たつじんオリジナル解説[2017年度地理B第2問問1]訂正

日本の農業に関する問題。「政治経済」や「現代社会」的な内容なので、「地理」という範囲においては最低限のことだけ覚えておけばいい。

 

それは「遺伝子組換え作物」に関すること。国内では原則として遺伝子組み換え作物の商業的な栽培は認められていない(例外としては「花卉(かき)」がある。観賞用のものであり、人間が食するわけではないので、健康被害の懸念はない)ものの、輸入品についてはその限りではない。とくにアメリカ合衆国では、遺伝子組み換えによる大豆やトウモロコシの栽培が盛んに行われており、それらについては日本の輸入も行われている。もちろん、加工食品に利用した場合には、その旨を表示しないといけないので、我々消費者も気をつけることはできるのだが、それでも日本の農家による栽培が許されていない遺伝子組換えの作物が、身近なところに存在していることには間違いない。農産物そのものに加え、「加工食品」も輸入されているとみていいだろう。3は正文。

 

そして4について。グローバル化する世界において貿易が縮小することはかなり例外的なことであり、特殊な理由を伴うものである。果たして「野菜」はその特殊な事例に該当するものなのだろうか。いや、そうは思わない。日本では農畜産物全体について自給率は低下傾向にあり、輸入は増加しているはずだ。もちろん、品質で考えれば国産品が見直されるべきなのだが、何といっても価格が違う。「安いもの」を求める消費者心理によって、安価な(しかし質は悪いであろう)海外産の農畜産物の供給は拡大しているとみていい。生鮮野菜についても「輸入量は伸びている」と考えられ、4が誤りとなる。これが正解。

 

生鮮野菜の主な輸入先としては中国があるが(スーパーなどで中国産の長ネギなんていうのはよく見かけるね)、ニュージーランド産のカボチャも近年増加しているし、「輸送技術の発達」によってアメリカ合衆国からの輸入も次第に一般化している。

 

残った1と2についてはさほど重要な選択肢でもないので、確認の必要はない。というか、1と2の選択肢の判定は困難。とにかく、4を絶対的な誤りとして考えて解答するべき。

 

参考までに、1と2についてコメントを。

 

1;下線部については否定しにくいだろう。とはいえ「政府は農業経営の効率化を支援している」のは当たり前じゃない?「農業経営を非効率のままで放置している」とは考えにくいわけだ。流通経路の整備、大型機械の導入、経営規模の大型化、品種改良技術の向上など、さまざまな農業振興策において政府は多少なりとも支援をしているんじゃないか。

2;そもそも「トレーサビリティ」なんていう特殊なカタカナ言葉が解答のポイントになることはないので、本選択肢については無条件で正文でいいと思う。よかったらトレーサビリティという語について検索しておいてください。その農畜産物がどこで生産され、どこで加工され、どのような経路で販売されているのか。商品についたタグなどで、その情報を得ることができる。