2018年度地理B本試験[第2問]解説

<2018年度地理B本試験 第2問 資源と産業>

鉱工業に関する大問。統計が非常に重要視されるが、逆に言えば、統計の知識さえあればスムーズに解ける問題ばかりなので、実際のセンター試験ではこの第2問から解き始めるのは賢い選択かも知れない。

問1は「特許」も「ボーキサイト」も過去に何回も統計が問われているので難しくない。というか、この問題を難しいと言っているようでは、高得点はおぼつかないぞ。

問2も極めてオーソドックスな問題。こちらも確実に。

問3はさらに簡単。文章正誤問題だが、キーワードだけ拾って考える。ルールはもちろん「炭田」だね。

問4はちょっと悩む問題だが、シンプルに解いてしまっていい。アジアを特定するならば簡単なんじゃないか。

問5はこの大問中二つ目の文章正誤問題だが、こちらもキーワードを抜き出すことが重要。反対語を持つ言葉をピックアップしよう。

意外に悩むのが問6.唯一難易度が高い問題だと思う。日本に関する問題なので、日本地理に対する苦手意識があると思わぬミスをしてしまうかな。中学地理の範囲を完璧にしておいて、日本地理は得意ジャンルにして欲しいな。

この大問は満点を狙いましょう。簡単だと思います。引っかかるとしたら問6なんだが、それにしてもゆっくり時間をかけて考えれば解けない問題ではない。問4や問5がスムーズに解けたら、キミのセンター地理レベルはかなり高いといえる。

【7】【インプレッション】おっ、リチウムって何なんだ?某ロックバンドの曲でそういうタイトルのがあったことは記憶にあるんだが、とくに調べたりはしなかったな。とはいえ、本問は3つ組合せ問題であり、2つの選択肢を確実に判定すれば、一つは消去法でいい。だからリチウムに関する知識がなくても、他の2つをしっかり解答すれば、問題は解けるわけだ。一つは「国際特許出願数」、もう一つは「ボーキサイトの生産量」。いずれも過去に出題例があるものであり、判定は難しくない。

【解法】「リチウムの生産量」については全く見当がつかないので、他の2つ、「国際特許出願件数」と「ボーキサイトの生産量」で判定。

図を参照しよう。こうした世界図で真っ先に注目するべきは日本。アとウでは日本の値はゼロであるのに対し、イでは大変大きな円が与えられている。日本が資源産出国であるわけはないよね。これを「国際特許出願数」と考えてみていいんじゃないか。科学技術が発達し、研究開発能力が高い日本の企業や学術機関においては国際特許が多く出願され、世界の先端産業をリードしているはずだ。アメリカ合衆国やヨーロッパ(ドイツやフランスの値が大きいようだ)など先進諸国に集中していることも妥当。意外に中国が大きかったりするのだが、近年先端産業の発達は著しい。

更にボーキサイトの判定をしよう。ボーキサイトの世界最大の産出国はオーストラリアであり、北東部の鉱山ウェイパが中心。ただ、アもウもオーストラリアの値は大きく、これでは判定できない。ここはジャマイカに注目しようか。ボーキサイトは熱帯の土壌ラトソルに多く含まれ、その産出地域も(熱帯である)低緯度地域に偏る。とくに国でみれば、ジャマイカでの生産が特徴的。カリブ海の島国であるジャマイカに円が与えられている(大きな円ではないが。ジャマイカは人口数百万人ほどの小国であり、産出量自体はさほど多くはない)アが「ボーキサイト」と判定していいだろう。なるほど、ブラジルやインド、インドネシアなど、低緯度諸国が上位に食い込んでいる点にも納得。わかりにくいかもしれないが、西アフリカのギニアもボーキサイトの世界的な生産国。

以上より正解は③。リチウムは完全に消去法でいいでしょう。

【関連問題】(2016年度地理B本試験第2問問3)

