2019年地理B本試験[第1問]解説

たつじんオリジナル解説[2019年地理B本試験]

 

2019年地理B本試験第1問                           

 

いつも通り自然環境に関する大問。近年の傾向として自然災害をテーマとする問題が取り上げられている。全部の大問の中で最も難易度が高いのがこの第1問。思考力が問われるだけでなく、自然地理特有の知識に偏った問題(大地形など)が出題されることが特徴である。この大問は後回しにしてしまった方がいいんじゃないかなって個人的には思います。

 

<2019年地理B本試験第1問問1>

 

[インプレッション]土壌に関する問題はほぼ毎年出題されているわけで今さら驚くことはないが、しょっぱなの問1に登場ってのは珍しいな。ちょっと記憶にない。さらに本問は植生も問われている。植生の出題率は高くないので、気をつけないといけないかな。植生は、針葉樹や広葉樹といったベーシックな内容から、サバナやツンドラなどカタカナ言葉の登場まであり得るジャンルであり、実は難しいかも???

 

[解法]土壌と植生がミックスされた問題。基本的には気候環境(気温や降水量)と結びつけて考えれば大丈夫だとは思う。選択肢を検討していこう。

まず①から。おっと「栗色土」登場!これはやっかいだな。土壌は気候帯に沿って広く分布する「成帯土壌」と、局地的に分布する「間帯土壌」とがあるが、これは成帯土壌。

 

以下が基本。

 

湿潤土壌(酸性)

熱帯

ラトソル

赤色。表面二酸化した金属。多雨であり腐植が流出。

冷帯

ポドゾル

灰白色。植物が分解されず腐植が形成されない。

温帯

褐色森林土

褐色。樹木による腐植。

半乾燥土壌(弱アルカリ性)

ステップ

黒土(チェルノーゼム・プレーリー土・パンパ土)

黒色。草原による腐植。肥沃で小麦栽培に適する。

乾燥土壌(アルカリ性)

砂漠

砂漠土

植生がみられず腐植が形成されない。

 

あれ、栗色土がないじゃないか!とツッコミが入りそうだが、そこは落ち着いて。栗色土は、黒土と砂漠土の間。草原が広がるステップ気候と、植生の全くみられない砂漠の中間に形成される土壌。短い草が少しみられる程度の、砂漠に近いステップといった感じかな。逆に言えば、砂漠の周囲のちょっと雨が見られる地域で、少しだけ草原となっている感じ。この選択肢の「丈の低い草原」がジャストミートの表現なのだ。表に示した土壌ほど重要ではないと思うけれど、このようにたまには出題されるので、知っておいた方がいいかも知れないね。

さてアの地点を見てみよう。あれ、ここは熱帯じゃないか。降水量が多く、気温も高い。ギニア湾沿岸は、海洋から湿った風が吹き込むことで極めて降水量が多い。高温多雨の不衛生な環境で、伝染病の蔓延も見られる。ここ、乾燥気候ではないよね。いきなりこれが誤りでいいでしょう。正解は①。ギニア湾沿岸の植生が想像できない人もいるだろうけれど、カカオの産地であることはわかるよね。この沿岸にはコートジボワールやガーナなど世界的なカカオの生産国が並ぶ。「カカオ=熱帯の低地で栽培=高温多雨」という自然環境がイメージできれば、とくに問題ないと思う。この地域の植生はラトソルであり、植生は熱帯雨林もしくはサバナ(熱帯草原)。

他の選択肢は検討の必要ないが、一応参考まで。

②;「荒原」という記述から、植生がないこと、つまり砂漠であることを考える。なるほど、土壌については「主に岩石や砂からなる」と説明されており、腐植についての説明がない。これ、「砂漠土」とみなしていいでしょう。砂漠土は色はノーチェックでいいけれど、基本的に土壌の「黒み」は腐植によるもので、腐植だらけの黒土は「黒」、腐植がやや多い褐色森林土は「褐色」、少しだけ腐植のある栗色土は「栗色」と、腐植の多少によって土壌の濃淡が変化する。砂漠土の色が薄いことについては納得でしょう。イ地点はアラビア半島。亜熱帯高圧帯の影響が強い少雨地域であり、激しく乾燥する。植生がみられない砂漠である。

③;「腐植の集積した」だけ見ると黒土かなと思ってしまうのだが、思いっきり「褐色」って書いてあるね。腐植の色は黒なので、これが厚く積もっていると土の色も黒になるのだが、それなりに(?)腐植がある状態なら茶色(褐色)となるわけだね。ほら、日本では土の色って茶色をイメージしない?世界には赤い土や白い土、黒い土などいろいろあるのだ。日本のような温帯だからこそ、土の色は茶色(褐色)となるんだね。

