2018年度地理B本試験[第6問]解説

<2018年度地理B本試験 第6問;高山市の地域調査>

例年同様に地域調査の問題。今回は岐阜県の高山市、飛騨地方の中心都市で、近年合併により大きく市域を広げた(大阪府より大きい!)。小京都とも称される美しい街並みも有名で、今回はそういった観光地としての側面も出題の対象となっている。登場人物はイズミさん。何に由来してこの名前が選ばれたのだろうか?ちょっとわかりませんが。

問1は気候に関する問題でシンプル。確実にゲットしましょう。

問2は階級区分図を用いた考察問題。図よりも文章をしっかり読むことで解答に辿り着く。時間はかかるかもしれないが(というか、時間をしっかりかけて)確実に解こう。

問3は長文の会話文を伴う問題であるが、かなりの思考レベルを擁する難問。ただ、こうした分量の多い問題はそれだけ与えれているヒントも多いので、じっくり取り組むことで必ず正解を導くことができる。問2とも共通する。

問4はシンプルな地形図問題。この手の問題は新旧の地形図を比較するパターンが多いのだが、本問はそうなっていない。僕なら先に選択肢を読んでしまって、ある程度の見当をつけてから地形図に目を通すのだが、本問についても選択肢の文章だけでほぼ答えがわかってしまった。君たちはこんなリスクの大きい解き方をしてはいけないけれど、ただ選択肢だけでもある程度の判定はできるのだなということを心のどこかに留め置いて欲しい。

問5も他の小問同様に多くの資料が与えられた「重問」であり、やはりかなりの思考力を擁する。とくにここでは数字の感覚が重要になっている。典型的なセンター地理の問題といえよう。

問6は理科の問題なんだが、写真がちょっと見にくいな。

全ての小問が、高い思考力を必要とする考察問題となっている。時間はかかるが必ず解けるし、問題そのものも解いていて面白いものばかりだと思う。全問正解を目指して欲しいが、最大の敵は「時間」かな。第1問から順番に問いている受験生はこの第6問で時間が足りなくなってしまう場合がある。考察問題が第6問に多い状況を考えると、問題を解く順番を変えてしまうというのは一つの手かも知れない。

【30】 【インプレッション】日本の気候の問題だが、本問のように気温年較差と冬季の日照時間が問われた例は過去にもあった。日本海側の雪が非常に重要なテーマとなっている。

【解法】正解は⑥。

富山市は日本海側の地域に位置する。冬の北西季節風が日本海から湿った空気を運び、雪雲の多い気候となる。冬季の日照時間は少なく、イに該当。

さらに残った2つについては気温年較差で判定。海陸の比熱差の影響によって、内陸は寒暖の差が大きく、沿岸部は比較的穏やかな気温変化となる。気温年較差の大きいウが内陸の高山市、小さいアが海に近い浜松市。

【関連問題】(2013年度地理B本試験第6問問2)

日照時間が問われた例。こちらの問題では梅雨期の日照時間がポイントになっている。沖縄は5月に梅雨入りし、この時期の日照時間が短い。本州の梅雨シーズンは6月であり、曇りがちの日が続く。これを意識して解く問題になっている。

なお、ちょっと古い問題だが、2005年度地理B追試験第5問問1に、気温の年較差と冬季の日照時間を扱った全く同じ内容の問題がある。日本海側地域(雪が多い)、内陸部(気温年較差が大きい)、太平洋側(冬は晴天が続く)の違いが問われた。13年ぶりに同じ問題が登場したということ。

【アフターアクション】非常にオーソドックスな問題。しかし、高山市の場合、富山県と岐阜県の県境となる山脈を一つ隔てているので、もっと晴天の日が多いかなとは思ったが、意外に富山市と日照時間に差がない(もちろんそれでも富山市の方が短時間なのだが)ことにちょっと驚いたかな。逆に浜松市は日照時間が極めて長い。富山市の倍以上っていうのはかなりの差だね。