「技術貿易の受取額」の大きな国が問われているが、これには「研究開発により得られた技術など(特許権、商標権、意匠権、ノウハウおよび技術指導)を提供して受け取った金額」という注釈がつけられている。特許については、科学技術水準の高い先進国においてこそ出願数が多いのだというイメージをつくっておこう。

【アフターアクション】統計を覚えるポイントとして「1位」の国は大切なんだが、やはり「特徴的な小国」を知っておくことも有効。ボーキサイトについては、産出1位オーストラリアは絶対として、ジャマイカがボーキサイトの国であることも絶対に知っておく。ボーキサイトはいわゆる酸化アルミニウムで、擁するに「錆びた金属」。降水量の多い熱帯地域に分布していることがわかるだろう。熱帯の土壌ラトソルは、激しい降水のため有機物が流出し、表面に金属が残存する(金属は水に溶けないからね)。酸化鉄や酸化アルミニウム(つまりボーキサイト)を含む土壌なのだ。

また「特許」についても具体的なイメージを持っておくべき。先進国でこそ科学技術の研究開発がさかんなのだ。日本やアメリカ合衆国をみて判定すればいいと思うし、そもそも過去問にも登場している。決して判定は難しくない。

【8】【インプレッション】さらに工業の問題。九州をシリコンアイランドと呼ぶことについては中学でも学習する基本的な事項であるが、それを理論付けて思考するという点が高校的とも言えるのだろうか。ただ、いずれにせせよ難しい問題とは思わない。

【解法】「シリコンアイランド」という呼称は基本的なものなので、必ず知っておこう。シリコンすなわち半導体を中心としたコンピュータ部品の組立工場が九州には多く、カリフォルニア州のシリコンバレー(こちらは部品組立というより研究開発が主であるが)になぞらえて、こうした呼称が生まれた、

まず( カ )から判定しよう。「東京圏に比べて人件費が安価である」と述べられている。半導体(IC)工業は先端産業の一つではあるが、単純労働力に依存する労働集約型工業であることは間違いなく、1人当たりの所得の高い東京大都市圏より、この値が低い九州に工場が立地することが有利となる。まず解答を③と④に絞る。

さらに( キ )について。半導体などコンピュータ部品は小さいながら価格が高い。「軽量高付加価値」の工業製品である。航空機による輸送などコストがかかったとしても十分に採算がとれるものである。軽くて小さいので運びやすいことを考えれば、生産費に占める輸送費の割合が「小さい」と言えるだろう。正解は④である。

「航空機で運ぶということはコストが高いじゃないか。だから生産費に占める輸送費の割合が高いじゃないか」と考えてはいけない。「半導体が製品として軽量であり」と述べられているのだから、何よりまず「運びやすいということだな」と考えるべきである。小さな荷物で済むのだから、わざわざ船でゆっくり運ぶ必要もない。航空機で運んでも大したロスにはならない。王するに「コスパがいい」って感じ。通信販売で安いものを買うと送料の方が高いんちゃうか!?って複雑な気持ちになるけれど、高くて小さいものを買えば製品価格に比べ送料は安くて済むので、得した気持ちになるでしょ?身近なものに結びつけて考えよう。

【関連問題】(2010年度地理B本試験第3問問4)

工業立地に関する問題はありがちだね。しかも簡単なので、確実にゲット!

【アフターアクション】工業立地については本問のようにダイレクトで出題されるケースが多いが、簡単なジャンルでもあるので確実に得点できる。おいしい問題だと思うよ。

本問では市場立地型と労働力指向型が取り上げられているが、これらを含め主な工業立地バターンについてまとめてみたので、参考にしてほしい

原料立地製品重量が原材料より軽くなる。重量減損型。セメント工業

パルプ工業

鉄鋼業(初期)

市場立地1)製品重量が原材料より重くなる。

2)情報や流行を反映できる。1)ビール工業

2)ファッション産業・出版印刷業

労働力立地製造コストにしめる労働力の割合が高い。

1)単純労働力に依存。発展途上国に進出。

2)熟練労働力に依存。先進国にとどまる。1)衣服工業・機械組立工業

2)精密機械工業

集積立地周辺に関連工場(部品)が必要。労働力や広い敷地も大切。自動車工業

臨海立地原材料を輸入に依存石油化学工業

鉄鋼業(高度経済成長期以降)