さて、ウの地域はどこだろう?あれ、中国の華北地方か。ここは黄河が外来河川(乾燥地域を流れる河川)であることからわかるように、降水量は少ない。中高緯度でさほど気温が高いわけではないから砂漠とはならないまでも、やや乾燥の度合いは高く、ステップ気候となっている。ん?そうなると温帯とは言いにくいから褐色森林土ではないし、植生も「混交林」(これについては後述)も適切ではないような。。。ただ、センター地理ではケッペンの気候区分は問われないから、この地域はステップ気候というより、日本に近い東アジアの典型的な気候がみられる場所と考え、極端に乾燥するわけでもないので、一応温帯的な特徴が現れると解釈していいんじゃないかな。曖昧だな。ただ、①が決定的に違っているので、この選択肢については「許容範囲」とみなしてとくに問題ないとは思う。

④について。こちらは完全に「ステップ=黒土」でいいと思う、厳密には、「ステップとその周辺地域」であり、「やや乾燥した冷帯」と「やや乾燥した温帯」まで含む。例えばウクライナではステップ気候と冷帯がみられるし、アメリカ合衆国の中央部もステップ気候と温帯がみられる。ただ、何度も繰り返すようだけどセンター地理ではケッペン気候区分は問題とされないので、単に「やや降水量が少ない」、「年降水量500ミリ程度」、「草原が広がる」みたいなイメージを持っておけばいいと思うよ。とくにここでは「丈の高い草原」と記述されている。①と比較してみよう。土壌は、「黒土→栗色土→砂漠土」と変化する。植生は「丈の長い草原→丈の短い草原→砂漠」と変化する。乾燥の度合いが上がるほどに、土壌と植生とが変化するのがわかるでしょ?さらに言えば、「やや降水量の多いステップ(温帯と冷帯の一部を含む)→降水量の少ないステップ→砂漠」という言い方もできる。黒土と砂漠土をしっかり覚えておいて、その中間が栗色土であると考えるのが適切だと思うよ。

さて、エの場所を注目しよう。なるほど、南米のアルゼンチン東部。ここは温帯がみられる地域だが、パンパという草原が広がっており、草原の草が腐植となって積もったパンパ土がみられる。エのすぐ右手にちょっとした切り込みがあるよね。これがラプラタ川という川のエスチュアリー。河口部分が沈降し、ラッパ状の入江となっているのだ。これを目印として、周辺にパンパとう草原が広がっていると解釈して欲しい。温帯草原。日本からみてちょうど地球の反対側で、同じような気候(温帯)がみられるのだが、日本が森林となるのに対し、こちらは草原。植生が違っているね。

なお、ちょっと細かいけれど、温帯であるエの部分は「湿潤パンパ」という。エの西側は降水量が少なく「乾燥パンパ」という。パンパ土は温帯からステップにかけて広がる土壌なのだ。

他に黒土の広がる地域としては、ウクライナからカザフスタン北部にかけての帯状の地域と、アメリカ合衆国の中央部。ウクライナ〜カザフスタンは冷帯からステップ気候であり、チェルノーゼム。アメリカ合衆国の中央部は温帯からステップ気候であり、プレーリー土。いずれも草原の草が枯れて、腐植となり地表面に積もる。降水量があまり多くないので、腐植が流されず、厚く積み重なっていくのだ。企業的穀物農業地域として小麦が栽培されている。

後回しになったけれど、もう一回選択肢③に注目。ここでは植生が「混交林」となっている。これ、温帯のやや冷涼な地域に見られる植生。「針葉樹林」と「落葉広葉樹林」が混交しているのだ。日本に当てはめてみるとわかりやすい。西日本(温暖な温帯)が「照葉樹林(常緑広葉樹林)」、東日本(冷涼な温帯)が「混交林(針葉樹林と落葉広葉樹林)」、北海道が「針葉樹林」。

 

[難易度]★★★(難しい)

 

[最重要問題リンク]見て欲しいのは2009年地理B第1問問6。ポーランドからロシアにかけての地域の植生について、「落葉広葉樹と針葉樹が混じり合った森林」とある。つまり混交林(混合林)。冷帯地域なので針葉樹としたいところだが、選択肢に「針葉樹のみ」がないので、混合林を選んで正解となる。ただ、この問題にしてもそうだけど、あまり気候帯で考えない方がいいのかも知れないね。北部ヨーロッパは冷涼で日本の東北地方みたいなイメージ。だから混交林でいいんじゃないか、ぐらいのフィーリングがいいのかも。植生に関しては「暑ければ常緑硬葉樹、乾いていれば草原、涼しければ落葉広葉樹、寒ければ針葉樹」ってことだね。

 

[今後の学習]ちょっとやっかいな問題だったな。選択肢①が決定的に違ってはいるんだが、選択肢③がややこしい。選択肢④も(日本と同じ)「温帯」であるだけに、それを優先して考えてしまうと混乱する。

 

細かいことは抜きにして、大雑把に雰囲気で考えてしまった方がいい問題なのかも知れない。選択肢①にしても「栗色土は知らないが、草原だから乾燥しているんだろう。でもアはカカオ栽培しているぐらいだからジャングルだよな?これが間違いでいいや」ぐらいの解き方がベストだったのかも知れない。

 

<2019年地理B本試験第1問問2>

 

[インプレッション]断面図問題。これ、難しくない!?!?とくにBやらCなんて内陸部だから、具体的にどこなんだかよくわからない。いや、これは悪問の部類でしょ。

 