【31】 【インプレッション】階級区分図を使ったネタはよく出題されるものの、問われる内容はバリエーションに富んでいる。これ、意外に判定が難しいぞ。図の読み取りに気をとられすぎず、文章をしっかり読み解けばいい。

【解法】正解は③。

階級区分図が与えられてはいるものの、文章をしっかり読んでその正誤を判定すればいい。もちろん思考問題であるが、思考問題であるがゆえ(つまり知識問題であるがゆえ)かえって難易度は低いのではないか。

まず①から。「盆地に位置する中心部」という言い方はオッケイだね。たしかに中心部は比較的平坦な、すなわち盆地に位置している。そして人口密度の図を参照すると、たしかに中心部とそれに隣接する地域に「高位」が分布する。これは正しいでしょう。

さらに②。老年人口割合が高い地域は、たしかに「中心部から離れた」ところにみられ、標高についても比較的「高い」とみていいだろう。とくに否定するところもない。

そして③。なるほど、平均世帯人員は中心部と縁辺部において高い。中心部は人口密度の高いエリアであり、高山市の「都心部」である。官公庁や企業、商業施設などが集まり、その周囲に多くの人々が住んでいるのだろう。比較的構成年代が若く、核家族や一人暮らしも多いものと思われ、それが平均世帯人員を引き下げる理由となっているのだろう。③の下線部はそれとは反対のことを言っているね。これが誤り。

最後に④について。縁辺部では過疎化が進んでいる。若年層が流出し、老年人口割合が高い。高齢者だけの世帯が多く、さらに配偶者の死などで一人暮らしのお年寄りもかなり増えているのでは。日本の人口動態における深刻な問題である。

【関連問題】(2009年度地理B追試験第4問問5)

ぜひ参考にして欲しいのがこちらの問題。東京都と周辺県における第3次産業就業者人口割合、単独世帯割合、65歳人口割合を問うもの。65歳以上人口いわゆる高齢者の割合については、東京大都市圏の外に位置する縁辺部で高いことは想像できるだろう。

ポイントは単独世帯。単身者の世帯がどこで多いのかを考えることがこちらの問題を解くカギとなっている。単身者=一人暮らしなのだから、マンション居住者と捉え、都心部でこそその割合が高いと考える。「都心部=マンション」、「郊外=一戸建て」という発想は無理じゃないよね。

【アフターアクション】図は実はさほど重要ではなかったというのがおもしろいな。文章をしっかり読んで、つじつまの合わない部分を探してみよう。言われてみれば当たり前のことを聞いてるんやけどね。思考問題として完成度は高いと思うよ。

【32】 【インプレッション】最近のセンター試験で定番となった会話内容を問う問題。例えば熊本県のいぐさが出題されるなど、日本地理の知識が重要視される傾向が強い。本問はどうかな。

【解法】問題文(文章)が長い場合には必ずその中にヒントがある。地理の文章は、国語(現代文)のように複雑でなないので、素直に読んでいけばいい。

まずはカから。「現在は大都市圏を中心に出荷されている」が、当時はそうではなかったということ。高山市近郊の農家は朝市において直接農産物を販売していた。「大都市圏」が「域外」であるので、「高山市近郊」は「域内」と考えていいだろう。地産地消(地域で産し、地域で消費する)ということである。

さらにキについて。飛騨地方のブリは富山など北陸方面から運ばれる。さらに「標高1000mを超える山脈の峠を越え、海の魚を食べることが困難な地域」にも運ばれたと記述されている。保存のために塩を加えたことも説明されている。選択肢は「名古屋」と「松本」だが、どう考えたらいいだろう。

まず「1000m」という数字にこだわってみる。問2の図2を参照し、高山市の地形を読み取る。名古屋へと達する南に抜けるルートは薄い色で、標高は500mほどだろうか。決して山岳を超える経路ではない。それに対し、松本へ向かう場合の東側については濃い色で着色され、標高1000〜3000mの高所であることがわかる。こちらを抜けるルートは、険しい山脈を抜ける。

