2018年度地理B追試験[第6問]解説

<第6問;兵庫県の地域調査>

【30】 【インプレッション】 小縮尺の図から、大まかな地形の様子を読み取る問題。このパターンはCGを用いた鳥瞰図(空中から眺めた図)が持ちられることが多いのだが、今回はちょっと違うかたちになっているね。ただ、地形の立体視というか、凹凸を読み取ることがポイントになっている点はオーソドックスといえる。

【解法】 図の陰影によって土地の高低や凹凸を読み取り、河川の流れや土地量を想像して解く問題。

「ため池」とあるが、もちろん水田への灌漑用の施設である。水田面積が広い地域こそ、ため池の数は多くなるのではないか。A〜Cを比較し、低地が広がり水田に適していると思われるのはB。また、Aも比較的平坦な土地が多いようにみえる。Cについては陰影が濃く、全体が山がちの地形である。こちらは水田には適さないだろう。

このことから、ため池の最も多いウがB、もっとも少ないアがCとなり、中間のイはA。正解は④となる。

念の為、河川の流れも見てみよう。アは南に水源があり、北に向かって流れている。なるほど、Cの地形は南が高く、北が低くなっている。

イは南東から北西に向かって流れる河川が多く、この方向に向かって土地が傾いていることがわかる。Aは北西側に海がみられ、こちらの方向が低い土地であることがわかる。イをAとみて妥当である。

ウは全体にため池が多く、ほぼ全体に水田が広がっているのだろう。河川は北に向かって流れるもの、東に向かって流れるものなど多様である。全体的に緩やかな地形であることが伺える。Bをウとみて問題ないだろう・

【アフターアクション】もちろん図の見方が重要なのだが、「ため池=水田=低地」という発想も重要。問題の意図を噛み砕いてから、じっくり考えて解いてほしいな。単純なゴロ合わせ的な知識が問われる問題じゃないってことだね。

【スイマセン、間違えました(涙)】 

自信満々に正解を④としていましたが、実は⑥が正解だったなんて!?

つまり、「C=ア」の組合せは合っているわけか。AとBが反対。ん、どこがポイントなんだ?もしかして、ため池って全然関係ない?うん、そうだ、そこに騙された!河川だけがポイントだったんや!

なるほど、AとBの違いってどこにあるかっていうと、Aはほぼ東岸から西岸まで淡路島を完全に横断しているのに対し、Bは中央部から西岸付近までしかカバーしていないのだ。そうかぁ、とくにAの南東端は海に接しているわけで、この付近で降った雨水は東の方へ流れていくのが当たり前だ。イとウと比較しみてよう。イでは南東部から河川が発しているが、これが北西に向かって流れていく。もし南東端が海だったらこんな流れ方をするわけがない。

それに対し、ウを参照。南東部に川はないけれど、それに近い東側に中央部には二つほど川が流れていて、これは東に向かって流れていく。この図のすぐ東側に海があると考えれば、非常に納得できる河川の流れ方なのだ。ウの】中央部の川(ウいう文字のすぐ上にみられる、図を縦断する河川)は水源がわからないのでどの方向に流れているかわかりにくいけれど、西側の河川は西へと流れ、やはりこちらに海(瀬戸内海)がある。なるほど、川の流れに注目すれば良かったのか。。。河川の流れは地形の凹凸を正しく表す。だからこそその流れる方向については厳密にチェックしないといけなかったのか。。。難問でした。申し訳ないです。

【31】 【インプレッション】 地形図読解問題。いわゆる最新バージョンの地形図ではなく、旧来の地形図なので判別が容易。新型地形図って色による表示が多いので、白黒印刷じゃ厳しいんだよね。っていうか、センター試験もカラー印刷にするべきやなと思ってるんだが、これって邪道なんだろうか。

それはともかく、地形図問題としては本問はかなりオーソドックスだと思う。新旧の2枚の地形図比較は最もよくあるパターン。本試験の方が、現在の地形図だけの判定問題だったのに対し、追試験ではあえて正攻法で。さらにこの手の問題は難易度も低いことが一般的。さてこの問題はどうかな?

