2018年度地理B追試験[第2問]解説

<第2問 資源と産業>

 

【7】 【インプレッション】 形式としては初めて。ただ、内容的には何回も出題されているものでもあり、特別なことが問われているわけではない。ベーシックな知識があれば十分に解答できる。グラフの目新しさに戸惑わないで。一つ一つの部分を注意して観察すれば絶対にできる。米の生産や漁獲量の変化など、むしろよく出るネタとも言える。

 

【解法】 日本における食料品の生産量と輸入量が問われている。このことから「自給率」を創造できたキミは素晴らしい。

自給率を考えた場合、3品目中最も高いのが「野菜」であることは明確。鮮度が重要なものであり、輸送にコストがかかることからできるだけ国内消費でまかないたい。グラフに注目。年代ごとの変化を示したグラフについては、とりあえず「現在の値」に注目するべきである。2010年以降の値を観察し、Aは輸入量が2500万に達し、生産量が1000万ほど。Bはそれぞれ500万トンずつ。Cは生産量の方が多く1000万トン、輸入量は300万トンほどだろうか。

自給率は、「生産量÷国内消費(供給)量」によって計算される。生産量と輸入量の合計が国内消費量と考えていいだろう。単純に計算してみると、Aは「1000万÷3500万」で30%、Bが「500万÷1000万」で50%、Cが「1000万÷1300万」で80%。自給率が最も高いCが野菜となる。

さらに穀物。米の自給率は高く95%だが、小麦が10〜20%、トウモロコシがほぼ0%であり、これらを平均すると30%ほどになる(供給量はトウモロコシが最も多い)。Aが穀物。

残ったBが魚介類である。日本は、アメリカ合衆国に次ぐ世界2位の魚介類輸入国であるが、漁獲量も多く世界10位以内にはランクインしているため、自給率は極端に低いわけではない。生産量のグラフをみてみよう。日本は1970年代に遠洋漁業が衰退したが(200カイリ漁業専管水域の設定、オイルショックによる燃料代の高騰)、この時期沖合漁業の漁獲量が増加したため、1970年代には数値は横ばいだった。しかし、1980年代になって乱獲の影響などで沖合漁業が大幅に漁獲量を下げたため、全体の値も低下し、現在に至っている。その一方で、1980年代以降、輸入量は大幅な伸びを見せ、漁獲量(生産量)と同じ規模となった。

 

【アフターアクション】 グラフが目新しいが、解法で述べたように、自給率に置き換えて考えるとスムーズだったんじゃないかな。とくに野菜の自給率が高いっていうのはよく出るネタなので、確実な知識としよう。野菜は鮮度が重要なので、できれば近くで生産して欲しい(近郊農業)。輸送もできるだけスムーズに(トラックなどを利用した輸送園芸農業)。輸入するとしても近隣国から(中国や韓国からの輸入が多い)。

また「穀物」についても、きちんと米だけでなく、小麦やトウモロコシも含めて考えられかどうか。生産量についてはそのほとんどが米と思っていいのだ(おっと、1993年の大凶作もグラフに表されているではないか。この年、冷害によって東北地方の太平洋側では米の収量が壊滅的に減少している)が、輸入についてはむしろ小麦とトウモロコシが主役だからね。穀物を総合的に考えられるかどうかっていうのがポイント。

 

【8】 【インプレッション】これ、おもしろいな。形式だけみるとシンプルな印象を受けるが、実は結構濃いことを問うてるぞ。統計が頭に入っていないとダメなんだが、人口との関係や、商品作物か自給作物かなど、いろいろ考える部分がある。解答は実は簡単なんだが(笑)、でも深みがある問題。僕は好きです。

 

【解法】 初めてのパターンの問題でちょっと戸惑う。問題内容は、見た目ほど単純じゃない。じっくり考えてみよう。

まず問題文の読解。「生産量と輸出量について、世界第1位の国が同一である農産物」とある。これってどういうことだ?例えば、小麦は生産1位が中国、輸出1位がアメリカ合衆国なので、該当しない。トウモロコシは生産1がアメリカ合衆国、そして輸出1位もアメリカ合衆国。こちらは該当する。なるほど、こうやって丁寧に考えていけばいいわけだ。