[解法]断面図問題はそもそも難易度が高いのだが、本問は実に手強い印象。ADはまだしも、BCは難しいでしょ。センター試験の図は白地図が用いられ、輪郭線のみ示される。沿岸部に近い(つまり海岸線を目安にできる)ADについては具体的にどんな地形がみられるのか判定しやすいのだがが、BCのように海岸線から離れて「宙に浮いている」状態の地点は、具体的にどういった地形なのかわかりにくい。Bを特定しないといけない問題なので、そりゃ無茶だわ。これ、悪問だと思うよ。僕ならこんな問題はつくらない。平均点を下げるための調整問題なら仕方ないが。

とりあえずわかるところから行きましょう。断面図問題のポイントは「標高」そのもの。つまり数字に注目してください。①は100mもないね。こんなに極端に低い地形があるのか。②は低地でありながら、1000m級の山がそびえる。とはいえ、1000mでは高くないね。丘陵といった感じか。その点、③は険しい山。標高は3000mを超える。特徴的な地形。④は全体的に高原となっている。なだらかな地形だが、1000mをゆうに越えているのだから、山深い地域であることが想像できる。

ではわかりやすいところから。Aはエチオピア付近だが、アフリカ大陸の東部には巨大な地溝帯(アフリカ大地溝帯)が走行し、プレートが引き裂かれている(拡がる境界)。地震が生じ火山も多い変動帯となっており、険しい高原である。どうかな、これを③と判定するのは納得なんじゃないかな。アフリカ大陸は安定陸塊で形成年代は極めて古いが、最近になって大地が割れ始め、地下マントルから突き上げられるように高原状の地形が形成されている。断層も幾重にもみられる。③の図も単に標高が高いだけでなく、断層活動による急崖もみられ、まさに東部アフリカの典型的な断面と言えよう。

さらにDもわかりやすい。ほぼ赤道直下であり、アマゾン低地が広がる。南米大陸の低緯度地域は西岸に極めて高峻なアンデス山脈がみられるものの、ペルー東部からブラジルにかけての広い範囲は低地や盆地となっており、平坦な地形となっている。アマゾン川はこの低地を流域に収める河川であるが、流れは緩やかで大きく蛇行を繰り返す。大西洋に面する沿岸部から、何百キロ、何千キロにも渡って(図に距離は書かれていないけれど)ずっと低地となっている①がDである。

さて、ここで残ったのがBC。これ、難しいんだわ。先にも述べたように、輪郭線である沿岸部に近ければ目安になる地形も探しやすい。でも、これ二つとも内陸部でしょ?これは困った。

というわけで種明かしをしてしまいましょう。実はポイントはウラル山脈なのだ。Bの北の方に「く」の字に曲がった細長い島があるよね。ここから真南にまっすぐ線を下ろしていくと、それがそのまま「ウラル山脈」になる。昔はカスピ海(世界で一番大きい湖だよね。Bの下にある)の東側にアラル海があり、世界4位の面積を誇っていたのだが、これが現在はほとんど無くなってしまった。この図でも表されていないね。周辺での綿花栽培のため、河川から過剰な取水が行われた。湖に流れ込む河川の水量が減ったことで、そもそも蒸発量の多い地域でもあり、湖水が干上がってしまったというわけだ。このアラル海が存在していたころには、先ほどの細長い島とアラル海を結んだラインが完全にウラル山脈と一致していたのでとてもわかりやすかったんだが、現在は目印になる地形がその細長い島しかない。でも、何とか判断は可能だと思う。ウラル山脈は「東経60°」の経線とも重なっているので、覚えておいて損はないと思うよ。

このことからBの中央にはウラル山脈が走っていることがわかる。ウラル山脈はヨーロッパとアジアを分ける巨大な山脈であるが、古期造山帯であるので標高は高くない(長い間の侵食によって)。周辺はロシアの平原である。②をBと判定していいのではないか。

残ったCが④になる。モンゴルの高原地帯なのだ。

 

[難易度]★★★

 

[最重要問題リンク]アフリカ地溝帯やアマゾン低地が断面図問題のテーマとなることは多く、判別も簡単。ここではモンゴル高原が登場した例を紹介しよう。

2005年地理B本試験第3問問2。ペキンからモンゴル南部を通過し、ウイグルへと向かう線の断面が問われている。全体として標高1000〜2000mの高原地帯。

 

[今後の学習]これは難しいな。断面図問題はカギとなる地形の発見が重要。今回はウラル山脈が初登場したので、これについては必ずチェックしておこう。

アフリカ大地溝帯とアマゾン低地は頻出なので、これらは当然知っておかないといけないね。

 

<2019年地理B本試験第1問問3>

 

[インプレッション]河川流量の問題はしばしば出題されているが、ここまで丁寧に流域が示された問題は珍しい。必要だったのかな?エニセイ川はシベリアを流れている河川のようだが、こうした寒冷地域を流れる河川の流量の特徴は明確だね。またコンゴ川は赤道直下の熱帯雨林を広く流域に収めているが、こちらも特徴的。ミシシッピ川は消去法でいいんじゃないかな。過去にも取り上げられているし、解答は容易でしょう。

