2018年度地理A追試験解説

たつじんオリジナル解説【2018年度地理A追試験】         

<第1問;自然環境など>

問1 プレートテクトニクスに関する基本的な問題。知識の定着を試すには最適。

アは、太平洋側から南アメリカ大陸にかけてプレートが沈み込んでいる。チリ海溝が形成。「海溝」は正解。なお、プレート境界は海溝に限らず(例えば、広がる境界である海嶺、ずれる境界である巨大断層など)どこでも震源となる。

イはアイスランド島だが、大西洋中央海嶺の上に形成された火山島。地下のマントルでプレートが新しく形成され、表面に出現した後、両側(この場合は北アメリカ側とユーラシア側)に開いていく。巨大な海底山脈である海嶺が形成され、マグマの噴出もみられる。

ウはヒマラヤ山脈。大陸プレート同士の衝突によって生じた褶曲山脈。新期造山帯の極めて高峻な山脈であり、「なだらか」ではない。誤りでこれが正解。

エは千島列島。北方領土から連なる弧状列島であり、海溝(千島・カムチャッカ海溝)に沿う。プレートの狭まる境界であり、地震も頻発。

なお、個人的にかなり興味深いのは、このプレート図。これ、結構新しいというか、あまり見慣れないパターン。従来は、インドとオーストラリアは一枚のプレートの上に乗る地形と考えるのが一般的であり、従来は教科書の図などもそうした形がとられてきた(インド・オーストラリアプレート)。それが本図においてはインドプレーt−とオーストラリアプレートが切り離されており、これは新しい解釈である。さらに中央アメリカの南側、南アメリカ大陸の北西部の太平洋海域にみられるプレートがココスプレートであるが、これについても、これまでは一般的なものであったが教科書では取り上げられてこなかった。それがこの図では登場しているのが意外。このような公式の新解釈は然るべきである。

そういった意味で、実は最も驚いたのはカナダ・バンクーバー沿岸の太平洋海域にみられる小さなプレートである( )プレート。これはあまり一般的なものではなく、教科書や地図帳の図でも無視されてきた。それが本図では大きくクローズアップされている。かなり特殊だと思うよ。

問2 オードックスな気候判定問題だが、グラフがちょっと見慣れない感じ。縦軸に気温、横軸に降水量にした方が見やすかったのに。グラフの大雑把な印象ではなく、数字に注意して細かく検討していこう。

Dはラプラタ川エスチュアリー付近、Eは南アフリカ共和国南西端(ケープタウン)、Fは朝鮮半島。緯度的にはいずれも35度付近だろうか。緯度による違いはない。またいずれも沿岸部に位置し、海陸分布の影響については図からは判断しにくい。ここは具体的に一つ一つの地点について考えていこう。

まずFから。朝鮮半島であるが、日本に近く、日本西部の気候と似たかたちになるのではないか。例えば、東京は最暖月平均気温25℃、最寒月平均気温5℃、そして年降水量1500mm。これに最も近い(というか、ほとんどそのまんま)のものとしてカをFと判定する。なお、朝鮮半島南部(韓国)は米作地域(集約的稲作農業地域)であるが、米の栽培のためには年降水量1000mm以上が必要であることも考え合わせる。キやクは降水量が少なすぎるので、やはりカこそFとなる。

さらにEについて。どうだろうか、ここはケープタウンという都市であるが、地中海性気候がみられる代表的な地域ということをみんなも知っているんじゃないかな。南北半球の緯度35°周辺大陸西岸に必ず出現する気候パターン。冬は偏西風帯に入り一定の降水があるものの、夏は亜熱帯高圧帯の影響によって極端に少雨となり、そして年間をトータルした降水量自体も少ない。オリーブなど耐乾性の樹木農業(地中海式農業)が行われているね。

このことから、降水量が少ないクをEと判定し、④が正解となる。気温ね格差が極めて小さいのは、周囲を海洋によって囲まれている影響と考えよう。

なお、残ったキがDなのだが、Dは湿潤パンパのウルグアイに位置しているようにみえる。良かったら地図で確認しておいて欲しい。

ウルグアイからアルゼンチン東部にかけて広がる草原がパンパ。東側が湿潤パンパで米作や混合農業、牛の放牧が行われ、西側が乾燥パンパで羊の放牧がみられる。良かったら地図帳でバイアブランカという都市を探してみて欲しい。そこから北に向かって直線を引き、この線がおおよそ年降水量550mmの等値線と重なっている。これより東側すなわち年降水量550mmより多いのが湿潤パンパ、西側すなわち年降水量550mmより少ない地域が乾燥パンパである。Dは湿潤パンパで、年降水量は550mmより多いはずなので、クは有り得ず、キが該当する。

なお、バイアブランカ周辺の湿潤パンパと乾燥パンパの境界付近では小麦が栽培されている(企業的穀物農業)。小麦が年降水量500mmで栽培される作物であることを考えよう。

問3 写真が一つ欠けており(著作権の関係かな)、さらに残った2枚もはっきりとは見えないので、判定に困る問題。

どうやらスはラクダが写されているようだ。ラクダや中央アジアや西アジア、北アフリカの乾燥地域に分布。Lが該当するとみていいだろう。

さらにサは牛がみられるようだ。スイスの移牧だろうか。冬は山麓の畜舎で、夏は高原の放牧地で、それぞれ飼育する高度差を活かした牧業形態で、酪農の一種。乳牛やヤギが飼育されている。これをKと判定し、正解は③。

Jはアンデス高原であり、これがシになるということは、リャマやアルパカが撮影されていたのだろうか。

問4 図法名が登場するのは極めて珍しい。とくにグード図法は初登場なんじゃないか。

正積図法の代表例に、サンソン図法とモルワイデ図法がある。サンソン図法は、緯線が直線で描かれ、経線は中央のものが直線で表される以外はサインカーブとなっている。低緯度地域の陸地の形が比較的正しく描かれる。

モルワイデ図法は、緯線は赤道のみ直線で他はやや湾曲している。経線は

中央のみ直線で描かれ、他は楕円である。高緯度地域がやや膨らみをもって描かれ、形も比較的正確。

両者の「いいとこ取り」をした図法がグード図法である。低・中緯度地域をサンソン、高緯度地域をモルワイデで表し、大洋で図を切って、全体が「M」や「W」に似た形となっている。①が正解。

④のメルカトル図法は、正角図法。任意の2地点間を結んだ直線は等角コースとなる。大航海時代に、羅針盤や北極星の位置によって方位を定め、等角コースをたどることによって船舶は世界の海を航行した。

問5 これも変わった問題。「領域」に関する話題は地理A特有だが、地理B受験生の君たちにもしっかり解いてほしい。

まず国土面積に注目。日本の面積は「38万km2」である。4か国中ではインドが最も面積が大きく③に該当(インドは、ロシア、カナダ、アメリカ合衆国、中国、ブラジル、オーストラリアに次ぐ世界7位の国土面積を有する)、次いで面積の大きなインドネシアが②となる。インドネシアは1万以上の島を有する国であるが、その分、排他的経済水域の面積も極めて大きくなるのだろう。

残った①と②が日本とイタリアであるが、日本は北西太平洋の広い範囲に多くの島を領有している。国土面積に比して、排他的経済水域の面積は極めて大きくなる。①が日本となる。イタリアは地中海に面する半島国であるが、地中海そのものも面積も狭く、領有する島の範囲も限られているだろう。排他的経済水域は狭い。

排他的経済水域自体はよく問われているので、とくに問題ないだろう。領土から200カイリの範囲であり、鉱産資源や水産資源の独占的な開発ができる範囲。ただし、外国船の航行については自由に行われる。たしかに太平洋の島嶼国は排他的経済水域が大きくなる傾向があり、インドネシアや日本はその典型。しかし、だからといって凄いかといえば全然そんなことはなく、むしろ責任をもって周辺国との友好の中で鉱産資源や水産資源を利用する義務を追う。なんだか、昨今の「日本スゲー」みたいな問題で、僕はあまり好きじゃないな。

問6 こういう問題がスムーズに解けるようになったら強い!