まずバナナについて考えてみようか。バナナの最大の生産国はインド。ただしインドは人口大国であり、国内消費(供給)量も莫大。輸出が多いとは思えない。実際、日本はフィリピンからたくさんのバナナを輸入しているではないか。他にはエクアドルなど中央アメリカの国でも商業的なバナナの栽培は行われている。輸出量世界1位がどの国かはわからないが、バナナは選択肢から外していいと思う。

おそらくわかりやすいのはカカオ豆だろう。プランテーション農業で栽培される商品作物。極めて高温多雨の自然環境を必要とし、世界最大のカカオ生産地域は西アフリカのギニア湾岸。コートジボワールでは、家族労働によってカカオ豆の栽培が行われている。そもそも自国内で消費するような作物ではなく、チョコレートの原料として輸出され、その外貨によって穀物など食料を買うといった、歪んだ経済構造がそこにはみられる。「モノカルチャー経済」だね。コートジボワールは輸出量も当然多いと考えら、これが正解となる。

オレンジについては輸出1位の国を絶対に知っておこう。スペインはオレンジの生産は世界5位であるが、人口規模が小さい(生産1位から4位の国はいずれも人口大国)ため、輸出余力が大きく、輸出量については世界1位である。冷涼なヨーロッパにおいてオレンジの栽培範囲は限られており。スペインやイタリアの南部のみ。とくにスペイン南東部のバレンシア地方が有名(だたし、バレンシア地方にしても降水量が少ないので、灌漑によってオレンジの栽培がなされている。過剰な灌漑によって塩害の被害が生じているところも)。オレンジは生産1位の国と輸出1位の国が異なっている。

キャッサバの生産1位はナイジェリア。人口規模が大きく、国内消費量が多いため、輸出量は少ないと予想される。というか、そもそもキャッサバは自給作物であり、生産された地域で食料として消費されることが大原則。輸出は問題とされず、本問でも考慮外としていいだろう。

 

【アフターアクション】 目新しいパターンの問題だったと思う。生産と輸出の両方が問われている点が興味深い。典型的なプランテーション作物であり、ほぼ完全に輸出用に栽培されているカカオ豆が正解となる。

コートジボワールにおけるカカオ栽培とモノカルチャー経済の様子について考察しておこう。コートジボワールはギニア湾に面する低地国。とくに夏季には海洋から季節風が吹き込み降水量が多くなる。極めて高温多雨の気候環境がみられ、カカオ豆を中心とした「プランテーション農業」がみられる。ただし、コートジボワールのプランテーション農業は他の地域とはやや異なっており、欧米の資本家が直接経営する大農園ではなく、住民による家族経営の小規模農場が中心。不衛生な自然環境であるため、ヨーロッパ人の入植が内陸部には及ばず、沿岸につくられた港湾にカカオ豆が集められ、そこからヨーロッパへと輸出された。

フランスから独立後も、カカオの生産と輸出に依存する経済構造からの脱却は達成されず、これをモノカルチャー経済という。不作や国際的な価格低下の影響を大きく受け、ときに大幅な輸出額の減少という事態を招く。商品作物の輸出により外貨を稼ぎ、それにより小麦などの自給作物を購入しているが、それもままならず、深刻な食料不足もしばしば生じている。「農産物をつくり、農産物を輸入する」という歪んだ貿易構造は、ヨーロッパ人によって押し付けられたものである。

 

【9】 【インプレッション】 いい問題ですね。「湧昇流」っていう言葉はぜひ知っておいて欲しいと思っているのだ。湧昇流は文字通り「湧き昇る」海水の流れのことで、海底付近から海表面まで流動する。これにより、海底に積もっていた有機塩類(魚の死骸による)が、酸素と太陽光の得られる海表面へともたらされることで、栄養分の豊かな海域が形成され、プランクトンが発生する。それを餌とするイワシ(イワシは大群を組む魚であるので、栄養分がよほど豊かな海域でないと生息しないのだ)が生育し、漁獲量が増える。