 

[解法]河川流量の年変化が問われる。問題文にもあるように、流域の気候環境が反映される。図3参照。エニセイ川、コンゴ川、ミシシッピ川の3つの河川が登場。いずれも河川名は重要でなく(覚えなくていいね)、エニセイ川が寒冷地域であるシベリア、コンゴ川が赤道直下の熱帯を流れる河川であることがわかればいい。ミシシッピ川は消去法でいいだろう。流量観測地点はいずれも最下流の河口付近であり、別に意識することはないんじゃないかな。

そしてグラフに目を移す。まず縦軸について「流量」という絶対値が問われている点に注目。以前の問題で縦軸が割合(年間降水量にしめるその月の降水量の割合)だったことがあったが、それに比べてこちらの形の方が解きやすい。実際の流量そのものがわかれば、例えばその地域の降水量の大小と結びつけることができる。

さて、最も妙な形のグラフはどれだろう?Hがかなり変わっているよね。冬(全ての河川が北半球なので、1月を中心とした時期を冬を言い切ってしまっていいね)の流量が極めて少ないのに対し、5月に一気に流量が増加し、6月は「爆発的」な値になる。じわじわ上がって、じわじわ下がるというパターンではないね。4月から5月、6月の変化は「直角」的ともいえる。

この極端な形については「雪どけ」を考えよう。冬に極端に寒冷となる地域では周囲は雪氷に覆われ、河川は凍りつく。流量は限りなくゼロに近づく。

しかし春を迎えると雪氷は融解し、莫大な水量が一気に河川に流れ込む。「爆発的」な流量増加はこれが原因。閉ざされた冬が終わり、春の目覚めが訪れる。シベリアの春はやや遅く5月から6月にかけて、そして短い夏を迎えるのだ。エニセイ川がHに該当。

FとGについては流量そのもので考えればいいと思う。熱帯雨林の多雨地域の河川であるコンゴ川は、そこに流れ込む水量も当然多い。全体に値の大きいFをコンゴ川とみていいだろう。

消去法でGがミシシッピ川。3月から5月にかけてという変則的な時期に流量が大きくなるのがこの河川の特徴である。過去問にも出題されているが、さほど意識しなくていいだろう。あくまで消去法で。

 

もっともシベリア地域はシベリア高気圧の影響で冬は降水量がほとんどなく、雪も原則として降らないので「雪どけ」は適切じゃないんだけどね。「氷どけ」というべきかも知れないね。

 

[難易度]★★(標準的)

 

[最重要リンク]河川流量に関する問題は多いが、出題される河川はほぼ決まっているので似たような問題ばかり。

参照しやすいところで、地理B本試験からピックアップしましょう。2007年地理B本試験第1問問3です。

北米大陸の河川の流量なのですが、一つは寒冷地域(アラスカ州)を流れる河川、一つは乾燥地域であるアメリカ西部を流れる河川(外来河川ということですね)、そして一つがミシシッピ川。

寒冷地域の河川は5〜6月に一気に流量が増加、外来河川はそもそも流量が少なく、そしてミシシッピ川は本問と同様に(同じ河川だから当たり前だけど・笑)4月にちょっと流量が増加するものの、全体として豊富無水量。

いずれの河川も特徴的で参考になりやすい問題だったと思う。とくに寒冷地域の河川の流量変化については、グラフの動きをビジュアル的に理解しよう。

 

[今後の学習]とにかく重要であるのは寒冷地域の河川。とくに今回はシベリアのエニセイ川という川が登場していたが、この河川を典型として、シベリア地域を北流(北に向かって流れる)河川の特徴として「春の大洪水」がある。

春(とは言ってもシベリアなので遅い春。5月ごろだが)になると、南部で氷が溶け始め流量が増え始まる。でも、この時期はまだ北部の下流側は凍りついたまま。行き場をなくした河川水は周囲へと溢れ出て、大洪水を引き起こす。エニセイ川という河川自体は、水力発電もさかんでアルミニウム工業も発達しているのだが、それも河川水を自由に利用できる短い夏の間のみ。凍りつく期間が長く、そして上流と下流とで融氷の時期が違うことによって洪水の原因となる。シベリアを特徴付ける河川なのだ。

 

<2019年地理B本試験第1問問4>

 

[インプレッション]ベタなハイサーグラフの問題。昔のセンターであまりハイサーグラフは登場しなかったんだけど、今は数年に一回はこの形で出題されるね。グラフの読み方はわかるかな。1から12がそれぞれ月を表す。X軸(降水量)とY軸(平均気温)の値をそれぞれ読み取る。例えば①の7ならば、7月の気温は12℃、降水量は100mmということ。

ハイサーグラフの便利なところは、そのおおまかな形で気候的特徴を捉えやすいということ。例えば①と②は似たような形をしているよね。いずれも気温の高い時期(夏)に降水量が少なくなっていて、気温の低い時期(冬)には多雨となっているので、地中海性気候的な特徴を有していることがわかる(第5問で登場するウズベキスタンのように、夏少雨冬多雨であっても全体の降水量が少なく乾燥気候となる場合もあるので、ここでは地中海性気候「的」という言い方にしています)。