また、「海の魚を食べることが困難」という部分に注目してみれば、名古屋は海に面し、少なくとも太平洋で漁獲された魚については不自由はしていないだろう。「日本海の魚」は食べられないかもしれないが、単に「海」ならばいくらでも魚を食べることができる。一方で内陸部の松本市は四方を山地に囲まれ、海からは隔離されている。たしかに海の魚を食べることは、日本海、太平洋にかかわらず困難である。

以上より、キについては「松本」と判定していいのではないか。正解は④である。

【関連問題】とくになし。

【アフターアクション】日本地理の問題とも言えるが、むしろ思考問題としてかなり上質だったんじゃないかな。とくに「飛騨ブリ」の話は、文章を細かく読んでいけば必ず矛盾のない解答に結びつく。問題文が長い場合。そこに必ずヒントが隠されているわけだね。

本問は中学地理の知識はとくに必要とはならなかったものの、地元の農家による朝市の風景などは小学生や中学生でも想像できる、有名な話題だと思う。専門的な知識が問われているわけではない。

【33】【インプレッション】市街地の様子がテーマとなった地形図問題。こういう問題は、古い時代との対比が問われることが多いのだが、今回は現代の地形図のみ。非常にシンプル。また、最近更新されている地形図はよりデザイン性の高いものになっているのだが、ここで使用されているものは更新前の旧来のもの(また最新の地形図に更新されていない地域なのだろう)。オーソドックスというか、ずいぶん古臭い印象すらある。

【解法】市街地を描いた地形図の読解。地形図問題のコツは、先に選択肢を読んで、ある程度見当をつけてから問題に取り組むこと。

選択肢の中で①は城下町特有のことが述べられている。高山市は城下町であるので(選択肢①と②の下線部が引かれていない部分の文章からそのことが読み取れる)、当然①は正文だろう。

選択肢③も問題ないんじゃないかな。寺院が集まる地域で「寺院に由来する町名」は不自然なことではない。

気になるのは②と④。まずこれらについて検証してみよう。

②については「南」と「北」を入れ替えるだけで誤文となり得るのだから、問題作成者としては安易な選択肢でもある。河川は高いところから低いところに向かって流れる。図中から標高を表わす数字を探してみよう。

幹線道路には2kmごとに標高を示す水準点が置かれている。図の南部「名田町一丁目」付近に水準点(四角の中に点)があり「580.2」mとある。「宮川」という文字の辺りに独立標高点(単なる点)があり、「574」m。また、市役所の南に接して三角点(三角の中に点)があり、こちらは「569.9」m。どうだろうか。少しではあるが、南が高く、北が低い地形となっている。宮川が「南から北へ流れる」のは正しいのではないか。

さらに④について。そもそも岐阜県北部の山間地域に工業団地が建設されるだろうか。もちろん東北地方の自動車専用(高速)道路のインターチェンジ付近に電気機械の組立工場や、長野県の諏訪地区に精密機械(情報通信機器)の工場があったりするので、絶対にないとは言い切れないが、かなり怪しいと思う。選択肢④の下線部を続いて検証してみよう。

図のやや西部を苔川が南北に縦断している。河岸は護岸され、多くの橋が架けられている。その西側に沿って太い道路が通っているが、これが「幹線道路」なのだろう。やや着色されているようだが、これは「国道」を表わす(実際の地形図では黄土色)、中央分離帯によって上下の車線が多くの箇所で区切られている。

さて、この道路にそって「工業団地」が造成されているだろうか。工場の地図記号はみられないし、「◯◯工場」のような文字もみられない。これが誤りとみていいだろう。正解は④。