下から上への流れということで、いわば「海中の上昇気流」のようなもの。上昇気流が雲を発生させるのに対し、湧昇流は栄養分の豊かな海域を作る。いずれも地球にとって、生物の活動にとって、非常に重要なものなのです。

 

【解法】 国名が登場する文章正誤問題だが、こういった問題によくあるパターンで、国名そのものは重要ではない。地理っていう科目なんだから、ガンガン国名を尋ねちゃったらいいと思うんだけどね。

明らかにおかしいところが一つあるわけですよ。キーワードは湧昇流。海底から海表面へと達する海水の流れで、これがみられるところは水産資源の豊かな好漁場となる。魚の死骸が海底に堆積し、分解されることで有機塩類が生じる。それが湧昇流によって酸素と太陽光の得られる海表面付近へと運ばれ、プランクトンの餌となり、さらにそのプランクトンは魚の餌となり、多くの魚が生息する海域が形成されることになる。「湧昇流」が生じていれば、魚介類の餌となるプランクトンが「発生しやすい」海域になります。③が誤りでこれが正解。

なお、せっかくなのでペルー沖と寒流についておさらい。ペルー沖合つまり南アメリカ大陸の太平洋岸に沿って寒流であるペルー海流が北上しています。寒流というのは、冷たい海水を暖かい海域へと導くもので、ペルー海流ならば、南極方面の海水が赤道直下のガラパゴスにまで運ばれるということ。で、ここでぜひ意識して欲しいこととして、そもそも海流は風(偏西風や貿易風)によって生じるということ。だから海流とは海水の上の方(だけ)を流れる。想像して欲しいのですが、赤道付近の暖かい海において、海水面だけを冷たい水が流れている。冷たいってことは収縮して、密度が高くなりますよね。つまり「重く」なる。重い海水が上方にあるのだから、それらは海底へと潜っていく。逆に下方の暖かい水は「軽い」のだから、こちらは上方へと上っていく。海中に「対流」が生じるわけですね。洗濯機の水の回転を縦方向にする。そんな対流作用によって海水は撹拌(かくはん)されるのです。だから寒流って上からみたら濁ってみえるんですよ。有機塩類とプランクトンで。そんな「濁り」が命の海をつくっているわけなんですよね。

 

【アフターアクション】それぞれの選択肢の内容が興味深いので、検討しよう。

①;インドネシアやベトナム、タイなど東南アジアの沿岸部ではエビの養殖池が作られているが、それらの多くはマングローブ林を伐採して設けられたもの。

②;これは栽培漁業というもの。北ヨーロッパのみでなく日本でもさかんに行われている。

④;マグロにとどまらず、様々な魚種において乱獲による種の枯渇が懸念されている。国際条約によって、漁獲量の数量規制が行われている。

 

【10】 【インプレッション】 ん、変な問題???「農林漁業」は第1次産業であるし、製造業はほぼ第2次産業と同義(本来は建設業と鉱業も入るが、製造業メインと考えていい)。それならば、第3次産業も含め、三角グラフで表したらええんちゃうの?って思ってしまうんやなぁ。

 

【解法】 産業別人口に関する問題。タイは極めて特徴的。原則として、1人当たりGNIと都市人口率は比例し、第1次産業就業者率とは反比例する。多くの人が都市に住み、収益性の高い第2次産業や第3次産業に従事する場合、経済レベルは上昇し、1人当たりGNIも高くなる。先進国はこのパターンだね。一方、発展途上国では多くの人々が農村で農業に従事する。よって農村人口率が上がり(つまり都市人口率は下がり)、第1次産業就業人口率が高い。

