2007年度地理A追試験解説

2007年度 地理A 追試験

<第1問>

問1 地理A特有の問題だと思う。メルカトル図法は、緯度が高くなるほど距離が拡大されるので、高緯度に位置する大陸などは面積が大きく表されてしまう。図の北端にグリーンランドなど見れば納得だろう。逆にいえば、エなどは高緯度でありながら、低緯度のウと同じ長さということは、実際には短い距離ということ。最も低緯度、赤道に沿うウが、実際の長さとしては最も長い。

問2 図を見てもわからない。メルカトル図法は距離を示す図ではない。ここは、2地点がお互い地球のほぼ反対側に位置していることに注目。地球一周の半分の距離で約20000kmとなる。

問3 「人口が多い」っていうのが気になるなぁ。でも簡単に解けるか。

手順から。A~Dの円はいずれも同じ面積。ただ、メルカトル図法なので高緯度ほど拡大されている。AやDの緯度は高いが、拡大されてもこの大きさということは、実際の面積は狭いということ。だからこの問題でちょっと気をつけないといけないのは、BやCの面積は広く、AやDの面積は狭いという点。

とはいえ、そこまで考えることはないか(笑)。米作アジアに位置するバングラデシュは人口1億5千万人を抱える人口大国だね。Cが正解。

問4 世界の人口は2000年で60億人。日本の人口は1.25億人。2%が正解。

問5 モンゴロイドというのは黄色人種のことでアジア系。「割合が最も低い」ではなく「人口が最も少ない」っていうのも気になるんだが、そこまで考える必要jはないかな。ユーラシアは外れるとして、北アメリカも南アメリカも先住民のイヌイット、アメリカインディアン、インディオはみなアジア系。アフリカを正解としていいでしょう。

問6 「移動量と方向」である。矢印の太さで量を、矢印の根元がスタート地点、終点がゴール地点。流線図である。

階級区分図は「割合」を示す。等値線図は気温や降水量などそれぞれの地点で観測できるデータを示すもので、行政区分にとらわれない「自然環境」に関する指標を表すのに適当。ドットマップは「絶対分布」。

問7 良問。カはツンドラ。地表を苔が覆っている。北極海沿岸のPが該当。

キはサバナ。サバンナとも。疎林と長草草原。熱帯草原と考え、Rが該当。

クはタイガ。樹相の単純な針葉樹林が並ぶ。シベリアのQが該当。

問8 縦軸の標高は1250・がマックスなので、さほど高いわけではない。横軸の長さの方が大切だろう。最も短いサがヨーロッパの河川に該当し、Yとなる。ライン川だろうか。

シとスについては、長さでは判定できないので、高さならぬ「低さ」で考える。スは上流部まで低平な土地を流れている。アマゾン低地を流れるアマゾン川に該当。Xである。

残ったシがZの黄河。消去法でいい。

<第2問>

問1 日本に入ってきた外国人に関するデータ。最もわかりやすいのは「留学・就学・研修」。留学などは、「1人当たりGNIの低い国から高い国へ」というベクトルの向きがはっきりしている。中国からの留学生を考えればいいのではないか。Aが該当。

残る2つは判定が難しいが、Cについては無視していいだろう。インドや西アジア、アフリカなど日本と関係の薄い国ばかりであり、そもそもの入国者数が少ない。極端に言えば、入国者が1人だけだったりしたら、傾向も何もないだろう。だからここはBについてしっかり判定する。ここで目につくのは欧米の先進国。いずれも経済規模(GNI)が大きい国である(おもしろいのは、1人当たりGNIは高いが人口が少ないためGNIが小さい北欧の国は外れている点)。また東南アジアのタイも「高」となっている。どうだろうか。これを日系企業の進出と結びつけることはできないか。日系企業進出数は1位は中国だが、2位アメリカ合衆国、3位タイ。商用目的と考えていいだろう。そう考えると、GNIの大きな西ヨーロッパも「高」となっているのは納得。ビジネスマンがやってくるのだ。

Cは残った観光目的。観光客が多いのではなく、あくまで割合が高いだけ。観光目的も多いわけではないが、留学生やビジネスマンはもっと少ないっていうだけの話。

問2 1;いや、船もあるでしょ(笑)。

2;これ難しいね。地球儀を見るとよくわかるんだが、日本からヨーロッパへの最短経路ってシベリア上空のかなり北極に近いところを通る。ハワイのような南の島は経由しないよね。ソ連時代でシベリア上空の通行が制限されていた時代には、アラスカ州のアンカレジが中継地として重要だった。

3;あっ、だからこれが正解です。シベリアを通過できないから、日本からアンカレジに飛んで。そこから北極海を横切ってヨーロッパへ。

4;現在はシベリア上空を通過しています。

問3 こちらは外国にいる日本人。問1との違いを考えよう。でも留学生で考えるのが基本である点は変わらない。

とはいえ、「日本への輸出額」という親切なデータもあるし、こっちで考えたらいいか。日本にとって韓国は中国、アメリカ合衆国に次ぐ3位の貿易相手国。これだけで十分でしょ。3が正解。