①;上ニ之町の「町」という字から南南西に向かう道路があるが、その先で丁字路となっている。

③;「天性寺町」や「宗猷寺町」など。なお、「鉄砲町」は職業に由来する地名(鉄砲鍛冶が住んでいたのだろう)で、こちらは城下町特有のもの。さらに「国分寺」は奈良時代に各地に置かれた行政機関であり、一般の寺院とは異なる。

【関連問題】過去10年分の地理B本試験について、地形図問題を解くポイントを列挙していく。

2017年度地理B本試験第6問問2。水田の判定。「田」の土地利用記号。

2015年度地理B本試験第6問問3。「郵便局」の地図記号。

2014年度地理B本試験第6問問3.「工場」の地図記号。

2013年度地理B本試験第6問 水田の判定。「田」の土地利用。「干潟」も判読できるとさらに良い。

2012年度地理B本試験第6問問2.ポイントになるのは「神社」と発電所(地図記号は「発電所・変電所」である)。正解以外の選択肢で「交番」と「郵便局」が登場。

2011年度地理B本試験第6問問1。地図上の長さから実際の距離を求める。

2011年度地理B本試験第6問問2。「寺院」の地図記号。

2010年度地理B本試験第1問問6.「岩石海岸」の記号。

2010年度地理B本試験第2問問4。地図上の長さから実際の距離を求める。

2010年度地理B本試験第2問問5。「畑・牧草地」、「田」、「広葉樹林」、「針葉樹林」、「竹林」の土地利用記号。とくに竹林が重要。

2009年度地理B本試験第2問問3.畑と水田。土地利用記号は「畑・牧草地」と「田」。

どうだろうか。地図記号については、「寺社」、「神社」など基本的なものばかり出題されているので、特別な勉強は必要ではないだろう。唯一、「発電所・変電所」が難しいぐらいかな。工場に似ているが、「両手」がカクっと曲がって、ちょっとテンションが上がった感じ(笑)。

こういった地図記号って探すのが難しかったりするんだが、発電所・変電所って見つけやすいからその点は安心。まず「送電線」を探してしまうのだ。図中に直線で描かれているから簡単に見つけられる。今回の問題でも、図の西端近くを南北に貫いている直線が送電線。「短大」の「大」の字を貫いているね。なお、この地形図は発電所・変電所はないので送電線に注目しても仕方ないのだが。2012年度地理B本試験第6問問2の問題では「沢間の対岸」の発電所の有無が問われていたのだが、ここを通過する送電線はなく(他にはめちゃくちゃ多いんだけどね)、発電所が存在しないことがわかる。この地域にみられるのは工場の地図記号。

土地利用記号の方が重要だと思うよ。水田と聞かれたら「田」の土地利用記号を探す。昔の地形図では「乾田」と「湿田」に分けられていたのだが、これがまとめられて「田」となった。現在の田は、農閑期には乾いた土地となる乾田ばかりだが、もちろん田植えの時期には水が引かれるのだから水田である。日本にある田のほぼ全ては水田なのだから、土地利用記号の名前も「水田」にしたらいいと思うんだが、なぜか「田」のままなんだよなぁ。

さらに「畑・牧草地」もチェック。Vの字で表される土地利用記号で、みんなは単に「畑」と思っているんじゃないかな。正確には「畑・牧草地」であり、牧場もこれに含まれるんだね。でも日本にはそもそも牧草地は少なく、牧場がある場合も2010年度第2問問5の問題のように地形図に「牧場」と書いてあるからね、心配する必要はない。畑や畑地とあったら、この土地利用記号を探し、特別に何も書かれていない場合にはそこが牧草地である可能性は消しておいていいと思うよ。

他にも、「広葉樹林」や「針葉樹林」、「果樹園」など大切な土地利用記号は多い。非農用地である「荒れ地」もよく出題されるし、さらに2010年の問題では「竹林」が登場しているが、これは2004年度地理B本試験第5問問5の地形図でも問われており、実はかなり大切!