【解法】 新旧の地形図比較。とくにこのように、中小都市の市街地開発がテーマになることは多い。オーソドックスな問題と言えよう。

地形図問題のコツは、最初に選択肢を読解すること。あきらかに怪しい選択肢を探して、見当をつけてから地形図を注視すること。

では早速選択肢の文章を読んで、誤っているとすればどの部分が怪しいのかチェックしていこう。

まず①について。「郊外化が進む」という部分は判定しにくいが、なるほど地方都市では駅前商店街が衰退し、郊外の幹線道路沿いに大規模商業施設が建設されることが多々ある。この地域がそれに当てはまるかどうかわからないが、ありがちなパターンである。しかし、その「郊外化」とはそのような商業を始めとした産業、あるいはニュータウンなど新興住宅地の開発に関することであり、「寺社」については該当するのだろうか。「地価の高い都心部を避け、広い土地が確保できる郊外に寺社が移転した」なんていうケースがあるか???これ、かなり怪しい選択肢。

さらに②について。なるほど、「港湾部から内陸部に向かう鉄道」があったのだな。港湾から導かれているということは、港に荷揚げされた貨物を輸送するための鉄道だろう。かつての貨物交通の主役は鉄道だった。しかし現在ではトラック輸送が主となり、こうした貨物専用の鉄道には廃線になるものも多い。また、その跡地はそのまま道路として利用されるケースがある。この選択肢は正文っぽいんだが。また「ほとんど」っていうのもおいしいワードだね(笑)。これが「全ての」なんていうように、かなり限定してきたら怪しくなるんだけど。

次は③。これはどうなんだろう?再開発によって街路区画が改変されることはよくある。歴史的な城下町なんかではそういうことはないんだが、洲本市街地の場合はどうなんだろう。チェックしないとね。

最後は④。右岸と左岸はしっかり確認しましょう。下流側を正面にして、向かって右が右岸、左が左岸。公共施設については具体的に述べられていないので、地図記号で確認しないといけない。大丈夫かな。

以上より、僕が最も怪しいと思うのは①なわけだよ。真っ先にこれを確認しよう。

市街地の西部で寺社を探してみる。なるほど、あった! 1935年の図においては「てらまち」の駅の近く、河川(洲本川へ南から注ぐ支流。千草川というのだろうか)に沿っていくつか「卍」の記号がみられ、これが寺院(寺社)である。2005年の図をみると、同じ場所に「移転」どころか、さらに多くの寺社が集まっているようだ。「卍」が数多くみられる。これが誤りとなる。

どうだろうか。地形図問題を数多く解くことで経験値を上げると、「怪しい選択肢」が雰囲気でわかるものである。とくに本問においては「ショッピングセンターでもあるまいし、郊外化によってお寺が郊外に移転するわけないやろ」っていう都市構造に基づく理論的な思考もできたと思う。選択肢の文章から先に読解するというアプローチは、問題の正解率を上げるだけでなく、問題にかかる時間を節約することにもつながる。みんなも地形図問題に数多くあたり、経験値を稼いでほしい。

なお、一応他の選択肢についても触れておこう

②について。これは先ほど述べたことに一部誤りがあったことを先に詫びておかなければいけない。「貨物専用の鉄道」と勝手に判断してしまったが、図をみるとどうやらそのようなものではなく、人々の足となるような一般の旅客用の鉄道のようだ。淡路島にそのようなものがあったとは意外(知識不足でスイマセン)。図の西から入ってきて、「てらまち」や「すもと」といった駅があるね。

ただ、この鉄道については2005年の段階では消えている。やっぱり鉄道ってコストがかかりすぎてしまうんだろうね。かつて鉄道が敷設されていたところに沿って、現在は道路が整備されている。

④について。なるほど、たしかに洲本川の河口の右岸に「紡績工場」が立地している。繊維工業が盛んだったのだろう。現在も工場はみられるようだが(歯車の地図記号)、何の工場かは不明。敷地はやや縮小しているようだ。「広げた本」の記号がみられ、これは図書館。公共施設が新しくつくられている。

【アフターアクション】 地形図問題は経験値が全て。数多くの問題に当たって、出題のされ方のパターンを覚え、「目」を鍛える。本来はカラー印刷であるものを、白黒印刷で見ないといけないのだから、ナンセンスだなと思ってしまうのだが、高得点を取るためには仕方ない。センター試験特有の地形図の見方(色に頼らず、白黒印刷の中でしっかり判定していく)ことに習熟しよう。

さらに上でも述べているが、先に選択肢の文章を熟読して、ある程度の見当を就けてから解き始めるのは非常に有効。漠然と地形図を眺めていても、時間ばかり立ってしまっておもしろくない。見るべき箇所、ターゲットを絞ってから地形図読解に取り掛かろう。