まず文章(というか下線部だけど)を読んでみて、怪しい選択肢を探す。「適当でないもの」なので、誤っているとすればどこがどのように誤っているのだろうか想像する。

①は例えば「沈み込み」を「衝突」としてもいい。狭まるプレート境界には大きく②つのタイプがあり、海洋プレートが大陸プレートの下へと潜っていく「沈み込み帯」、大陸プレートと大陸プレートがぶつかり合う「衝突帯」。沈み込み帯にか海溝が形成され、衝突帯にはヒマラヤ山脈のような巨大な褶曲山脈がつくられる。

あるいは、狭まるプレート境界であること自体を否定して、広がるプレート境界である海嶺を考えてもいい。いずれにせよ、選択肢①は十分に怪しい。犯人の可能性はある。

さらに②について。こういった「完全肯定」の文は怪しい。「いずれにも」存在するのだろうか。たしかに日本は火山国であるが、果たして国土全域に火山が分布しているのだろうか。北海道、本州、四国、九州のすべてに火山はあるのか。

それに対し、③は誤文とはしにくいと思う。火山噴火があれば、当然「火砕流」や「溶岩流」は発生するだろうし(もちろんこれが「津波」や「高潮」ならば間違いなわけだが、本問はそれに該当しない)。それによる「周辺地域への被害」も生じるだろう。

④も同様。火山灰が「降灰」し田畑に積もることによって農業への被害は間違いなくみられるはず。③と④は「正文」とし、候補を①と②のみにする。

①はどうだろう。日本列島の太平洋側には数多くの海溝はトラフ(小規模な海溝)が走行している。4枚のプレートの会合点である日本列島では、太平洋プレートやフィリピン海プレートといった海洋プレートが、北アメリカプレートやユーラシアプレートの大陸プレートの下に「沈み込む」ことで海溝やトラフが形成され、周辺では火山活動もみられる。①は誤っていない。

そして②である。日本の火山は北海道や東北地方の日本海側、関東地方の周辺部(浅間山や富士山)、九州地方、さらに伊豆諸島などに多いが、日本アルプスなど中部地方の西部、近畿地方、四国地方、沖縄諸島には火山は存在しない。中国地方も火山は大山の一つだけ。意外に、火山分布って偏っているでしょ?第5問の最後の問題でも同じようなネタが扱われているので、そちらもぜひ参照しておいて欲しいのだが、とりあえず「四国」には火山が存在しないので、これが誤り。四国も極めて標高の高い山(石槌山)があり、全体としても非常に険しい地形であるものの、火山はなかったりするのだ。

問7 これ、難しいな。マグニチュードにかんする知識が必要。

マグニチュードは2つ違うと1000倍の差がある。対数であり、マグニチュードが1つ違えば30倍違うと考えよう(つまり、2つ違うと、30×30=900で、約1000倍となる)。このことから、まず②を誤りとする。

また、マグニチュードが地震の規模を表す指標であり、震度は実際の揺れ方。つまり、マグニチュードが大きい地震が発生しても、遠隔地や地盤のしっかりした場所ならば震度は小さいだろう。逆にマグニチュードが小さくとも、震源から近かったり地盤の影響で、震度は意外に大きくなる場合がある。

一般にプレート境界を震源とする海溝型の地震はマグニチュードが大きい。しかし、震源が深く、さらに人々の居住地である陸地から離れているので、都市部においては震度は小さくなる場合が多い。

一方、内陸直下型地震は活断層の活動によって生じ、こちらは震源が浅く、地下10km程度である。人々の居住地にも近く、都市部で観測される震度は比較的大きく、さらに被害も拡大するケースがある。

以上より、③も誤り。震度は「地震の強さ」すなわちマグニチュードでは決まらない。

さらに④だが、さすがにこんなことは不可能だろう。現在の技術では、地震の発生日の予測は不可能である。

以上より①が正解。地震は断層のずれや火山活動などの内的営力によって発生する。

問8 これがよくわからないのだが、おそらく②が誤りなのではないか。

2018年渡地理A本試験第1問問6に以下のような文章が登場している。

災害を防ぎ、軽減するためには、自分や家族の生命・財産などを自力で守り、助ける自助や、近隣の人々と助け合って自分たちの生命や財産を守り、助ける共助が必要である。

この文章では行政の関与については述べられていないものの、「自助」の重要性は強調されている。本問についても「行政の指示を待って行動」するのではなく、自らが自己判断によって率先して行動することが大切なのではないか。

<第2問;世界の生活・文化>

問1 オーソドックスな問題。でも考える部分は深いね。

米の値が高い③がアジアなのは明白だろう。世界の米の90%はアジアで産し、さらに自給性の高い作物で貿易に回される分は多くはないので、ほとんどがアジア域内で消費されている。

米の値が23.5kgと、③に次いで大きい④がアフリカ。高温多雨の自然環境に恵まれ米の生育に適し、あるいは灌漑農業によって乾燥地域(エジプトなど)でも米作がさかんに行われている。その一方で、他の値がおしなべて低い。アフリカは食料に恵まれない地域である。食料不足や飢餓も生じている。

残った①と②がヨーロッパや北アメリカ。いずれも似たような食文化を有する地域であり(そもそも北アメリカの文化は西ヨーロッパからの移民によって成り立った)、値が似てくるのは当然。よって、ここは細かいところに注意して数字を読まないといけない。

注目するべきは「肉類」だろう。もちろんヨーロッパでも肉類の消費は大きいはずだ。しかし、アメリカ合衆国と比較してどうだろう?例えば、アメリカ合衆国は牛の飼育頭数においては世界4位であるが、牛肉の生産において世界最大の量を誇っている。牛は広大な牧場で放牧されることで成牛となるが、すぐには食肉とはならず、一旦フィードロットとよばれる集中肥育施設に送られる。濃厚飼料を与えられ、十分に体重を増やした後に食肉加工されるのだ。1人当たりの供給量を考えた場合、肉類についてはアメリカ合衆国を中心とした北アメリカの方が大きな値となるのではないだろうか。②が北アメリカとなり、残った①がヨーロッパである。

問2 文章は長いが、要点だけ読み取ればいい。

①は「インドはイギリスの植民地だった」か。②は「キャッサバは熱帯地域で栽培される」か。③は「小麦は米より温暖・湿潤な気候環境で栽培される」か。④は「ベトナムはフランスの植民地だった」か。

どうだろう?かなり答えは明確なのではないかな。穀物の栽培環境については以下のように考えること。

(冷涼・少雨)大麦↔ライ麦↔小麦↔トウモロコシ↔米(高温・多雨)

どうだろうか。米の方が小麦より「温暖・湿潤」な地域での栽培に適している。

問3 アはアメリカ合衆国。国境を接するメキシコからの流入が多い。スペイン語を母語とする彼らはヒスパニックと呼ばれ、アメリカ合衆国の人口3億人のうち、6分の1に当たる5000万人に達している。メキシコ以外にも、中国やインドなど低賃金のアジア国家から多くの移民が入国している。

イはロシア。グラフの5か国はいずれも旧ソ連構成国。ウズベキスタンは中央アジアの乾燥地域に位置し、首都タシケントや主要都市サマルカンドはシルクロード交易で栄えた。中央アジア5か国の中では最大の人口を有する。

ウはフランス。最大の受け入れ先であるアルジェリアは地中海を挟んでフランスの対岸に位置する北アフリカのアラブ国家。かつてフランスの職員地支配を受け、社会的にも文化的にも関わりが深い。モロッコやチュニジアも北アフリカの旧フランス領だった国々。