臨空港立地軽量高付加価値であるため、航空機で輸送しても採算が取れる。IC(集積回路)工業

用水立地製品処理用水が必要。ただし廃液を生じる。製紙業(パルプから紙に加工)

電力立地精錬に大量の電力を必要とする。安価で安定した電力の得られるアルミニウム工業

【9】【インプレッション】ベタな問題。文章全体を読まず、キーワードに反応せよ。

【解法】ルール工業地帯を特定する問題。近隣で石炭が産出され、それを基盤に鉄鋼業が発達した、ヨーロッパ最大の工業地域。スウェーデンなどから鉄鉱石が輸入され、国際河川であるライン川の水運が利用された。「炭田」がキーワードで、③が正解。近年のルールは鉄鋼業が停滞し、ハイテク産業地域への転換が図られている。とくにドイツは「環境問題」に強い関心を抱く国で、その対策研究も中心的な課題となっている。

①はサードイタリー。イタリア北東部のボローニャを中心とする地域。「職人」や「中小企業」、「繊維」などがキーワード。伝統的な技術を活用し、衣服や皮革製品など「多品種少量生産」している。値段は高いかもしれないけれど、一生モノと思ったらお金に換えられないものだと思うよ。

②はシリコンヴァレー。カリフォルニア州サンフランシスコ郊外のサンノゼに位置するハイテク産業地区で、ハイテク技術の研究開発がさかん。「大学」はバークレー。マッキントッシュのPCで知られるアップル社も、最初は「ベンチャー企業」だった。「半導体」や「インターネット」など新しい技術を活かした開発力の高さを誇る。

④はシンガポール。「金融センター」は1人当たりGNIの高い国(都市)のキーワードであるが、シンガポールは1人当たりGNIの高い高賃金国(日本より高い!)であり、東南アジアの経済・金融の中心地である。「輸出加工区」はむしろ1人当たりGNIの低い国のキーワードなのだが(安価な労働力で外国企業を誘致)、これは昔の話なのかな。この部分がちょっとよくわからないのだが。まぁ、問題を解く際には関係ないからいいのかな。

【参考問題】(2010年度地理B本試験第5問問3)

ヨーロッパの工業地域が取り上げられている。ドイツ西部のEはルール工業地帯(こんなに国境近くにあるんですね。位置に気をつけてください)。スの「近隣の資源」がカギ。またGのイタリア北部(フランス側でなく、旧ユーゴ側に寄っている)がサードイタリー。「衣料品」と「伝統的」という言葉に反応しよう。

ちなみに2009年度地理B追試験第3問は、問4でシンガポール、問5でシリコンバレーが扱われているので、良かったら参照しておこう。

【アフターアクション】ルール工業地帯のキーワードは「石炭」。現在は鉄鋼業が停滞し、ハイテク産業地域への転換が図られているが、センター地理で「ルール=石炭」という法則は旧課程から30年以上変わっていない。

他の選択肢も要点を抑えた適切な説明文となっているので(シンガポールの「輸出加工区」を除く。これが意味がわからない)、ノートなどに整理しておくといいね。

【10】【インプレッション】これ、全部を当てようとしたら難しいんじゃないかな。アジアだけ当てればいいから何とかなるけど。ちょっと判定が難しいグラフだと思う。

【解法】自動車の生産順位は、かつてアメリカ合衆国・日本・ドイツが3強だったが、近年は中国が首位に躍り出ている。自動車メーカーの本社が集まる3つの国ではなく、先進国から組立工場が進出している発展途上国の伸びが著しく、その典型が中国ということ。中国は生産台数も多いが、販売台数が圧倒的で、国内向けの生産活動を行っている。

