2006年度地理A追試験解説

2006年度 地理A 追試験 [解説]                            

<第1問>

問1 正距方位図法。東京からみてサンフランシスコはどの方向か。そもそもサンフランシスコがどこかわからないと解けないハードルの高さはあるんだが(笑)。図法はほとんど出題されないものの、とりあえず正距離方位図法の見方だけは知っておいて欲しいかな。図の中心点からの方位と距離が正しい。

問2 同じく正距方位図法。地球の大円の一周の長さは40000km。よって正距離方位図法で表された地球全図の直径は実際の40000kmに相当する。

問3 これもニューヨークの場所がわからないとツラいなぁ(苦笑)。ニューヨークは西経75度の経線に沿う。ロンドンより5時間遅れている。360度で24時間なので、75度では5時間。

問4 ①;河岸段丘にみられる微地形は、段丘面と段丘崖。急斜面である段丘崖には集落は立地しにくく、より平坦な段丘面に集落が成立する。②③;氾濫原にみられる微地形は、自然堤防と後背湿地。氾濫原のような低湿な地形においては、水害を避けるため微高地である自然堤防上に集落が立地する。後背湿地は水田。④;扇状地にみられる微地形は扇頂、扇央、扇端。扇状地は水はけが良く、中央部(扇央)には集落は成り立ちにくいが、末端であり湧水が得られる扇端には集落が自然発生する。

問5 これはいらないね。無視。逆に知っていると他の問題で間違う。

問6 ニュージーランドの季節。っていうか、北半球と南半球の違いをしっかり考えて理解しているか。「紅葉は、この国の春に始まる」わけがない。紅葉は、世界中(いや、宇宙中)どこにいっても絶対に秋から始まる。もちろんニュージーランドの秋は3月から5月ぐらいで、日本なら春に該当する。言葉遊びっていうか、こうした問題がしっかり解けるって大切だと思う。

問7 これ、ボクは地元だから知ってるけど、普通知らないよね(笑)。上空の暖かい空気と混ぜることによって霜を防ごうというファンなのです、これは。

問8 人口で考えるのが基本。最も多い①がアジア、少ない④がオセアニア。アフリカは約10億人、南アメリカは約4億人。よって③が該当。面積で判定は厳しいな。

<第2問>

問1 研修に注目。留学と同じ意味t思っていいと思う。1人当たりGNIが低い国から日本へと留学(研修)にやってくる。イが中国。ウは興行でフィリピン。フィリピン人の女性が「エンターテインメント」ビザを持って入国してくる。

問2 いい問題ですね。②;多文化主義を打ち出し、海外から多くの移民を受け入れているオーストラリアだが、位置的に考えればアジアからの移民が多いとみて妥当だろう。ヒスパニックとはスペイン語話者という意味であり、主にメキシコやカリブ海地域からの移民を指す言葉。距離的に近い(というかそもそもメキシコとアメリカ合衆国は長い国境線で直接的に接している)アメリカ合衆国へと多くが向かう。

④;中国は1人当たりGNIの低い国であり、外国からの出稼ぎ労働者にとって魅力のある国ではない。この国の最大のキーワードの一つが、沿海部と内陸部との経済格差。これにより内陸部から沿海部へと労働力が移動している。

問3 GNIと貿易額は比例する。AともCとも貿易額が大きいBは日本に該当。貿易黒字国である日本だが、Aとの貿易は赤字(輸入超過)となっている。Aは資源国であり、オーストラリアに該当。好きな問題です。

問4 日系企業の進出数は、1位中国、2位アメリカ合衆国、3位タイ。GNIが大きな中国とアメリカ合衆国は「当たり前」なのだが、だからこそ人口7千万人の中堅国に過ぎないタイとの交流密度の高さが印象的。①がタイとなる。②から④については、内容(割合)を見ていこう。②のみ「製造業」の割合が低い。1人当たりGNIが高い高賃金国であり、しかもそもそもの人口も少ないのだから単純労働力も得にくい。②がシンガポール。これもいい問題です。

問5 パキスタンのような非OPECの低賃金国から、裕福な産油国であるサウジアラビアなどに出稼ぎが発生している。

問6 1人当たりGNIの高い日本や韓国、東南アジアの工業国マレーシア、タイが「高」とみていいと思う。そうなるとインドと中国が難しいんだけどね。ロシアとモンゴルで比べてもいいかな。インドはコンピュータソフト開発国であり、比較的インターネット環境が整っていると考えるのが無難かな。