③については年間を通じて月降水量は30〜50mmの間で大きな変化はない。このグラフの最大の特徴は夏の気温かな。月平均気温が20℃に達しないというのはかなり涼しいよ。でも、冬の気温もさほど下がらないので、穏やかな気候ということはできるね。

その反対が④。夏の気温は極めて高い。冬は氷点下までは下がらないけれど、他の地点に比べてかなり寒くなっている。気温年較差の大きい、寒暖のはっきりとした気候といえるね。降水量も③に比べ全体に多くなっている。冬はかなり冷えるのに、降水量は100mm以上あり、ちょっと珍しい地域のような気もするね。

 

[解法]ハイサーグラフを用いたオーソドックスな気候判定問題。北半球と南半球が混ざっているので、答えを出すのは難しくないと思うよ。

カ〜ケの4地点を確認。カとケが北半球、キとクが南半球。

ハイサーグラフを確認しよう。①と③は「1」の気温が高い。1月に夏と迎えているので南半球。逆に②と④は「7」の気温が高く、この時期が夏。北半球である。

キとクが①と③のいずれかになるのだが、どうだろうか。最も基本的な考え方は「気温の高低を緯度と対照させる」ことである。太陽との関係を考えれば、低緯度で気温が高く、高緯度で気温が低いのが当たり前。キとクを比べた場合、キの方が緯度が低く、クの方が高い。キで高温、クで低温と考えていいんじゃないか。①と③を比べてみて。夏も冬も①の方が気温が高く、③が低い。キは①とみていいだろう。これが正解。

なお、せっかくなので、さらにダメ押し。キの位置を注意深く見て欲しい。アフリカ大陸の「南西端」のカドにくっついているよね。この位置、正確に覚えて欲しい。この位置にある都市はケープタウン。「緯度35°、大陸西岸」の条件を満たし、地中海性気候が現れる。夏(1月)は亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)が南下することでその影響下に入り、少雨(乾季)となり、それ以外の時期は偏西風帯に入り、前線の影響で一定の降水がある。「地中海性気候=緯度35°、大陸西岸」は絶対的なことであり、その典型的な場所こそ、このケープタウンなのだ。なお、同じアフリカ南部でも位置がちょっとでもずれてしまったら地中海性気候ではなくなるので注意。例えば、2016年地理B追試験第1問の図1を参照して欲しいのだが、ここにPで記された都市がある。ここはケープタウン同様に南アフリカ共和国の沿岸部の都市であるが、地中海性気候がみられないので注意。大陸東岸に位置し、暖流の影響などで夏の降水量も多い。日本と同様の気候(温暖で年中湿潤)の気候が現れるのだ。

①のケープタウンのグラフにおいて地中海性気候的な典型的特徴が現れていることを確認しよう。全体に温暖で(温帯気候であるということ)、冬の降水量はそれなりに多いが、夏の降水量が極端に少なく乾季となる。これが仮に冬の月降水量も50mm程度出会ったなら年間を通じ「降水量<蒸発量」のバランスとなって、乾燥帯となってしまう(ステップ気候や砂漠気候)のだが、これぐらい降っていればまずそんなことはないだろう。地中海性気候であると判断できる。

一方、③はクである。オーストラリア南部のタスマニア島だが、位置的に考え、ニュージーランドと似たような気候になっている。年間を通じ、気温、降水量ともに大きな変化はない。

北半球に目を移すと、カが②でケが④である。カはポルトガル(あれ、ここでもポルトガル登場!他の問題でポルトガル名産のコルクガシが出題されていたな)ポルトガルは地中海には面していないけれど、「緯度35°、大陸西岸」であり、典型的な地中海性気候。

キは北米大西洋岸の都市であるが、これはニューヨークかな。東京よりやや高緯度にあるね(東北地方ぐらいかな)。気温についてはなるほど、東京と近いか、やや低いぐらい(東京で、最暖月平均気温25℃、最寒月平均気温5℃)。降水量については、日本は季節風の影響で夏にとくに多雨となり、冬はやや降水量が少なくなるといった季節差が明瞭なのだが、ニューヨークにはそういった違いはみられないようだ。

 

[難易度]★★

 

[最重要問題リンク]2012年地理B本試験第1問問2では、ケープタウンのハイサーグラフが登場している。本問と同じなので確認しておこう。

 

[今後の学習]ケッペンの気候区分は原則として話題とされないセンター試験だが、地中海性気候だけはベタに知っておいてもいいかも。もちろん「地中海性気候」という名称や「都市名」が問われることはないのだが、「緯度35°、大陸西岸」に必ず現れるという法則性が明確であることから、センター地理では非常に好まれるテーマとなっている。

今回は南半球における地中海性気候の出現場所についてしっかり知っておこう。ピンポイントに、極めて狭い範囲に現れる。

まず重要であるのが、本問でも問われているケープタウン。図1のキの地点であるので、目でしっかり確認しておく。アフリカ大陸の南西端、この一点のみ。ここから少しでもズレたら地中海性気候ではない。

