2010年度地理A追試験解説

2010年度 地理A 追試験 [解説]                           

 

第1問 地理の基礎的事項

[1] いわゆる大圏コースに関する問題。航空機の航路をイメージすればいい。球体である地球の上で、2地点間の最短距離を考える。本来ならば、正距方位図法という特殊な方法で描いた地図の上でこそ、この最短距離の経路は判定できるのだが、残念ながらこの地図はそうではない。だから、結局のところ、想像するしかないんだが、どうだろう?

地球儀を考え、日本とヨーロッパを直線で結んでみる。そのルートは、大きく北極周辺を回って、弧を描くのではないか。それを平面の地図である図1に当てはめるならば、アの航路に該当するであろう。1が正解。

日本からヨーロッパの航路は、シベリア上空を通過するなんていう話題は、結構よく知られているかもしれない。このせいで、ソ連時代にはこのルートが使用できずに、日本から一旦アラスカへ立ち寄って、それからヨーロッパへと向かうという迂回航路が利用されていた。

 

[2] Mは赤道上の直線。西端は180°の経線、東端は西経150°。経度間隔は30°に相当し、これは実際の3300km。赤道一周は40000kmであることから計算される。

Lは北緯30度上の直線。やはり経度間隔は30度。ただし、北緯30度一周は赤道より短く34000km程度(*)。Lの実際の長さは、2800kmほど。3が正解。

(*)三平方の定理を使って計算。20000√3になる。

 

[3] 3のアパラチア山脈が該当。地理Bでアパラチア山脈が問われたことはないが、ここが石炭の産出地であり、付近に炭田立地型の鉄鋼都市ピッツバーグが成立したことは重要。

Aのアトラス山脈とBのヒマラヤ山脈はアルプスヒマラヤ造山帯に沿う新期造山帯。Dのアンデス山脈は環太平洋造山帯に沿う新期造山帯。

 

[4] Qのシドニーが該当。2が正解。オーストラリアは中緯度高圧帯の影響によって乾燥地域が広がるが、暖流に面する大陸東岸は例外で、比較的降水量が多い。

Pは砂漠気候。沿岸を北上する寒流の影響で大気が安定し、降水量が少ない。

Sは地中海性気候。夏季乾燥することが特徴の地中海性気候は、「大陸西岸・緯度35度付近」に必ず出現する気候パターン。夏季(北半球なので7月を中心とした時期)には北上する中緯度高圧帯の影響で少雨となる。

Rは西岸海洋性気候。西ヨーロッパのイギリスやフランスなどと同じ気候。偏西風の影響によって、年間を通じ気温や降水量の変化が少ないおだやかな気候がみられる。ニュージーランドは「雪の降らない北海道」。

 

[5] 東京というか日本の標準時子午線は東経135度で兵庫県明石市を通過している。経度差15度で1時間の時差となり、東京はロンドンと比べ、時間は9時間早い。これを「GMT+9」という。GMTはロンドンの時間で、経度0度の世界標準時。

東京が1月1日の18時ならば、同じ瞬間、ロンドンは1月1日の9時である。午前3時ならばさらに6時間時計の針を戻さないといけない。「GMT−6」の都市としてメキシコシティが該当。3が正解。

 

[6] とにかく「200カイリ排他的経済水域」という言葉を覚えておこう。沿岸から200カイリ(約350km)までの範囲は、海底の資源や漁業などにおいてその国が優先的な権利を有する。ただし領海とは違うので、外国の船舶などは自由に通っていい。漁業専管水域ともいう。

領海の範囲は、国によって定義は違うが、一般的に沿岸から12カイリである。

こんなイメージでいいんじゃないかな。庭付きの一戸建てに住んでいるとして、建物が領土で、庭が領海。庭(領海)にはもちろん他の人が入ってはいけない。で、家の前の道路が排他的経済水域。自分の土地ではないので、他人の通行は構わない。ただ、その道路に何か落ちていた場合(資源とか漁業権とか考えてね)は、自分が勝手に取ってしまっていい。逆に通行しているだけの他人は、そこに100円玉が落ちていたとしても拾ってはいけない。そんなイメージで捉えてください。

