2015年度地理B追試験[第6問]解説

第6問 地域調査の大問。今回のテーマは愛媛県宇和島。数年前、某予備校の模試でこの地域がジャストミートで扱われていた。作成された先生は知り合いなんだけれど、マジすごいね、的中やん。こういうのって当たるとすごくうれしいし、うらやましいかぎりで。

問1 20万分の1地勢図を用いた問題。ちなみに、5万分の1と2万5千分の1が地形図、20万分の1が地勢図、1万分の1が国土基本図。別に覚えなくていいけど参考までに。

で、この地勢図って本来はきれいなカラー印刷で見ていて楽しいんだが、それがセンター試験の場合は白黒印刷になってしまうから、厄介なんだわな。「ぼかし」も入っていたりするから、非常に判読しにくい図になってしまっている。でも、それを読まないといけないのも、受験生の宿命なんだけどね。しっかり目を凝らしていこう。

正解(誤り)は③。地形図(地勢図だけど)問題って、立体視が重要になっていて、とくに数字にこだわって土地の起伏を読み取ることが重要となる。本問もその典型。等高線が何メートルの高度差ごとに描かれているかについて知る必要はなく、数字をダイレクトに読んでしまえばいい。「下波」付近に「489」という数字があり、これがこの地点の標高を表している。「100メートル以下」ではないね。

①について。「多く」というほどでもないけれど、それなりの数の島は確認できる。多島海とみて問題ないでしょう。多島海とは文字通り、島の多い海。

②について。山地が沈降し、谷に海水が浸入し、深い入り江となったものが「溺れ谷」。文字通り、谷が溺れているわけだ。沈降性の海岸ではこのような複雑な海岸線となりやすい。たしかに全体として複雑な海岸線になっており、溺れ谷も妥当といえる。なお、溺れ谷が連続してみられるノコギリ状の海岸線が連続する地形がリアス式海岸。リアス式海岸は有名だから、説明はいらないよね。

④について。ちょっとこれは判定しにくいのだが、海岸線に沿って道路が走っており、それに接して家屋が並んでいる様子はいろいろなところで確認できる。海岸沿いに集落があるとみて、とくに問題ないんじゃないかな。

問2 人口ピラミッドを比較する問題。①に「ベビーブーム」という言葉が登場し、これについての知識が問われているわけだが、センター地理って案外とこうした知識って必要にはならない。おそらく選択肢の①は正文(つまり答えじゃない)なんじゃないかな。他の3つの選択肢について確かめていく。なお、数字は概数です。

まず②から。なるほど「20〜24歳」は大学生や新社会人に該当する年齢層。こうした地域においては大学も少ないだろうし、就職先も限られている。この年代が他地域へと流出する傾向はあるだろう。正文。

続いて③。「1980年に0〜4歳」というのは、2010年には30〜34歳。1980年の0〜4歳は、男性が3900人、女性が3700人で、合計7600人。。2010年の30〜34歳は、男女とも2100人ずつで4200人。この年代の人々がそれほどたくさん死亡するとは思えないので、この人口変化の原因は転入と転出によるものとみていい(市町村や都道府県の人口増減については、主に社会増加[転入マイナス転出]で考えるべきというセオリー)。7600人から4200人に大きく減少しているのだから、「転入<転出」と考えるべきだろう。よってこの選択肢が誤りで、正解。

ここまでいいのだが、いちおう④についても確認。それぞれ15歳と65歳に横線を引いてみて、0〜14歳人口、65歳以上人口の割合を考えてみよう。本図は実数(人数)によって描かれており、割合ではないのだが、おおよその想像はできると思う。2010年の人口ピラミッドの方が安定感がなく、頭でっかちな印象。年少人口の割合は低く、老年人口の割合が高い。

問3 ちょっと悩んだ地形図問題。おそらく②が違うんじゃないかな。二重丸の記号で表される市役所は確かに移転している。しかし「跡地周辺の道路網が改変」されたようには見えないのだ。市役所そのものより、街路区画を観察することにポイントがある問題なのです。もちろん、市役所の地図記号も覚えておいて欲しいけどね。