<第3問>

問1 豊田市の新旧地形図を比較した問題。内容はオーソドックス。①;桑畑が転換されて住宅地になった。果樹園の土地利用記号はみられない。②;「小規模」っていうのがちょっと気になる言い方ではあるけれど(笑)。工場の地図記号は知っておいていいと思う。歯車だね。③④;新しい道路が敷設されている様子を読み取ろう。⑤;鉄道の判別が難しいかな。駅を目印にしてみよう。⑥;「公共機関」は無視していいと思う。正文でしょ。

問2 ②の「小規模な工場」がすごく気になる表現なんだね。「1工場当たりの従業者数が少ない」、あるいは「1工場当たりの出荷額が小さい」ことを調べてみよう。例えば一般機械器具は、工場数において全体の2割ほどを占めているが、従業者数は10%に満たず、出荷額に至っては極小に過ぎない。1工場当たりの従業者数は比較的少なく、1工場当たりの出荷額は極めて小さい。

これに対し、輸送用機械(自動車と思われる)器具に注目してみよう。工場数は全体の2割程度だが、従業者は8割ほどを占めている。「従業者数÷工場数」で示される1工場当たりの従業者数は平均値より多いことが分かる。また出荷額は90%超となっており、「出荷額÷工場数」で示される1工場当たりの出荷額も高い値となる。

問3 Aはもともと多い。韓国・朝鮮である。近年やや減少しているのは帰化(日本国籍取得)などによる。一方、90年代はじめより急増しているのがブラジル人。日系人の入国規制緩和(単純労働者であっても日系人ならば入国・滞在できるよう法律が改正された)によってこの時期ブラジルからの日系人が急増した。とくに豊田市は自動車工業都市である。

問4 地価が高く、公共交通機関が発達している東京都においては人口当たりの自動車保有台数が少ない。④が東京都。また神奈川県は、愛知県に次ぐ日本有数の工業県であり、自動車工業(輸送用機械工業)も発達している。③が愛知県。①と②で迷うが、日本海側の富山県ではさほど工業が発達していないとみるのが妥当だろう。一方、関東内陸工業地域の群馬県は比較的自動車工業が発達している。②が群馬県。日本地理(っていうか中学地理)の問題かな。

問5 1980年代に日本は世界最大の自動車工業国となったが(問6図4も参照しておこう)、アメリカ合衆国への輸出が増加したことにより、同時に貿易摩擦(貿易不均衡)の問題も勃発した。この解消のため、日本からアメリカ合衆国へと自動車工場が移転し、現地生産(現地で販売することを目的として生産活動を行う)が始められた。

問6 1970年代から1980年代への流れがポイントとなる。1960年代に高度経済成長を果たした日本は世界有数の工業国となったが、1970年代のオイルショックにより、資源多消費の重厚長大型工業(この言い方は覚えなくていいです。鉄鋼業や石油化学工業のこと)が大打撃を受けた。しかし、逆に自動車工業においては、オイルショックによる原油価格高騰がかえって追い風となり、燃費の良い日本車の国際的な需要が高まった。1980年代に、それまで首位だったアメリカ合衆国を追い越し、日本が世界最大の自動車生産国へとのし上がった。

ただし、1990年代以降は貿易摩擦とそれに伴う現地生産の拡大の影響によって、日本とアメリカ合衆国の自動車生産台数の差はほとんどないものとなっている。

<第4問>

問1 写真がよくわかりません(笑)。とりあえず①は棚田の写真なのですが、モンスーンアジアに該当し、ウのフィリピン。フィリピンは山岳国であり、斜面に棚田が多く開かれている。②はエアーズロック(ウルル)。オーストラリア中央部でエに該当。アボリジニーの聖地でもあり、現在は彼らによって管理がなされているそうだ。③はサバンナ(熱帯草原)でケニア・タンザニアのイ。④は険しい山脈でロッキー山脈のア。

問2 これ、すごく好きな問題なんですよ。かなり考えなくてはいけない。文章を読むと、とりあえず農作物(っていうことは植物だね)の生育条件の問題であることが分かる。「熱帯」、「温帯」、「冷帯」といった言葉が並び、これらと農作物の生育環境を対応させることが必要であると認識しよう。

とりあえず、正誤を判定するために、とりあえず各選択肢の文章を読解していく。

①;キャッサバは「温帯」と「冷帯」。つまり「熱帯」では栽培されない。

②;ジャガイモは「熱帯」。つまり「温帯」と「冷帯」では栽培されない。

③;米は「温帯」と「冷帯」。つまり「熱帯」では栽培されない。

④;小麦は「熱帯」と「温帯」。つまり「冷帯」では栽培されない。

⑤;テンサイは「温帯」と「冷帯」。つまり「熱帯」では栽培されない。

⑥;大豆は「熱帯」と「温帯」と「冷帯」。

例えば、①を否定してみよう。熱帯でキャッサバがさかんに栽培されている例を探せばいいわけだ。キャッサバの統計を考える。生産1位はナイジェリアである。ナイジェリアは熱帯の国だ。熱帯でもキャッサバはつくられているではないか。いや、熱帯でこそキャッサバはさかんに栽培されているというべきか。いずれにせよ、①は誤りとなる。