他には沿岸の地形も大切。まず「岩石海岸」と「砂浜海岸」を区別しよう。2010年度地理B本試験第1問問6の図では、沿岸のほとんどは岩石海岸になっている。砂浜海岸はわかりにくいけど、2013年度地理B本試験第6問問4の沿岸部がそれっぽい感じかな。なめらかな直線によって描かれている。また、「干潟」も重要。海の中の浅い部分で、干潮時には海面上になる。潮干狩りをするような泥だらけの海を考えてみたらいいね。2013年度地理B本試験第6問問3の1948年の図がわかりやすい。干拓によって農業用地になったり、埋め立てによって工業用地に転用されたりする。

【アフターアクション】地形図問題の難易度は下がっている。とくに今回のように、現代の地図を一枚だけ取り上げ判定させる問題は非常に簡単。知識としては「工場」の地図記号を知っておけばいい(もちろんみんな知っているね。小学生の知識だね)。確実に得点しよう。

【34】 【インプレッション】データが多い問題は、時間はかかるけれど、手がかりも多いのだから、確実に解答できる。面倒とは思わずに、じっくり取り組んでみよう。だた、こういった問題がラスト近くになって登場すると焦るよね。時間配分が重要だってことだから、模試で時間を使う練習(もしくはメンタルを鍛える練習)をしておかないとね。

【解法】資料読解による考察問題。こうした問題は知識が不要な場合が多いので、時間をかけてしっかり解いてみよう。確実に得点できるはず。

図や表を漫然とみていたも始まらないので、先に文章を読んでみて、怪しい部分をあぶり出してみよう。

まず①から。「交通条件の改善は旅行者数の維持を保証するものではない」なんて難しい文章が登場しているけど、大丈夫かな。地理はそもそも高度な文章読解力は必要としない科目だけれども、この部分は例外みたい。要するに、「交通手段が便利になったら旅行者数も増えるはずだけれど、必ずしもそうではない」ということ。なるほど、そりゃそうだなって感じがする。高速道路を作ったり、新幹線が通じたりすれば、それだけで旅行者は増えるだろうか。そんなことはないんじゃないかな。本選択肢は納得。

さらに②について。「県内市町村の中でも相対的に宿泊をともなわない通過型の観光地としての性格が強い」となる。これもちょっと難しい文章だけれど、この問題って実は文章読解力がかなり必要? とはいえ、大学受験レベルならしっかり読み取ることはできるよね。「県内」とは岐阜県のこと。高山市は岐阜県の北部にあることは図1から読み取れるし、周囲を山地で囲まれた地域であることも図2から判定できる。県内の他の地域としては岐阜市が位置する県南部が代表的なところだろう。岐阜県の県庁所在地が岐阜市、名古屋圏に含まれる都市であることは理解しているよね(中学地理のレベルだけど、対策は大丈夫かな)。「通過型」というならば、岐阜市の方がそれにふさわしいのではないか。名古屋から鉄道や自動車によって大阪に向かう場合の通過点となる。また、「宿泊」に関しても交通の便がいい岐阜市ならば大阪からでも名古屋からでも、そして東京からでも十分に日帰り圏となる。それに対し、高山市はかなり距離があり、さらに山間部でもあることから、ゆっくり観光しようとしたら宿泊した方が絶対にいい。余裕がある旅ができる。どうだろう?明らかにこの選択肢が怪しいのだが?

とりあえず他の選択肢についても先に目を透しておこう。選択肢③は「2015年の高山市の宿泊客数の約2割を外国人旅行者が占めている」だが、なるほどそんなものかも知れない。これは図表の数値を読み取って計算したらいい。

最後の④は「ヨーロッパやオセアニアの割合が高い」とある。いやいや、日本に来る観光客は中国や韓国からが多いでしょ?と言いたいところだが、そこは焦らないで。「全国に比べて」とある。「爆買い」の中国人であったり、近隣の九州でとくに割合の高い韓国人に比べると、以外にヨーロッパ人は高山市のような観光地を好むのかも知れない。これも全国との比較を意識して、図表を読み取ってみよう。

というわけで、ここからは検証に入る。真っ先に疑わしいのは選択肢②である。あれっ?これについては図表からはわからない?日帰り客と宿泊客のバランスが示されているのが図4だが、これは高山市のデータしかない。県内の他の地域のデータがないから、これだけでは判断できないじゃないか!?