さらにチリ中央部。チリは細長い国なので、その中央部というのも極めて狭いエリアに限定される。地域というより「地点」という感じで覚えて落おいた方がいい。チリの首都サンチアゴ周辺であり、本図で言えば、エの○があるよね。これが南米大陸の南緯35°大陸東岸に当たる、ここから真西、太平洋岸がサンチアゴ。チリ北部は乾燥地域(寒流と亜熱帯高気圧の影響)、チリ南部は年間を通じて多雨(偏西風の風上斜面)。中部の一点のみ、地中海性気候がみられブドウやオリーブの栽培が行われる。

さらに、オーストラリアでは2つの都市が地中海性気候。文章では説明しにくいので、よかったら地図帳で探してみてほしい。南西端のパースと南東部のアデレードである。パースはわかりやすいと思う。まさに「緯度35°、大陸西岸」の典型例である。アデレードは一見すると大陸東岸に見えるが、これが実は違う。オーストラリアにおいて大陸の東西を分けるのは、大陸東岸に沿うグレートグレートディヴァイディング山脈。太平洋に面する狭いエリアだけが「東岸」であり、それ以外のほとんどの部分は「西岸」なのである。南東部に位置するアデレードも実は「西岸」。東岸ならば暖流の影響によって降水量が多くなる(シドニーなど)。アデレードは、赤道を挟んで東京と線対称の位置にある都市。気候が全く違うのは面白い。

 

<2019年地理B本試験第1問問5>

 

[インプレッション]おっと珍しい図だね。このアングルの地球は珍しい。北極点を中心としたもので、正積図法となっている。面積のバランスが正しく描かれているんだが、わかるかな。

問題そのものは北極海における海氷の減少に関するもの。地球温暖化が深刻化しているわけだね。

 

[解法]特殊な地域が扱われた問題だが、文章正誤の誤文判定問題なので、解答はさほど困難ではないんじゃないかな。明らかに誤っているものを一つ選べばいい。

まず図からみていく。北極点を中心に描いた北半球。海氷の分布が示されている。「1981〜2010年〜」の範囲は実線で表されており、北極海の広い範囲が該当している。「2012年〜」はそのエリアはかなり狭まっているね。地球温暖化の影響でしょう。

選択肢を検討していこう。

①について。なるほど、こういうことはあるかも知れないね。氷の上に作られた建造物ならば、氷が溶けてしまうことによって傾いてしまったり涼んでしまったりするはず。「被害」どころの騒ぎじゃない。

②について。なるほど、氷が溶けることによるメリットというのもあるんだろうか。氷が溶けて海となれば、そこを船舶が通行することができる。北極海ルートがより円滑化されるわけだ。でもちょっと待てよ?「東アジア」と「ヨーロッパ」だって?ヨーロッパについては分からないでもない。ロシアからノルウェーの広い範囲は北極海に面しているし、港湾も多いだろう。北極海航路の利用はあり得る。でも東アジアはどうなんだ?日本や韓国、中国のことだね。図をみればわかるように、日本から北極系を経由してヨーロッパに達するって、ユーラシア大陸と北アメリカ大陸の間の海峡を通らないといけないし、むしろ遠回りになるんじゃないか?たしかに図をみる限り、「1981〜2010年」についてはロシアの北部の海岸が海氷に覆われ、通行は不可能だったが、「2012年」にはロシア沿岸に海氷はみられず、物理的には船舶での航行は可能である。でも、誰が好き好んでそんなコースを辿るだろうか。普通にシンガポールやスエズ運河経由でヨーロッパに向かえばいい。これ、そもそも東アジアとヨーロッパを結ぶ船舶の航行はあり得ないということで、間違いとしてしまっていいんじゃないか。②が誤りだと思うな。ちょっと曖昧だけど。

ただ、これだけではちょっと不安なので、他の選択肢も見ていこう。

③はどうかな。あぁ、なるほど、それまでは氷という固形物の上を歩いてアザラシなどの獲物を探し求める狩猟が成り立っていたはず。氷が溶けてしまっては歩く範囲も限られてしまうね。

最後の④はどうだろう。「海岸侵食」とある。この部分に下線部がないということは、海岸侵食は実際も生じているのだろう。波によるものだろうね。氷が溶けて海洋となることで、波が直接海岸に当たり、侵食も生じる。このことを想像してみるに、海氷の減少によって(つまり海の範囲が増えることで)侵食される海岸も増えるはず。さて、選択肢にあるように「グリーンランド北部」を調べてみよう。グリーンランドはわかるよね。図の中心やや左下にみられる細長い島。大陸以外ではもっとも大きな陸地となっている。あれ、おかしいな。グリーンランド北部は「2012年」の段階でも海氷に覆われているではないか。これでは波による海岸侵食が生じるわけはない。9月つまり暖かい時期ですら海岸は氷で閉ざされているのだから、むしろ海岸侵食は全くないと言っていいよね。ん、これが誤りなんじゃないか。正解は②じゃなくて④だね。

(ここで答えを確認)

