2011年地理A追試験解説

2011年度 地理A 追試験 [解説]                           

 

<第1問>

問1[1]①

図法の問題っていうほどでもないが、地理Bではちょっと出題されにくい問題だと思う。緯線(横の線)と経線(縦の線)との違いが問われている。

まずAから。北緯60度に沿う線である。北緯60度一周は20000kmAの両端の経度差は90度。「20000:360=a:90」と置いてみて、これよりaの値を5000kmと算出する。

さらにB。横線の長さを判定しよう。北緯30度に沿う線であるが、北緯30度一周は34000kmである。両端の経度差は60度。「34000:360=b:60」より、b=5700kmとなる。この時点でAより長くなり、Bは選択肢から消える。

次いでCCの横線は赤道と一致する。赤道一周は40000kmである。経度差が30度であるので、「40000:360=c:30」より、c=3300kmとなる。縦線であるが、これは西経120度に沿っている。経線は北極点と南極点を結ぶものだが、いずれもその長さは20000kmである。Cの縦線の両端の緯度差は60度。「20000:180=c’:60」より、c’=6700km。合計10000km

最後にD。これは西経90度に沿うもの。北端は北緯60度、南端は南緯30度。よって緯度差は90度となる。「20000:180=d:90」より、d=10000kmである。

よって①が正解。

 

問2[2]④

これも地理A特有のもの。地球が球体であることを考える。真北は北極点、真南は南極点だが、真東は決して北アメリカ大陸にはならない。表面が球体になっているのだから、それに沿って真東に進んでいけば、その延長線は南アメリカに達する。④が正解。

 

問3[3]③

大地形に関する問題。特定の山脈名が問われていないことに注意。センター試験の出題パターン。

カはヨーロッパ南部を横断する山脈。ヨーロッパの地形は「北低南高」であり、北部に(標高の低い)古期造山帯、南部に(標高の高い)新期造山帯がみられる。カの山脈も新期造山帯である。ちなみにこれはアルプス山脈。

キはオーストラリアの山脈。オーストラリア大陸は新期造山帯には含まれず、山脈はいずれも標高の低い古期造山帯。

 

問4[4]③

こうして語句だけが問われるパターンは、地理B本試験でもみられなくはないので注意。

誤りは「モレーン」。モレーンは氷河地形。大陸氷河の末端に土砂が堆積し形成された小さな丘陵状の地形。

二酸化炭素を含んだ水が石灰岩を溶かすことによってできるのは、ドリーネと呼ばれる凹地。なお、ドリーネという名称がセンターに登場した例は無い。

①;自然堤防も後背湿地も氾濫原に見られる微地形(ごく小規模な地形)。氾濫原というのは河川中下流に広がる低平な地形で、河川は蛇行し、水田が広くみられる。ここにみられる微地形として「自然堤防」と「後背湿地」をぜひ知っておこう。自然堤防は、河川に沿ってみられる列状の微高地であり、排水性がいいため、この上に集落が立地することが多い。後背湿地とは、文字通り、自然堤防の背後に広がる湿地であり、水田として利用される。

②;扇状地は緩斜面。山地と平野の間に河川の堆積作用によって形成されたもの。土砂が主に砂礫であり、水はけが良い。河川も表面に水が見られない水無し川となることがある。

④;リアス式海岸は入り江の連続した複雑な海岸線。山地が沈降(あるいは海水面の上昇)によって形成。

 

問5[5]⑥

赤道直下は年間を通じて太陽の出ている時間が変わらないので気温年較差が生じない。Qがチに該当。ツとタについては緯度が近いが、ツが大陸東岸、タが大陸西岸であることがポイント。ツでは日本と同じような気候がみられるのではないか。日本は、東京が最暖月平均気温25℃、最寒月平均気温5℃。札幌が最暖月平均気温25℃、最寒月平均気温−5℃。気温年較差は比較的大きい。ゆおってPをタとする。冬季の降水量が極めて少ないが、これはシベリア高気圧の影響。とくに寒冷となる冬季には大陸内部に強い高気圧が生じる。これに対し、タがRとなる。西ヨーロッパの気候は、偏西風や暖流の影響などによって緯度に比べて穏やかな気候となる。冬季は温暖で、気温や降水量の季節的変化も少ない。

 

問6[6]②

地球の傾きを意識する問題。赤道直下の地域は年間を通じて太陽が出ている時間が同じで、気温年較差が少ない。一方、地球が地軸を傾けて公転しているため、高緯度の地域では夏は極端に昼が長くなるが、冬は極めて昼が短くなる。4地点中で最も高緯度のハで夏至と冬至の日中の時間の差が大きくなり、④に該当。次いでヒが③が該当。①と②はほぼ同じ緯度なので判定はこれだけでは困難。ここは地球の自転を意識して、より東にあるフの方が日の出、日の入りともに時刻が早いことを考えよう。②がフとなり、①がヘ。

