号にもヒントがあって、ベトナムにおける急激なコーヒー栽培の拡大が背景にある。社会主義国であるベトナムは実質的な鎖国状態だった。国営企業による計画経済が中心であり、外国企業の進出はみられない。この状況が変わり始めたのが1980年代後半。ドイモイ政策による市場開放化が始められ、外資の導入もスタートした。1990年代にはASEANにも加盟し、周辺諸国との政治的および経済的な交流も活発化、十分にインフラ整備の進んだ2000年代になると日本やアメリカ合衆国(ベトナム戦争で対立した歴史があるにも関わらず!)からも工場が進出し、一気に工業化が進んだ。

それと同時に始められたのが、農産物の商業的な栽培。雨季と乾季の明瞭な気候であるので、それまでは一年一作で土地生産性が低かったが、灌漑施設の整備によって二期作が可能となり、南部のメコン川デルタを中心に米の生産が拡大。今や米はベトナムの主要輸出品目の一つである。エビの養殖もさかんになり、日本への輸出量が増えている。さらに力が入れられたのがコーヒー。栽培地を大きく広げ、現在はブラジルに次ぐ世界2位の生産国。ユーラシア大陸唯一のコーヒー栽培国である。輸出量も急増し、ブラジルに匹敵するほどになった。ベトナムにおいて市場開放が進んでいない1990年代と、世界的な工業国そして農産物輸出国になった2016年。両年次においてアジアのコーヒー生産が増加しているのは、まさにベトナムのおかげ。2010年代、現在進行形で発展を遂げている国、ネトナムなのだ。

①は北アメリカの割合が高いのでトウモロコシだろう。絶対量としてはこの間に世界全体での生産量が7億トンから10億トンに急増したトウモロコシであるが、生産地域の割合においては大きな変化はない。

②はヨーロッパが主でオリーブ。スペインやイタリアが主生産国(フランスではあまり栽培されていないので注意)。ヨーロッパの国がこうして統計の上位にくるのは珍しいと思うよ。

③はオレンジ類。南米やアジアなど温暖な地域での栽培が多い。アジアが生産を拡大しているのはインドや中国など。

 

<2019年地理B本試験第2問問2>

 

[インプレッション]あれ、またコーヒーだ。この大問はコーヒー推しなんですね。原産地をシンプルに問う問題。地名や都市名は問われないが、このように農業(農産物)に関する知識はダイレクトに尋ねられるわけですね。センター試験特有。

 

[解法]アラビカ種というのはよく知らないが、とりあえずコーヒーの原産地ということで答えてしまっていいと思う。もちろん「エチオピア」だね。東アフリカの高原地帯がコーヒーが自生していた地域。

 

[重要問題リンク]原産地がそのまま問われた例は実は珍しくない。

2009年地理B本試験第3問問1参照。小麦の原産地が西アジアであることが問われた。

 

[今後の学習]原産地は知っておかないと。以下に整理しておいたので、チェックしよう。

 

東アジア・南アジア・・・米・茶・大豆

東南アジア・・・サトウキビ

西アジア・・・小麦

東アフリカ・・・コーヒー

西アフリカ・・・油ヤシ

中南米・・・トウモロコシ・カカオ・天然ゴム・キャッサバ・ジャガイモ

 

新大陸とくに中南米原産のものが多い。これらは大航海時代以降にヨーロッパに伝わり、そこからさらにアジアなどに伝播していった。日本では江戸時代ごろまでトウモロコシやジャガイモは一般的ではなかったってことだね。

新大陸原産のものは他にも多く、トマトやラッカセイ、サツマイモ、カボチャ、タバコなど。トマトといえばイタリア料理で必須の食材だけど、実は16世紀以降に使われ始めたものなんだね。タバコも時代劇で江戸時代の町人がキセルを吸っているシーンがよくあるけれど、なるほど、戦国時代以前にはタバコは日本に伝わっていなかったのだ。

 

<2019年地理B本試験第2問問3>

 

[インプレッション]さらにコーヒー。でも今度は経済ネタかな。農産物の加工と流通に関する問題になっているね。誤文判定問題なので、明らかに誤っているものをあぶり出そう。