いや、違いました、すいません。データは文章の中にあったのだな。これは見落とし。焦ってしまってはいけないね。みなさんも注意してね。「岐阜県全体の日帰り客数は3731万人で宿泊客数は629万人」となっている。両者の合わせた観光客数は約4500万人で、宿泊客数が約650万人ならば、その割合はおおよそ15%ということになる。これに対し、高山市の数値は全体が約350万人で宿泊客が約120万人。割合は30%を超える。なるほど、選択肢②は反対のことを言っているね。やっぱりこいつが犯人だったわけだ。②が正解です。

実際にセンター試験を解く場合は、明らかな答えがみつかったので、この時点で次の問題に移ればいいけれど、ここでは参考までに外れ(正文)選択肢に触れておこう。

③について。宿泊客に占める割合だが、高山市全体では宿泊客は120万人程度。これに対し、表2を参照して、外国人は25万人ほど(高山市の値は宿泊客のみの数値である点に注意)。おおよそ20%ほどだね。正文。

④についても。高山市で外国人旅行者(というか宿泊者だけれども、とくに構わないでしょう)に占めるヨーロッパとオセアニアの合計は31.6%。全国にすると、8.5%。かなりヨーロッパ人とオセアニア人の割合が高いことがわかる。正文。

さらに①については多少強引だが、以下のように考えることができる。その様子を図から読み取るならば、1985年以降2015年まで、観光客はゆるやかに増加傾向にあるものの、年による変動が大きく、とくに激しく落ち込んだ時期もある。年を追うごとに道路など交通手段は整備されていくはずで、それならば継続して旅行者数は増加し続けるはずだが、この図を見る限りかなりのアップダウンがあり、むしろ不規則といっていい。①のように交通条件の改善が旅行者数の維持を保証するならばこういった動きはみせないはずだ。正文とみていいだろう。

【関連問題】(2015年度地理B本試験第6問問6)

観光と統計を組合せた考察問題。データの読み取りが重要。このネタの問題は比較的多く、2009年度地理B本試験第2問問6(境港市の観光客に対する調査)、2008年度地理B追試験(輪島市の観光客に対する調査)などある。

【アフターアクション】

反対の表現を含んだり、比較の構造をもつ選択肢には注意すること。本問では選択肢②が典型的であり、みるからに怪しい。「高山市」と県内の他の市町村との比較がなされており、文末が「強い」という形容詞で締めくくられているが、これは「弱い」という明確な反意語を持つ。もっとも「誤文」選択肢をつくりやすいことがわかるだろう

他の①、③、④の選択肢も非常に興味深く、表や文章中の数値を用いて計算することで正誤が求められる。地理は数字の学問であり、計算が必要な問題は多く出題されている。数字に対する感覚を養って欲しいな。

【35】【インプレッション】高度による植生の違いを問う問題なんだけれど、写真がちょっと見にくいなぁ。植物がよくわからない。背景の地形も含め、全体を捉えてみよう。

【解法】植生帯に関する問題。図5がわかりやすい。高い方から「高山帯」、「亜高山帯」と続き、最も低いのが「山地帯」。「森林限界」という言葉があるのでわかりやすいね。この標高より高いところは、低温であったり、降水量が少ない(気温が低いということは上昇気流が発生しにくく、大気中の水蒸気量も少ないため、降水量が少なくなる)ことから、樹木がみられない。このことは大きなヒントになりそうだね。

というわけで、「高山帯」から判定してしまっていいんじゃないかな。樹木がみられないものはAだね。草がまばらにみられ、裸地になっている部分も多い。急斜面になっているようで、高山にふさわしいと思う。Aが高山帯。