 

[7] 大縮尺と小縮尺。例えば地形図って、2万5千分の1のものと5万分の1のものがあるよね。この2つを比べた場合、2万5千分の1地形図の方が縮尺が大きく(大縮尺)、5万分の1地形図の方が縮尺が小さい(小縮尺)という。理由は、「1/25000 > 1/50000」だから。

だから、広い範囲を扱う世界地図のような地図は、狭い範囲を扱う2千5百分の1の地図より、小縮尺となるのです。1が誤り。大縮尺と小縮尺が反対。

 

[8] 写真がわかりにくいような。カはフラダンスを踊っている人。美しい花の首飾りもあり、温暖な地域と思われる。ハワイに該当。

キは黒い肌を持った人々。オーストラリアの先住民アボリジニーは、アフリカの黒人とは人種的に全く無関係であるものの、黒い肌を持った人種である。

クは南米の先住民。ペル−に該当。つばの広い帽子は、低緯度の激しい日射を避けるためのもの。ガウンのようにまとっている民族衣装はポンチョだが、気温の下がる夜には体にまきつけ暖をとる。気温日較差の大きな地域に対応したもの。3が正解。

 

第2問 [9]~[15] 問3[11]以外地理Bと同じ。

[11] カはアンコールワット。一部にヒンドゥー様式も見られる仏教寺院。カンボジアのCに該当。国旗にも描かれているね。長い内戦によって管理が行き届かなかったため、荒廃が進んでおり、失われゆく世界遺産ともなっている。

キはポタラ宮。チベット仏教の聖地である。チベットのBが該当。チベットの位置がややこしいかもしれないけれど、中国の南西部というよりインドの北側と覚えた方がいいかもよ。

 

第3問

[16] 野菜の問い方が嫌な感じ(笑)。野菜の輸入先としては韓国を覚えている人が多いんじゃないかな。鮮度が重要な野菜は、近隣国からの輸入が主であり、本来なら食料輸出国ではない韓国からも、わが国は野菜を輸入している。非常に特徴的なことがら。とはいえ、やはり韓国は工業国であり、農業がさかんな国ではない。国の規模も大きくはないよね。だから輸入量自体は、中国やアメリカ合衆国よりは小さくなるのだ。韓国は示されていないが、中国が最大、アメリカ合衆国もそれなりに多い量となってるAを野菜としよう。

Bはオーストラリアが主な輸入先となっている。BE以降、オーストラリアが最大の牛肉の輸入国となった。これが肉類に該当。企業的牧畜と結びつけよう。デンマークからは豚肉、タイは鶏肉だね。中国はよくわからないけど(笑)。

残ったCが魚介類となる。ロシア、中国、アメリカ合衆国など日本の近隣国からの輸入が多いのは、これらの国が日本周辺の海域で操業し、日本へと輸出しているから。東南アジアからは養殖されたエビ。チリも漁獲量が多い国として知られている。

 

[17] おもしろい形式の問題。模試で作りたいな。

例えば日本に注目してみようか。05年の消費量は850トンだが、輸入量も850トン。国内生産されていないということ。それに対し、タイの05年の消費量は350トンで輸入量は0トン。国内で十分に生産されている。ブラジルの05年の消費量は300トンで輸入量は200トン。100トン分は国内で生産されており、足りない分を輸入しているということ。

アはタイ。世界最大の天然ゴムの国であり、生産は多いだろう。輸出量が多いはず。

イはブラジル。一部は国内で生産されているが、輸入もされている。

ウは日本。全てが輸入。2が正解。

 

[18] インドのソフトウェア産業が、統計という形で登場した最初の例。なかなかおもしろいと思います。というわけで、情報サービスの割合が高いMがインド。

KLは旅行で見極めたらいいと思う。例えば、日本っていう国は、海外旅行に出かける日本人と、日本へとやってくる外国人観光客の数を比べれば、前者の方が後者より大きいという「観光輸出国」(こんな言い方はないけれど、何となくイメージできるでしょ)。だから国外から得た収入において、観光が高い値になることはない。それに対し、イタリアはローマやベネチアみたいな世界的な観光地があるし、ヒトの移動が自由となっているEUにおいては、国境を越えた観光がより一般的となっているであろう。Lがイタリア、残ったKが日本。5が正解。