問4 これは図から容易に判断できるだろう。グレーで示されたトルコ系住民の集住地区は、黒く塗りつぶされたトルコ系の集住地区よりも広い範囲にわたっている。

問5 文章全体は読まずに、キーワードだけに反応。さらに、こうした3つ組合せ問題については「2つは絶対、1つは消去法」の鉄則も。つまり、2つの確実なキーワードだけ拾って、それだけで考えること。

目に付く言葉は、キの「日系移民」。日本は100年ほど前からハワイや南北アメリカ地域へと多くの農業移民を送り出したが、その規模が最も大きかったのはブラジルへと移住した人々。農園で働いた彼らはその後、現地にて家族をもうけ永住する者も多く、またその子孫である日系人も多い。キがブラジルである。

さらに「東西冷戦終結後」とクにある。第二次世界大戦後から1990年ごろまで東ヨーロッパ地域は、ソ連の影響を受け社会主義地域となった。そうした国の1つがチェコであり、クはチェコを説明した文であると判断。「地域的経済統合」とはEUのことであろう。経済的に西ヨーロッパ地域と統合され、経済レベル(1人当たりGNI。賃金水準)が低いため、多くの工場が進出した。日本企業もそもそも西ヨーロッパ地域に多く進出していたが、そこからさらに東ヨーロッパ地域にも生産の拠点が設けられたことは十分に想像できる。

以上より正解は③となる。フランスは消去法。

本問で注目して欲しいのはチェコかな。自由貿易経済圏の中の低賃金国であり、ドイツなどからの自動車工場の進出が著しい。今後さらに急成長が見込まれる。実はチェコって製造業を中心とした第2次産業就業人口割合が約40%と、世界でも際立って高い国なので知っておくといいかもね。

問6 ずいぶんベタな問題。ただ、形式、内容ともに過去に類似したパターンの主題はあり、特殊な問題というわけでもない。

公用語が複数設定されている国は多い。その中でもカナダ、シンガポール。スイスは代表的なところである。

カナダでは英語使用者が過半を占めるものの、東部の毛ペック州を中心にフランス系住民も多い。英語とフランス語が公用語となっている(ただし、先住民であるイヌイットの言語は公用語となっていない、北部のヌナブト準州でイヌイットによる自治が行われ、州内ではその言語が通用しているが)。

シンガポールの公用語は、旧宗主国の言語である英語、そしてかつてマレーシアの一部であったのでマレー語、さらに移民の言語である中国語(シンガポールの人口の4分の3が中国系)とタミル語(インド南部の言語)の4つが公用語となっている。ただし、教育や公的な場においては英語が主に使用されている。自分のルーツである民族言語より、英語を得意とする子どもたちが最近は増えており、親の世代との文化的隔離が一部で社会問題となっている。

スイスの公用語は、ドイツ語、フランス語、イタリア語、レートロマン語(ロマンシュ語)。スイスは連邦国家であり、州(カントン)ごとの独自性が強い。過半の州ではドイツ語が使用されているのだが、西部ではフランス語、南西部ではイタリア語あるいはレートロマン語を使用する州もある。

正解は②。韓国の公用語は、韓国語(朝鮮語)であり、一般にはハングルとよばれる。比較的新しい時代につくられた「人工文字」であるハングル文字が使用されている。漢字の使用は限定的なものとなっている。

問7 1人当たりGNIが直接出題されている。4か国中、最も1人当たりGNIが高いのがデンマーク。北ヨーロッパの国は、人口が小さいことも相まって、極めて1人当たりGNIが高い。①がデンマーク。

日本の値はそれに次ぎ、②が正解。

なお、ベトナムとインドは値が近く、1人当たりGNIだけでは判定できない。両国の判定には女性の労働力率や女性国会議員の割合がポイントになる。南アジアや西アジア、北アフリカは伝統的に女性の社会的地位が低い地域。たとえば、イスラム教は本来女性の立場を尊重した近代的な教義を持つ宗教であるのだが、なぜかイスラム専制国家のサウジアラビアは強烈な「男尊女卑」の国となってしまっている。宗教の教義とはそれを信仰する者によって都合よく「解釈」されるものなのだ。

<第3問;東南アジア地誌>

問1 東南アジアの各地の気候について。アはインド洋に面し、夏野モンスーンによる多雨が顕著な地域。雨季には月500mm近い極端な多雨となるのに対し、大陸からの風が卓越する冬季にはほとんど降水がない①がアに該当する。

他はエに注目。南半球の低緯度に位置し、7月(南半球なので冬季)は北上する亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響によってほとんど雨が降らないが、1月(同じく夏季)には南下する熱帯収束帯(赤道低圧帯)の影響によってスコールがもたらされ降水量が多い。④がエである。

他は判定不要だが、イが②、ウが③。

問2 地点Aはマレー半島、Bはフィリピンのミンダナオ島。

写真が省略されているのでよくわからないが、キがバナナのようにみえる。カはゴムの木の写真だったのだろう。

PとQはQがわかりやすい。天然ゴムの原産地としてアマゾン低地は必須。アマゾン川流域の熱帯雨林に自生していた樹木を、イギリス人が当時植民地だったマレー半島へと持ち込み、プランテーションにおいてゴムの生産を行った。カとQが該当し、②が正解。

ところで「水はけの良い丘陵地」というのがよくわからないのだが。天然ゴムは極めて高温多雨の気候条件が生育に必要であり、少なくとも「高原」のような冷涼な場所では栽培されない。本文の「丘陵地」は、とくに標高の高い場所というわけでもないのだろう。

問3 特殊なネタが問われているが、何となく解けたんちゃうかな。

誤っているのは③。日本で栽培されている米はジャポニカ種であり、比較的丸みを帯びた形としており、粘り気のある食感である。これに対し、東南アジアで栽培されているのはインディカ米とよばれる長粒種であり、パサパサした食感をもつ。

なお、アメリカ合衆国で栽培されているカリフォリニア米はジャポニカ米に似せて品種改良されている。アメリカ合衆国が、日本の輸出に適した品種w栽培していることには納得である。

①について。南アジアや東南アジア、メキシコにおいて「緑の革命」と呼ばれる農業革新が行われた。近代的な技術を導入し、米など主穀の生産拡大がなされた。

②について。雨季と乾季の明瞭な東南アジアでは、かつては一年一作であったが、近年は灌漑設備の整備によって二期作(一年に二回米を栽培すること)が行われるようになった。

④について。東南アジアでは、米を原料とした麺であるビーフンやフォーが食されている。

問4 ベタな問題だが、こういった問題を確実に解くことが大切だね。

東南アジア11か国の宗教を整理しておこう。

フィリピン・・・カトリック(スペイン植民地時代に布教された)

インドシナ半島・・・ベトナム・タイ・カンボジア・ラオス・ミャンマー(米作地域であり、托鉢の習慣がある仏教が広まる基盤があった)

マレーシア・ブルネイ・インドネシア・・・イスラム教(香料交易によりアラブ商人が訪れた)

シンガポール・・・仏教を始め、さまざまな宗教。

東ティモール・・・カトリック(ポルトガル植民地時代に布教された)

タイは仏教が多く、③が正解。

なお、他は④がキリスト教が多くフィリピン。①と②はいずれもイスラム教が多いが、多民族国家であるマレーシアでは、国民の③割を占める中国系が仏教、1割のインド(タミル)系がヒンドゥー教を信仰し、②が該当。人口の⑧割以上がイスラム教徒のインドネシアが①。

問5 これ、実はなかなか難しいんじゃないか。ここまで細かいことは地理Bでは問われないので、地理A特有の問題なんだろうが。しかし、地理B受験者も知っておいていいと思う。

