2013年度地理B本試験[第2問]解説改定

<2013年度地理B本試験第2問問1>

 

[インプレッション]

第1次産業人口割合は非常に重要。それ一発で解くべき問題なのです。第1次産業とは主に農業のことであるが、収益性は低い。第1次産業人口割合が高い国は国民の平均所得が低く(1人当たりGNIが低い)、同じく低い国は平均所得が高い(1人当たりGNIが高い)。先進国で低く、発展途上国で高い指標と考えればいいだろう。ただし、かなりの例外があるわけですが。。。

 

[解法]

三角グラフの読み方はいいかな。3つの指標を合計して100となるものを表す時に使用するグラフであり、例えばAの2000年の値は「第1次産業;50%、第2次産業;22%、第3次産業28%」となる。とくに重要なのは第1次産業の値で、点から真横(底辺に垂直に左の方向に)直線を引いて、そこの値を読み取るという訓練をしておこう。

なぜ産業別就業人口において第1次産業就業人口が大切かといえば、それは1人当たりGNIの値との相関性が最も高いから。原則として1人当たりGNIと第1次産業就業人口割合は反比例する。1人当たりGNIの低い中国で第1次産業就業人口割合は最も高くなり、Aが該当する。

 

残った2つについてはいずれも1人当たりGNIが極めて高い2か国であるので迷う。よってここは例外的な事項をきちんと覚えて、それを利用していこう。たしかに先進国(つまり1人当たりGNIが高い国)は第1次産業就業人口割合が低い。しかしそういった国々の中でも明確な違いがあるのだ。例えばヨーロッパにおいては「北低南高」。農業が合理化されているイギリスにおいてはその値は約1%であるのに対し、古代の土地制度に由来する大土地所有制度が残っているイタリアにおいては約4%という高率となる。

アメリカ合衆国と日本においても同様の関係がある。「企業的」な農業が行われているアメリカ合衆国では作業の省力化も進み、第1次産業就業人口割合は1%台と低い。一方、「家族中心の零細経営的」な農業の日本では高齢者を中心に農業人口は相対的に多く、第1次産業就業人口割合も約4%である。BとC、それぞれの2000年の値に注目し、Bが日本、Cがアメリカ合衆国である。

 

[ひとこと]

先進国の第1次産業就業人口割合は数値として知っておく。

 

 

<2013年度地理B本試験第2問問2>

[インプレッション]

「1人当たりGNIが高い=金融業が発達」一発で解くしかない問題なんだわ。その思い切りがキミにはできるか!?

 

[解法]

スイスが登場している。スイスってどんな国だ?アルプス山脈があって、観光業が発達している。だから「観光」の値が高い2が正解!

 

っていう考え方も、たしかにあるにはあるんだわ。でもこれは、センター地理の問題としては間違っている。センター地理において国を定義する要素は、まず2つ。それは「人口」と「1人当たりGNI」。本問の場合は人口は関係ないと思う。よって1人当たりGNIを中心に考える。スイスは1人当たりGNIが際立って高い国の一つであり、とくに金融業が発達する。国民の平均所得が高く、金融機関がお金を集めやすい。金融機関がお金を貸し付けたときに当然利子が生じるわけだが、物価が高い分だけ、利子の金額も高くなる(100万円の1%は1万円だが、1000万円の1%は10万円である)。スイスにはこのような理由で銀行が多く集まり、「金融」の割合が高い2が正解となる。

 

ちなみにアラブ首長国連邦も1人当たりGNIが高い国であるが、こちらは原油の輸出量が多いだとか、人口が少ないだとか、特殊な要因によって1人当たりGNIが高くなっているだけ。スイスのような純粋な先進国というわけではなく、こちらは金融業に関しては特別なものはないだろう。それより、オイルマネーを生かしての国民福祉が充実しており(外国からの出稼ぎ労働者については冷たいけどね)公務員の割合が高い1をアラブ首長国と考えていいだろう。

 

以上、解説は納得してくれただろうか。3を答えにしてしまった人が多いんやと思う。

「スイス=美しい光景=観光が発達」っていうセオリーをAとする。

「スイス=1人当たりGNIが高い=金融業が発達」っていうセオリーをBとする。

このどちらもそれなりに納得できることなんだよね。でも正解はBのセオリーに基づいた3となるわけだ。学問としての地理、教科書の内容に基づいた地理、世間一般のイメージから派生した地理など、いろいろな地理がこの世界には存在するが、君たちが優先するのは「受験科目としてのセンター地理」であり、そこでは1人当たりGNIの考え方が徹底して尊重される。とにかく迷ったら、1人当たりGNIと関連する事項を選び、その考え方に従って解答まで辿り着け。