 

問7[7]③

人口密度については2つの大陸が特徴的。一つは人口密度の高いアジア。アジアはそもそも世界人口の8分の5に当たる40億人以上の人口が集中し、その密度も高いものとなっている。①をアジアと考えていいだろう。一見するとヨーロッパの方が人口密度が高いようにも思われるが、広大なロシアもヨーロッパに含まれていることに注意。

さらに人口密度の低い大陸として考えるのがオセアニア。オセアニアで最大の規模を誇るオーストラリアの人口密度は3人/㎢に過ぎない。日本(人口密度340人/㎢)に対し、人口は⑥分の1、面積は20倍なので、人口密度は100分の1より小さくなる。④をオセアニアとする。

65歳以上人口割合(老年人口率)は、人口増加割合と反比例の関係にある。人口増加割合は、3%;アフリカ 2%;ラテンアメリカ・南アジア 1%;東アジア・アングロアメリカ(北アメリカ)・オセアニア 0%;日本・ヨーロッパ である。これより、老年人口割合の最も低い③がアフリカ、高い②がヨーロッパとなる。

 

[8]②

ずいぶん差別的な写真のような気もしますが(笑)。マはスイスでしょうか。背後に高峻な山脈(アルプス山脈は新期造山帯)が見えていますね。ミはアフリカかな。ケニアのマサイ族でしょうか。しっかし身も蓋もない写真やな(笑)。ムはイスラム教の装束でしょう。全身を覆う黒い服はチャドルというもの。厳格なイスラム国家の一つであるイラン。

 

 

<第2問>

 

問1[9]④

アは銅鉱。チリは世界最大の銅鉱産出国である。イは木材。わが国が輸入する木材の過半数は針葉樹(冷帯林)であり、カナダやロシアから供給されている。ウは石炭。オーストラリア東部の炭田は日本が開発を進めている。

 

問2[10]②

ちょっと変わった問題で戸惑ったが、オーソドックスに解いたらいいだろう。

まず自動車。わが国が世界最大の自動車輸出国であり、アメリカ合衆国が最大の輸入国であることから想像しよう。自動車の割合が高いカがアメリカ合衆国であると考えていいと思う。また、電子部品にも注目しよう。電子部品とはIC・半導体だろう。コンピュータの部品であり、これがそのまま一般消費者に販売されるものではない。日本から中国に機械組立工場がさかんに進出していることを考える。PCの生産において中国が圧倒的なシェアを誇っていることを知っておいてもいい。クが中国であり、正解は②となる。パソコンは、外側は中国産だが、中身は日本産なのです。

 

問3[11]①

人口移動については「韓国から日本へ」のベクトルを意識する。日本への入国者数が最も多いのは韓国からである。①が正解。韓国と日本は貿易関係においては決して最大の相手国ではないのにね。

②は増加率から考え、中国と判定しよう。実際、以前は登録外国人数(日本における外国人の数)は長らく韓国・朝鮮人が最大であったが(在日韓国人、在日朝鮮人が多いことを考えてみてね)、近年中国人に逆転されている。留学生が急増したから。

③はイギリス、④はタイだが、不問。

 

問4[12]④

通信料金が高くなったかどうかはよく知らないんですが、通信量が減少しているなんてことは21世紀のこの世界においてあり得なくない?

以下、覚えなくてもいいけどちょっとだけコメント。①はサイバーテロっていうやつですかね。怖いですね。②はかつてアメリカ合衆国の通信販売のコールセンターが深夜の受付用にインドに多く進出した例など。言語が同じ(英語)っていうことはそういうこともできるわけだ。③はいわゆるデジタルディバイド。高度情報化の世界において実は最も懸念されていることがこれ。「持つ者」と「持たざる者」との間で格差が広がっていく。

 

問5[13]④

Aについては増加率が高いことがポイントとなっているんだが、周辺に中国やインドなど現在経済成長率が際立って高い国と都市が並んでいる。同じく中国のペキンがこれに該当すると見ていいのではないか。

これに対し、BCは増加率はほぼ同じ水準であるが、国際旅客数の割合が大きく異なり、とくにCは100%である。いくら何でも100%っておかしくない?って考えるのだが、そもそも国の規模が小さい(都市国家である)シンガポールならばむしろ国内便がある方が不自然である。シンガポールに複数の空港が必要か。よってCをシンガポールと考える。