 

[解法]コーヒーをテーマとして農産物の加工と流通に関して問うた問題。今までのセンター地理ではちょっと見たことのない珍しい図が用いられているね。まずはこれを解釈しないと。

生産者とは農家のことだろうか。商人の手に渡り、輸出される。輸出先の国で加工され、商品として販売される。なるほど、決して複雑な図ではないね。解釈は容易。

では各選択肢を読み進めよう。下線部の正誤を問う問題。いかにも間違っていそうな文ってどれだろう?おっと。選択肢④が怪しいね。「比較の構造」が含まれている。「消費国」と「生産国」を入れ替えれば誤り選択肢を作りやすい。というわけで、まずはこの選択肢に注目しよう。

「世界的にな流通に長い歴史をもつコーヒーは、フードシステム(食料供給体系)を統括する拠点が消費国よりも生産国にある場合が多い。」とある。どうなんだろう?「フードシステムを統括する拠点」となるような大企業は、資本力の豊かな先進国に存在するのが当たり前なんじゃないかな。コーヒー会社ならネスカフェなんか有名だと思うし、日本でもUCCのようなコーヒーを扱うことに特色のある飲料メーカーはあるし、コカコーラやダイドーのような一般的な飲料メーカーも缶コーヒーなど扱っているよね。先進国はもちろん「生産国」ではなく「消費国」。この選択肢に関しては、両者が入れ違っているということになる。④が誤り。

他の選択肢も一応検討していこう。

①について。「アフリカのコーヒー輸出国」とはエチオピアなど。コーヒーの生産と輸出に国内経済が過度に依存するモノカルチャー経済であり、国債市場におけるコーヒー価格の変動が国家の経済に与える影響は大きい。これは正文でしぃう。

②について。「消費国での流通過程」なので、「加工業者」と「小売業者」との間の価格変動を見てみよう。ここで1.64ドルから26.40ドルに跳ね上がっている!利益を得ているのはここだね。消費国において大きく価格上昇がみられる。

③について。フェアトレードという言い方はよく知られていると思う。

 

その定義を厳密にしておこうか。教科書ではほとんど取り上げられていないので、主にネットに出典を求めている。

 

(1)(地理用語集/山川出版社)

フェアトレード(公正な貿易)

世界経済や流通システムのひずみによって生産物に対する正当な報酬が得られない人々や地域に対して、対等なパートナーシップによる公正な賃金を支払い、自立することを目指す貿易。

 

(2)(Wikipediaによる)

公正取引とは、発展途上国の原料や製品を適正な価格で継続的に購入することを通じ、立場の弱い途上国の生産者や労働者の生活改善と自立を目指す運動である。オルタナティブ・トレードとも言う。連帯経済の一翼を担う活動でもある。

 

(3)(ブリタニカ百科事典/コトバンクのサイトによる)

伝統的な手工芸品や農産物を公正な価格で取り引きし,企業や地主などから不当な搾取を受けている発展途上国の人々の経済的・社会的な自立を支援する運動。

 

(4)(知恵蔵/コトバンクのサイトによる)

コーヒーなどの換金作物や伝統的な技術で生産された途上国の産品を、生産者から直接、適正な価格で購入し、先進国市場で販売する仕組みのこと。

 

(5)(朝日新聞掲載「キーワード」の解説/コトバンクのサイトによる)

途上国産の原料や製品を適正価格で取引し、搾取されがちな生産者の自立や生活改善を図る考え方

 

↓参考にしたサイト(コトバンク)

https://kotobank.jp/word/フェアトレード-177215

 

(6)(三省堂 大辞林 第三版/ウェブロのサイトによる)

フェアトレード 4 fair trade

発展途上国生産物を,その生産者の生活を支援するため,利潤抑え適正な価格で,生産者から直接購入すること。労働条件環境保護などにも配慮して行われるオルタナティブ-トレード 

 

↓参考にしたサイト(ウェブロ)

https://www.weblio.jp/content/フェアトレード

 