①は誤り。第二次世界大戦(太平洋戦争)後の1949年、中国は社会主義国として統一された。この時期より中国は外国との交渉を絶ち、その姿勢は1980年の改革開放政策まで続けられた。中国にとって1960年代と1970年代は圧政と混乱の時代なのである。この時期に外国に移民に出ることは実質的に不可能。現在東南アジアや日本に多く居住する中国人(華僑)や中国系住民(華人)はそれ以前に移住した人々やその子孫。

③も誤り。中国から移民した人々の出身地は、華南のフーチェン省(長江河口の南側。福建省といえばお茶で有名だね)やコワントン省(ホンコンが隣接する省。広東料理といえば、酢豚ですね)。いずれも南シナ海に面する省で「沿海部」である。山がちな地形で耕地に恵まれず、人口支持力(農業生産によって多くの人々を養う力)が小さい。貧しい人々は海外に活路を見出した。

④も誤り。東南アジアや日本で中国人・中国系住民が居住するのは都市部。チャイナタウンを形成し、そこで飲食業や金融業を営む者が多い。ハワイや南米への日本人の移民が農業労働者だったこととは異なる。

よって正解は②。どうだろうか。言われてみれば納得という内容が問われていたのではないだろうか。

問6 1人当たりGNI一発で解いてしまっていいんじゃないかか。というかそれでしか解けないかな。

1人当たりGNIは、ベトナム<タイ<シンガポール。ASEAN10か国の1人当たりGNIは一覧にして知っておくべきだと思うよ。

よって、サがベトナム、シがタイ、スがシンガポール。1人当たりGNIと1人当たりGDPは同じものとして考えてください。

せっかくなので、「輸出額に占める工業製品の割合」にも注目してみよう。タイでは大幅な変化がない。2005年の段階で工業化が達成されており、この10年間の変化も小さいもの。ただ、自動車については大幅に増えているはずなのだが、この表からはわからない。

シンガポールは割合が低下している。工業製品に対する言葉は「農産物」や「鉱産資源」である。中東から日本への原油など、資源の輸送量が増加しているのだろうか。

最も注目するべきはベトナム。1990年代から市場経済化を進め、2000年代に入ってそれが結実しつつある。工業製品の割合は急激に高まっている。繊維工業を中心とした軽工業はむしろベトナムが中心地であり、現在はさらに電気機械の組み立て工業などもさかんに立地している。

問7 ASEANの内容が問われているが、EUとの対比で考えたらいいだろう。EUは、シェンゲン協定によってすでに国境を越えた自由移動が実現している。人々はパスポートを提示することなく、域内の国々を出入りできる。

他の国際機関ではさすがにこのようなことはなく、例えばNAFTA(カナダ・アメリカ合衆国・メキシコ)ではむしろメキシコからアメリカ合衆国への移民の流入などは厳しく管理されている(それでも移民数は増加しているのだが)。このことから、③が誤りとみていいだろう。

他の選択肢は全て正文。①の「ASEAN自由貿易地域」については初登場。今後は経済的な関係を強め、自由貿易地域の実現に向けた話し合いが行われている。ただし、それは近くない将来の話だろう。

②についてはそのようなことがあるんだろうかという程度の認識でいい。具体的な内容にふれる必要はない。

④は重要であるが、しかし十分に君たちの想像の範囲だろう。域内の経済格差は大きく、産業の発達の程度も異なる。例えば、1人当たりGNIが比較的高く(6000ドル/人)のタイは自動車工業も発達する国であるが、周辺には低賃金国が多く、ラオスやカンボジア。ミャンマーなどから出稼ぎ労働者が多く入国している。

<第4問;世界の結びつきと地球的課題>

問1 交通に関する話題は地理A特有。船舶は、安価に大量の貨物および旅客を輸送できるという利点がある。ただし、あまりに時間がかかりすぎるので、鮮度が重要である貨物や、迅速な移動を行いたい旅客の移動には適さないというデメリットもみられる。

このことから、航空機に比べ速度の遅い船舶は「重量当たりの輸送費用は小さい」ため、③が誤りとなる。スピードにさえこだわらなければ、コスト的に船舶は非常に有効な輸送手段となる。もちろん、鮮度にこだわる野菜や、単位重量当たりの価格が高い精密部品などについては自動車や航空機の方が輸送に適しているのだが。

問2 地理Bではあまりみられない事項が問われているが、でもしっかり解いて欲しいなぁ。いい問題だと思います。

人口移動の原則は、「1人当たりGNIが低いところから高いところ」。これは、より高い賃金をもとめて移動する労働力の移動に典型的に当てはまるが、より高水準の研究施設をもとめて移動する留学生にも言えることであり、全ての人口移動はこのセオリーを基準に考える。

このことから①はアメリカ合衆国となる。多くの日本人が居住し(在留邦人)、そして観光でハワイやアメリカ本土を訪れる(日本人の海外旅行者数)。

そのセオリーでいえば、1人当たりGNIの高いイギリスにこそ、在留邦人が多く、日本の海外旅行も盛んであると考えるべきなのだが、しかし、それは適切なのだろうか。

ここに最大のジョーカーとして中国がある。中国は1人当たりGNIの低い発展途上国であるが。しかし人口は世界最大、GNIも世界2位であり、その存在感を無視することはできない。さらに意識して欲しいデータとして日系企業の進出数がある。日本企業の現地法人の数は、1位アメリカ合衆国、2位中国、3位がタイである(この統計は絶対的なものなので、必ず覚えておこう)。②をイギリスと判定してしまうと、中国は③か④となる。国の規模が大きく(さらに距離的にも日本と近い)、日系企業の数でも多い中国の「在留邦人」がタイとあまり変わらない(③の67)もしくは少ない(④の37)なんていうことが考えられるだろうか。

たしかに経済レベルは低いが、中国の圧倒的な存在感から想像し、②を中国と判定することは可能。日系企業関係者を中心に在留邦人はオーストラリアより多く、さらに日本からの観光客が多いことは十分に納得できることだろう。②が中国である。

残った③と④の判定も難しい。しかし、ここは「日本人の海外旅行者数」が大きなヒントになる。隣国である韓国への観光者数がタイより少ないなんていうことがあるだろうか。イギリスは著名な国であるものの、やはりヨーロッパに位置するという距離的な問題はある。さほど日本からの観光客が多いとは思えない。

その一方で、在留邦人数はイギリスの方が多くなるのだが、これは先にも述べたように留学生について考えればいいだろう。日系企業は少ないが、言語などを学ぶ留学生がイギリスに多いことは納得の範囲である。

逆に韓国は、経済レベルは日本より低く、留学生にとって魅力的な国ではない、さらに日系企業も少なく、在留邦人は限られた人数にとどまるだろう。④が韓国となる。

問われている内容も地理Bでは一般的なものではないし、問題そのものの難易度も高い。しかし、いろいろなことを総合して考えれば、納得できる解答へとたどり着くはずである。本問をズムーズに解くことができれば、君も地理マスターである!