なお、留学についても考えてみるんだが。留学生については「1人当たりGNIが低い国から高い国へ」とい大原則がある。「留学生~」の割合が高い1がイギリスとなる。

2がシンガポール、4がサウジアラビア。サウジアラビアについては、韓国に次いで日本への輸出額が多いことがポイントになる(原油の輸出)。2がシンガポールだが、単純に1人当たりGNIの高低を考えれば(シンガポールの方が韓国より高い)、こちらの留学生などの割合が高くなりそうなもんだが、ちょっと違っているね。輸出額を優先して考えてください。

ただ、この問題でおもしろいなと思ったのは、韓国の在留邦人の少なさ。遠距離のイギリスや小国のシンガポールよりも少ない。日本と韓国って関係性が薄いのだな。

問4 Kは自動車。日本からアメリカ合衆国でさかんに自動車(乗用車)が輸出されている。日本は世界最大の乗用車輸出国であり、アメリカ合衆国は世界最大の乗用車輸入国。

Lは穀物。日本は食料の多くをアメリカ合衆国からの輸入に依存している。アメリカ合衆国は世界最大の穀物輸出国。

残ったMは衣類。これはよくわからない。おそらく貿易量自体少量だろう。

問5 3が正解。NATOはアメリカ合衆国と西ヨーロッパを中心とした安全保障条約(軍事同盟)。OPECは西アジアやアフリカ、ラテンアメリカの国で、NATOとは無関係。

他の選択肢は不問。っていうか3の選択肢も地理Bの範囲外。

問6 4が正解。じっくり読めば正解できる。この手の問題って最後の選択肢が解答であることが多いんだが、だからといって選択肢4から先に読もうっていうのは止めた方がいいと思うな。時間がかかってもいいから(そもそもセンター地理とは時間がかかる試験なのだ)、落ち着いて丁寧に解こう。雑にやったら、本来確実に得点できるこうした問題で、失点してしまう。

問7 さすがにスーパーマーケットと人工衛星は関係ないでしょ(笑)。POSシステムは、バーコードによる商品管理システム。

<第3問>

問1 ケッペンの気候区分であるが、植生と対応させて考えればいい。熱帯雨林は赤道に近い低緯度一帯にみられる植生。Aが該当。

サバナは長草草原・疎林のことで、熱帯草原に該当。熱帯雨林の周辺の植生。Aの高緯度側に接するBが該当。

Cは消去法で。温暖湿潤気候とは日本の気候。

問2 海溝の問題。その位置は正確に把握しておこう。海溝が走っているのはスマトラ島やジャワ島の「南側」であり、北側ではない。2が正解。

なおスマトラ島の北側、マレー半島との間はマラッカ海峡というが、ここは海溝どころか、極めて水深が浅いことで知られている。座礁の危険性があるため通路が限られ、船舶の通行量が多いこともあり、時に渋滞も生じる「海の難所」。マラッカ海峡の水深はよく問われるネタなのでぜひとも知っておこう。

あ、スマトラ島とかジャワ島の位置がわからないって?仕方ないので、地図で確認しておいてください。地理Bではこんな風に地名が放り投げられることはないので、大丈夫ですが。

問3 これ、よくわからない問題なんですよね。1が正解だと思います。間違っている部分が全く見当たらないし。

とはいえ、2から4も決定的に違っているとは指摘しにくいんだな。2については。現在は灌漑設備などが整備されることによって乾季でも作付けがなされるような地域があるってことだと思う。3は、水稲からサトウキビへの転換が怪しい。水稲は水はけが悪い(水もちが良い)泥質の低湿地に対応した作物であるのに対し、サトウキビは石灰岩質の水はけの良い土壌に適応。栽培されうる土地が違っているんだわ。それにおそらく水稲の作付け面積も増加しているんだと思う。4については、米の生産虜が増加しているんじゃないかな。今、農産物の生産が減少しているところなんか、世界中ほとんどないよ。

基本的にはアジアは自給的な農業地域であるので、米の栽培が重要視されて、水田の面積は拡大し、生産量も増加しているっていうネタだと思う。そう考えるととくにおかしくないでしょ。問題としてはわかりにくいんだけどね。

問4 天然ゴムの問題。良問です。

天然ゴムの栽培については「マレーシア→タイ」の流れを絶対に知っておくべき。植民地時代のマレーシアでは、イギリス人の手によって広く天然ゴムのプランテーションが設けられたが、独立後はこれらのプランテーションはマレー系住民の管理の下に置かれ、油ヤシへの植え替えが進んでいる。大きく生産量を減らしている3がマレーシアに該当。