 

[19] 問3[18]とも重なるんですが、3が誤りとなります。このデータって大事かもしれない。

 

[20] 1や2は東京からだけではなく他の都市からも便が多く、日本との関係性の深さが予想される。これがソウルとタイペイ(どちらがどちらかは問わない)。3と4はいずれも日本から離れた地域にあるので、東京以外からの便が少ないことに特徴がある。それでも3は東京からの便はそれなりに多くなっているね。この形はロサンゼルスと同じ。欧米の大都市と考え、3がロンドンとなる。残った4が発展途上地域で、日本ともあまり関わりのないカイロ。

 

[21] 二段階の問題ですね。まずはタイが重要。そしてオーストラリアが隠れた主役。

「民間企業関係者」については日系企業の進出を考えればいいと思う。日系企業の数は、1位中国、2位アメリカ合衆国、3位タイ。これに比例して民間企業関係者も多いと考えれば、1がアメリカ合衆国、2がタイとなる。

「留学・研究者・教師」に目を移す。これは「留学」だけ考えればいい。研究者や教師は無視。留学のベクトルは「1人当たりGNIの低い国から高い国へ」。例えば日本には、経済レベルの低い中国からの留学生が多いでしょ。一方、日本人が留学に行く場合には先進国に向けて行くはず。たしかに1のアメリカ合衆国の値は高く、2のタイの値は低い。

でもここからなんだわ。ドイツとオーストラリアの判定が難しい。いずれも1人当たりGNIの高い先進国。日本人がこれらの国で学ぶことは十分に可能性はある。しかし、順序を付けることができない。国の規模がドイツ8000万人、オーストラリア2000万人というのはヒントになるか。でも日本からの距離や、オーストラリアが英語使用国であることを考えれば、一概にドイツの方が留学生が多いとは言い切れない。

しかし、ここで最終兵器(?)があるのだ。問4[19]の選択肢4。「働きながら旅行できるワーキングホリデー制度を利用して、オーストラリアやカナダに渡航する人がいる」という一文だ。オーストラリアに留学する場合、現地でアルバイトをしながら学校に通うことができ、経済的な負担が小さくなることから、相対的に留学生の数が多くなっている。これがヒントだったのだ!

表2に戻って、3と4を比較。4の留学生ってすごく多いわけだ。これをオーストラリアと断言してしまっていいと思う。人口わずか2000万人の国に1万人以上の日本人留学生なんだから、ずいぶんと多い。まさにこれぞワーキングホリデー効果っていいうやつだろうか。ドイツは残った3に該当。

ちなみに民間企業関係者はオーストラリアはたいへん少ない。そもそもが小さい国であるし、オーストラリアに進出している日系企業の数も微々たるもの。

 

[22] 名作ですね。良いです。ユーモアがある。シャレが効いている。

そんなわけないやん!で消すことができる。正解はもちろん2。いくら何でも牛乳を輸入しないでしょ(笑)。腐るっちゅうねん。

以前、鶏卵を輸入している、○か×か、っていう問題があったけど(もちろん×ですよ)、それに類する問題ですね。「鮮度が重要なものは、消費地の近くで生産される」という地理的セオリーもさることながら、毎日きちんと生活をしている人なら絶対に間違えるわけはない。地理は頭でっかちな科目ではないのです。普段の生活を大切にしている「生活者」にこそ、解ける問題なのです。

ちなみに「インド=牛乳」っていうのも知っておいてね。さすがに日本の食品メーカーは進出していないと思いますが(笑)、インドでは主な動物性タンパク源をミルクに依存しているのです。「インドでは宗教的な理由で牛を殺さない」って一般的に言われていますが、あれは建て前。本音は、殺してしまったがもったいないから、乳を搾りまくっているというもの。日本人が主なタンパク源を魚介類から得ているように、インド人は牛乳をタンパク源としているのです。

 