うわっ、やっぱり④だった!危ない危ない、②と決めつけなくて良かった。たしかに物理的に東アジアからヨーロッパまで船舶で辿れることは事実なので、選択肢②は決して誤りではなかったってことだね。それに対し、選択肢④はグリーンランド北部が明らかに氷に閉ざされ続けていることから、決定的な誤りとなる。そもそもこうした誤文の判定に必要なのは「比較の構造」を探すこと。「AよりBの方が」といった選択肢には要注意。「BよりAの方が」とすることで、容易に誤り選択肢をつくることができる。図においては東シベリアの沿岸部は氷に閉ざされていないが、これはあくまで9月の図であり、海氷の面積が最小である時期。もちろん冬になれば日本付近まで沿岸は凍りつく(北海道に流氷がやってくるのはよく知られているね)。以前は6月ぐらいまで氷に閉ざされていた海岸線が、温暖化の影響で、現在は4月には氷が溶けてしまうような場所も生じているのではないか。固体である氷ではなく、液体である海にさらされることで、波の力を受け、海岸侵食が進む海岸は東シベリアには多いはず。

 

[難易度]★★★

 

[最重要問題リンク]この地域自体そもそも取り上げられることが少ないので直接的は類題はちょっと思い当たらないな。寒冷地域の生活に関する問題をいくつか挙げておきます。

 

(2000年地理B追試験第2問問5)

極北の地には永久凍土地帯や一年中雪氷に覆われる雪氷地帯が広がっている。このようなところにもエクメーネ(居住地域)があり、人々の生活が営まれている。その生活の様子を説明した文として最も適当なものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。

 

① 永久凍土地帯では、熱が地下に伝わって凍土がとけないように建造物の基礎を断熱材で遮断したり、高床式の構造にしたりしている。

② ツンドラ地帯では、トナカイの放牧や野イチゴ、コケモモなどの採集を行なって生活している人々は、現在はいなくなった。

③ 雪氷地帯では、ヘリコプターやスノーモービルの普及によって物資の入手が容易になったため、人口増加が急速に進んでいる。

④ 北極圏では、気温が低く、スキーに適した水分の少ない雪質であるため、スキーリゾートとして開発が進んでいる。

 

正解は①。地中の永久凍土層を融解しないよう、建物の床を地面から離してつくる。

②;少数だが存在する。③;人口が急増しているわけではない。④;観光地としての開発は進まない。

 

(2006年地理B追試験第5問問2)

北半球の高緯度地域の自然環境について述べた文として最も適当なものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。

 

① 北極圏では、夏には太陽が一日中沈まない期間、冬には太陽が一日中登らない期間があり、夏にはオーロラが頻繁に観察される。

② 北半球で観測された最低気温は、北極圏内に位置するグリーンランドなどの北極海沿岸部で記録された。

③ 北極海に面した北アメリカ大陸沿岸部には、主に地衣類や蘚苔類などからなるツンドラ植生が広く分布している。

④ 近年、アラスカでは、東アジアから飛来した大気汚染物質に起因する酸性雨によって、永久凍土の溶解が進んでいる。

 

正解は③。北極海沿岸にはツンドラが広がる。氷雪に覆われた荒地であるが、短い夏の間のみ地表面が融解し、地衣や蘚苔が繁茂する。

①;オーロラは夜空に観測されるが、夏は白夜となり空は明るいまま。②;北半球の最低気温はシベリア内陸部で観測。④;温暖化は酸性雨は関係ない。

 

(2015年地理B追試験第4問問6)

北極海の近年の利用について述べた文として最も適当なものを、次の①〜④のうちから一つ選べ。

 

① 鉱産資源が豊富にあり、周辺諸国の沿岸ではウラン鉱が大規模に採掘されている。

② 自然環境や生態系を保護するために、民間企業による極地観光ツアーは禁止されている。

③ スカンジナビア半島から太平洋に至る北極海航路が整備され、年間を通じて船舶が航行している。

④ 排他的経済水域を越える範囲での開発について、周辺諸国による様々な主張がみられる。

 

正解は④。南極周辺とは異なり、北極海では周辺国による資源開発がみられ、排他的経済水域を越える範囲(公海)でも各国の勢力争いが続いている。

①;ウラン鉱の産出はない。②;一部では観光ツアーもみられる(オーロラ観光など)。③;氷が増える冬季には航行されない。

 

[今後の学習]いやぁ、危なかった。あとちょっとのところで間違えてしまうところだった。図が与えられている問題なんだし、やっぱり図をしっかりと読解しないとダメだね。それから誤文選択のコツとして、「比較ん構造」にまず着目することは大原則。早とちりで間違えるのは避け、慎重に最後の選択肢までじっくりと目を通すことの大切さを知りました。

 

<2019年地理B本試験第1問問6>

 

[インプレッション]面白い図だね、じっくり見てみたい。なるほど、台風というのはこのように「く」の字を描いて日本列島にやってくるのか。低緯度においては貿易風の影響を受け東から西へと、中緯度においては偏西風の影響を受け西から東へと、台風は移動する。

 

[解法]熱帯低気圧の中でとくに規模が大きい(中心の風力が強い)ものが台風。だから台風も熱帯低気圧に含まれるのだが、ここでは細かいことを気にしても仕方ないので「熱帯低気圧・台風」について、まとめて「台風」として説明していく。