さらにBとCを判定。亜高山帯と山地帯の違いは(言葉によるヒントはなく)、標高差のみ。ただ、標高が違えばもちろん気温が違うのであって。比較的温暖な山地帯に対し、低温の亜高山帯となる。樹木については、最も高温の地域では「常緑広葉樹」、温暖な地域では「落葉広葉樹」、そして最も冷涼な地域が「針葉樹」。常緑広葉樹は熱帯(ジャングルなど)や、温帯の中でも温暖な地域(地中海沿岸の硬葉樹や西日本の照葉樹など)にみられるもので、乗鞍岳周辺では厳しいかな。でも、落葉広葉樹は十分に生育すると思うので、「山地帯」が落葉広葉樹。そして、冷帯に対応するものが針葉樹なのだが、これが「亜高山帯」と思っていいんじゃないかな。ロシアやカナダ、そして北海道などの寒冷地域に広がるのが針葉樹林であるが、岐阜県北部の乗鞍岳では山地の中腹が針葉樹で覆われているとみて間違いないでしょう。

で、写真判定。でもここからがわかりにくんだなぁ。BとC、さて、どっちが広葉樹でどっちが針葉樹かわかるかな。そもそも葉の形が「広く丸みを帯びている」か「針のように鋭い」かで広葉樹と針葉樹の区別がされるわけで、この写真では葉の様子はわからない。

でも、どうかな。針葉樹に分類される樹種として、スギやヒノキがあり、それらは建築材料として重用されている。Cのように高くまっすぐにそびえる樹木なんて、建物の柱にはぴったりじゃない?それに対し、Bの方は葉の数も多く、光合成も活発に行われているのかな。樹種ははっきりしないというか雑木林のような感じで、多くの種類の樹木にあふれているように見える。針葉樹については「タイガ」っていう言葉をみんなも知っているんじゃないかな。針葉樹の純林(同じ樹種が一面に広がっている)。そう考えてみると、多様な樹木がみられる雑木林は広葉樹から構成されているってことになるよね。Bが広葉樹、Cが針葉樹と考え、Bを「山地帯」、Cを「亜高山帯」と判定しよう。正解は②。

【関連問題】(2015年度地理B本試験第1問問1)

山地における標高による植生の変化を問う問題。「針葉樹林」、「高温」、「降水量が少なく、草地」、「低温」などがキーワードとなっている。アメリカ合衆国の西部という特殊な地域が問われており、太平洋岸には地中海性気候、内陸側には砂漠が広がることを意識しないといけないが、とりあえず「針葉樹」には注目して欲しい。どういった地域において針葉樹林がみられるのだろう。日本やアメリカ合衆国のほとんどを占める温帯地域においては、山麓部は温暖な気候に適応した樹木がみられるものの、やや標高の高いところには針葉樹、そして山頂に向かうにつれて樹木はみられなくなり、草原や高山植物、そして山岳氷河と万年雪の世界となる。

【アフターアクション】う〜ん、写真がみにくいなぁ。決定的なポイントって何なんだろうね。ただ、Cの写真をみて「針葉樹」と問題なく判定できればいいと思うし、それは決して難しくないとは思うんだけどね。地理の問題っていうか、理科それも小学校や中学校のレベルの問題だったと言えるかな。

<解答・配点>

第1問

【1】2(2点) 【2】6 【3】4 【4】1 【5】4 【6】4

第2問

【7】3 【8】4 【9】3 【10】2(2点) 【11】1 【12】5

第3問

【13】2 【14】4 【15】2(2点) 【16】3 【17】3 【18】4

第4問

【19】4(2点) 【20】3 【21】2 【22】5 【23】1 【24】5

第5問

【25】6 【26】5 【27】6 【28】2 【29】2(2点)

第6問

【30】6 【31】3 【32】4 【33】4 【34】2 【35】2