問3 ちょっと変わった統計地図だね。これは変形地図(カルトグラム)とよばれるもので、国の面積で絶対量の大小を表す。この場合の絶対量とは「インターネットの利用者数」。

さらにおもしろいことに、本図は色の濃淡によって割合である「インターネット利用者率」も表現している。階級区分図としての要素も含まれているという、重層的な統計地図になっているね。

では各下線部を判定していこう。

②は誤り。中国の方が面積が大きく、利用者数は中国が多い。

③も誤り。割合は西ヨーロッパで「高」、アフリカで「低」。

この2つは簡単に図から判定できる(というか、図がなくても想像できると思う)が、他の2つが難しいんだわ。

実は誤っているのは①の方。もちろん「人工衛星」も使われているのだが、大陸間の情報通信機器をつなぐのは、太平洋や大西洋に敷設された海底ケーブルであり、光ファイバーが高速で大量の情報を相互に送り合っている。このことが意識できれば①は不正解となり、残った④が正解。④の文章は、情報格差について述べており、経済格差やインフラ整備の度合いなどで地域ごとに情報を得られる機会が大きく異なっていることは、情報化社会の課題の1つである。

問4 1人1日当たりカロリー供給量は、原則として1人当たりGNIに比例し、先進国であるカナダとスペインで値が高く、①と②のいずれかに該当する。

フィリピンは経済レベルの低い国であり(1人当たりGNIは3000ドル/人)であり、またナミビアもアフリカの国でありやはり経済レベルは低いだろう。②と③のいずれかに該当。

ただし、ここからが難しい。ナミビアはアフリカ南西部の沿岸部に位置する国であり、沿岸を流れる寒流(ベンゲラ海流)の影響で海岸冷涼砂漠(ナミブ砂漠)がつくられていることでしばしば出題されている。しかし、それ以外にはこれといった特徴もない国であり、国名が登場したのは記憶する限り、センター試験で初めてだと思う(こうした国が登場するのも、地理A的ではあるのだが)。

よって、ここではフィリピンを中心に考えるべき。東南アジアの島国であるフィリピンは、周囲を海に囲まれ、魚介類を利用した食生活がみられるのは確実だろう。いくらなんでも④ほど「魚介類〜」の値が低いとは思えない。②がフィリピンであり、残った④がナミビア。なお、ナミビアは寒流に面しているので漁獲量が多そうな気もするが、そもそも沿岸部は砂漠であり、人はほとんど居住していないのだから、伝統気な魚料理があるとも考えられない。やや降水量の多い内陸部で狩猟・採集生活が伝統的にみられたのではないか。

参考までに、①と②の判定は、①がスペイン、③がカナダだと思う。スペイン料理には魚介類を使ったものが多い。カナダは意外に漁獲量が少ない国である。

問5 地理A特有の出題。マラリアについては地理Aではしばしば出題されているが、地理Bでは出題例はない。

誤りは②。マラリアは熱帯地域の伝染病であり、とくにアフリカ中部において蔓延している。温帯地域で気温が上昇すれば、気候環境は熱帯に近くなり、「マラリアの感染リスク」は上昇するだろう。

温暖化が進む地球において、温帯国である日本も今後は熱帯地域の伝染病いついて対策する必要があるだろう。

①について。「地球温暖化問題への対策」とはすなわち二酸化炭素の排出量の削減に関することだろう。たとえば、すでに経済発展を成し遂げている先進国は、二酸化炭素排出量の削減には積極的である(日本やヨーロッパなど)。しかし、発展途上国においてはこれから石炭など化石燃料を大量に消費し(つまり二酸化炭素を排出し)、経済発展を進めないといけない。先進国と発展途上国とで利害関係は一致しない。

③について。地球温暖化によって北極海の氷は減少している。海氷やその周辺地域を生息地域としているホッキョクグマは生存の危機に瀕している。

④について。炭素税である。ヨーロッパでは二酸化炭素の削減のために、石炭などの化石燃料に特別な税金を課している。なお、京都議定書からも脱退し、COP21のパリ協定にも積極的ではないアメリカ合衆国は二酸化炭素の削減にはとくに努力をしておらず、炭素税は導入されていない、という話題がセンターで出題されたことがある。

問6 簡単な問題だと思う。説明文もよくできており、非常に参考になる。

Aは極めて底辺の長い人口ピラミッド。さらに、たとえば「0〜4」から「5〜9」にかけて値が急激に下がっている。乳幼児の死亡率が高い地域であり、全体の平均寿命も短いことが想像される。「多産多死」型である。こうした人口ピラミッドは、歴史的には19世紀までの世界でみられたが、現在はアフリカで主にみられる。タンザニアに該当。

さらにBに注目。Aに比べ、底辺が短くなっている。「少産」化が進んでいることがわかる。さらに、年代ごとの段差(Aでは大きかったが)がBでは小さくなっている。とくに0〜4歳の人口は5〜9歳よりも少なくなっており、Aに比べて、乳幼児死亡率は下がっていることが伺える。平均寿命も延命化していると思われ、「少死」化である。「多産多死から少産少死に移行して」おり、これは発展途上地域の新興工業国である。タイに該当。

そしてCであるが、さらに底辺は短く少子化が進んでいる。一方で、65歳以上の高齢者の割合は高く、高齢社会が深刻になっていることが想像される。0〜14歳の年少人口と、65歳以上の老年人口を比較すると、「年少人口<老年人口」の大小関係となり、将来的に人口が自然減少すると考えられる。こういった状態は先進国において生じており、ドイツに該当。

<第5問;兵庫県の地域調査>

問1 【インプレッション】 小縮尺の図から、大まかな地形の様子を読み取る問題。このパターンはCGを用いた鳥瞰図(空中から眺めた図)が持ちられることが多いのだが、今回はちょっと違うかたちになっているね。ただ、地形の立体視というか、凹凸を読み取ることがポイントになっている点はオーソドックスといえる。

【解法】 図の陰影によって土地の高低や凹凸を読み取り、河川の流れや土地量を想像して解く問題。

「ため池」とあるが、もちろん水田への灌漑用の施設である。水田面積が広い地域こそ、ため池の数は多くなるのではないか。A〜Cを比較し、低地が広がり水田に適していると思われるのはB。また、Aも比較的平坦な土地が多いようにみえる。Cについては陰影が濃く、全体が山がちの地形である。こちらは水田には適さないだろう。

このことから、ため池の最も多いウがB、もっとも少ないアがCとなり、中間のイはA。正解は④となる。

念の為、河川の流れも見てみよう。アは南に水源があり、北に向かって流れている。なるほど、Cの地形は南が高く、北が低くなっている。

イは南東から北西に向かって流れる河川が多く、この方向に向かって土地が傾いていることがわかる。Aは北西側に海がみられ、こちらの方向が低い土地であることがわかる。イをAとみて妥当である。

ウは全体にため池が多く、ほぼ全体に水田が広がっているのだろう。河川は北に向かって流れるもの、東に向かって流れるものなど多様である。全体的に緩やかな地形であることが伺える。Bをウとみて問題ないだろう・

【アフターアクション】もちろん図の見方が重要なのだが、「ため池=水田=低地」という発想も重要。問題の意図を噛み砕いてから、じっくり考えて解いてほしいな。単純なゴロ合わせ的な知識が問われる問題じゃないってことだね。

【スイマセン、間違えました(涙)】 

自信満々に正解を④としていましたが、実は⑥が正解だったなんて!?

つまり、「C=ア」の組合せは合っているわけか。AとBが反対。ん、どこがポイントなんだ?もしかして、ため池って全然関係ない?うん、そうだ、そこに騙された!河川だけがポイントだったんや!