②について。ジャガイモの世界最大の生産国はロシア。そもそも日本でも北海道(冷帯)でさかんに栽培されているのだから、むしろ冷涼な地域に適応する作物であることがわかるね。これも誤り。

③について。米の栽培地域は東アジアから南アジアにかけてのモンスーンアジア(季節風の影響が強く、降水量が多いアジア地域)。東南アジアのような熱帯地域ももちろん含まれている。

④について。小麦についてキミたちが絶対に知っておくのは、春小麦と冬小麦があるということ。冷涼な地域が春小麦、温暖な地域が冬小麦。春から秋にかけて栽培する春小麦ならば、カナダやロシアのような冷帯国でも十分に栽培されている。これも誤り。

以上、消去法で⑤と⑥が正解。どうかな。理路整然とした思考手順が必要となる理系的思考を生かした問題とボクは思いますが、いかに?

問3 最初にカロリーに注目。1人当たりGNIが高い国では一般に高カロリーの食事が取られている(例外は日本。日本は経済レベルの高い国であるが、欧米に比べて比較的カロリーが低いヘルシーな国である)。よって最も1人当たりGNIが高いドイツが①、比較的1人当たりGNIが高い(約10000ドル)のメキシコが②。残ったモンゴルとベトナムはいずれも経済レベルの極めて低い国。ここからは内容に注目する。ポイントはモンゴル。モンゴルは遊牧の文化を持つ国。農耕が重視されず穀物や野菜の摂取が少ない反面、家畜を飼育し乳製品を主な動物性タンパク源とする。でんぷん(つまり炭水化物)の割合が低く、動物性食料(これは乳製品を考える)の割合が高い。④がモンゴルである。残った④がベトナム。主穀を米とする国であるが、米は比較的穀物の中ではカロリーが高く、ベトナム人の食生活を支えている。

問4 ま、④が違うんでしょうね(笑)。

問5 しかしRの何でもアリな感じはすごいね(笑)。さすが複合民族国家マレーシア!Pの革命はフランス革命のことでしょ。Qは「断食」がいかにもイスラム国家パキスタン。

問6 インドは世界最大の映画国らしいね。しょうもない雑学が問われている点で、いかにも地理A的ですね(笑)。アメリカ合衆国とホンコンについては国の規模で考える。

<第5問>

問1 1人当たりGNIの高い国からは、人口は流出しない。

問2 この問題、めちゃめちゃいいじゃないですか!ちょっとおどろいた。

①;農業技術は日々刻々と進化しているのです。食料生産量も増加している。人口増加率より食料生産の増加率の方が高く、1人当たりの食料生産量も増加の一途にある。

②;その食料生産の増加の度合いが最も高い地域がアジア。「緑の革命(グリーンレボリューション)」という農業の近代化が実施され、耕地整理、灌漑施設の整備、肥料の使用、高収量品種の開発などが行われた。とくにインドではこれにより(貧富の格差が拡大したというデメリットもあったが)食料の生産量が急増した。米は輸入国から輸出国へと転化し、小麦はアメリカ合衆国を抜いて世界2位の生産国となった。

③;先進国は全般的に食料自給率が高い。例えば穀物の主な輸出国はアメリカ合衆国やオーストラリア、フランスである。ヨーロッパ全体も食料輸出地域である。

以上より正解は④。世界の食料生産は増加しているのだが、未だにアフリカには貧困と飢餓に苛まれる国がある。なぜだ!?

問3 ①;北半球(欧米など)が高く、南半球(中南アフリカなど)で低いという傾向がある。②;ナイジェリアはOPEC加盟国であるが、人口規模も大きく、1人当たりGNIは低い。③;全体としてアジアは低い。④;ASEAN加盟国が問われる例は珍しいが(地理Aだからか)、インドネシアなどは低い。④;アフリカの大部分は欧米の植民地支配の下にあった。これは正文とみていいだろう。⑤;オーストラリアやニュージーランドの値は高い。⑥;ボリビアやチリは中程度。

問4 ベトナムは社会主義国。「市場経済化」は社会主義国のキーワード。すでに市場経済となっている資本主義国なら、今さら「化」とは言わないでしょ。

問5 これがよくわからないんだよなぁ。東京が正解?

問6 これは地理の問題じゃないな。キーワードもよくわからない。