 

問6 [14]①

「直接投資」って地理では超重要なワードなのです。これはいわゆる銀行や株取引などの投資ではなく、海外にインフラを建設すること、具体的には工場を進出させることを直接投資というのです。これさえわかれば解けるんじゃないかな。

外国に工場が進出するのは、「経済レベルが高い国から低い国へ」である。1人当たりGNIが高い日本は、直接投資を行う方であり、受ける側ではない。「国外>国内」であるはず。1人当たりGNIの低い中国はその反対で「国外<国内」である。1990年代以降、外国からの工場を多く受け入れ、工業生産力が格段に上昇しつつある中国の状況を考えれば、シが「中国への国外からの直接投資額」とみるのは妥当と思う。Yが「国外からの直接投資額」となり、Xが「国外への直接投資額」、サが日本となり、①が正解。

 

問7[15]③

地理Bでは出題されないでしょう。これはOECD。③が正解。

 

 

<第3問>

問1 [16]①

火山の分布は重要。原則として(オーストラリアを除く)太平洋沿岸は全て火山が分布すると考えていい。

②;コロラド川は最重要。外来河川である。アメリカ合衆国の西半分は乾燥地域。

③;日本海流(黒潮)との対照で考えよう。太平洋西部の中緯度地域を北上するのが日本海流ならば、大西洋の同じ場所(つまりCの海域)をやはり北上しているのがメキシコ湾流。暖かい海水を冷たい海域へと送る暖流である。この海流が大西洋を渡り、北大西洋海流と名前を変え、西ヨーロッパの温暖な気候に影響を与える。

④;北米五大湖は氷河湖である。大陸氷河の作用によって形成された。カナダからアメリカ合衆国の北東部(五大湖周辺からニューイングランド地方)にかけての地域は、1万年前に氷河によって覆われていた。

 

問2[17]①

非常にいい問題ですね。なぜか今回の地理Aの問題は、気候に関する問題がすばらしい。

等温線を使った問題がそもそも珍しいので、ちょっと慣れないと厳しいかもしれない。まず西岸から判定していこう。イに注目。沿岸部と内陸部がはっきりと分けられている。沿岸部の方が気温が高く、内陸部の方が気温が低くなっていることを読み取れるだろうか。これは太陽からの受熱量の少ない冬の等温線のパターン。内陸部は極めて寒冷となるが、沿岸部は比較的温暖である。よってイが1月の平均気温0℃である。アが夏の等温線となるのだが、こちらは沿岸部の気温が低く、内陸部が高くなっている。

カとキの判定をしてみよう、こちらはアとイほどの湾曲の仕方に差があるわけでなく、判定が難しい。ここは一つのポイントとして五大湖に注目してみよう。北米五大湖は水上交通の要衝として重要度が高かったが、欠点の一つに冬季に凍結するということがある。五大湖周辺は時にスノーベルトあるいはフロストベルトとも呼ばれているが、これも五大湖が凍結したり周辺が豪雪地帯であることに由来している。五大湖最南部の都市シカゴの気温は北海道の札幌と同じである(1月の平均気温−5℃)。本図には五大湖全体やシカゴは描かれていないが、おおよそその位置は想像できるだろう。カが1月0℃の等温線ではちょっとおかしい。カが7月20℃の等温線となり、キが1月0℃となる。

 

問3[18]⑥

サは草原に疎林が見られる。温帯草原のプレーリーが広がるM。スはサボテンだね。これは砂漠でしょう。中緯度高圧帯の影響によって年間を通じて乾燥した気候がみられるメキシコ中部のL。スは針葉樹林(タイガ)が広がっている。冷帯のK

 

問4[19]②

チの位置はさすがに春小麦地帯からは外れているかな。春小麦地帯は、ウィニペグ(北緯50°、西経100°に位置するカナダ南部の都市)を中心としたエリア。

①;アラスカ州の北極海沿岸に油田があることを知っておこう。③;アメリカ合衆国の西半分は乾燥気候。年降水量500mmに沿って肥沃な土壌(プレーリー土)が広がる。センターピボット農法による灌漑農業が行われ、穀物な綿花などの栽培がみられるが、地下水のくみ上げ過ぎによる地盤沈下も生じている。④;フロリダ半島。オレンジなど果樹を栽培する園芸農業地域である。

 

問5[20]①

民族宗教の鉄板問題。南北アメリカ大陸の先住民はモンゴロイド(黄色人種)である。①が誤り。

 