なるほど、AとBの違いってどこにあるかっていうと、Aはほぼ東岸から西岸まで淡路島を完全に横断しているのに対し、Bは中央部から西岸付近までしかカバーしていないのだ。そうかぁ、とくにAの南東端は海に接しているわけで、この付近で降った雨水は東の方へ流れていくのが当たり前だ。イとウと比較しみてよう。イでは南東部から河川が発しているが、これが北西に向かって流れていく。もし南東端が海だったらこんな流れ方をするわけがない。

それに対し、ウを参照。南東部に川はないけれど、それに近い東側に中央部には二つほど川が流れていて、これは東に向かって流れていく。この図のすぐ東側に海があると考えれば、非常に納得できる河川の流れ方なのだ。ウの】中央部の川(ウいう文字のすぐ上にみられる、図を縦断する河川)は水源がわからないのでどの方向に流れているかわかりにくいけれど、西側の河川は西へと流れ、やはりこちらに海(瀬戸内海)がある。なるほど、川の流れに注目すれば良かったのか。。。河川の流れは地形の凹凸を正しく表す。だからこそその流れる方向については厳密にチェックしないといけなかったのか。。。難問でした。申し訳ないです。

問2 【インプレッション】 地形図読解問題。いわゆる最新バージョンの地形図ではなく、旧来の地形図なので判別が容易。新型地形図って色による表示が多いので、白黒印刷じゃ厳しいんだよね。っていうか、センター試験もカラー印刷にするべきやなと思ってるんだが、これって邪道なんだろうか。

それはともかく、地形図問題としては本問はかなりオーソドックスだと思う。新旧の2枚の地形図比較は最もよくあるパターン。本試験の方が、現在の地形図だけの判定問題だったのに対し、追試験ではあえて正攻法で。さらにこの手の問題は難易度も低いことが一般的。さてこの問題はどうかな?

【解法】 新旧の地形図比較。とくにこのように、中小都市の市街地開発がテーマになることは多い。オーソドックスな問題と言えよう。

地形図問題のコツは、最初に選択肢を読解すること。あきらかに怪しい選択肢を探して、見当をつけてから地形図を注視すること。

では早速選択肢の文章を読んで、誤っているとすればどの部分が怪しいのかチェックしていこう。

まず①について。「郊外化が進む」という部分は判定しにくいが、なるほど地方都市では駅前商店街が衰退し、郊外の幹線道路沿いに大規模商業施設が建設されることが多々ある。この地域がそれに当てはまるかどうかわからないが、ありがちなパターンである。しかし、その「郊外化」とはそのような商業を始めとした産業、あるいはニュータウンなど新興住宅地の開発に関することであり、「寺社」については該当するのだろうか。「地価の高い都心部を避け、広い土地が確保できる郊外に寺社が移転した」なんていうケースがあるか???これ、かなり怪しい選択肢。

さらに②について。なるほど、「港湾部から内陸部に向かう鉄道」があったのだな。港湾から導かれているということは、港に荷揚げされた貨物を輸送するための鉄道だろう。かつての貨物交通の主役は鉄道だった。しかし現在ではトラック輸送が主となり、こうした貨物専用の鉄道には廃線になるものも多い。また、その跡地はそのまま道路として利用されるケースがある。この選択肢は正文っぽいんだが。また「ほとんど」っていうのもおいしいワードだね(笑)。これが「全ての」なんていうように、かなり限定してきたら怪しくなるんだけど。

次は③。これはどうなんだろう?再開発によって街路区画が改変されることはよくある。歴史的な城下町なんかではそういうことはないんだが、洲本市街地の場合はどうなんだろう。チェックしないとね。

最後は④。右岸と左岸はしっかり確認しましょう。下流側を正面にして、向かって右が右岸、左が左岸。公共施設については具体的に述べられていないので、地図記号で確認しないといけない。大丈夫かな。

以上より、僕が最も怪しいと思うのは①なわけだよ。真っ先にこれを確認しよう。

市街地の西部で寺社を探してみる。なるほど、あった! 1935年の図においては「てらまち」の駅の近く、河川(洲本川へ南から注ぐ支流。千草川というのだろうか)に沿っていくつか「卍」の記号がみられ、これが寺院(寺社)である。2005年の図をみると、同じ場所に「移転」どころか、さらに多くの寺社が集まっているようだ。「卍」が数多くみられる。これが誤りとなる。

どうだろうか。地形図問題を数多く解くことで経験値を上げると、「怪しい選択肢」が雰囲気でわかるものである。とくに本問においては「ショッピングセンターでもあるまいし、郊外化によってお寺が郊外に移転するわけないやろ」っていう都市構造に基づく理論的な思考もできたと思う。選択肢の文章から先に読解するというアプローチは、問題の正解率を上げるだけでなく、問題にかかる時間を節約することにもつながる。みんなも地形図問題に数多くあたり、経験値を稼いでほしい。

なお、一応他の選択肢についても触れておこう

②について。これは先ほど述べたことに一部誤りがあったことを先に詫びておかなければいけない。「貨物専用の鉄道」と勝手に判断してしまったが、図をみるとどうやらそのようなものではなく、人々の足となるような一般の旅客用の鉄道のようだ。淡路島にそのようなものがあったとは意外(知識不足でスイマセン)。図の西から入ってきて、「てらまち」や「すもと」といった駅があるね。

ただ、この鉄道については2005年の段階では消えている。やっぱり鉄道ってコストがかかりすぎてしまうんだろうね。かつて鉄道が敷設されていたところに沿って、現在は道路が整備されている。

④について。なるほど、たしかに洲本川の河口の右岸に「紡績工場」が立地している。繊維工業が盛んだったのだろう。現在も工場はみられるようだが(歯車の地図記号)、何の工場かは不明。敷地はやや縮小しているようだ。「広げた本」の記号がみられ、これは図書館。公共施設が新しくつくられている。

【アフターアクション】 地形図問題は経験値が全て。数多くの問題に当たって、出題のされ方のパターンを覚え、「目」を鍛える。本来はカラー印刷であるものを、白黒印刷で見ないといけないのだから、ナンセンスだなと思ってしまうのだが、高得点を取るためには仕方ない。センター試験特有の地形図の見方(色に頼らず、白黒印刷の中でしっかり判定していく)ことに習熟しよう。

さらに上でも述べているが、先に選択肢の文章を熟読して、ある程度の見当を就けてから解き始めるのは非常に有効。漠然と地形図を眺めていても、時間ばかり立ってしまっておもしろくない。見るべき箇所、ターゲットを絞ってから地形図読解に取り掛かろう。

問3 【インプレッション】 変な淡路島(笑)。北の方向がずれているので、キプロスみたいな感じになってる。もっとも、これが淡路島でなく、架空の島であっても全然解ける問題であるので、その場でじっくり時間をとって。思考して問題にアタックしよう。

もっとも、この「時間をとって」っていうのが難しかったりするんだけどね(笑)。普段の模試からゆっくり問題を解くという訓練をしておかないといけないね。

【解法】 階級区分図を用いた問題。長い問題文や複数の図など「ヒント」が多く提示されているので、これらについてじっくりと腰を据えて読み解いていこう。

まず「民営バス」と「コミュニティバス」の違いについて。文章にもあるように「採算性」が重要なようだ。採算が取れる区間ならば、民間の会社によるバス路線が設置されているはず。一方で、人口減少や過疎化によってバスを利用する人の絶対数が減少し、採算が成り立たなくなると自治体による(つまり税金を使ったということ)コミュニティバスに頼るしかない。

このことから、「人口密度が高い地域=民営バス」、「過疎化が進む地域=コミュニティバス」の関係性がみえてくる。

さらに図についても観察していこう。「総人口に占める65歳以上人口の割合」。島の北西部や南部(北の方向が曲がっているのでややこしいなぁ)、で高齢化が著しく、東部の洲本市街地(市役所があるエリア)などで比較t系高齢化の進行は緩やかである。若者が職をもとめて都会へと出ていく。北西部や南部で人口が減少し、過疎化が進んでいることが伺える。

カとキは、「人口密度」と「通勤・通学者数に占める自家用車利用者数の割合」のいずれか。ここは人口密度がわかりやすいだろう。人口密度は「人口」に比例し、「面積」に反比例する。ここは人口で考えたらいいんじゃないかな。高齢化が進む過疎地域は人口密度が低く、市街地は比較的人口密度が高い。このことから、左の図と高低が反対の傾向にある(色がひっくり返っているってことね)カが「人口密度」と解く。キが「〜自家用車利用者数の割合」である。

