2017年度地理A追試験解説

2017年度地理A追試験解説

[1]①

「大圏航路」とは航空機の通り道で、地球上の2地点間を結ぶ最短距離に沿うコース。ちょっと物騒だけど、ミサイルを発射することを考えたらいい。これが最も「長くなる」のだから、ケープタウンからみて地球の裏側の地点が該当する。

ケープタウンは、南緯35度・東経20度。この反対側(対蹠点という)は、北緯35度・西経160度。Dが正解。

[2]③

航空機の飛行時間を考慮した時差問題。まずは往路。東京を12時55分に発つのだが、その「瞬間」のイスタンブールの時刻は、時差7時間より、5時55分。時差は「東で早く、西で遅い」のだから、東京の方がイスタンブールより時刻が進んでいることに注意。

この航空機がイスタンブールに18時10分に着くのだから、所要時間は「12時間15分」となる。

さらに復路。イスタンブールの17時15分は、東京の何時何分になるか。7時間を加えて、24時15分つまり翌日の0時15分。この航空機が11時30分に到着するので、所要時間は「11時間15分」である。

こうした問題は、最初にまず到着地の時刻に直してから計算するのが必勝法。

なお、「東→西」より「西→東」の方が早く着くのは、偏西風の影響かな。中緯度地域では偏西風という西よりの風が上空を吹いているので、「東→西」へと進む飛行機は向かい風になるけれど、「西→東」は追い風となって、時間を節約できる。

[3]①

アは南アジア。モンスーンの影響が強く、夏(7月)は海からの南西風、冬(1月)は大陸(シベリア)からの北東風。

なお、東アジアでは、夏の季節風は南東風、冬の季節風は北西風となる。

[4]③

降水量の問題。数字に注目しよう。

まずはカ。年降水量が3000ミリというのは極端な多雨地域。日本列島の南部(南西諸島)は台風などの影響で降水量は極めて多い。カがMである。なお、Mの北部のユーラシア大陸は、年間降水量が1000ミリに達しない。とくに冬はシベリア高気圧の影響で、全く降水のみられない地域である。

さらにキ。全体的に降水量が少ない(1000ミリに満たないところが多い)が、上から3分の2ぐらいのところにほとんど降水がみられない地域がある。極端な乾燥地域で、砂漠が広がっているのではないか。Lの上から3分の2あたりの地域は中央アジアに該当し、カザフスタンやウズベキスタンなどが位置している。シルクロードに沿う砂漠地域であり、降水量が少ないのも納得。

残ったNはクとなる。Nの南部のアメリカ合衆国西部からメキシコにかけての地域は主に乾燥地域となり、なるほど、クで同じ場所をみても、降水量は500ミリ程度で、少雨となっている。

[5]①

サはカナダ中部。冷帯気候に属し、広く針葉樹林(タイガ)に覆われている。土壌はポドゾル。蒸発量が少なく、地下に浸透する水によって色素が溶脱され、灰白(かいはく)色の土壌となっている。

[6]①

タの判定から。日本には20以上の世界遺産があるが、その多くは文化遺産であり、自然遺産は限られている。初期に世界自然遺産に登録されたのが、南西諸島の「屋久島」、青森・秋田県境の「白神山地」。その後、北海道の「知床半島」、さらに「小笠原諸島」も登録されたが、しかし雲仙普賢岳や島原半島はそれに該当しない。選択肢より「世界遺産」が外され、タには「ジオパーク」が該当する。

さらにチの判定。「溶岩流」は、まさに「岩が溶けた流れ」のことで、極めて高温。全てを焼き尽くすほど甚大な被害を与えるが、溶岩は火口から流れ出した後、急激に冷やされるので、その範囲は火口周辺の限定的なものとなる。☆は、火口からある程度離れた場所にあり、Qの写真を見る限り、建物は比較的よく保存されているので、高温によって溶けているわけではない。「溶岩流」は該当せず、チは「火砕流」となる。火砕流とは、火山噴出物が周辺の土砂を巻き込んで、大量の土砂を下流側へと押し流すもの。災害発生次には土砂に覆い尽くされ、被害も大きいが、現在は土砂も取り払われ、建物の枠組みは残されている。