【32】 【インプレッション】 変な淡路島(笑)。北の方向がずれているので、キプロスみたいな感じになってる。もっとも、これが淡路島でなく、架空の島であっても全然解ける問題であるので、その場でじっくり時間をとって。思考して問題にアタックしよう。

もっとも、この「時間をとって」っていうのが難しかったりするんだけどね(笑)。普段の模試からゆっくり問題を解くという訓練をしておかないといけないね。

【解法】 階級区分図を用いた問題。長い問題文や複数の図など「ヒント」が多く提示されているので、これらについてじっくりと腰を据えて読み解いていこう。

まず「民営バス」と「コミュニティバス」の違いについて。文章にもあるように「採算性」が重要なようだ。採算が取れる区間ならば、民間の会社によるバス路線が設置されているはず。一方で、人口減少や過疎化によってバスを利用する人の絶対数が減少し、採算が成り立たなくなると自治体による(つまり税金を使ったということ)コミュニティバスに頼るしかない。

このことから、「人口密度が高い地域=民営バス」、「過疎化が進む地域=コミュニティバス」の関係性がみえてくる。

さらに図についても観察していこう。「総人口に占める65歳以上人口の割合」。島の北西部や南部(北の方向が曲がっているのでややこしいなぁ)、で高齢化が著しく、東部の洲本市街地(市役所があるエリア)などで比較t系高齢化の進行は緩やかである。若者が職をもとめて都会へと出ていく。北西部や南部で人口が減少し、過疎化が進んでいることが伺える。

カとキは、「人口密度」と「通勤・通学者数に占める自家用車利用者数の割合」のいずれか。ここは人口密度がわかりやすいだろう。人口密度は「人口」に比例し、「面積」に反比例する。ここは人口で考えたらいいんじゃないかな。高齢化が進む過疎地域は人口密度が低く、市街地は比較的人口密度が高い。このことから、左の図と高低が反対の傾向にある(色がひっくり返っているってことね)カが「人口密度」と解く。キが「〜自家用車利用者数の割合」である。

さらにサとシについて。人口密度が高い地域では民営会社の経営が成り立つが、過疎地域ではそうはいかない。人口密度が低く、高齢化が顕著な過疎地域である南部に集中している(一部は北部にもみられるが、こちらもやはり過疎地域である)シが「コミュニティバス」であろう。サは「民営バス」となるが、洲本市役所周辺には企業や官公庁、工業や商業施設も集中しているのだろうか。通勤者のための路線バスがかなり整備(それでも一日に20本程度だが)されていることがわかる。正解は②である。

なお、キが「〜自家用車利用者数の割合」であるが、サとシを参照するにバス路線が整備されていない地域でこそ、値が「高」となっているのは納得。

【アフターアクション】「問題文の量が多ければ、必ずその中にヒントがある」という典型的な問題。コミュニティバスの意味がわからなければ問題が解けないのだが、それについてはしっかり問題文に書かれているね。「採算が取れる民営バス」と「採算が取れないコミュニティバス」の違いが把握できれば、この問題は8割がた正解できたも同じ。逆に問題文をろくに読まず「コミュニティバスって何なんだ?」って頭を抱えながら解けば、正解にはたどり着けない。

また図4が階級区分図であることもしっかり把握しておこう。階級区分図は割合の高低を示すもので、エリアごとに色や模様の違いがみられる。本問で登場している3つの指標(総人口に占める65歳以上人口の割合、人口密度、通勤・通学者数に占める自家用車利用者数の割合)はいずれも割合である。なお、割合については「分子」だけでなく「分母」も大切なのだが、(人口密度ならば、人口だけでなく面積に大切)なのだが、本問については分母を考える必要はなかったかな。単に人口密度については人口を基準に考えればよかったし、また高齢者の割合についても過疎化や若年層の流出と結びけて考えることができれば十分だった。

【33】 【インプレッション】あっ、タマネギだ。やっぱ淡路島といえばタマネギですよね。小学校の社会科の時間に勉強するような内容で、なんだかホッとしますね(笑)

【解法】 極めて簡単な問題。タについては図をそのまま読解。「流通時期」をみればわかるように、北海道産のタマネギが東京の市場において品薄になるのは「6〜8月」。ここは「夏季」で何の問題もないでしょう。