誤文判定問題なので、一つだけ誤りを指摘すればいい。間違っていそうな言葉に注目。「反対語を持つ言葉」や「比較の構造」が大切だね。なるほど、選択肢②に「西向き」という言葉がある。これは反対語として「東向」という言葉が考えられ、誤りである可能性がある。また選択肢④も「暖かく」、「湿潤」という言葉があるが、これも「冷たく」、「乾燥」という反対語がある。誤り選択肢と十分なり得るね。

では選択肢②から検討。「中緯度地域では、卓越風の影響で西向きに進む」とある。ん?これ、おかしくないか?中緯度で卓越する風は偏西風。東アジアは地表付近では季節風の影響が強く、夏は南東風、冬は北西風が卓越する。しかし上空は偏西風が強く吹き、南西の風が卓越する。例えば日本からアメリカ合衆国へ向かう航空機はこの風を順風として、逆風となるアメリカ合衆国から日本へと向かう航空機より、所要時間が短くなる。日本上空で低気圧(移動性低気圧)が西日本から東日本へと向かって動くのも偏西風の影響。火山が噴火したら火山灰は山の東側へと降下するがこれもやはり偏西風のため。

これを考えてみると、中緯度で「西向き」はおかしいんじゃないか。西風は西から東に向かって吹く風。台風は「東向き」に進むのだ。図をみても日本付近(中緯度だね)で台風は西から東に向かっている。正解は②。

他の選択肢も検討してみよう。まず選択肢①。これ、結構重要なネタなので知っておいてもいいと思うよ。台風は渦を巻くことによって成長する。台風という巨大な低気圧に向かって風が吹き込むわけだけど、それがまっすぐ進んでしまったら渦にはならないよね。北半球では台風の中心に向かい風が右に曲がり、南半球では同じく左に曲がり、巨大な渦巻が形成される。このような風向を変える力って何ていうか知ってるかな?そう、「転向力」だね。地球の自転によって生じる力。転向力があってこそ風は向きを変え、そして低気圧の周囲を回転する渦をつくり、台風を成長させる。北半球では進行方向に対し右向きの力、南半球では同じく左向きの力となる転向力だけど、これが存在しない場所があるのは知っているかな。それは赤道直下。赤道付近ではこの力が極めて弱く、低気圧が発生しても渦を巻かない。つまり台風として成長しない。(熱帯低気圧を含む)台風は赤道上では発生しない!これは科学的な真理なのだ。

日本付近に台風がやってくるのは9月。7月や8月は日本上空に太平洋高気圧が張り出していて、台風がくるのをブロックしているのだ。太平洋高気圧の勢力が弱まる秋以降、日本への台風来襲が本格化する。この時期は秋雨の時期でもあり、台風が秋雨前線を刺激する(具体的には南方から湿った暖かい風を大量に吹き入れる)ことで思わぬ大雨となることもある。日本で最も降水量が多い月は9月だね。

おっと、選択肢④で、その「暖かく湿潤な空気を供給する」ことが述べられているじゃないか。先回りして言ってしまったよ(笑)。北半球では低気圧の周囲を反時計回りに風が周回する。台風ももちろん低気圧の一種なので同様に風が吹く。台風の西側では北風になるが、東側では南風になる。例えば台風が日本の西方海上を通過するとしても、日本列島には南風が吹き込むことになり、この風が太平洋方面からのものであることを考えれば、当然水分を日本列島へと持ち込むことになる。台風の直撃を受けずとも、その東側の地域ならば「大雨に警戒する必要」は当然ある。

 

[難易度]★★

 

[最重要問題リンク]2008年地理B本試験第1問問2の図がほぼこれと同じ。文章正誤問題で、以下の選択肢の誤文判定。

 

① 日本近海より海面水温の高い熱帯域で発生しやすい。

② 地球の自転の影響により赤道上で発生しやすい。

③ 太平洋高気圧の縁を回り込むような経路をとることが多い。

④ 中緯度では偏西風により東に進路を変えることが多い。

 

もちろん誤りは②。注目すべきは選択肢④。中緯度つまり日本上空では、偏西風によって東に進路を変えることが多い。偏西風は西風すなわち「西から東へ」と吹く風であり、台風の動きも「西から東へ」である。

 

[今後の学習]「解法」では全く図には触れなかったけれど。興味深いので台風の月ごとの動きについても目で確認しておいて欲しい。

解法では太平洋高気圧で説明したけれど、地球を取り巻く気圧帯とその移動によって説明した方がわかりやすいかもしれない。

亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の季節的な移動を考えて欲しい。春には北緯25°付近に位置している亜熱帯高圧帯であるが、夏になると北上し北緯35°付近に達する。つまり日本はこの時期に高気圧に覆われるということ。それより低緯度側は貿易風帯となり、東風が卓越。7〜8月に発生した台風は東から西へと移動し、台湾や南シナ海へと向かう。

9〜10月には亜熱帯高圧帯は日本列島上空から離れ、再び北美25°付近へと。日本上空は偏西風帯となり、西から東へと移動しながら日本付近に達する台風が増える。