なお、「ジオパーク」は教科書にもみられないマイナーな用語。本来ならこういった言葉は正解選択肢にならないはずなのだが。ちょっと例外的な問題ですね。

[7]②

ちょっと変わった問題。正文判定なので、難しい。

①について。マは小高い丘の上だが、ほぼ平坦地の上にあり、崖崩れは該当しない。崖崩れは傾斜地の災害。等高線は密になっているはず。

②について。ミの集落は内陸部の盆地に位置する。沿岸部を中心に被害が及ぶ津波については、ミで被害が大きいとは思えない。これが正解。

③について。ムは平坦面に位置する。周辺は湿地となっているようで、たしかに水害はちょっと怖いかも。しかし、そもそも「河川」がみられず。その「氾濫」も考えにくいのではないか。誤文。

④について。Yは海に面した平坦地に位置し、台風の被害を避けられる地形ではない。誤文。

[8]②

ハザードマップはあくまで「地図」であり、時間情報まではわからない。そもそも時期を「予知」するなんてことができるものなのだろうか。

[9]②

タイは、独特のタイ文字が使われている。漢字が使われるのは、東アジア周辺(日本と中国・台湾。韓国でもハングルがほとんどだが、一部で使用される)。東南アジアでもベトナムがかつて漢字の使用国だったが、現在はローマアルファベット。

[10]?

写真がないので何ともいえませんが。。。インドの伝統衣装はサリーですので、画像検索でもしておいてください。グアテマラは中央アメリカの国で、インディオの伝統的な衣装であるポンチョがみられる。タイの衣装ってよくわからないけれど、とりあえず出家した僧侶(男性だけだけど)は、全身を覆うオレンジの服を着ているね。モロッコは北アフリカのイスラーム国家であるので、女性は髪の毛を隠し、時には顔もヴェールで覆っている。

っていうか、この問題って「ホテルの従業員」の写真だったのね。どんな写真だったのか、全然想像が付きません(笑)

[11]①

地理Bではここまで詳細な宗教に関する問題は出題されないので、あくまで参考って感じかな。

①について。イスラームの礼拝は1日5回。これが誤文。

②について。仏教は、大乗仏教と上座仏教に分けられる。大乗仏教は北伝仏教ともいい、陸路を伝わり、中国やその周辺地域(朝鮮半島や日本、ベトナム)に伝播した。上座仏教は南伝仏教ともいい、インドから東南アジアに至る海の交易ルート沿いに伝わり、スリランカやインドシナ半島(ミャンマーやタイ)に信者が多い。

③について、インド人口の8割が信仰するのがヒンドゥー教。牛を神聖視し

その肉は食されない。ただ、そもそもインドでは他の宗教の人々も含め、肉は「あまり」食べられないのは事実。殺生が嫌われる菜食主義の国なのである。しかし、この「あまり」というのもポイント。肉を使った料理が全く存在しないわけではなく、例えばタンドリーチキンのように有名な鶏肉料理もある。牛肉に関しても、使われる頻度は極めて小さいものの、ヒンドゥー京都以外は比較的よく食されており、インドで全く牛肉の生産がないわけではないことにも注意。

④について。キリスト教の一宗派であるプロテスタント(新教)はドイツ北部や北欧、イギリスなどで信仰される。イギリス人の移住した北アメリカ大陸にも信者は多い。

[12]④

農産物の図が用いられた例は極めて少ない。珍しい問題だね。

Aはカカオである。ラグビーボールのような形状の実。極めて高温多雨である熱帯の低地が栽培域(天然ゴムや油ヤシと同じ)。アが該当。

Bはサトウキビ。長い茎が特徴。熱帯から亜熱帯の、雨季と乾季がある気候に適応。イが該当。

[13]②

日本は、魚介類の1人当たり年間供給(消費)量の大きい国。肉類に関しては、欧米に比べれば供給量は少ないが、しかし急激にその量は増加している。「魚介類」については継続して高い水準にありながらも、「肉類」の値が上昇している②が日本となる。

