たつじんもこんな問題を間違えているのです(涙) [7]〜[8]

[7]次の図3は、いくつかの国における海外直接投資の純流入額の推移を示しtものであり、カ〜クは、シンガポール、タイ、ベトナムのいずれかである。カ〜クと国名との正しい組合せを、下の①〜⑥のうちから一つ選べ。(2013年度地理B追試験)

 

「直接投資」については、工場進出を考えてください。先進国が発展途上国に工場を進出させる、あれです。日本の場合、「対外」直接投資(日本から外国)の方が「対内」直接投資(外国から日本)の方が大きいのはわかりますよね。先進国が与える側、発展途上国が受け取る側となります。

ベトナムの判定は簡単と思います。1人当たりGNIが1500ドル/人という発展途上国であり、当然、直接投資の受け入れ国となります。ベトナムのキーワード(というかキーナンバーというべきでしょうか)は「1990年代」です。社会主義国であるベトナムは長い間、外国からの投資を受け入れてきませんでしたが、ドイモイ政策という改革開放政策によって外資の導入が進み、1990年代にようやく市場開放化が進められた国なのです。どうでしょう?1990年の段階ではほぼゼロでありながら、1995年に値が上昇し、とくに2005年以降の伸びが著しい、クをベトナムとみるのは妥当でしょう。

しかし、問題はここからなのです。シンガポールは1人当たりGNIが50000ドル/人に達する高賃金国であり、外国から工場が進出しているとは思えません。それに対し、タイはどうでしょう?低賃金(1人当たりGNI5000ドル/人)であり、外国から多くの工場が進出しています。とくに日系企業の数は多く、世界3位の進出数となっています(1位中国、2位アメリカ合衆国、3位タイ)。このデータだけ考えても答えは明らかですね。値の大きいカがタイ、キがシンガポール。正解は③です!

 

と思って解いたのですが、これが違った(涙)。正解は①でした。つまりベトナムは正しいとしても、カがシンガポール、キがタイとなったのです。シンガポールへの投資が圧倒的に多いなんて!

上述したように、原則として「直接投資=工場」と考えるべきなのですが、シンガポールの場合は他の投資(例えば、港湾設備を建設するなどのような)も多いのでしょうか。正直わかりません。経済規模(GNI)にしても、タイの方が大きいので、この点から考えてみても、タイの方が多くの投資を受け入れているとみて妥当なのですが。

 

ただ、ポイントとなるところが一つあります。それは1980年代なのです。この時点で、投資を受け入れている国はアの1カ国しかありません。イとウに進出する外国の企業は全くなかったと考えてみていいでしょう。1980年代といえば、シンガポールと同じくアジアNIESの一員と考えられている韓国において高度経済成長が成し遂げられた時期です。シンガポールも同時期に急激な経済成長を成し、外国からの投資が始まったと考えるのは妥当なのではないでしょうか。

一方、タイについてはマレーシアと同様に、1990年代になってようやく外国(とくに日本)からの工場進出が活発化した国なのです。日本の円高と労働賃金高騰を背景に、東南アジアに工場を盛んに進出させるメーカーが増え、その対象となったのがタイとマレーシアなのです。なるほど、1980年代後半から値が上昇しているイとタイとみるのは納得なのです。

 

つまり、直接投資がスタートした時期を古い純に並べてみて、「ア→イ→ウ」となるため、これを経済レベル(1人当たりGNI)の高低と対応させて、ア〜ウは順に、シンガポール、タイ、ベトナムとなるのです。

 

ちなみに本問の関連問題としてはこんなんもありますが、いかがでしょう?

 

[参考3]東アジアや東南アジアでは、輸出を指向した工業が発展している。次の図2は、アジアのいくつかの国におけるテレビの輸出額の推移を示したものであり、①〜④は、シンガポール、タイ、中国(*)、マレーシアのいずれかである。シンガポールに該当するものを、図2中の①〜④のうちから一つ選べ。(2007年度地理B追試験)

(*)台湾、ホンコンを含まない。

 


この問題、僕は現在(2003年)の値に目をつけ、1人当たりGNIの高いシンガポールでは労働集約型の製造業は発達していないだろうということで、④を答えにしました(実際、④が正解です)。ちなみに①が中国なのですが、1人当たりGNIが低く、安価な労働力が得られるため、デレビの生産が増え、輸出額も上がるのです。②と③はマレーシアかタイのいずれかになります(特定は不要)。

でも、もしかしたらこの解き方自体が違っていたのかも知れませんね。「現在の値」に注目するのはこうした統計問題の鉄則なのですが、東南アジアについては状況が異なるようです。東南アジア10カ国は4つのクラスに分かれます。カッコ内は1人当たりGNIです。