第4問

[23] 海底地形の出題率は高い。海底地形というと、海溝や海嶺が頻出だが、実は大陸棚もよく問われている。大陸棚とは、大陸の周辺の浅海底で、水深は200m未満である。有機塩類(生物の死がいなど)が積もる海底まで太陽エネルギーが到達し、豊かな生態系を有する好漁場となる。日本付近では東シナ海に大陸棚が広がっているが、東南アジアにおいてはタイの南東のタイランド湾が大陸棚。さらにタイランド湾からつながるマラッカ海峡も水深が浅いことが特徴。マラッカ海峡とはシンガポールが面する海峡であり、まさにB海峡に該当する。「海溝があるため水深が浅く」がNGワードとなる。「大型船舶が通航し国際的に重要な航路となっている」の部分は正文だが、水深が浅く座礁の危険性があるため安全に航行できるルートが制限され、船舶の通航は決してスムーズではない。

1;「三角州」は重要なキーワード。Aはメコン川であるが、この河口には巨大な三角州が形成され、ベトナム最大の都市ホーチミンも位置する。正文。

3;アルプスヒマラヤ造山帯に属する新期造山帯。火山もみられ、南岸に沿っては海溝も走る。正文。

4;とりあえず赤道が通過し、熱帯気候が見られるのだろうなと想像できれば十分。正文。

 

[24] おもしろい気候グラフ問題。カラチは絶対に知っておくべき。パキスタンの人口最大都市だが、パキスタンはインダス川という外来河川が流れていることからわかるように乾燥国である。カラチの降水量も少ないと考え、4が該当。

またシンガポールであるが、赤道直下に位置する都市。年間を通じ赤道低圧帯の影響が強く、スコールに見舞われる。2が該当。

ジャカルタは南半球の都市。高日季(いわゆる夏のこと)となる1月には南下してくる赤道低圧帯の影響で多雨、低日季(いわゆる冬)となる7月には北上する中緯度高圧帯によって少雨となる。1が該当。

ヤンゴンは残った3である。消去法で求めるのがベストだと思う。ヤンゴンはセンタ−初登場の都市だけになかなか気候を具体的にイメージできなかったのではないかな。ヤンゴンは、陸地の西岸に位置し、背後に山脈が通っているため、夏季のモンスーンによって地形性降雨がみられるという点においてムンバイと共通する。よかったら図のインド半島西岸にムンバイを書き込んで、ヤンゴンとの位置の相似性を確認してほしい。南アジア(ヤンゴンが含まれるミャンマーは東南アジアだが、ヤンゴン自体はインド洋に面しており、自然環境に関しては南アジアを基準に考えるべきだろう)では、夏季は南西から、冬季は北西からのモンスーン(季節風)に支配される。このため、夏季の5月~9月の間に降水が集中し、それ以外の時期にはあまり雨が降らないという気候パターンがみられる。3の降水グラフを見ながら、この地域におけるモンスーンの影響に思いをめぐらそう。

 

[25] ジュートの生産地域は絶対に知っておかなくてはいけない。ジュートの生産が多い国としてバングラデシュがある。ガンジス川の河口デルタに位置する国であり、洪水の被害も大きい。ジュートはこうした低湿な地域において栽培される繊維作物。穀物を入れる袋などに利用される。我々の生活の中でも、しばしばじゅうたんの裏面の素材としてジュートが使用されていることが多く、決して見慣れない農産物ではない。アがYに該当。

さらに油ヤシも生産統計を知っておこう。マレーシアが代表的な油ヤシの国であるが、近年インドネシアでの生産も拡大し、この両国が2大生産国となっている。インドネシアであるスマトラ島のZが該当。以上より、4が正解。

イについては不問でいいだろう。Xはアッサム地方といい、ヒマラヤ山脈の南麓に当たる地域であるが、海から吹き込む湿った風が地形性降雨を導き、世界で最も降水量が多い一帯となっている。この排水性の良い丘陵は、世界最大の茶の栽培地域となっている。アッサムや、ダージリン(ダージリンはアッサム地方の都市名)は紅茶の銘柄としても名高い。

 