①が中国、③がアイスランド、④がカナダ。

[14]⑤

以前にもこのパターンの問題はあった。スポーツに関する問題の出題率は意外に低くないのです。

アイスホッケーは寒冷な国。カナダの値が大きいクが該当。

ラグビーはイギリス発祥のスポーツで、かつてのイギリス植民地でさかん。オーストラリアやニュージーランドの値が大きいキが該当。

サッカーは世界的なスポーツで、ヨーロッパや北米だけでなく、日本や南米の値も大きい。カが該当。

[15]③

D(ダカール)は北緯15〜20度のサヘル地帯に位置し、全体の降水量は少ないが、とくに夏(7月)は北上する熱帯収束帯(赤道低圧帯)の影響で極端に多雨、冬(1月)は南下する亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響でほとんど雨が降らない。③が正解。なお、低緯度であるため、気温の年較差は小さい(やや7月が高温となっているが)。

A(モロッコの都市)では地中海性気候がみられ、②が該当。夏の降水量がとくに少ない。B(カイロ)が位置するエジプトは全域が砂漠気候であり、①が該当。強い乾燥気候。C(コートジボワールの都市)は、ギニア湾に接し、高温多雨の気候がみられる。年降水量の多い(多少の雨季と乾季の違いはあるが)④が該当。

[16]④

①について。「山脈」とはアフリカ大陸北西岸に沿う新期造山帯であるアトラス山脈。この南側にはサハラ砂漠が広がる。フォガラと呼ばれる地下水路を用いて、灌漑農業が行われている。ナツメヤシなどが栽培。正文。

②について。Kはエチオピア高原。コーヒーが栽培され、重要な輸出品となっている。正文。

③について。Lのコンゴ盆地は高温多雨で熱帯雨林が広がる。焼畑農業が行われ、自給的にキャッサバやヤムイモ、タロイモ、さらに雑穀(ソルガム)などが栽培される。正文。

④について。Mは内陸部の乾燥地域で砂漠が広がる(カラハリ砂漠)。ブドウが栽培されるのは地中海性気候の地域であり、該当しない。アフリカ南部で地中海性気候がみられるのは、南西端のケープタウン周辺。南緯35度・大陸西岸の条件を満たす。誤文である。

なお、Mの地域は非農業地域であり、一部で粗放的な牧畜が行われる程度。

[17]④

写真はないが超重要なので、画像検索をしておこう。ニジェール川に沿うこの町は「トンブクトゥー」。かつてこの地域に栄えた黒人王朝であるマリ王国の都で、西アフリカ交易の拠点となっていた。サヘル地帯で得られる岩塩を周辺地域へと交易していた。遠くサハラ砂漠を越えて、アラブ商人たちが訪れ、イスラーム化された。

トンブクトゥーの画像を検索すると、日干しレンガ(乾燥地域であるので、天日乾燥させたレンガが建築材料として用いられる)でつくられたモスク(イスラームの礼拝施設)がみられるはずである。世界遺産にも登録されている。

まず(ア)は「ムスリム」である。サヘル地帯は黒人イスラーム地域。また、(イ)は「フランス」である。マリやセネガル(ダカールを首都とする国)、ニジェールなど西アフリカのサヘル地帯の多くの国はフランスの植民地となっていた。

[18]②

①について。モンゴロイドではなく、ネグロイド。

③について。ツチ族とフツ族の対立がみられたのはルワンダ。スーダンでは、北部のアラビア系と南部のネグロイド系が対立。

④について。トルコ系ではなく、アラブ系。

以上より、②が正解。マサイ族はセンター初出。覚えなくていいかな。それより、ケニアで「スワヒリ語」が使用されていることを知っておこう。そっちが大事。

[19]③

カは原油。とくにナイジェリアに注目。ナイジェリアは西アフリカのギニア湾に面する国。アフリカ大陸の「脇の下」に位置する。ニジェール川河口に大陸最大の油田を有する。

なお、アフリカのOPEC(石油輸出国機構)加盟国は、北アフリカのリビアとアルジェリア、中南アフリカのナイジェリア、ガボン、アンゴラ。アラブのイスラーム国家であるアルジェリア(大陸北西部)をぜひチェックしておこう。天然ガスの産出も多い。