さらにシについては、大都市圏向けの野菜栽培を行う農業形態ということで、もちろん園芸農業なのだが、それにも「近郊」農業と「輸送園芸」農業の二つがあることがポイントとなっている。兵庫県の場合は、大阪市の大都市圏に含まれ、淡路島の農業についても「近郊」と考えていいと思う。輸送園芸ならば、高知県や宮崎県などで栽培されたキュウリやピーマン、トマトなどの園芸野菜がトラックで輸送されることを想像するよね。①を正解とみていいでしょう。

【アフターアクション】「生産時期」のグラフが読み取りにくいんだが、これはとくに意識しなくていいのでしょうね。ちょっとおもしろいなと思ったのは、北海道のタマネギの収穫期は、8月の頭と9月なのだが、市場に出回り時期っていうのは9月から翌4月までだっていうこと。輸送の手間や保存期間がある程度長い(半年程度は保存できるのかな)ことを考えると、そんなもんなんだろうね。それに対し、淡路島のタマネギの収穫時期は5月から6月。5月には早くも大阪にはとれたての新タマネギが出回るのだが、東京については若干のタイムラグがあり、6月から。5月中は北海道産に押されて、まだ市場では扱われないんだろうね。

それにしても、たしかに新タマネギはおいしいわ。普通のタマネギが、ある程度の期間、保存してからスーパーに並ぶのに対し、大阪のスーパーには淡路島産の新鮮なタマネギが売られている。なるほど、そういった差があったんやなぁ。

【34】 【インプレッション】ちょっと難しい気がする。決して高度な知識が問われているわけでないんだが、果たしてそれに気づくかどうか。教科書的な勉強ではなく、いかにセンター試験に慣れているかどうかが天国と地獄の境目なんじゃないか。

【解法】文章正誤問題のポイントは「誤っていそうな言葉を探すこと」。その際に重要となるのは、「形容詞」と「対義語を持つ言葉」。例えば形容詞については、選択肢①の「長い」があるね。これを「短い」とすれば反対の意味を表す選択肢となる。誤文の可能性は十分にある。あるいは選択肢④の「増加」も怪しい。これは名詞ではあるけれど、意味は「増えている」だよね。これには「減っている」という対義語があるわけで、この部分を変えれば誤文となる。

あるいは「対比の構造」を探すことも大切。「AとBを比べて◯◯である」という文章があれば、「BとAを比べて◯◯である」という誤文を容易につくることができる。本問の場合は選択肢②である。一見すると誤文としにくい文章なのだが、よく読んでみると前の部分に「太陽光発電は、(中略)火力発電に比べて」ってあるんだわ。まさに対比の構造。「火力発電は、太陽光発電に比べ不安定である」という文章をつくることができる。

選択肢③はちょっとおもしろくて、例えばこうした問題で固有名詞が誤っていることはほとんどない。ここでは「関西国際空港」だよね。この部分は正しいとみていい。対義語を有する言葉としては「埋め立て」があり、この言葉を「干拓」や「掘り込み」に入れ替えることができるかどうかについて見当しないといけない。ただ、今回は埋め立てが誤っていることはないんだけどね。前の部分に「埋め立てに用いられてきた」という言葉があり、そもそも埋め立てであることは大前提。ここはノーチェックでいいよね。選択肢③で気になる言葉は「工業」だけなんだよね。埋立地が工業用地として使われているだろうか。この当たりを意識してみてほしい。

では以上のことをポイントとして、各選択肢を検討していこう。

まず①について。瀬戸内地方って日想時間が長いのか?これは「正」とみていいんじゃないかな。日本全体の年降水量の平均は1500ミリ。ただし、周囲を山地で囲まれた中央高地や瀬戸内地方ではやや少なく1000ミリ程度。とくに瀬戸内地方においては、夏の季節風(南東)によって太平洋からもたらされる水分は急峻な四国山地に遮られ、冬の季節風(北西)によって日本海からもたらされる水分は広大な中国山地に防がれる。岡山県など山陽地方、香川県など四国北部は雨量が少なく、年間における晴天日数の多い地域として知られている。瀬戸内の気候である淡路島が全国平均と比べて「年間の日照時間が長い」ことは妥当。

選択肢②について検討しよう。太陽光発電と火力発電はいずれが不安点な電源方式かっていうことになる。瀬戸内は比較的晴天日数が多いとはいえ、年間の降水量は1000ミリはあり、これは世界的にみると決して少なくはない。日本には梅雨の時期もあり、日本海側地域には冬の雪もある。温帯の国としては地球上で最も降水量が多い地域とも言えるのが日本列島なのだ。一年を通じて晴れの日があるわけではない。天候の影響を大きく受けてしまうのが太陽光発電の弱点でもあるはずだ。一方、石炭や天然ガスなどの化石燃料に依存するのが火力発電であるのだが、もちろんそうした化石燃料が枯渇してしまうという懸念はあるものの、現在のところは安定した供給は保証されているわけで、発電は安定的に行われている。この選択肢も正文でしょう。