さらにサとシについて。人口密度が高い地域では民営会社の経営が成り立つが、過疎地域ではそうはいかない。人口密度が低く、高齢化が顕著な過疎地域である南部に集中している(一部は北部にもみられるが、こちらもやはり過疎地域である)シが「コミュニティバス」であろう。サは「民営バス」となるが、洲本市役所周辺には企業や官公庁、工業や商業施設も集中しているのだろうか。通勤者のための路線バスがかなり整備(それでも一日に20本程度だが)されていることがわかる。正解は②である。

なお、キが「〜自家用車利用者数の割合」であるが、サとシを参照するにバス路線が整備されていない地域でこそ、値が「高」となっているのは納得。

【アフターアクション】「問題文の量が多ければ、必ずその中にヒントがある」という典型的な問題。コミュニティバスの意味がわからなければ問題が解けないのだが、それについてはしっかり問題文に書かれているね。「採算が取れる民営バス」と「採算が取れないコミュニティバス」の違いが把握できれば、この問題は8割がた正解できたも同じ。逆に問題文をろくに読まず「コミュニティバスって何なんだ?」って頭を抱えながら解けば、正解にはたどり着けない。

また図4が階級区分図であることもしっかり把握しておこう。階級区分図は割合の高低を示すもので、エリアごとに色や模様の違いがみられる。本問で登場している3つの指標(総人口に占める65歳以上人口の割合、人口密度、通勤・通学者数に占める自家用車利用者数の割合)はいずれも割合である。なお、割合については「分子」だけでなく「分母」も大切なのだが、(人口密度ならば、人口だけでなく面積に大切)なのだが、本問については分母を考える必要はなかったかな。単に人口密度については人口を基準に考えればよかったし、また高齢者の割合についても過疎化や若年層の流出と結びけて考えることができれば十分だった。

問4 【インプレッション】あっ、タマネギだ。やっぱ淡路島といえばタマネギですよね。小学校の社会科の時間に勉強するような内容で、なんだかホッとしますね(笑)

【解法】 極めて簡単な問題。タについては図をそのまま読解。「流通時期」をみればわかるように、北海道産のタマネギが東京の市場において品薄になるのは「6〜8月」。ここは「夏季」で何の問題もないでしょう。

さらにシについては、大都市圏向けの野菜栽培を行う農業形態ということで、もちろん園芸農業なのだが、それにも「近郊」農業と「輸送園芸」農業の二つがあることがポイントとなっている。兵庫県の場合は、大阪市の大都市圏に含まれ、淡路島の農業についても「近郊」と考えていいと思う。輸送園芸ならば、高知県や宮崎県などで栽培されたキュウリやピーマン、トマトなどの園芸野菜がトラックで輸送されることを想像するよね。①を正解とみていいでしょう。

【アフターアクション】「生産時期」のグラフが読み取りにくいんだが、これはとくに意識しなくていいのでしょうね。ちょっとおもしろいなと思ったのは、北海道のタマネギの収穫期は、8月の頭と9月なのだが、市場に出回り時期っていうのは9月から翌4月までだっていうこと。輸送の手間や保存期間がある程度長い(半年程度は保存できるのかな)ことを考えると、そんなもんなんだろうね。それに対し、淡路島のタマネギの収穫時期は5月から6月。5月には早くも大阪にはとれたての新タマネギが出回るのだが、東京については若干のタイムラグがあり、6月から。5月中は北海道産に押されて、まだ市場では扱われないんだろうね。

それにしても、たしかに新タマネギはおいしいわ。普通のタマネギが、ある程度の期間、保存してからスーパーに並ぶのに対し、大阪のスーパーには淡路島産の新鮮なタマネギが売られている。なるほど、そういった差があったんやなぁ。

問5 【インプレッション】ちょっと難しい気がする。決して高度な知識が問われているわけでないんだが、果たしてそれに気づくかどうか。教科書的な勉強ではなく、いかにセンター試験に慣れているかどうかが天国と地獄の境目なんじゃないか。

【解法】文章正誤問題のポイントは「誤っていそうな言葉を探すこと」。その際に重要となるのは、「形容詞」と「対義語を持つ言葉」。例えば形容詞については、選択肢①の「長い」があるね。これを「短い」とすれば反対の意味を表す選択肢となる。誤文の可能性は十分にある。あるいは選択肢④の「増加」も怪しい。これは名詞ではあるけれど、意味は「増えている」だよね。これには「減っている」という対義語があるわけで、この部分を変えれば誤文となる。

あるいは「対比の構造」を探すことも大切。「AとBを比べて◯◯である」という文章があれば、「BとAを比べて◯◯である」という誤文を容易につくることができる。本問の場合は選択肢②である。一見すると誤文としにくい文章なのだが、よく読んでみると前の部分に「太陽光発電は、(中略)火力発電に比べて」ってあるんだわ。まさに対比の構造。「火力発電は、太陽光発電に比べ不安定である」という文章をつくることができる。

選択肢③はちょっとおもしろくて、例えばこうした問題で固有名詞が誤っていることはほとんどない。ここでは「関西国際空港」だよね。この部分は正しいとみていい。対義語を有する言葉としては「埋め立て」があり、この言葉を「干拓」や「掘り込み」に入れ替えることができるかどうかについて見当しないといけない。ただ、今回は埋め立てが誤っていることはないんだけどね。前の部分に「埋め立てに用いられてきた」という言葉があり、そもそも埋め立てであることは大前提。ここはノーチェックでいいよね。選択肢③で気になる言葉は「工業」だけなんだよね。埋立地が工業用地として使われているだろうか。この当たりを意識してみてほしい。

では以上のことをポイントとして、各選択肢を検討していこう。

まず①について。瀬戸内地方って日想時間が長いのか?これは「正」とみていいんじゃないかな。日本全体の年降水量の平均は1500ミリ。ただし、周囲を山地で囲まれた中央高地や瀬戸内地方ではやや少なく1000ミリ程度。とくに瀬戸内地方においては、夏の季節風(南東)によって太平洋からもたらされる水分は急峻な四国山地に遮られ、冬の季節風(北西)によって日本海からもたらされる水分は広大な中国山地に防がれる。岡山県など山陽地方、香川県など四国北部は雨量が少なく、年間における晴天日数の多い地域として知られている。瀬戸内の気候である淡路島が全国平均と比べて「年間の日照時間が長い」ことは妥当。

選択肢②について検討しよう。太陽光発電と火力発電はいずれが不安点な電源方式かっていうことになる。瀬戸内は比較的晴天日数が多いとはいえ、年間の降水量は1000ミリはあり、これは世界的にみると決して少なくはない。日本には梅雨の時期もあり、日本海側地域には冬の雪もある。温帯の国としては地球上で最も降水量が多い地域とも言えるのが日本列島なのだ。一年を通じて晴れの日があるわけではない。天候の影響を大きく受けてしまうのが太陽光発電の弱点でもあるはずだ。一方、石炭や天然ガスなどの化石燃料に依存するのが火力発電であるのだが、もちろんそうした化石燃料が枯渇してしまうという懸念はあるものの、現在のところは安定した供給は保証されているわけで、発電は安定的に行われている。この選択肢も正文でしょう。

更に選択肢③。ここで気になる言葉は「工業用地」なのだがどうだろう?たしかに21世紀の日本において、大都市の湾岸が工業用地として開発される例は稀だと思う。東京のお台場や横浜のみなとみらい21,神戸のポートアイランドなどはオフィスやマンション、商業施設やイベント会場や遊興施設が立ち並び、工業地区という雰囲気はない。ただ、ここでは前に「高度経済成長期以降」とわざわざ断られている点に注目。1960年代をピークとする高度経済成長期は、日本の重工業化が急速に進んだ時代でもある。臨海部に製鉄所と石油化学コンビナートが新設され、輸入原料に依存した素材型重工業が発展した。どうだろうか。こうした経緯を考えると、「工場用地」についてはとくに否定するべき事柄でもないように思う。「などに利用」ともあり、とりわけ工業用地だけに限定した話でもない。この選択肢については否定しにくいため、やはり「正」とみていいのではないか。