ただ、タイはちょっと特殊な国なのだ。タイは今や日系企業の進出によって世界的な自動車生産国となっている(あれっ、【6】の解法でも同じことを言ったような。それだけ大切な事項ってことだよ)。1人当たりGNIも約6000ドル/人と、発展途上国としては高い水準にある。しかし、伝統的に家族経営による米作農業が行われ、さらにバンコク以外に大都市がない(バンコクは人口1000万に達する巨大都市だけどね)ことから、工業国としては例外的に都市人口率が低く、第1次産業就業者率が高い国なのだ。

このことを意識して考えてみよう。「農林漁業就業者率」に注目。低い2つの国は先進国だろう。①と②はイタリアとオランダのいずれか。ともに1人当たりGNIは高い。

③と④がタイとフィリピンのいずれかとなる。タイは前述のように1人当たりGNIが6000ドル/人。フィリピンはそれよりやや低く4000ドル/人。ただ、これではわからない。タイは経済レベルに比して農林漁業従業者の割合が高い国。1人当たりGNIが「タイ>フィリピン」だからといって、単純に農林漁業就業者率が「タイ<フィリピン」とは決めつけられないのだ。

というわけでここからは「製造業就業者率」に注目。製造業といっても繊維工業から電気機械工業などいろいろな種類があるのだが、さぁ。タイとフィリピン、製造業に特徴がある国ってどっちだ?

ほら、何回も繰り返してウザいと思っているかもしれないけれど、ここで「タイ=自動車工業」が生きてくるわけだ。自動車工業は機械組み立て工業の一つで。労働集約型。多くの労働者を必要とする工業なわけだが、新興工業国であり、自動車生産の拡大しているタイこそ、製造業就業者率の高い典型的な国と考えていいんじゃないか。商業やサービス業の高度に発達した先進国では逆に製造業従業者率が低下する傾向がある。タイを④と考えて妥当だろう。

他は、とりあえず③はフィリピンとして、①と②はどちらになるだろう?商業に特化し、国の規模に比して貿易額が極めて大きいオランダで、製造業就業者は少ないと考え①となる。イタリアは、先進国としては1人当たりGNIが低めで(40000ドル/人。ドイツやイギリスは50000ドル/人)、意外に製造業従事者の割合が高くても意外ではない。②がイタリア。

 

【アフターアクション】 タイの特殊性が問われている。タイの数値は覚えておくと便利なので、以下の統計について確認しておこう。

 

・人口・・・7000万人

・1人当たりGNI・・・5720ドル/人

・バンコクの人口・・・900万人

・都市人口率・・・30%

・第1次産業商業者率・・・30%

 

なお。製造業については、先進国から工場が進出し、工業生産が拡大しつつある新興工業国において就業者の割合が高くなる。かつてセンターではルーマニアが問われたことがある。東ヨーロッパの国を中心に第2次産業従業者割合の高い国を挙げておくので、その傾向を読み取って欲しい。

東ヨーロッパ諸国

 

ポーランド 31%

チェコ 38

ハンガリー 30

ルーマニア 30

先進工業国

日本 24

韓国 25

ドイツ 27

新興工業国

タイ 24

ベトナム 23

 

なお、アメリカ合衆国は18%と低い数値にとどまっている。

 

【11】 【インプレッション】 1980年代とはレトロな雰囲気の問題だね(笑)。たた、一つちょっと気になる選択肢がある。問題自体は簡単だけど、中身は深いっていう、素晴らしい問題ですね。

 

【解法】 西アジアときたら、ペルシャ湾岸の産油国、とくにサウジアラビアを思い浮かべてほしい。産油国であり、原油の輸出によって国内経済は潤っている。1人当たりGNIも比較的高く、2万ドル/人を越えている(韓国と同じ水準)。そうした国に、労働集約型の工場を進出させることがありえるだろうか。とくにここでは「低付加価値製品」とあるが、衣服などの繊維製品が代表的なところだろう。ベトナムのような低賃金国にこうした衣服工場は多く進出し、安価な労働力で輸出を前提とした生産活動が行われている。ペルシャ湾岸諸国のような「高賃金国」で成り立つものではない。④が誤り。