(最上位)シンガポール(50000)・ブルネイ(30000)

(上位)マレーシア(10000)・タイ(5000)

(下位)インドネシア(3000)・フィリピン(2500)・ベトナム(1500)

(最下位)ミャンマー・カンボジア・ラオス(いずれも1000)

ブルネイは天然ガス産出国であること、人口規模が極端に小さいことから1人当たりGNIが高いので例外的な存在ですが、工業化の順番で考えるとやはりこの地域はシンガポールが先頭を走っている。それに次いで、マレーシア、タイのグループが1990年代を中心にピークの時期を迎え、それ以降は3番手の国々が上昇し、現在最重要のグループを形成しています。

このパターンで考えると、なるほど、と思います。グラフを参照しましょう。1990年代の時点でトップだった④が、この時期にすでに工業化を成し遂げていたシンガポールとなるのです。さらに、1980年代ごろから徐々に成長し始め、1990年代に日本の電気機械メーカーが生産拠点を設けることによって、この時期に輸出額を大きく伸ばした②と③がマレーシアとタイになります。そして、1980年代の市場経済化から次第に力を蓄え始め、2000年代になってトップに躍り出た①が中国なのです。「シンガポール→マレーシア・タイ→中国」という流れが意識できていれば、よりスムーズに解ける問題となっています。最も初期の段階から工業化が進み、投資も集めていたシンガポールという国の特殊性を、より強く認識するべきでしょう。

 

 

[8]次の図4は、世界におけるいくつかの植生の面積を緯度5度ごとに示したものであり、①〜④は、常緑広葉樹林、針葉樹林、落葉広葉樹林、裸地(砂や岩など)のいずれかである。落葉広葉樹林に該当するものを、図4中の①〜④のうちから一つ選べ。(2015年度地理B追試験)

 

てっきり①が正解と思っていましたが、実は④でした。スイマセン。

樹木は、寒い方から「針葉樹」、「落葉広葉樹」、「常緑広葉樹」の順番です。赤道周辺に多い②が「常緑広葉樹」です。熱帯林を考えましょう。北半球の高緯度に集まる③が「針葉樹」です。針葉樹は冷帯林ですが、これについてはシベリアやカナダのタイガ(針葉樹の純林)を考えましょう。「冷帯気候は北半球にしかみられない」ことも非常に重要です。南半球に針葉樹が分布しないこともチェックしておいてください。

で、ここからがポイントなんですよ。最初、私は④について「裸地」と判定してしまいました。北緯20~30度、南緯20~30度は中緯度高圧帯の影響が強く、下降気流が卓越するため降水量が少なく、砂漠(裸地)となりやすいのです。ただ、よくみたら、北半球は北緯40度付近、南半球は南緯15度付近の値が最も大きく、かなりズレていますよね。この時点で気づくんやった(涙)。

北緯20~30度にジャストミートしているのはむしろ①ですよね。中緯度高圧帯の影響によって、アフリカ北部やアラビア半島などに広く乾燥地域が形成されていて、そのほとんどは砂漠になっています。なるほど、①が裸地となり、正解(落葉広葉樹)は④となります。

なお、南緯20~30度付近にもっと裸地がみられてもいいように思うのですが(オーストラリアが該当します)、アフリカや南アメリカの同緯度帯にはステップ(草原)は広がっていても、砂漠はわずかなのでこんなもんなんでしょうか。

落葉広葉樹については、例えば東日本を考えてみましょう。日本列島は、東日本が針葉樹と落葉広葉樹の混合林、西日本が照葉樹林(こちらは常緑広葉樹となります)です。東日本に落葉広葉樹林が広がっているので、なるほど、④では北緯40度付近で値が大きくなっています。他にはヨーロッパや北アメリカの温帯地域が該当します。南半球においても、南緯15度付近で値が大きいですが、アフリカ南部(ザンビアなど)が該当するのでしょう。なお南アメリカ大陸の温帯地域(アルゼンチンなど)はパンパとよばれる草原になっているので、ここには含まれていないようです。

 

(追加)世界の森林について、その構成を知っておいてください。世界全体の森林の50%は熱帯林、40%が冷帯林、そして温帯林は10%程度に過ぎません。ヨーロッパや北アメリカ、中国では耕地開発などを目的として森林が広く伐採されています。ニュージーランドも白人の入植によって森林が牧草地に変えられてしまっています。温帯の森林国はかなり少なく、日本と韓国においてのみ森林面積割合が高いことを知っておきましょう。