2013年度地理B追試験[第4問]解説

<2013年度 地理B 追試験 第4問>

 

[19][インプレッション]黄河と長江というのは非常に重要なキープレイスではあるな、と。アの砂漠の成因(隔海度の高さ)が言及されたのは初めてかな。

[解法]ホイットルセー農業区分の問題と思って解こう。黄河流域はアジア式(集約的)畑作農業地域。やや降水量が少ない(年降水量1000mm未満)ため主に小麦を中心とした畑作が営まれている。長江流域はアジア式(集約的)米作農業地域。降水量が多く(同1000mm以上)、沖積平野を中心に水田が開かれている。2つの農業地帯の境界は、ウの黄河とエの長江の間ぐらい(ここにホワイ川という河川が流れており、おおよそ年降水量1000mmの等値線と一致している)。ウの河川が境界線ではない。③が正解。

[ひとこと]やっぱりホイットルセー農業区分ですね。ケッペン気候区分でこんなの出ないもの。

 

[20][インプレッション]今まで有りそうでなかった問題。考える部分が多くて良問です。これがしっかり解けたらセンターマスター!

[解法]3つの家畜。乾燥地域が羊、湿潤地域が牛と豚。牧草で生育するものが羊と牛、飼料が必要であるものが豚。前者の定義がわかりやすいかな。とりあえず乾燥地域にターゲットを絞ろう。

北西端のウイグル自治区に注目したらいいんじゃないかな。シルクロードに沿う乾燥地域である。ここで比較的大きな円が示されているカが羊となる。モンゴルに隣接する内モンゴル自治区(ステップが広がる)も乾燥の度合いが高く、やはり羊が多い。

牛と豚はいずれも湿潤地域であり、判定が難しい。だからここは自然地理ではなく、人文地理的なアプローチをしよう。つまり宗教がポイントなのだ。イスラム教においては豚は不浄とされ、その肉が食されないだけではなく、飼育もみられない。先に挙げたウイグル自治区であるが、かつてシルクロードを伝ってアラブ商人たちが交易を行い、沿路にはイスラム教が伝えられた。トルコからイラン、中央アジアそして中国の北西端はイスラム地域である。この地で豚の飼育がみられるとは思えない。小さな円しか描かれていないクが豚となる。正解は③。

しかし、カとキに決定的な違いがないんだよね。あえていうと、ウイグルや内モンゴルにおける。円の大きさの違い。「乾燥地域=羊」を徹底的に考えましょうか。

[ひとこと]羊と豚が重要なんですよね。牛はどうでもいいか(笑)。

 

[21][インプレッション]1人当たりGNIに類するものが問われている。しかしここではあるキーワードが非常に重要!

[解法]キーワードは「一人っ子政策」。中国人口の90%を占める漢民族に対し適用されている人口抑制策で、一組の夫婦の子どもは原則1人までに制限されている。これにより中国は1980年代以降出生率が低下し、急激な人口増加に歯止めがかかったが、その反面、男女の生み分けや戸籍外子の増加、さらには将来的な労働力人口の減少と急激な高齢化といった問題も生じている。

ここでポイントになるのは、この一人っ子政策、少数民族には適用されないという点。本問の場合は選択肢③が重要。「少数民族への一人っ子政策」とあるが、この部分が誤っている。③が正解。

[ひとこと]インドの家族計画(一家に子どもは二人まで)も取り上げられたし、最近人口抑制に関する問題って多いなぁ。

 

[22][インプレッション]これ、おもしろいな。中国が急成長しているなんていうネタはもう飽きたわけで、その内容が問われている。経済成長によってどういった変化が生じているのか。年表が1994年ぐらいから始まっているのがちょっとおもしろい。

[解法]ちょっと難しいと思う。こういったグラフ問題で真っ先に注目するべきは数字。縦軸の値に注目しよう。これ、金額だよね。だから価格が高いものならば、少量であっても高い値になりやすい。こういったことは最初に意識するべき。魚介類、衣類、自動車の価格の違いはまず頭に入れておこう。

さらに統計が1994年ぐらいから始まっているのもおもしろい。中国が経済特区(これに関する今年はあったよね)を設けたのは1980年。そこから徐々に外国企業が国内に進出し、本格的に経済成長が高まったのは1990年代後半から。本問は、1980年代から90年代前半までの「準備段階」が省かれ、すでに中国が世界経済において重要性を増していた1990年代後半からがテーマとされている。

またこのグラフのおもしろいのは、輸出は一貫して「サ>シ>ス」であり、輸入は一部に例外はあるが全体としては「シ>ス>サ」の順。途中で順位が入れ替わったりということはほとんどない。年代はあまり気にせず、単純な順位で考えたらいいと思う。

ではようやく(笑)問題にアプローチしよう。「輸出」から。サが最も大きな金額となっている。中国は1990年代より世界最大の綿織物の生産国であり、日本企業も衣服の縫製部門を積極的に中国へと進出させた。たしかに衣類の価格は安いが、その生産量の多さから、自動車の金額を上回っているのは納得だろう。サを「衣料品」とする。そしてシだが、これは自動車ではないか。現在中国は世界最大の自動車の生産国である。中国を本社とするメーカーは少ないものの、小型車部門を中心に日本や欧米から自動車の組み立て工場が相次いで進出を始めた。1990年代の段階ではまだほとんど自動車は輸出されていないが、近年急上昇したことからも中国自動車工業の発展が想像できるだろう。シが自動車となる。残ったスが魚介類。

これを輸入に当てはめてみる。衣料品や魚介類の値が小さいことは納得。魚介類はそもそも値段が高いものではないだろうし、衣料品こそ中国より安価な労働力が得られるところはないのだから、中国人もやはり「メイド・イン・チャイナ」の服を着ているはず。輸入は少ないだろう。

一方、シは自動車とみて間違いないだろうか。近年高所得者層も生まれ、中国における自動車の需要は拡大している。現在はアメリカ合衆国をしのぎ、世界最大の自動車販売国となっている。自動車生産も多いが、輸入もまた多いとみていいのではないだろうか。世界最大の自動車輸入国はアメリカ合衆国ではあるが、中国も莫大な国内需要を支えるために日本などから盛んに自動車を輸入しているはずである。シが自動車とみて矛盾はないと思われる。正解は②。

[ひとこと]いろいろ理屈をしゃべったけれど、この問題はどちらかといえば「何となく」解くタイプの問題だと思うよ。もちろん、何となく解く問題だからこそ、難易度が高いわけだが。

 

[23][インプレッション]ファッションって!?意表をついた問題だな〜。

[解法]日本でもミネラルウォーターを買う人は多いしね。資本主義社会、経済成長の一つの象徴だと思うよ。富裕層が増えたからこそ、ミネラルウォーターの購入は増えているだろう。これも感覚的に解ける問題じゃないかな。②が正解。

[ひとこと]本問も理屈をかますより、感覚で解いた方がいいと思う。おそらく「上水道の水質」も思うほど改善されてないんじゃないかな。

 

[24][インプレッション]中国系住民ネタも多いね。この大問は全体としてすごくこなれている。変わった問題が多い第3問とは全然違うね。

[解法]これ、感覚的に解いていいんじゃない?②が違うと思うんだよね。ホンコンを植民地としていて中国と関係が深かったイギリス辺りの方が多いんじゃないかな。

[ひとこと]問4から問6は感覚的な問題が多いんだが、ボクはそれでいいと思う。何となく解かせる問題を作るセンスってすごく大切に思いますよ。