キは金。金の産出国として重要なのが、アメリカ合衆国、オーストラリア、そして南アフリカ共和国。いずれもイギリス植民地で、さらに差別政策が行われた国。イギリスは金を支配することで、世界経済を支配し、当時の世界に君臨したのだ。

クはダイヤモンド。アフリカ中央部のコンゴ民主が最大のポイント。かつてベルギーに植民地支配され、独立した現在もダイヤモンド鉱山の権益はベルギーが有している。コンゴ盆地で産出されたダイヤモンド鉱石はそのままベルギーへと送られ、ベルギー国内でカットダイヤモンドに加工され、ユダヤ(イスラエル)商人やインド商人によって世界中に運ばれる。ダイヤモンド鉱石の産出国ではないのに、イスラエルやインドでもダイヤモンド交易がさかんなことをぜひ知っておこう。

ところでダイヤモンドについて南アフリカ共和国で覚えている人がいるかも知れないけれど、この図をみてもわかるけれど、実はそんなに産出は多くないでしょ?あくまで「南アフリカ共和国=金=アパルトヘイト(差別政策)」、「コンゴ民主=ダイヤモンド=ベルギーにおけるダイヤモンド加工業」として覚えておくのがコツ。

[20]④

1人当たりGNIで考えるしかないんじゃないかな。1人当たりGNIと1人当たりGDPは同じものと考えて構わない。南アフリカ共和億は「アフリカの先進国」であり、金鉱など資源産出もさることならが、工業(製造業)も発達している。1人当たりGNIは最も高く、②が該当。

その反対に、1人当たりGNIが極めて低いのはエチオピア。コーヒーの栽培と輸出に遺存するモノカルチャー国で、経済レベルは極めて低い。①がエチオピア(しかし、519ドルってめちゃめちゃ低いですね。。。)。

残った②と④は、1人当たりGNIにほとんど差はないので、「都市人口の変化」で考えるしかない。②では20年間で2.5倍、④は極端な変化なない。さぁ、これ、どっちだと思う?

やはりここで重要となるのは、ラゴスという都市の存在だと思う。ナイジェリアの首位都市(プライメートシティ)で、奴隷海岸に接する港湾都市として成立。ニジェール川河口の原油産出地域に近く、石油工業が発達するなど、国内の産業の拠点となっている。そもそもナイジェリア自体が人口増加率の高い国であるが、それ以上の勢いで農村から人口が、このラゴスへと集中している。近い将来、世界最大の都市となることが予想されている(とはいえ、人口のほとんどはスラムの住人ではあるんだけどね)ラゴスこそ、爆発的な人口増加をみる都市だと思う。ナイジェリアが②に該当し、④がエジプト。

それにしても、人口が多い(2億人近い)ナイジェリアって、アフリカ最大の産油国でありながら、1人当たりGNIは極めて低い国の代表例だったんだが、もちろん今でも決して「高い」とはいえないものの、それでもエジプトと同じレベルにまで上昇してきたのだな、と意外な発見。人口と1人当たりGNIの積であるGNIに関しては、すでに南アフリカ共和国を抜き去ってアフリカ首位の座にある。今後、「大国」の仲間入りさえしそうなナイジェリアなのである。

[21]①

一般的な傾向として、経済のグローバル化の進む世界の中で、アフリカのみたその進歩から取り残され、阻害されているということが考えられるだろうか。例えば、莫大な人口を有し、さらに経済レベルが低いことから安価な労働力の得やすいナイジェリアなど、先進国からみれば非常に魅力的な国に思えるはずである。とくにこの国は豊富な原油資源を有し、経済成長も著しいはず。問5との内容とも関連するが、実際に1人当たりGNIの上昇率は高く(もともとが低すぎたとも言えるのだが)、GNIはアフリカ最大である。①が誤文である。

[22]・・・

人口増加率は、「2%・アフリカ、1.5%・南アジア・ラテンアメリカ、(1%・世界平均)、0.5%・東アジア・アングロアメリカ、0%・ヨーロッパ・日本」と考える。アジア全体では、1.5%の南アジアと0.5%の東アジアの平均で「1.0%」となる。

これは大陸別の値であるが、単純に「アフリカ=ケニア」、「南アジア=インド」と当てはめ、②がケニア、③がインドとなる。インドの乳幼児死亡率(新生児1000人が、5歳になるまでに死亡する割合)が、20パーミルに達しないほど低いことには疑問もあるが、だからといって、②がインド、③がケニアとはどうしても思えないのだ。

[間違えました!]