更に選択肢③。ここで気になる言葉は「工業用地」なのだがどうだろう?たしかに21世紀の日本において、大都市の湾岸が工業用地として開発される例は稀だと思う。東京のお台場や横浜のみなとみらい21,神戸のポートアイランドなどはオフィスやマンション、商業施設やイベント会場や遊興施設が立ち並び、工業地区という雰囲気はない。ただ、ここでは前に「高度経済成長期以降」とわざわざ断られている点に注目。1960年代をピークとする高度経済成長期は、日本の重工業化が急速に進んだ時代でもある。臨海部に製鉄所と石油化学コンビナートが新設され、輸入原料に依存した素材型重工業が発展した。どうだろうか。こうした経緯を考えると、「工場用地」についてはとくに否定するべき事柄でもないように思う。「などに利用」ともあり、とりわけ工業用地だけに限定した話でもない。この選択肢については否定しにくいため、やはり「正」とみていいのではないか。

最後に残った④である。果たして「増加」なのか、「減少」なのか。土砂採取場が太陽光発電施設に転用されるわけだが、それが「工場誘致」に比べ「雇用創出」がなされるのか、「宅地造成」に比べ「人口増加」が見込まれるのか。これ、解答は容易なんじゃない? 工場ができれば当然そこで働く人々が生じるわけだから、雇用創出の効果は大きい。宅地造成がなされれば、当然そこに住む人が現れるわけだから「人口増加」もみられる。太陽光発電施設はそもそもさほど労働力を必要としないだろうし、当たり前だけどそこに住む人もいない。選択肢④が誤りと考えていいだろう。

【アフターアクション】これ、いい問題だったよね。選択肢①、②、④にはしっかりと「比較の構造」が含まれ、それぞれの正誤を検討しやすい。さらに発電の問題と思わせて、労働力や人口の問題だったという点がおもしろい。センター試験の問題って「嘘つき」だから、テーマとは違った部分に本質が含まれている。問われている内容は簡単だけど、形式というか、問題を解くコツにおいていかにもセンター的な特徴が現れていたと思う。この問題を難なく解くことができたキミは、かなりセンターに習熟しているといえたと思うよ。

知識としては、こうした自然エネルギーに依存した発電方式は電力供給が不安定になりがちで、そこが弱点と言われていることを知っておこう。とくに太陽光や風力など気象の力を利用しての発電方式はその傾向が強いね。

だからこそ本文もで「政策的な後押しが必要である」と述べられている。「自然エネルギーは不安定だからダメだ。だから火力や原子力がいいんだ」なんていう思考は、世界標準ではない。例えばデンマークでは国内の総発電量の30%が風力発電に依存しているし、「欧州の大国:であるドイツですら10%が風力発電であるほか、太陽光発電量は近年中国に追い抜かれたもののそれまでは世界最大を誇っていた。その中国は、太陽光に加え今や世界最大の水力発電国でもあり、自然エネルギーの開発には積極的である。わが国のエネルギー政策って実は極めて遅れているんだっていう自覚を持つべき。

【35】【インプレッション】ヤバい問題だな、マジかっ。ここまで知識を深めておかないといけないのか。これ、厄介だよ。みんなもこの機会に、海溝型地震と内陸直下型地震の違いはしっかり押さえておかないと。

【解法】 最近のセンター試験では災害に関する話題が強調されている。これはおそらく新課程の地理総合に反映される部分なのではないか。問われている内容も以前より細かい。

ここで重要になるのは「津波」の発生システムについて。例えばこれまでは「高潮=台風」、「津波=地震」であり、この違いを問う問題が多数出題されていた。例えば「地震によって高潮が発生する」といった誤り選択肢など。高潮は、強い低気圧がもたらす風や上昇気流の影響によって水面が数mほど持ち上がり、低地(干拓地や埋立地、三角州など)に高波や浸水の被害をもたらすもの。津波は海底地震の波動が沿岸に達し、入り組んだ湾奥に巨大な高波が生じるもの。なお、ここで「高波」という言葉を用いているが、これはあくまで一般名詞であり、単に「高い波」を表すもの。高潮でも津波でも高波が生じるという点においては共通している(繰り返すが、発生原因が全く異なっているのだが)。