 

話が前後したが、フィリピンは4に該当する。おおまかに、1人当たりGNIの高低と第3次産業人口割合の高低は比例し、この値が50.3%に過ぎない4は一つだけ1人当たりGNIが低いフィリピンであると考える。フィリピンの1人当たりGNIは約2000ドル。消去法で残った3がデンマーク。

 

[ひとこと]

とにかく1人当たりGNI!

 

 

<2013年度地理B本試験第2問問3>

 

[インプレッション]

ベタな問題。模試で作る場合には、図を描くのは結構しんどいんだが、問題を作ること自体は簡単。オーソドックスな問題も入れておかないとね。

 

[解法]

パルプが重要。針葉樹(軟木であり加工しやすい)資源の豊富な北欧で成立する。原料立地型工業である点に注意しよう。フィンランド、スウェーデンで値の大きいイがパルプ。綿織物については、素材としての綿布が生産される綿花栽培国(*)や、衣服の縫製がなされる低賃金国を考えればいい。中国やインドの値が大きいアが該当。

工作機械については日本が世界的な生産国である。ウが該当。工作機械とは工場内で作業するロボットアーム、ベルトコンベアなどのことで、これは21世紀の現在でも日本が圧倒的な技術力生産力を持っている。

(*)綿花の生産ランキング上位国は、中国、インド、パキスタン、アメリカ合衆国、ブラジル。ウズベキスタンなど。ロシアは旧ソ連構成国であったウズベキスタンから綿花を輸入しているのだろう。

 

[ひとこと]

世界の工場はたしかに中国に集まるのかもしれないけれど、その工場そのものを作っているのは日本の技術なのです。

 

 

<2013年度地理B本試験第2問問4>

 

[インプレッション]

今回の試験のクライマックスの一つとしてみていいでしょう。このように割合と実数が混在している問題は要注意!しかも国に注目してみると、経済レベルの低いメキシコを除く3カ国について、人口が500万人のフィンランド、5000万人の韓国、3億人のアメリカ合衆国というように、明らかな国の大きさの差異がある。これを利用して解かない手はないぞ。っていうか、これを利用しないと解けません。

 

[解法]

国を考える場合には、「人口」と「1人当たりGNI」が最優先であることは繰り返し述べていると思う。まず4カ国を並べてみて、メキシコだけ1人当たりGNIが低いことがわかるだろう(っていうか知っておかないとダメだよ)。このような「発展途上国」では研究開発などは遅れているだろうから、その費用の割合も低いはず。「GDPに占める研究開発費の割合」を比べる。なるほど、他の3つはいずれも同じレベルであるのに、際立って低い値に留まっているものが一つある。4をメキシコとみていいんじゃないかな。

 

で、ここからは人口で考える。というか「実数」と言った方がいいかな。なぜなら「電気機械産業の研究開発費」と「バイオ技術に関する特許権数」はいずれも実数になっているから。規模の大きな国で、これらの値が大きくなると思うのは、当然だよね。

 

とくに、人口と1人当たりGNIに積を「GNI」という。それぞれの国について人口と1人当たりGNIを知っておけということは、要するにGNIの大きさについてもイメージを持っておけということ。GNIとは「お金」のこと。その国全体にどれくらいのお金が存在しているが、その目安がGNIである。単位は『ドル』。

 

人口はフィンランドが500万人に満たず(北欧の国は人口規模が小さい)、韓国が5000万人弱、アメリカ合衆国は3億人以上。ケタが違う。

 

1人当たりGNIは韓国が約20000ドルであるが、フィンランドやアメリカ合衆国は40000ドルに達する。人口順でいえば「フィンランド<韓国<アメリカ合衆国」、GNI順でいっても「フィンランド<韓国<アメリカ合衆国」.要するに「大国」アメリカ合衆国、「中堅国」韓国、「小国」フィンランドなのである。

この「ケタが違う」というのが比喩でも何でもなく、そのまんま真実だからおもしろい。「電気機械産業の研究開発費」は1だけ2ケタで、2と3が3ケタ(その中でも2<3だが)であるし、「バイオ技術に関する特許権数」に至っては、1が2ケタ、2が3ケタ、4が4ケタと明らかな違いがある。これをそのまま国の大きさに当てはめてしまっていいと思うよ。1がフィンランド、2が韓国、3がアメリカ合衆国。

 

[ひとこと]

割合と実数に気をつけろ!