フェアトレードとは「公正な貿易」のことで、要するに商品を高い値段で買って、その利益を生産者に還元しようというもの。

それまで100円で買っていたチョコレートを150円で買う。余剰の50円はカカオを作っているコートジボワールの子供たちの手に渡る。

 

現時点ではそういったイメージでいいと思います。フェアトレードは「生産者の生活水準向上のため、末端の消費者である我々が直接あるいは間接的に経済支援を行うこと」が本質なのだ。

 

フェアトレードは実は定義がはっきりしないというか、広義の意味まで含めると多様な解釈が可能な言葉(概念)なのである。どうかな、全体的なイメージは掴めたかな。

個人的には(3)の説明が最も普遍的に思う。企業や地主の利益のためではなく、貧しい生産者支援のため、商品を購入する。「伝統的な手工芸品」に触れているのもいい。エスニックな服や家具をきちんととした価格で(つまりちょっと高めってことね)買えば、それもフェアトレード。

(1)は「対等なパートナーシップ」という部分が漠然としていてよくわからない。(2)は「継続的」という箇所が不要かな、と。また「連携経済」という難しい言葉を使っている箇所もマイナス。(4)は「生産者から直接」っていう部分が間違っているんじゃないか。カカオを直接買うなんてことは、日本に住む我々的にはあり得ないよね。最終加工品のチョコレートを買うことで、間接的な支援になる。(5)はいい説明だと思います。オーソドックスな内容で、これぐらいシンプルに説明した方がわかりやすいかな。(6)も「直接」っていう部分が気になるな。たしかに民芸品などは直接買うこともできるけど、カカオは無理だしね。

 

とはいえ、全体的なイメージは伝わったよね。選択肢③はもちろん正文。カタカナ言葉があまり問われない。

 

[最重要問題リンク]2007年地理A本試験第2問問6でフェアトレードについての選択肢(正文)がある。

 

③ フェアトレードとは、先進国が発展途上国の農産加工品などを適正な価格で直接輸入することで、現地の人々の生活水準の向上をめざす貿易である。

 

センター試験でフェアトレードという言葉が登場したら、とりあえずこの定義で考えよう。

 

[今後の学習]いやぁ、いい問題ですね。感動しました。この大問でコーヒー縛りにしていたのは、この問題を取り上げたいという気持ちが作成側にあったのでしょうね。

僕がどこに感動したか?ちょっと話は長くなるかも知れませんが、以下に述べていきましょう。

 

主役は選択肢③のフェアトレード。フェアトレードは商品を高く買うことで、生産者の経済支援を行うもの。チョコレートを高く買えば、コートジボワールの子供達は学校に行くことができる。

 

ただ、それって本当なのか?そもそもフェアトレードがそうした経済支援の主役になるべきなのか?

 

選択肢③の言い方がエグい。フェアトレードが有効かどうかなど関係なく、とりあえず「注目されている」とだけ書かれている。これ、かなり抽象的だよね。その善悪は問われていない。ただ、それがよく知られているというだけだ。

 

本問の図からわかるように、生産者が受け取る報酬は極めて少ない、仲買人は「014ドル」で商品(この場合はカカオ)を買うのだ。それが、いろいろ輸送や加工のコストがかかったとはいえ、小売業者は「26.40ドル」で消費者に販売する。

さて、利益を最も大きく貪っているのは誰だ?生産者から輸出業者までの生産国については際立った金額の増加はない(それでも0.14から0.52へと4倍にはなっているんだが)。大きく増えたのは生産国における流通の過程である。先にも言ったように、これにはもちろんカカオをチョコレートに加工する工業のためのコストも含まれているから一概には言えないが、利益を独占しているのは消費国の側であり、それは巨大な食品会社であろう。先進国に拠点を置く、チョコレートの製造や流通などの企業。大幅に金額を上乗せして、そして我々消費者に販売する。

それらの企業こそ、積極的に生産者へと利益を還元するべきなんじゃないだろうか。企業が利益を上げ、潤っているならば、そこから発展途上国への支援金を出すべきだし、消費者にその負担を回すことはおかしい。企業が全力を尽くした上で、それでも足りないならば、「申し訳ありませんがフェアトレードにて商品の価格を上げさせていただきます」というお願いがあってこそ、我々も納得できるということだが、そんなことは聞いたことがない。