このことを考え、中国を含むアジアで生産台数が伸びていないわけがない。中国以外にも韓国やインド、タイでは生産台数が増加しているはずだ。②を正解とする。

参考までに、他の選択肢についても判定してみよう。①が極端なんだわ。2000年の段階で生産台数の60%を占める寡占ぶり。これ、北アメリカなんじゃないかな。アメリカ合衆国がメインだが、カナダでも生産が多かった。現在の値は40%程度に落ち込んでいるが、それでも4つのグラフ中で1位。現在でも(辛うじて)世界最大の自動車工業地域の地位を死守しているというわけ。

③がおそらく日本なんでしょう。2000年も2014年も20%程度。よく言えば安定だが、悪くいえば停滞かな。よくみると2011年に少しだけ数値が下がっている。これ、東日本大震災の影響だと思う。

残った④が中央・南アメリカかな。メキシコ(アメリカ合衆国からの工場進出)やブラジル(バイオマスカーの開発)など特徴的な国はあるけれど、生産はまだ限定的。

[関連問題](2007年度地理B追試験第2問問5)

自動車の生産統計は久々に登場した感じ。2002年、2006年、そしてこの2007年とかつてはかなり頻出だったんだけどね。ここではやはり]中国に注目しておこう。1980年に改革開放政策によって経済特区がもうけられ、1990年代後半から本格的に重工業化が進んだ。21世紀には中国は世界最大の自動車生産国となっているのだ。

【アフターアクション】「とりあえず伸びているものは中国と思え」という鉄則があるので、②を直感的にアジアと判定してしまえばいい問題なんだが。ちょっと不信感もあるんだな。

アジアってもっと多いと思うし、北アメリカってもっと少ないように思うんだけど。もちろん変化の様子(①は減少、④は急増)をみると①が北アメリカ、②がアジアで間違いはないんだけど、絶対量として2014年の段階で①>④になっているのは腑に落ちない。

中央・南アメリカというグループがあるので、北アメリカにはメキシコは含まれず、アメリカが合衆国とカナダだけということがわかる。もちろん両国とも世界的な自動車生産国だが、それが中国・インド・韓国・タイなどの合計を上回っているのだろうか。かなり疑問なのだが。

本問については、自動車の生産統計の詳しい知識が問われていると考えるべき。1位中国、2位アメリカ合衆国、3位日本、4位ドイツの順は絶対的。これ以外の自動車生産国として、韓国(自国メーカーであるヒュンダイによる生産)、インド(日本のスズキと合弁したインディア、自国資本のタタによる生産)、ブラジル(日系のホンダを中心としたバイオマスカーの生産)、カナダ・メキシコ(アメリカ合衆国からの工場進出)、タイ(日本からの工場進出)、スペイン・チェコ(ドイツやフランスからの工場進出)をチェックしておこう。

【11】【インプレッション】正統派の文章正誤問題。しかも「適当でないもの」を選ぶ問題なので、さほど難しくないと思う。文章全体を読むより、キーワードを拾って、その正誤判定をすることを心がける。

【解法】誤文判定問題。文章(この場合は下線部だけ)の中に「反対語」と持つ言葉を探し、その判定をする。要するに、「犯人」として怪しい言葉を探せってことだ。

まず選択肢①。「自給的」がキーワード。これに対する言葉は「商業的」。「遺伝子組換え作物の導入は自給的農業がさかんな国が主」と言っているわけだが、では「商業的な農業がさかんな国で遺伝子組換え作物の生産は行われていない」のか。ここで考えて欲しいのは、アメリカ合衆国の存在。日本では、品種改良は広く行われているものの、遺伝子組み換え作物については原則として栽培が禁止されている。しかし、輸入農作物についてはその限りではなく、とくにアメリカ合衆国から輸入される大豆やトウモロコシは遺伝子組み換えのものも多い。加工食品には、これら遺伝子組み換え作物を使用した場合は表示が義務づけられているのだが、君たちもスナック菓子を買った時、その裏に製品表示があり、「原材料;トウモロコシ(遺伝子組換えではない)と記載されているのをみたことがあるのではないかな。わざわざ断っているということは、日本国内にも一定量の遺伝子組換え作物が流入しているってことがわかるね。