問6[21]②

いろんな解法があるような気がするなぁ。農業区分で考えてみようか。乳製品を生産する農業形態は酪農。ヨーロッパではバルト海や北海周辺の北欧諸国(デンマークなど)で酪農が見られるように、大陸氷河によって肥沃な土壌が大きく削り取られてしまった地域と酪農地域は一致する。北アメリカでぜひ知っておいて欲しいのは、北米五大湖が氷河湖であるということ。大陸氷河の侵食作用などによって形成された湖であり、五大湖からニューイングランド地方(アメリカ合衆国の北東部)は酪農地帯となっている。ここの値が大きいQが乳製品。

Pについては、最大の値を示す州こそテキサス州であるが、全体としてみると南東部(この地域は「南部」と言われている)の値が大きいことに気づく。かつてアフリカの奴隷海岸から多くの黒人が運び込まれ、この地域のプランテーションで綿花を栽培していたことを考えよう。Pが綿花となる。

残ったRが肉牛。これは消去法でいいんじゃないかな。肉牛の放牧地帯は西部の乾燥地域だが(ホイットルセー農牧業区分の企業的牧畜地域)、ここは粗放的な牧畜が行われており牛の密度が低いため、実数を示した今回の統計地図では表されにくい。さらに現在は全米各地にフィードロット(成牛を肥育する比較的面積の小さな牧場)が設けられており、肉牛の分布にそこまではっきりとした傾向があるわけでもない。

なお、肉牛飼育頭数と綿花生産量はいずれもテキサス州が全米1位であるが、今回はこのデータは考えない方がいいかも知れないね。

 

問7[22]③

ナはカナダのメイプルシロップ、二はアメリカ合衆国のポップコーン(トウモロコシ)、スはメキシコのトルティーヤ(トウモロコシ)。

 

 

<第4問>

 

問1[23]③

①;悲しいけれど、民族紛争がキーワードとなる国として君たちはナイジェリアを絶対に知っておくべき。

②;OPEC諸国を考えよう。サウジアラビアなど。

③;南アメリカ大陸は石炭の産出が少ない地域である。石炭は古期造山帯に多く埋蔵されているのだが、南アメリカ大陸は新期造山帯と安定陸塊で、古期造山帯は見られない。

④;ノルウェーやロシアは化石燃料の輸出国だが、それ以外のほとんどの国はそうじゃないよね。

つか、そもそも石炭の輸出に依存した経済を持つ国ってあるか?世界最大の石炭輸出国オーストラリアは、たしかに最大の輸出品目も石炭ではあるが、だからといって石炭だけに依存しているようにも思えないが。

 

問2[24]②

1人当たりGNI(1人当たりGDP)と同義。1人当たりGNIの低い国は人口増加率(自然増加率)が高い。アフリカなど考えてみよう。

④が引っかかるとは思うんだが。1人当たりGNIが3万ドル以上の国を見てみると、全体的に○の方が×よりも高く、すなわち「出生率>死亡率」なので、自然増加もプラスである。

 

問3[25]

1人当たりGNIの高い国(つまり先進国)では、穀物が飼料として消費される割合が高い。アメリカ合衆国における牛の肥育の様子(フィードロット)を想像するといいだろう。Aを先進地域であるヨーロッパと考えていいだろう。

アジアとアフリカの判定は、穀物の1人1日当たり供給栄養量から考えるしかない。ちなみに既にCはヨーロッパとわかっているが、これは穀物以外の品目(とくに肉類や油脂など)が多いので、他地域に比べ穀物の値が低くなっている。CBと比較する。穀物の量の多い少ないは、他の品目とのバランスもあるので、単純に経済レベルと結びつけるわけにはいかない。ここでは具体的にどんな穀物を主食としているかがポイントとなる。

 

[26]③

地理B[26]と同じ。

 

[27]②

西アジア(とくにペルシャ湾[サウジアラビアとイランの間の海域])から日本に向かって汚染がみられる。原油を運ぶタンカーが日本に達する航路に沿う。

 

[28]②

地理B[27]と同じ。

 

[29]②

これ、難しくない?地理Bでは出ないパターンだからいいけど。①は先進国ではなく、発展途上国に人材を派遣していると思うよ。これ、青年海外協力隊でしょ。③は、たしかPKOには参加していたような。実戦ではなく、後方支援とかそんな形で。④も、ODAはたしかに政府開発援助だけれども、難民の受け入れとは関係なくない?発展途上国の開発のために資金を援助することでしょ。

 

[30]④

地理B[30]と同じ。

 

[31]②

地理B[31]と同じ。

 

[32]②

地理B[32]と同じ。

 

[33]②

地理B[33]と同じ。

 

[34]③

地理B[34]と同じ。

 

[35]②

地理B[35]と同じ。