しかし、本問はそれから一歩突っ込んだ出題となっている。単に「津波=地震」では解けない。「津波=海底地震」であり、地震の種類にまで踏み込んだ内容となっている。

地震には「海溝型」と「内陸直下型」の2種類がある。海溝型は海溝やトラフ(小規模な海溝)を震源とするもので、それらはプレートの狭まる境界(海洋プレートが大陸プレートの下にもぐり込む一帯)で生じる。震源は深く、地震の規模は大きい。海底(というか地下の)深いところで、プレートが動くことによって海水が強い力を受け、その波動が陸地に伝わることによって津波の原因となる。津波は地形災害ともいえ、リアス海岸のような深い入江においてこそ、波の高さは巨大化する。湾奥の谷へと水流が押し寄せ、激しい勢いによって周囲の地形や建物を押し流していく。

内陸直下型は、その名の通り、陸地の内側で発生するもので、断層活動によって発生する。断層のうち、近年活動した痕跡があるものを活断層というが、不安定な状態であり、常に地震発生の懸念がある。日本は活断層の多い国で、本州を東西にわける糸魚川・静岡構造線や、西日本を南北に分ける中央構造線(メディアンライン)など巨大な断層が走行するが、例えば琵琶湖が断層湖であったり、生駒山地(大阪府と奈良県の間)が断層山地であるなど、近畿地方にはとくに断層地形が多く、その中には活断層も含まれている。

日本の主な地震について考えるならば、大正時代末期に東京を火の海にした関東大震災は相模トラフ(フィリピン海プレートと北アメリカプレートの境界)を震源とする海溝型地震によるものであり、未曾有の被害をもたらした東日本大震災の地震は日本海溝(太平洋プレートと北アメリカプレートの境界)を震源としたもので、マグニチュードは9と極めて巨大。

その一方で、内陸直下型地震の例としては熊本の地震があり、マグニチュードは小さかったものの、震源は浅く、人口稠密地域にも近かったため震度が大きく、とくに耐震構造が不十分で脆弱は家屋も多かったため建物が広い範囲で倒壊し、多くの人命が失われた。

さて、本問で取り上げられている阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震であるが、これこそまさに淡路島を走行する活断層を震源とする内陸直下型地震なのである。図中にも「断層」や「活断層」などの文字がみられる。選択肢①の写真からわかるように、断層が巨大なズレを生じ、選択肢②にあるように、建物の倒壊など多くの被害をもたらした。

ただし、選択肢④にあるように、マグニチュード(地震の規模)自体は、内陸直下型であるだけにあまり大きくなく、マグニチュード7.8(それでも十分に巨大なのだが)。東日本大震災の東北地方太平洋沖地震のマグニチュード9には及ばない。なお、マグニチュードは対数で表されるもので、2つ違うと1000倍違う。よって、1つ違うとルート1000すなわち、約32倍の規模の違い。ちょっと計算ができなくて申し訳ないのだが(スイマセン。理系のみなさん、計算してください)、兵庫県南部地震よる東北地方太平洋沖地震の方がマグニチュードで1.2大きいので、少なくとも50〜100倍ほどの規模の違いがあるのだろう。

【アフターアクション】 これは難しいね。ただ、この地理A追試験の中でも、第1問問1・問6・問7と(問8もそうかな)地震の種類やマグニチュードに関する問題が何回も登場してきている。これ、絶対に来年も問われるパターンなんで、この機会に地震については知識をしっかり固めておこう。地学的な内容とは思うのだが(もちろんだからといって地学を勉強しろってことじゃないよ)、地理には理系的な思考が重要ってことなんだろうね。

どうでもいいけど、この問題って選択肢が左上が①、右上が②とここまでは普通なのに、左下が④、右下が③と順番が逆になってる! ややこしいなぁ(涙)

<正解>

【1】4 【2】1 【3】1 【4】2 【5】3(2点)

【6】4 【7】3 【8】2(2点) 【9】3 【10】4

【11】4 【12】3 【13】3 【14】1(2点) 【15】1

【16】4 【17】1 【18】3 【19】2(2点) 【20】5

【21】1 【22】4 【23】3 【24】3 【25】4(2点)

【26】1 【27】3 【28】3 【29】4 【30】6

【31】1 【32】2 【33】1 【34】4 【35】3