[26] 統計に基づいた良い問題。タイは世界最大の米の輸出国。1が正解。なお、タイは人口規模は決して大きくない(6千万人)なので、生産量自体は多くないね。

人口最大のインドネシアが3。生産量は多いが、穀物自給率が89であることからわかるように(「穀物」なので決して米だけではないだろうが、東南アジアという米作地帯であるので、ほとんど米だけと考えてしまってもいいと思う)、米は輸入に頼っている。

2がベトナム、4がフィリピン。両国は人口規模はほとんど同じだが、メコン川など大河川の沖積平野に恵まれたベトナムは米の輸出がさかんであるのに対し、島国で水田の少ないフィリピンは穀物輸入国となっている。

農業就業人口割合はどの国も大差ないので、ノーチェック。

 

[27] キーワードを確実に拾っていこう。これも良問。

ベトナムは社会主義国である。しかし近年はドイモイ政策を実施し、市場開放と外国資本の受け入れに努めている。わが国にとっても、衣類の主な輸入国の一つとなっている。「経済開放」や「繊維工業」がキーワードとなり、1がベトナム。

2がミャンマーだが、難しかっただろうか。ミャンマーのキーワードは「軍事政権」。ASEANには近年加盟したものの、民主化・自由化は遅れている。工業についても目立ったものはない。

3がタイ。「日本企業の現地法人数が東南アジアで最も多く」は重要。日系企業の進出数は、1位中国、2位アメリカ合衆国、3位タイ。

4がシンガポール。「中継貿易」がポイント。

なお、4カ国の1人当たりGNIを比較してみると興味深い。シンガポールが32340ドル、タイが3400ドル、ベトナムが770ドル、ミャンマーが386ドル。1人当たりGNIの最も高いシンガポールには外国から工場が進出しているわけではないが、高い経済レベルを利用しての知識集約型工業(コンピュータなど)がすでに発達している。やや低めのタイには日系企業が多く進出し、各種の工業が発達しているが、その多くは機械工業など重工業となっている。ベトナムにも安価な労働力を求めての工場が進出しているが、その中心は軽工業である繊維工業である。ミャンマーはいわば「最も遅れた」国であり、外国からの工場進出は未だ見られない。しかし、政治的混乱が治まり、インフラ(都市施設)が整備されるなどして外国企業の進出しやすい状況が現れれば、今後の成長に期待できる国である。東南アジアの第1集団(シンガポール)、第2集団(マレーシア、タイ)、第3集団(インドネシア、フィリピン、ベトナム)、第4集団(カンボジア、ミャンマー)の差異が意識された、おもしろい問題。

 

[28] キーワードを探っていきましょう。

カは「オランダ」。インドネシアに該当。

キは「寒冷」。タイやインドネシアは熱帯の国なので、寒冷にはならない。選択肢の3つの国の中で寒冷となる可能性があるのは、標高が高いブータンである。

クは「絹」。絹の世界最大(そして圧倒的な)生産国は中国。クの文章に「東北部の養蚕地域」とある。タイの東北部は中国に接し、ここで養蚕が行われていたとしてもおかしくはない。

以上より2が正解。

 

[29] なぞなぞです。シンガポールで4つ、マレーシアで1つのものは何でしょう?答えは言語です。

というわけで2が誤り。マレーシアから分離したシンガポールは、言語政策においてマレーシアと全く違う方針を取っている。ブミプトラ政策(先住民優遇)に基づき公用語がマレー語だけとなっているマレーシアに対し、シンガポールではマレー語、中国語、タミル語(インド南部の言葉)、そして英語が規定されている。

 

第5問

[30] 簡単な問題だけど興味深い点があります。さすがに原子力発電所の事故があれば、世界をゆるがす大ニュースになるよね。オーストラリアでそんなことがあったはずはないし、4が誤り(正解)となります。原子力発電所の事故といえば、ウクライナのチェルノブイリでしょう。

ところでどこが興味深いかといえば、この問題は事故の有無というより、そもそもオーストラリアに原子力発電所なんてないですもんね。最近ちょこちょこ原子力発電所の「無い」国が話題になっていて、その一つがまさにオーストラリアなわけです。他にイタリアとニュージーランドもノー原発の国なので、ぜひ知っておくといいでしょう。出そうな気がしますよ。