だからこそ、「解法」の部分で述べた、多様なフェアトレードの説明の中に「直接」とう文言が含まれていたことが納得できる。商品価格に上乗せするという間接的な方法では、本当に発展途上国へとそのお金がわたるかわからないし、そもそもそれは消費者の義務ではない。義務があるのは、カカオを利用してチョコレートで儲けている企業の方だ。やっぱりフェアトレードには本来的には「直接」であることが非常に重要な要素だったのだと思う。それが次第に意味が広げられて、間接的な「商品値上げ」に関することまでフェアトレードと呼ばれるようになった。これは正しいのか?

服や家具などの民芸品を直接買うことは間違い無くフェアトレードであるので、僕はこのこと時代を批判しているわけではありません。ただ、中間に大企業(とくに先進国に本拠を置く)が入ることによって、それが悪用されているじゃないか、むしろ「公正」で無くなっているんじゃないかという懸念があるわけです。

 

再度本問の選択肢。「生産者の労働環境や所得水準を向上させるため、フェアトレードが効果を上げている」という文章になっていないのは、それなりの意味があるのですね。みなさんもフェアトレードについてぜひ考えてみてください。

 

<2019年地理B本試験第2問問4>

 

[インプレッション]あれ、ここにもテンサイが出てる!テンサイは第4問にも登場しているんですよね。いや、そっちの解説を先に作ったもので、改めてこちらの問題に戻ってきて、今びっくりしているわけで。テンサイがこれまで全く出題されていなかったわけではないけれど、今年はなぜか2問に登場しているじゃないか。この偏りにはビックリ。何があったんだろう?いずれかの問題は、最初追試だったのに、直前になって本試の問題として採用されたってことなのかな。驚きですね。

 

[解法]農産物統計の問題だが、農産物の名称ではなく、国名を答える点がちょっと変わっている。気候環境は当然大切だが、国の大きさも考えないといけないし、人口に比して生産が多いか否か(つまり輸出しているかどうか)にも注目しよう。

選択肢の4つの国はいずれも大国である。人口は1億人を超える。アメリカ合衆国>ブラジル>ロシア>日本の順。

ただ、アメリカ合衆国やブラジルは新大陸(南北アメリカとオセアニアを含む地域)であり、商業的な農業が行われているのに対し、日本では自給的な農業が中心であり、農産物の自給率は低い。多くを輸入に依存している。いずれの作物についても生産は多くないはずだ。値が小さい④が日本。

今度は個別の農産物に注目して、サトウキビが分かりやすいと思う。サトウキビはブラジルを代表する作物。ブラジルでは、サトウキビから抽出したアルコール燃料をガソリンの代替品として自動車に利用している(バイオマス)。サトウキビの生産は世界1位なのだ。②がブラジル。

そのサトウキビであるが、亜熱帯性の作物であり、寒冷な地域では栽培できない。比較的温暖なアメリカ合衆国でさえ、当時保護国としていたキューバにサトウキビプランテーションを作らざるを得なかった。本土ではちょっと栽培しにくい。ロシアのような冷帯の国ではまさか栽培されることはないだろう。③がロシアとなり、残った①がアメリカ合衆国となる。牛乳の生産がとくに多いことを知っておいてもいいかも知れない。牛乳はアメリカ合衆国とインドがツートップ。

ちなみにテンサイであるが、これは冷涼な気候に適応するもの。ロシアやカナダ、フランスでの生産が多い。テンサイの加工により砂糖が得られるのだが、家畜の飼料にも利用されている。ビートあるいは砂糖大根とも呼ばれている。日本では北海道で生産がさかん。ただし、やはり砂糖の原料としてはサトウキビが圧倒的であり、テンサイはオマケって感じかな。

 

[難易度]★★

 