なお、「輸出指向型」の工業化政策とは、国内市場が小さいアジアNIES(韓国など)や東南アジアの国々においてよく使われるキーワードで、外国への輸出を目的とした工業化。これと反対の概念が「輸入代替型」。発展途上国は最初は製品を外国から輸入している。今まで輸入に依存してきた工業製品について国内で製造し、貿易赤字を少しでも減らしていこうという考え方のもとに、輸入代替型工業化が進む。やがて、工業力が順調に向上し、国内市場を超える量の工業製品ができるようになると、今度はそれを輸出し、貿易黒字を目指そうとする。これが「輸出指向型」。ベクトルの向きとしては「輸入代替型 → 輸出指向型」である。ときどき、これを入れ替えて間違い選択肢が登場することがあるので、注意しよう。

他の選択肢については②や3については納得だろう。個人的に興味深かったのは①の選択肢。これを読み解いていこう。

かつての世界の貿易は「水平貿易」や「垂直貿易」という言葉で表されていた。水平貿易は先進国間の貿易で、相互に工業製品(完成品)を輸出しあっていた。例えば、日本が自動車をアメリカ合衆国に、アメリカ合衆国が航空機を日本に輸出などといった形。垂直貿易は先進国と発展途上国との貿易で、先進国が付加価値の高い工業製品(機械類など)を、発展途上国が農産物や鉱産資源を、それぞれに輸出し合う貿易のかたち。

でも、これって古いよね?ヨーロッパの先進国では脱工業化が進み、重工業製品の生産は停滞しているが、研究開発やサービス産業の発達によって経済は興隆している。中国などからの工業製品の輸入が目立っている。日本も同様。日本は未だに製造業にこだわりを持つ国であるが、それでも日本国内で工業製品を完成品まで組み立てるというケースは少ない。研究開発し、部品を製造し、それを中国や東南アジアに送り、そこで組み立て、完成品を輸入する。「高度な研究機関による製品開発」、「熟練労働力を使った部品などの製造」、「安価な労働力を用いた完成品の組立」など、製造業のさまざまな過程が国境を越え、それぞれの経済レベルに合わせ、「分業」体制を構築しているのが現代の社会なのだ。それに、むしろ今は先進国である欧米が農産物の輸出地域であり、発展途上国である中国や東南アジアが工業製品の輸出国ではないか。

ここで選択肢①の文章に戻る。このように、先進国だけが製造量をリードする時代は終わった。今や、アジア地域の発展途上国を中心とした「国際分業」の時代なのだ。東南アジアの10か国が結成しているASEANとう組織があるが、かつては域外の日本やアメリカ合衆国への依存度が高かった。しかし、今は経済連携を通じ、自由貿易こそ行われていないが、それぞれの国の状況を鑑みつつ、工業生産力の向上が図られている。シンガポールで研究開発、マレーシアで部品製造。インドネシアで組み立てなど、国際分業のとくに活発な地域として注目を集めており、もちろん「域内貿易」も拡大している。

それにしても、こうした状況をみるにつけ、日本の閉鎖性には辟易するしかない。韓国や台湾、中国と自由貿易を目的とした経済連携を結び、東アジアをヨーロッパや北アメリカに対抗できるほどの経済地域にするべきなのだ。歴史的や感情的にはいろいろなわだかまりがある東アジア各国であるが、「経済」を優先して交流を深めるのはお互いにとってプラスしかないと思っているのだが。

 

【アフターアクション】問題は簡単。ただ、「西アジア」がどこか具体的にわからないと解きにくいのかな。「西アジア=ペルシャ湾岸産油国=サウジアラビア=1人当たりGNI高い」と連想できるかどうかって大切だと思う。

また。解法でも長々と説明したが、とにかく選択肢①がおもしろい。何十年にもわたって、東アジア・東南アジア地域を経済力と工業力においてリードしてきた日本だが、現在その地位は低下しつつある。