はたして、アメリカ合衆国は「商業的農業」の国である。商業的農業がさかんな国で遺伝子組み換え作物の栽培は行われているではないか。①が誤りとなる。

他の選択肢についてはあいまいなものも含まれており、とくに判定の必要はないと思う。②についてもアメリカ合衆国の農業の様子を考えてみればいい。アグリビジネス(農業関連産業)が穀物メジャーを中心として展開されており、企業的な農業経営が拡大している。もちろん「生産の大規模化」だ。

③は日本の状況だが、これについては納得だろう。農家はかつては専業農家(農業のみを行う)と兼業農家(農業以外にも収入源をもつ)の②つに分けられていたが、専業農家がほとんどいなくなったことから分類法が見直され、主業農家(農業が主たる収入源)と副業農家(農業以外が主な収入源)の2タイプに分けることが一般的となった。そして、経営規模が大きな農家は生産を合理化しながら、農業収入を上げているのだが、従来の家族労働を中心とする小規模農家は、農業従事者の高齢化などにより農業以外の仕事に主な収入源を依存するようになった。例えば、年老いた両親が家族で食べるために野菜の栽培などを行う一方、その子どもたちは企業や官公庁に職を得て、そちらの収入が多くなっているなど。

④はオーストラリアやアルゼンチンと考えよう。いずれも企業的牧畜が発達した国であり、肉牛の放牧が行われている。肉牛の大規模飼育は冷凍線の就航といった輸送技術の発達が背景にある。

【関連問題】(2012年度地理B本試験第2問問6)

遺伝子組換えに関する問題は多く出題されているが、ここでは地理B本試験で問われた例を紹介しておこう。

遺伝子組換えは高度な技術を必要とするため先進国のものと思われているが、発展途上国でも一般化しており、世界中でその種子は栽培されている。

遺伝子組換え作物の商業的な栽培が禁止されているのは、ヨーロッパのほとんどの国と日本が代表的なところであり、一方、その導入に熱心であるのがアメリカ合衆国、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、オーストラリアといった企業的な農業が行われる新大陸(南北アメリカ・オセアニア)の国々と、莫大な人口を農業によって支えなくてはいけない中国やインドなど。

こちらの問題のグラフをみたらわかるように、遺伝子組み換えによる農産物の生産は年ごとに急激なな勢いで増加しており、とくに生産が多いのはアメリカ合衆国。大豆やトウモロコシが中心となっている。

なるほど、たしかに中国やインドなど自給的農業地域でも遺伝子組み換え作物は導入されているものの、全体の生産は商業的農業(つまり輸出が多い国)に偏っていることがわかる。ただし、今後は中国やインドでの栽培がさらに盛んになることは十分に予想されるし、日本も、現実問題として輸入農産物には遺伝子組み換えのものがいくらでもあるのだから、制限が緩和される可能性は大きいと思う。

遺伝子組み換え作物の中には、強烈な毒性をもって害虫を寄せ付けないようなものもある傍らで、単に背丈を低くして風によって倒れ折れることを禦ぐものもある。あるいは、近年は燃料用(バイオマス)としての農産物の栽培もさかんになってきているため、そういったものについては人体への影響を考える必要がない。遺伝子組み換え技術を正しく理解し、人体への健康被害を抑えつつも、効率のよい生産活動を行えるよう、我々は心がけなくてはいけない。

【アフターアクション】とくに言うべきこともないので、ここは内容ではなく形式に目をつけよう。こうした文章正誤問題って、選択肢の文章が最も短い場合、解答にはなりにくい(本問のような誤文選択問題の場合、「誤り」文章ということ)のだが、本問はその例外になっているね。このパターンは珍しい。

僕はテクニックとして、文章の長さに注目するのは「有り」だと思っている。たしかに長文の選択肢が解答になりやすいのは事実であるし、やたら説明がめんどくさい文章こそ「誤っている」可能性は高い。