すいません、間違えました。正解は①です。これ、難しいなぁ。実はサウジアラビアの人口増加率が高かったっていうオチなんだわ。

4か国の最新の統計を以下に示します。「国名・人口増加率(自然増加率・パーセント)乳児死亡率(パーミル)・・1人当たりGNI(ドル)」です。

インド・12.6・39.3・1570

中国・5.2・9.8・7400

サウジアラビア・16.7・12.9・24787

ケニア・26.4・36.6・1290

一人っ子政策を実施していた中国で、人口増加率が低く(東アジア=0.5%である)、数少ない子どもを大切に育てることから乳児死亡率も低い。これは理解しやすい。

ただ、ここからが難しい。サウジアラビアが意外に人口増加率が高いことに驚かされるが、これはこれで覚えておかないといけないのかもしれない。

インドについては、人口増加率は「南アジア=1・5%」で覚えておけば問題ない(12.6パーミルは1.26パーセントですね)として、やはり際立っているのは乳児死亡率の高さか。

乳児死亡率は、1人当たりGNIに反比例する傾向がとくに強い。エチオピアの1人当たりGNIは日本の100分の1だが、乳児死亡率は100倍である!

インドとケニアは、1人当たりGNIに差がないので、乳児死亡率もほぼ同じということ。ただし、人口増加率は「南アジア=1.5%、アフリカ=2.0%」であるので、やはりケニアの方が高くなっている。

この辺りを理論的に捉えたら、解けない問題ではなかったなぁ。

[23]⑥

アはわかりやすいと思う。中南アフリカの、とくに1人当たりGNIの低い国々で「高」となっているので、これが「栄養不足」とみていいだろう。

イとウは判定が難しい。全体としてかなり似た傾向にある。先進国で高く、発展途上国で低いようだ。

ただし、日本についてはイが「中」、ウが「低」となっているように見える。これは一つ、大きな手がかりになるだろう。世界的にみて、日本はヘルシーな食文化を有する国。1人1日当たり供給栄養量(カロリー)は、先進国としては異常な低さ。欧米に比べ肉類や乳製品の摂取が少なく、米や魚介類が中心となっている。このことから、日本が「肥満者」が多い国とは思えないのだ。

また、ヨーロッパに注目してもいい。北ヨーロッパで「高」となっていることに、イは特徴がある。これらの国は税金が高いことで知られるが、しかし医療など社会福祉は充実している。高齢者の割愛も高い国であり、GDP(GNIと同義。国の経済規模)に占める医療費の比率がこれらの国で高いことは、間違いないといえるんじゃないかな。イが「医療費」となる。日本は「中」で、それなりに高い国となる。

残ったウが「肥満者」。アメリカ合衆国はなるほどなって思う。ジャンクフードの国だからね。アメリカって低所得者の方が高カロリー(もちろん栄養価や低いし、塩分や油分だらけってことやけどね)の食事を取っていて、肥満が多いって特徴があるよね。サウジアラビアやエジプトが意外かな。イスラーム圏って「豚」は食べないだけで、むしろ乾燥地域に適応した「羊」を使った肉料理はものすごく多い。動物性タンパク源を乳製品に頼るインドや、魚介類から得ている日本が「低」となっているのが特徴的。「イスラームはむしろ肉!」ってイメージをしっかりつくっておこう。