 

 

<2013年度地理B本試験第2問問5>

 

[インプレッション]

年代の変化が問われている点が目新しいが、1960年のデータは無視してしまっていいと思う。センター地理においては「最新のデータ」に注目することが大切。

21世紀の日本の工業において中心となっているのは長野県。長野県の特性に注目できれば解ける!これ、冬期講習でも強調してるはず。

 

[解法]

2000年の図だけ見よう。「出版・印刷業」は日本の文化・情報の中心である東京都で発達。クが出版・印刷業。

さらにキにおいては長野県が、カやクに比べて高い値となっている。長野県は比較的古い時期より精密機械工業が発達し(*)、日本で最高水準の熟練労働力が得られる重要な地域。現在はその高い技術を生かしたコンピュータ産業などが発達。「電気機械器具製造業」がキに該当する。

食品は大消費地である東京圏や大阪圏の他、原材料が豊富な北海道や九州でも発達。カが該当。

 

[ひとこと]

長野県のコンピュータ産業を強調しておこう。

 

 

<2013年度地理B本試験第2問問6>

 

[インプレッション]

グラフの読解がかなりややこしい感じ。一生懸命読解してほしい。とはいえ、一旦読み取れたとしても、そこからどこに着目していくかで解答者(つまり君たちね)のセンスが問われてしまう。解けない問題ではないのだが、難問には違いない。

 

[解法]

グラフがちょっと読み取りにくいから、平均値を出してしまいましょうか。

 

 

 

県庁所在都市集中度

全従業者に占める割合

60%

3%

10%

2%

30%

22%

20%

18%

 

ざっとこんなもんかな。おっと、この時点で上の表の意味が全くわからないキミ、もうこの問題は飛ばしてください(笑)。このように手間がかかる問題に時間を費やすならば、他の問題を解いた方がいいよ。自分の手に負える問題か否か、を即時に判断する能力もすごく大切です。

 

さて、ここから。まず農林漁業はわかるんじゃないかな。これは第1次産業のこと。わが国の第1次産業人口割合は約4%。値の小さな1と2が農林漁業の候補。ただし、このような産業は農村や漁村など人口過疎地域において主に成立するもの。決して都市部ではない。県庁所在都市はその県において最大規模の都市である場合が多く、農林漁業が県庁所在都市に集まるわけはない。2を農林漁業とする。

さらに、「全従業者に占める割合」に注目していく。製造業は第2次産業である。第2次産業には、工業(製造業・建設業)、鉱業があるが、現在の日本には鉱業労働者はほとんどおらず、実質的に工業に限定されると考えていい。日本の第2次産業就業人口割合は約30%。製造業従事者の方が多く、建設業は少数派。製造業が20%、建設業が10%というぐらいに考えてみていいんじゃないかな。

さらに卸売・小売業であるが、これはサービス業と並んで、現在の日本で最も従業者の多い業種。例えばアルバイトすることを考えてみてもいいんだけど、コンビニの店員とかデパートの売り子とかをする人が多いわけじゃない?「商品を販売する仕事」に関わる人々の多さは想像できると思う。

この2つの業種は間違いなく、従業者割合が高い。まさか農林漁業なみの数%ということはないだろう。いずれも20%に近い3と4は卸売・小売業、製造業のいずれかになる(*)。

残ったⅠが情報通信業。なるほど、県庁所在都市のような地域における中心的な都市に集まっているのも何となく納得できる。情報や文化の中心になっているのだろう。

(*)3と4は不問だが、3が卸売・小売業で4が製造業かな。3大都市や地方中枢都市に集中しやすい卸売業はともかく。小売業は日本全体まんべんなく広がるものであり、都道府県ごとの差異は小さいはず。どの都道府県においてもおおよそ20%程度がこの業種に就いている。それに対し工業は差が大きい。例えば日本最大の製造品出荷額を誇る愛知県と、製造業がほとんどみられない沖縄県とでは、その従事者の割合に大きな差が生じるはず。都道府県ごとのばらつきが大きい4を製造業とみるのは妥当だろう。

 

 

[ひとこと]

具体的な数字にこだわれ!