でも、本問のような例外はいくらでもあるのだから、そういった先入観で問題を捉えるのはやっぱり危険だと思うんだわ。文章はしっかり読んで(というかキーワードを確実に捉え)、その正誤を丁寧に判定する。時間はたっぷりある(センター試験は60分という長丁場だぞ)のだから焦らずに取り組もう。

【12】【インプレッション】日本の産業に関する問題は頻出。中学地理のノリで解いてしまっていい。日本の都道府県は頭に入っているよね?日本地理に極端なコンプレックスを抱いている人もいるけれど、中学地理の復習によって克服しよう。

【解法】サービス業に関する問題のようだが、結局「情報産業」、「運送業」、「農業」の区分だよね。大都市圏と非大都市圏、東京と北海道など、特徴的な地域に注目して解いてみよう。

まず「情報産業」だが、これは当然東京を主とする大都市圏に集積していると考えていいと思う。情報が集まる巨大都市でこそ、コンピュータソフト開発などの先端産業が立地する(一応、【8】も参考にしてください。半導体組立のような労働集約型工業は低賃金の地方に立地する。大都市圏に集まるのは研究開発の知識集約型工業)。東京がとくに大きく、大阪や名古屋にも集まるスが「情報産業」。地方中枢都市でも比較的よく発達し、とくに福岡の値が大きめなのが興味深いね。

サとシの判定。いずれも北海道の値が大きく、なるほど面積が広いため遠距離輸送の必要があり、全国一の農畜産物の産出額を誇る北海道だなと思ってしまうのだが、これでは判定できないね。

ではどこに注目するか。やっぱり東京大都市圏と九州南部だと思うんだわ。この2地域はサとシで全く傾向が異なる。サでは東京大都市圏の値が大きく、シでは九州南部が大きい。たしかに東京近隣は野菜栽培を中心とした近郊農業が行われ、千葉県や茨城県は北海道に次ぐ農畜産物の産出額を上げている。九州南部は遠方であるので、大都市圏への輸送を考えた場合、運送業が発達するのかも知れない。

でも、どうなんだろう?北海道や関東地方に次ぐ農畜産業のさかんな地域である九州南部で「農業」の値が低いとはとても思えないのだ。また「運送業」についていえば、最近は通信販売による宅配が多くなっているよね。人口が大きい大都市圏でこそ、やはり運送業の需要って大きいんじゃないか。アマゾンやメルカリで購入した商品を、クロネコヤマトや佐川急便が各家庭に届けるイメージ。それらを考え合わせると、サが「運送業」、シが「農業」であると考えていいと思う。農業のおもしろいところは、他に比べ県ごとの差が小さいということ。大都市圏は人口が多いため、非大都市圏では農業が広く行われているため、「農業」の値が少ない地域は見当たらないのだ。

【関連問題】(2017年度地理B追試験だい2問問5)

ソフトウェア開発などの情報産業がいかに東京都に集中しているか。専門技術を生かした熟練労働力が必要な産業であり、企業や大学の研究施設が集まる東京周辺でこそ発達する業種なのだ。第2次産業(工業)から第3次産業(情報産業はこちらに含まれる)へと社会全体の産業構造がシフトしていく様子を捉えよう。単純労働に依存する製造業(自動車工業など)は外国へと流出させれば良く、日本国内ではこうした収益性の高い産業の発展が望まれる。

【アフターアクション】非常におもしろい問題だったと思います。でも解きにくさもあったかな。「情報関連サービス業」、「道路貨物運送業」、「農業関連サービス業」、それぞれがどんなものかを具体的にイメージしないといけない。っていうか、農業関連サービス業については「作物の栽培から出荷までのいずれかの1種類以上の作業を請け負う事業」とあるけれど、それって結局のところ普通の農業じゃん!って感じなんだけどね(笑)。日本地理をしっかり勉強して、こうした問題に対する苦手意識を払拭することが大切なのです。