 

【12】 【インプレッション】 またベタな工業の種類をもってきたもんだ(笑)。「出版・印刷」と「窯業」はもっとも極端な工業立地をみせる工業種だからね。おっと、「窯業」の意味がわからないって? たしかにこれ、めちゃめちゃ重要かも知れない。窯業とは何か?これが本問のポイント。

 

【解法】 都道府県別の工業の問題。工業製品統計というより、工業立地の問題と捉えた方がいいだろう。

まず「出版・印刷業」。典型的な都市型工業で、日本においては東京都に一極集中する。情報が集まり、文化の中心地である東京こそ、日本最大の出版・印刷業の事業所数を誇るはずだ。ただし、東京が「上位」となっているのはアとイの二つ。アとイを比較すると上位で特徴的なのは、アの静岡県とイの福岡県。ただ、先ほども言ったように、印刷・出版業は、情報の集まる文化の中心地でこそ発達する。九州の「首都」である福岡市を擁する福岡県において印刷・出版が上位となるのは納得なんじゃないかな。そういえば、北海道(札幌)、宮城県(仙台市)など、地方中枢都市を含むところで「中位」となっている(アではそれらは「下位」)。イを出版・印刷業とみて間違いないだろう。

さらに「窯業・土石製品」。これ、ちょっと言葉の意味が難しいかな。原材料に土石を用いるもので、石灰岩を原料とするセメント工業、ケイ素からつくられるガラス工業、泥や粘土をこねて作られる陶磁器がある。「窯業」という言葉自体は、2014年度地理B本試験第6問問5問6で登場しているので、過去問を解いているみんななら必ず知っておくべきキーワードだね。

ガラス工業はマイナーなので省くとして、セメント工業と陶磁器工業を考える。出荷額でいえばセメント工業こそ窯業の主役なのだが、本問では「事業数」というのがミソ。セメント工場は規模が大きく(資本集約型工業である)、工場の数自体は限定されているのに対し、陶磁器は小規模な工場(というか窯元(かまもと)って感じ?)が多く、全体の生産量や生産額は小さいものの工場の数を考えれば、こちらが窯業の中心として考えるべきだろう。陶磁器といえばなんと言っても瀬戸物とよばれる瀬戸焼が有名で、愛知県がクローズアップされるのだが、残念ながらアとウのいずれでも愛知県は「上位」であり判別がつかない。山口県の萩焼なんかもあるはずなんだが、逆にことらはアもウも「下位」である(セメント工業がさかんなはずなんだが、上記の理由で事業所の数は少ないんだわな)。ちょっと苦しいけど、唐津焼や伊万里焼はどうだろうか。朝鮮半島から渡来してきた人々が現在の佐賀県に窯をつくり、陶磁器の生産を始めた。佐賀県は日本を代表する陶磁器の生産地である。佐賀県はアでは「下位」であるが、ウでは「中位」。これを手がかりに、ウを「窯業・土石製品」とし、正解は③となる。

ウでは岐阜県が上位となっているが、なるほど多治見焼は有名。埼玉県や北海道はセメント工場の方かなって思うんだけどね。しかし、そうなるとセメント工業がとくにさかんな山口県や福岡県(秋吉台や平尾台などカルスト地形で有名)が上位に入らないとつじつまが合わないのだが、ちょっとそこのところがよくわからないね。

アが電気機械器具だが、こちらは愛知・静岡・神奈川・大阪・埼玉・東京と、全体の工業製品の出荷額でも上位となっている県ばかり。そもそも電気機械工業の生産が多いから、合計した工業製品出荷額も大きくなるってことなんだろうね。

 

【アフターアクション】 ベタな日本の工業の問題と思いきや、意外に難しかったね。「窯業」についての理解が必要。窯業とは土石工業のことで、土砂や粘土を原料とした工業種。セメント工業や陶磁器など。窯業については数年前のセンター試験で登場しているので、当然知っておくべき言葉。過去問研究がやはり大切だってことだね。