 

[31] 赤道低圧帯は赤道周辺。「大きく増加」が目立つ。中緯度高圧帯は緯度25°付近。アフリカのサハラ砂漠や、オーストラリア大陸が目安となる。ここは「減少」となっているね。3が正解。

 

[32] アラル海の問題。ボクがおもしろいと思っているセンター地理の特徴みたいなものがこの問題に典型的に現れている。それは、地名や地図上の位置が問われるのではなく、いや、ある事象の説明すら問われず、その事象が生じる原因・理由こそが問われるということ。本問についても「アラル海」っていう名前が問われているわけではない。「湖水域が縮小しているか拡大しているか」といったようなことが問われているわけではない。「流入する河川の水を、綿花栽培のための灌漑用水として利用してしまっているため、湖水が減少しているのだ」という理由が問われている。1が誤り(正解)。おもしろいと思うよ。理由が問われる科目。それがセンター地理の正体なのだ。

 

[33] これ、すごく悩んだ。カ「減少」、キ「大きく減少」、ク「増加」というキーワードが入っているか、これどうなんだろう。熱帯林の減少は環境問題としてクローズアップされていることもあり、キミたちもよく知っているだろう。ブラジルがキに該当。アマゾン流域の熱帯雨林を切り開いて、大規模な牧場がつくられたり、鉄山の開発が進められたりしている。

カとクの判定が難しいんだわ。カには「針葉樹」とあるので、冷涼な国であることは分かる。それに対し、クには「落葉樹林」と「常緑樹林」とあり、これが実にあいまい。広葉樹にも落葉広葉樹と常緑広葉樹があり、針葉樹にも落葉針葉樹と常緑針葉樹がある。これだけでは、気温の高低のキーワードにならないのだ。

だからどこで判定するかといえば、やはり「減少」と「増加」の差だけになるのだ。クに「植林」という言葉がある。これでピンとくるのだ。そういえば、中国内陸部は砂漠化も進んでいるものの、政府主導の積極的な植林もなされている。これにより、森林面積は増加していると考えてもおかしくないだろう。クを中国と考えてしまっていいんじゃないか。

そうなるとカはロシアとなるが、これをどう考えるか。商業林として価値の高い針葉樹林は企業的な管理もなされ、アメリカ合衆国やカナダにおいては森林面積が増加している。でもロシアはどうなんだろう。これが全くわからない。「減少」している可能性は十分にある。さらに「用材として需要の高い」とあるが、ロシアはわが国にとっても重要な木材輸入相手国の一つであり、商業的な伐採が行われているはず。カがロシアと思っても、とくにおかしいところは見当たらないのだ。

以上より6が正解。今回ボクが最も悩み抜いた問題がこれです。

 

[34] Pは「火山噴火」。雲仙普賢岳はセンター過去問でも何回か登場している。Qが「豪雪」。日本海側は世界最大の豪雪地帯である。2が正解。

 

[35] これ悩んだんだよなぁ。よくわからない問題の場合には、過去問に似たような問題がないか一生懸命思い出すしかない。それに従って問題が作られているはずなのだ。

で、本問の場合思い当たったのが、2007年度地理B本試験第1問問6の選択肢1。「地震への対策としては地震災害予測地図が有効である。これは、将来の地震にともなう地盤沈下量や地下水面の低下量を示すものである。」という誤り選択肢。地盤沈下は、主に工業用水としての地下水利用が原因。2006年度地理B本試験第6問問3の選択肢4には「日本では、東京など、沖積平野にある大都市域で、工業用水として大量に地下水が揚水された。その結果、地下水位が低下し、地盤沈下が生じた」ともある。「地下水のくみ上げ過ぎ→地盤沈下」と考え、地震とは全く関係がないととらえる。これにより、3を誤りとしよう。地震によって地盤が隆起したり沈降したりしないのだっていうこと。

 

[36] 国際条約に関する問題は地理A的なので、地理B受験者のキミたちは考慮しなくていいね。ワシントン条約は野生動物の保護に関するもの。フロンガスの撤廃はモントリオール条約。