[最重要問題リンク]牛乳って実は珍しいんですよね。2011年地理B追試験第2問問2で登場したぐらい。でもこれって全然いい問題じゃないんだよね。牛乳については、世界全体で生産1位アメリカ合衆国、2位インドっていうのをしっかり覚えておこう。

 

[今後の学習]最初にも述べたが、テンサイにはちょっと驚いた。これから登場回数が多くなるかも知れないので、確実にチェックしておこう。

カブや大根の仲間で冷帯気候において栽培される。砂糖が得られ、搾りかすは家畜の飼料ともなる。主な生産国はロシアとカナダ。ヨーロッパではフランス北部などで栽培されている。

 

<2019年地理B本試験第2問問5>

 

[インプレッション]問4に続いてベタな農産物統計の問題。とはいえ、コーヒーがテーマとなっているものの、問題そのものはコーヒー以外の品目に注目して解かないといけない。ベトナムというか、東南アジアの輸出品目の特徴という感じか。選択肢の4つの国はいずれも発展途上国であるが、その中でもいろいろと違いがあるということ。

 

[解法]「コーヒーを輸出している」という共通点はあるが、それぞれ貿易品目に特徴のある国々ばかり。インド、エチオピア、コートジボワール、ベトナム。国の規模が違うので貿易額も大きく異なっているはずだが、本問では金額に関するデータはなく、シンプルに輸出品目が並べられているだけだ。

南アジア、東南アジア、アフリカ2カ国。地域別の貿易の特徴も考えつつ、解いていこう。

まず①と②であるが、いずれも農産物が首位となっている。①はカカオ、②はコーヒー。アフリカの後発発展途上国(とくに経済レベルが低い)では、農産物や鉱産資源といった特定の一次産品の生産と輸出に国内経済が過度に依存した者カルチャー経済がみられる。①と②はその典型だろう。①がカカオの世界最大の生産地域である西アフリカのギニア湾沿岸に位置するコートジボワール、②がコーヒー原産地でもあるエチオピア。

残った③と④がインドかベトナム。インドはコンピュータソフトの開発がさかんな国であり、その輸出も多いが、ソフトは「物」ではないのでこうした「品目」の統計には現れない。あくまで「サービス貿易」なのだ。インドの重要な輸出品目はダイヤモンドである。ダイヤモンド鉱の主な産出地域はアフリカ大陸。そこからベルギーへと送られ、ダイヤモンドとして加工される。さらにイスラエルやインドがダイヤモンド貿易の中継地となり、世界中に送られる。インドの重要な輸出品目としてダイヤモンドがあることを絶対に知っておこう。なるほど、よく見たら④に「宝石・貴金属」とあるではないか。宝石こそダイヤモンドだろう。④がインド。

そして③を参照しよう。東南アジアは発展途上地域であるが、工業が特に発達した地域でもある。マレーシアのようにすでに国内でハイテク産業の研究を進める国もあり、タイのように自動車の生産拠点となる国もある。ベトナムは社会主義国であり、市場開放が遅れたこともあり、現在でも経済レベルは低い水準にとどまっている(1人当たりGNIは2000$/人程度)。しかし、それがかえって先進国からの工場進出を活発化させ、安価な労働力の存在により繊維工業(衣類縫製など)が発達し、さらに機械組み立て工場の進出もみられるようになった。輸出品目上位に、労働集約型工業による工業品目が並ぶ③こそベトナムなのだ。

 

[難易度]★★

 

[最重要問題リンク]インドの貿易統計は2008年地理B本試験第4問問5で登場。2003年の統計であるが、1位ダイヤモンド、2位繊維品、3位衣類と現在とさほど変わりはない。

ベトナムについてチェックして欲しい問題は2011年地理B追試験第2問問6。ベトナムが市場開放に着手したのは1980年代に入ってからであり、1990年代にASEAN加盟を果たし、ようやく2000年代になってその努力が結実したという流れ。ベトナムの成長はまさに今始まったばかり。2011年のこちらの問題では、1950年代から輸出産業に力が入れられている様子が説明されており、これは誤り。独立直後のベトナムはまだまだ混乱期であり、ベトナム戦争を経て、社会主義を推し進め、むしろ対外的には「閉じた」国であった。ドイモイ政策によって市場開放がなされるのは後の時代。