他の選択肢はとくに検討する必要にないと思います。一応、簡単なコメントのみ。

①について。着色された道路は「国道」。中央に点々が描かれていれば「有料道路」だが、宇和島道路についてはそうじゃないみたいだね。他の道路ともつながっているし、普通の幹線道路でしょう。ただ、中央に高架の道路が敷設されていて、通行はスムーズになっているみたい(特殊な形状だなぁ)。トンネルだけ確認しておいてくださいね。図の上端に「トンネル」の文字が、同じく左下に「坂下津トンネル」がみられる。トンネルの部分の道路は輪郭線が破線になっているので、観察しておこう。

③について。「埋立地」については、実際に海に向かって陸地が拡大している様子を観察しよう。また海との境界線が「へい」の記号になっている。コンクリートで固められた土地であるため、岸壁は垂直の壁となっているのだ。さらに「官庁施設」については「港湾合同庁舎」がこれに該当するとみていい。「港湾」についてはその南側の入り組んだ部分(やはり岸壁で囲まれている)が該当。外洋との境界に防波堤(黒い太線で表される)とその先端に「灯台」の記号。典型的な港湾である。

④について。保手の南側に「田」の土地利用記号がみられる。日本において田はほとんどが水田であるので、これはもちろん「水田」は正しい。さらに「市街地化」とある。市街地というと密集して建物があるイメージだが、この程度のものでも十分に市街地と言って構わない。住宅地=市街地である。また「斜面にも建物」を確認しよう。ここは「保手四丁目」の「保」の文字付近に注目。山肌をえぐるように等高線が示され、下方に向かって短い線が連続する。これは「土のがけ」の記号であり、実際には斜面を意味する。山麓部を大きく削り取って、住宅用地を造成した様子をイメージしよう。「四」付近に等高線もみられ、この土地が傾斜地となっていることがうかがえる。

問4 これはどうってことのない問題じゃないかな。

ア;「宇和島市の市街地の近く」の港は九島の東側。ここで割合が高いのは「漁船漁業」。

ウ;「外海」に面するのは、戸島がわかりやすい。「魚類養殖」である。

以上より②が正解。

鮮度の高い魚を直接届けられるように、市街地に接した漁港には漁船の入港が多く、真珠は波の静かな入り江、そして養殖は透明度の高い海水。このような内容も文章から読み取れるね。

問5 ちょっと解き難い問題だなと思った。こういうパターンの問題は、裏をかいて考えようとせず、素直な思考に基づいて解答を導くことが大切。

カについて。「石垣」の存在意義はともかくとして、「階段状の畑」という時点でピンとくるんじゃないかな。斜面に耕地を開くわけだから、土砂の流出の危険性は高い。階段状の畑にすることでそれを防いでいるのだ。山間部によくみられる棚田や、アメリカ合衆国の等高線耕作なんかを考えてもいいね。カには「土壌流出」が該当。

キについて。果樹園を囲むように針葉樹が植えられている。これについても素直に防風林を考えていいと思う。干害とは雨量が少なくて土地が干上がってしまうことだが、樹木を植えたからといって雨が降るわけでもないでしょ。キには「強風」が該当。以上より正解は④。

なお「塩害」には2種類あり、一つは乾燥地域でみられるもの。乾燥地域において灌漑(かんがい)農業が行われると、土中の塩分が地表面に集積し、農耕に適さない土地となる。これは湿潤地域である日本においては一般的ではないだろう。もう一つは、海水が入り込むことによって耕地が塩まみれになり、農業ができなくなること。津波に洗われた耕地などではこの被害が大きいようだ。日本で考えらえる塩害はこちらだと思う。海岸沿いの低地において顕著な災害であり、段畑がみられるような山地斜面には関係ない。

問6 正文判定(つまり3つの文の誤りを指摘しないといけない)っていうのがちょっとしんどいぐらいで、問題としては容易。例年、この第6問の難易度って低い傾向があるんだけど、何かしらの意図があるのかな。

②について。住宅地図は、建物の配置が描かれているだけであり、そこに居住する人々の情報までが示されているわけではない。年齢などの情報はわからない。

③について。例えば動画ならば住民行動がわからないでもないような気がするが(例えば、災害の瞬間をとらえたテレビ映像など解析することで、住民がその時とっていた行動がわかるかもしれない)、静止画はどうだろう?とくにここでは「空中写真」とあるが、上空からの写真で住民一人一人の様子を探るのはさらに不可能に近い。

④について。地形図に井戸の記号はない。地形図をみても井戸の存在はわからない。

以上より、①が正解。どうかな、こういう問題が不得手な人っているんだよね。慣れが必要なんだと思う。ありがちな問題パターンであり、類題で練習することはいくらでもできる。