一方、急激に数値を伸ばしている1がタイ。天然ゴムは労働力に依存する農作物だが、高賃金(1人当たりGNIの高い)マレーシアでは不採算となり、周辺の低賃金の得られる国へと栽培の中心が移行していく。マレーシアの1人当たりGNIは約5000$であるのに対し、タイは約3000$。

問5 (すいません、問題を無くしました。。。省略です)

問6 (上に同じです。省略です。すいません)

問7 写真が見にくいが、「仏教寺院」と「高層ビル」と「運河」。高層ビルでは判定できない。選択肢の4つの都市はいずれも大都市である。仏教も微妙。ベトナムのハノイとタイのバンコクが該当する。ここは「運河」が最大のポイント。タイ中央部を流れる大河川チャオプラヤ川。バンコクはそのほとりに位置し、都市内部を多くの水路が交差する「運河の街」である。

第4問

問1 2が正解。バングラデシュは低地がキーワード。ガンジス川の「デルタ」であることが頻出。低地であるため、海面上昇の影響を受けやすい。

1;焼畑農業は熱帯雨林。ヨ-ロッパは該当しない。

3;アマゾン低地は酸性雨を免れている。石炭消費の少ない地域である。

4;オゾンホールは高緯度。南極上空など。赤道直下のDは該当しない。

問2 分かりやすいものから。ウの「グリーンベルト」はロンドンのキーワード。20世紀前半から半ばにかけて、大ロンドン計画という開発が行われた。人口過密のロンドンの都市問題を解決するため、ロンドンの市街地を緑地帯(グリーンベルト)で囲み、郊外にいくつものニュータウンを建設した。Pに該当。

イはニューヨークのR。「数多くの民族」は民族のサラダボウルであるアメリカ合衆国のキーワード。都心付近の旧市街地がスラム化しているが、その一部では再開発によって活気を取り戻している地区もみられる。

残ったアがQに該当。発展途上国における大都市の状況を説明した文であることがわかるだろうか。発展途上国はとくに農村と大都市との経済格差が大きく、人口移動の流れが顕著である。しかし彼らに十分な仕事はなく、都市周辺にスラム(不良住宅地区)が拡大していくのみ。

問3 わかりにくい問題だなぁ。

カはアメリカ合衆国。1人当たり一般廃棄物処理量が大きい工業国である。

キはドイツ。アメリカ合衆国同様に工業がさかんな国だが、こちらは環境に対する意識が高い。リサイクル率が高くなっている。

クはメキシコ。発展途上国であり、1人当たり一般廃棄物処理量が小さい。リサイクル率も低く、エコロジーに対する感覚は先進国ほど高くはない。

問4 思考問題として完成度が高い。いい問題。

1;原油自給率がポイントになっている。自給率は、国内供給(消費)量に対する産出(生産)量の割合。産出量を供給量で割ることによって求められる。

中国の自給率は、16300÷21383

ベネズエラの自給率は、17113÷5553

ベネズエラの方が自給率が高い。

2;輸入依存の割合とある。輸入に頼る割合と解釈したらいいだろう。日本は、国内で必要とされる原油が21144であるのに対し、産出量は34にすぎない。ほとんど全ての原油を輸入に頼っている。

3;自給率の計算。

中国は上述のように、16300÷21383

アメリカ合衆国は、28916÷77401

中国の方が自給率は高い。

4;計算するまでもないかな(笑)。日本の自給率はほぼ0%だからね。これが正解。

問5 A;天然ガスは冷却し液化されるわけだが、この際に不純物である硫黄などが取り除かれる。燃料効率が上がるだけでなく、硫黄酸化物のような大気汚染物質の排出も防がれる。誤文。

B;例えば中国を考えてもいいかな。石油の消費量は、工業化や生活水準の上昇に伴って増加している。正文。

C;イタリアは原子力発電を行なっていない代表的な国。他にはオーストラリア、ニュージーランドも知っておくといい。誤文。

問6 人口増加率が最も高い大陸はアフリカ。

問7 これ、実は難しい。正直わかりません。地理A特有の問題と思って諦めるしかないと思う。最も少ないスがヨーロッパだと思う。旧ユーゴスラビアの難民が90年代初頭にやや増加。

サは80年代後半に大きく伸びているのだが、これに思い当たるのは、1980年から88年までのイランイラク戦争しかないんだよなあ。クルド人など少数民族がそれぞれの国で迫害を受けた。サをアジアとし、慢性的に値が大きいシをアフリカとする。1990年代前半はたしかにルワンダ内戦が生じた時期。

第5問

問1~5 地理Bと同じ。

問6 素晴らしい問題だが、それでもやっぱり地理A特有の問題かな。地図上の位置が問われている。

中国は日本海に面した領土を持たず、日本海地域とは貿易量が少ないはず。東シナ海にも面した山口県でのみ値がとくに大きくなっているNが中国。

韓国とロシアについては、全体として韓国との貿易がさかんであると考え、2つのうち、値が大きいMが韓国、小さいLがロシア。