 

[今後の学習]「インド=ダイヤモンド」まで覚えておいても、それが「宝石・貴金属」と結びつけることができたか、そこがポイントだったと思う。むしろ「インド=コンピュータ」と考え、「電子機器」に目が行ってしまったんじゃないかな。

統計がそのまま出題された問題だったからこそ、その読み取りや解釈が重要だったってことだね。

 

<2019年地理B本試験第2問問6>

 

[インプレッション]日本地理の問題かな。都道府県ごとの統計が問われている。喫茶店なんていうちょっと変わったデータもあるけど、これは最寄り品と考え、人口に比例すると考えてしまっていいようだ。水産物は内陸県では少ないだろうし、牛乳は酪農がさかんな地域のイメージでいいと思う。難しい問題じゃないよね。

 

[解法]日本全体の図を用いた問題は今回は他にも出題されているね。中学地理の学習を通じて、日本の姿を明らかにしておこう。

自分が住んでいる都道府県に注目するのがセオリーだが、それは一人一人違うので(笑)ここでは解説できないね。

とりあえず図ではなく、選択肢となっている指標の方に注目しよう。最もわかりやすいのは「水産食料品製造業」じゃないかな。例えばツナ缶やサバ缶を考えればいいと思うんだが、新鮮な状態で缶詰に加工したいわけだから、港の近くに工場(水産加工施設)ができるわけだよね。原料地指向型(原料立地型)工業なわけだ。そうなると漁獲量が多い港に近接した地域でこそ、この工業が発達する。漁獲量が多いところはたくさんあるが、では逆に漁獲量が少ないところって?やっぱり魚といえば海の魚が多いよね。河川や湖でも鮎などはいるけれど、それはメインじゃない。タラやマグロ、アジやサバを考えれば、海に面した都道府県でこそ漁獲量が多く、内陸は微々たるものってことになる。長野県や岐阜県などで最小となっているアが「水産食料品製造業」となる。

さらに「牛乳処理場。乳製品工場」について。これは酪農と結びつくね。広大な牧場を有し、乳牛を飼育する。乳製品こそ新鮮な牛乳が必要だから原料地指向型になると思うし、酪農がさかんな地域といえばやっぱり北海道だろう。関東地方や近畿地方など比較的全国にまんべんなく広がっている傾向もみられるが、そもそも牛乳は都市での需要に応え、都市近郊でも多く生産される(近郊農業の一種として乳牛飼育も行われている)のだから、牛乳処理場が至る所にあるんだろうね。イが該当。

残ったウが「喫茶店」。これは完全に初登場の指標なんだが、いわゆる「最寄り品」と考えたらいいんじゃないかな。利用するお客さんがいるところに喫茶店はできる。人口におおまかに比例すると考えていいと思うのだ。東京、名古屋、大阪の三大都市圏に多いね。人口バランス的には東京圏にもっと多くてもいいような気がするけど、関西の人は喫茶店が好きなのかな(笑)。

 

[難易度]★

 

[最重要問題リンク]ちょっと面白いなと思うのは、2015年地理B追試験第2問問5。ここでは日本の都道府県について、「冠婚葬祭業務」、「機械設計業務」、「ソフトウェア業務」の売上高を問うている。情報サービスは東京に集まり、機械設計業務は自動車工業の発達した県であるのに対し、いわゆる「最寄り品」である冠婚葬祭業務については全国くまなく分布し、その売り上げは人口にほぼ比例している。

 

[今後の学習]問題自体は簡単。もし、これを難問と思うのならば、そレは日本地理に関するコンプレックスだと思う。「北海道=牛乳」、「魚=沿岸部」、「大都市=人口多いから喫茶店多そう」なんていうイメージはわざわざ勉強するまでもなく身についているものでしょ(笑)。そういった当たり前の思考で当たり前に解くことができないとすれば、それはやっぱり苦手意識だと思うな。日本地理へのコンプレックスを取り除くために、中学地理を徹底的に勉強してください。