最後に残った④である。果たして「増加」なのか、「減少」なのか。土砂採取場が太陽光発電施設に転用されるわけだが、それが「工場誘致」に比べ「雇用創出」がなされるのか、「宅地造成」に比べ「人口増加」が見込まれるのか。これ、解答は容易なんじゃない? 工場ができれば当然そこで働く人々が生じるわけだから、雇用創出の効果は大きい。宅地造成がなされれば、当然そこに住む人が現れるわけだから「人口増加」もみられる。太陽光発電施設はそもそもさほど労働力を必要としないだろうし、当たり前だけどそこに住む人もいない。選択肢④が誤りと考えていいだろう。

【アフターアクション】これ、いい問題だったよね。選択肢①、②、④にはしっかりと「比較の構造」が含まれ、それぞれの正誤を検討しやすい。さらに発電の問題と思わせて、労働力や人口の問題だったという点がおもしろい。センター試験の問題って「嘘つき」だから、テーマとは違った部分に本質が含まれている。問われている内容は簡単だけど、形式というか、問題を解くコツにおいていかにもセンター的な特徴が現れていたと思う。この問題を難なく解くことができたキミは、かなりセンターに習熟しているといえたと思うよ。

知識としては、こうした自然エネルギーに依存した発電方式は電力供給が不安定になりがちで、そこが弱点と言われていることを知っておこう。とくに太陽光や風力など気象の力を利用しての発電方式はその傾向が強いね。

だからこそ本文もで「政策的な後押しが必要である」と述べられている。「自然エネルギーは不安定だからダメだ。だから火力や原子力がいいんだ」なんていう思考は、世界標準ではない。例えばデンマークでは国内の総発電量の30%が風力発電に依存しているし、「欧州の大国:であるドイツですら10%が風力発電であるほか、太陽光発電量は近年中国に追い抜かれたもののそれまでは世界最大を誇っていた。その中国は、太陽光に加え今や世界最大の水力発電国でもあり、自然エネルギーの開発には積極的である。わが国のエネルギー政策って実は極めて遅れているんだっていう自覚を持つべき。

問6【インプレッション】ヤバい問題だな、マジかっ。ここまで知識を深めておかないといけないのか。これ、厄介だよ。みんなもこの機会に、海溝型地震と内陸直下型地震の違いはしっかり押さえておかないと。

【解法】 最近のセンター試験では災害に関する話題が強調されている。これはおそらく新課程の地理総合に反映される部分なのではないか。問われている内容も以前より細かい。

ここで重要になるのは「津波」の発生システムについて。例えばこれまでは「高潮=台風」、「津波=地震」であり、この違いを問う問題が多数出題されていた。例えば「地震によって高潮が発生する」といった誤り選択肢など。高潮は、強い低気圧がもたらす風や上昇気流の影響によって水面が数mほど持ち上がり、低地(干拓地や埋立地、三角州など)に高波や浸水の被害をもたらすもの。津波は海底地震の波動が沿岸に達し、入り組んだ湾奥に巨大な高波が生じるもの。なお、ここで「高波」という言葉を用いているが、これはあくまで一般名詞であり、単に「高い波」を表すもの。高潮でも津波でも高波が生じるという点においては共通している(繰り返すが、発生原因が全く異なっているのだが)。

しかし、本問はそれから一歩突っ込んだ出題となっている。単に「津波=地震」では解けない。「津波=海底地震」であり、地震の種類にまで踏み込んだ内容となっている。

地震には「海溝型」と「内陸直下型」の2種類がある。海溝型は海溝やトラフ(小規模な海溝)を震源とするもので、それらはプレートの狭まる境界(海洋プレートが大陸プレートの下にもぐり込む一帯)で生じる。震源は深く、地震の規模は大きい。海底(というか地下の)深いところで、プレートが動くことによって海水が強い力を受け、その波動が陸地に伝わることによって津波の原因となる。津波は地形災害ともいえ、リアス海岸のような深い入江においてこそ、波の高さは巨大化する。湾奥の谷へと水流が押し寄せ、激しい勢いによって周囲の地形や建物を押し流していく。

内陸直下型は、その名の通り、陸地の内側で発生するもので、断層活動によって発生する。断層のうち、近年活動した痕跡があるものを活断層というが、不安定な状態であり、常に地震発生の懸念がある。日本は活断層の多い国で、本州を東西にわける糸魚川・静岡構造線や、西日本を南北に分ける中央構造線(メディアンライン)など巨大な断層が走行するが、例えば琵琶湖が断層湖であったり、生駒山地(大阪府と奈良県の間)が断層山地であるなど、近畿地方にはとくに断層地形が多く、その中には活断層も含まれている。

日本の主な地震について考えるならば、大正時代末期に東京を火の海にした関東大震災は相模トラフ(フィリピン海プレートと北アメリカプレートの境界)を震源とする海溝型地震によるものであり、未曾有の被害をもたらした東日本大震災の地震は日本海溝(太平洋プレートと北アメリカプレートの境界)を震源としたもので、マグニチュードは9と極めて巨大。

その一方で、内陸直下型地震の例としては熊本の地震があり、マグニチュードは小さかったものの、震源は浅く、人口稠密地域にも近かったため震度が大きく、とくに耐震構造が不十分で脆弱は家屋も多かったため建物が広い範囲で倒壊し、多くの人命が失われた。

さて、本問で取り上げられている阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震であるが、これこそまさに淡路島を走行する活断層を震源とする内陸直下型地震なのである。図中にも「断層」や「活断層」などの文字がみられる。選択肢①の写真からわかるように、断層が巨大なズレを生じ、選択肢②にあるように、建物の倒壊など多くの被害をもたらした。

ただし、選択肢④にあるように、マグニチュード(地震の規模)自体は、内陸直下型であるだけにあまり大きくなく、マグニチュード7.8(それでも十分に巨大なのだが)。東日本大震災の東北地方太平洋沖地震のマグニチュード9には及ばない。なお、マグニチュードは対数で表されるもので、2つ違うと1000倍違う。よって、1つ違うとルート1000すなわち、約32倍の規模の違い。ちょっと計算ができなくて申し訳ないのだが(スイマセン。理系のみなさん、計算してください)、兵庫県南部地震よる東北地方太平洋沖地震の方がマグニチュードで1.2大きいので、少なくとも50〜100倍ほどの規模の違いがあるのだろう。

【アフターアクション】 これは難しいね。ただ、この地理A追試験の中でも、第1問問1・問6・問7と(問8もそうかな)地震の種類やマグニチュードに関する問題が何回も登場してきている。これ、絶対に来年も問われるパターンなんで、この機会に地震については知識をしっかり固めておこう。地学的な内容とは思うのだが(もちろんだからといって地学を勉強しろってことじゃないよ)、地理には理系的な思考が重要ってことなんだろうね。

どうでもいいけど、この問題って選択肢が左上が①、右上が②とここまでは普通なのに、左下が④、右下が③と順番が逆になってる! ややこしいなぁ(涙)

<解答・配点>

【1】3 【2】4 【3】3 【4】1(2点) 【5】1

【6】2 【7】1 【8】2 【9】1 【10】3

【11】2 【12】1 【13】3 【14】2(2点) 【15】2

【16】1 【17】2 【18】3 【19】3 【20】2

【21】6 【22】3 【23】3 【24】3 【25】4

【26】4 【27】2 【28】3 【29】6 【30】1

【31】2 【32】1 【33】4 【34】3