なお、この医療費だが、2017年度地理B第3問問4でも話題とされているので、そちらも参照してみよう。この問題では。「家計に占める医療・保健」の割合が問われている。アメリカ合衆国のように、公的な医療保険がない国においては、医療費や健康に関する支出は全て家計から出さないといけない。北ヨーロッパ諸国は反対に健康保険や年金のシステムが充実しており、税金や給料からの天引き(つまり個人に渡る前に、保険や年金の納付額が差し引かれている)によってそれらの財源は賄われている。よって、「国全体の経済規模」に対する医療支出の割合は高いが、「家計」に占める医療支出の割合は低い。この2つの問題を比較して、北ヨーロッパ諸国とアメリカ合衆国の医療保険に対する考え方の違いを理解しよう。

[24]①

インナーシティ問題とは、先進国における都心付近のスラム化のこと。公職者が流入し、「高級住宅地化」することは「ジェントリフィケーション」という。

[25]④

①は全体の発電量が大きい。水力である。なお、中国は世界最大の水力発電量を誇る国。長江のサンシャダムは極めて巨大。

②はインドネシアの値が大きく、地熱。火山地域と結びつく。

④は風力。デンマークは、国内の総発電量の30%を風力発電が占める。偏西風の影響が強い西ヨーロッパでさかんな発電方式である。なお、世界最大の風力発電国はドイツ。

残った3は太陽光である。中国は内陸部の乾燥地域に多くの太陽光パネルが備えられている。降水量の多いインドネシア、高緯度で太陽からの樹熱量が小さいデンマークでは、太陽光発電はさかんではない。

[26]②

ODAとは政府開発援助。発展途上国に対する経済供与のことで、日本の場合、アジア地域への供与額がとくに多い。ODAの用途はさまざまであるが、「開発」の名の通り、都市インフラや鉄道や道路、港湾などの整備に使用されることが多く、将来的な日本企業の進出を見越してのものでもある(それゆえ、日本のODAは日本企業と結びついた「紐付き援助」と揶揄(やゆ)されるものでもあるのだが)。

そもそも先進国が多いヨーロッパに対するODAは少額であり、④がヨーロッパ。中・南アメリカも経済的なつながりは弱く、③が中・南アメリカとなる。

残った①と②がいずれもアジアとなるのだが、日系企業がさかんに進出し、そして日本との貿易額も多いのは(要するに、日本と経済的なつながりが強いのは)東アジアと東南アジア。南アジアはさほどでもない。金額がとくに大きい①が東アジアとなり、残った②が南アジア。

さらに細かいところをみていくと、全体的に1990年代がピークであり、近年は減少傾向にあることがわかる。これは日本が経済的に苦しい時期であり、もはや外国への援助が困難な状況にあることと関連しているのだろうか。

[27]③

1990年に出入国管理法(移民法)が改正され、日系人(日本人の祖先を有する外国人)については国内での就業・滞在条件が緩和された。これにより、そもそも日系人の数が多いブラジルからの入国者が急増し、その多くが自動車工業など単純労働の組み立て工業に従事した。しかし、2000年代以降は、経済不況や産業の空洞化などの影響によって、日系人の入国は減少し、むしろ出稼ぎを終えて母国に帰る者も少なくなく、その数は減少した。③がブラジル。

①は中国。留学生を中心に急増している。

②は韓国・朝鮮。20世紀前半までに日本に移住し、2世や3世が多い(日本の場合、日本国内で生まれたからといって、自動的に日本国籍となるわけではない。両親の国籍を継ぐ)。しかし、彼らの多くはルーツは朝鮮半島であるが、日本語しかしゃべることのできない場合もあり、帰化し日本国籍を得る者も多い。なお、「朝鮮」というのは実質的に北朝鮮のこと。日本は北朝鮮と国交がなく、つまり公式には北朝鮮という国は存在していない扱いとなるため、パスポートは地域名を指す「朝鮮」のままなのである。

④はアメリカ合衆国。人口移動は「経済レベルの高い地域から低い地域へ」が大原則であり、発展途上国から日本への流入は多いが、先進国であるアメリカ合衆国から日本への流入は少ない。なお、日本人が最も多い日本以外の国は(外国に住む日本人を「海外在留邦人」といいます)アメリカ合衆国。「人口は経済レベルの高い国へ」の法則に適合していることを意識しよう。

[28]②

[29]②

[30]①

[31]①

[32]⑥

[33]①

[34]③

[28]以降は、地理Bと共通問題。解説省略。