2012年度地理B本試験[第4問]解説

<第4問>

 

問1 [ファーストインプレッション]先住民の生活か。イヌイットやアメリカインディアンのことを考えなくてはいけない。気候や農作物、水産物など自然条件を考えて解いていこう。いけるかな?

[解法]①サケやニシン。いずれも寒冷な水域で漁獲されるものである。内陸部のAは不適なので、Bが該当すると考えていい。たしかにアラスカ沿岸などはサケ漁が現在でもさかん。

②決定的なキーワードは「日干しレンガ」。天火で乾かしただけのもので、火で焼き固めたものではない。湿潤地域ではありえない。乾燥地域のDが該当。

③「草原」が気になるんだよなぁ。アメリカ合衆国の中央には現在でもプレーリーという草原が広がっている。これでいいと思う。Cに該当。これが正解。

[今後の学習]大事な言葉は「ニシン」、「日干しレンガ」、「草原」。ニシンは寒海魚の代表。日本近海でも北洋漁場での漁獲が多く、ここを支配しているロシアから主に輸入している。日干しレンガは乾燥地域のキーワード。西アジアや北アフリカで登場する頻度が多いかな。「草原」は半乾燥のステップ地域。年降水量は500mm程度で、森林は生育しないが、草は十分に生える。腐植に富み、肥沃な土壌を利用して小麦が栽培されることが多い(企業的穀物農業)。

 

問2 [ファーストインプレッション]地理Aで同じような問題があった。本当に地理Aだよね、今回の試験。

[解法]ポイントはたった一つ、ニューオーリンズ。メキシコ湾沿岸に▲が一つだけある。これがミシシッピ川河口三角州に港を有する都市、ニューオーリンズ。元々はフランス人によって開かれた都市であるが、やがてイギリスの植民地となり、綿花栽培のための黒人奴隷が多く運び込まれた。最初の名前は「ノヴァオルレアン」で、ノヴァとは新しいという意味、オルレアンとはフランスの都市(百年戦争でジャンヌダルクがオルレアンの少女と呼ばれていたことは有名ですね)。▲をフランスと考える。なるほど現在でもフランス誤が使用されているカナダ東部にはフランス語に由来する地名が多く残されている。

ロシアの地名はよくわからないが、あるとすればアラスカなど北部だろう。一方、スペイン語はメキシコに接する地域か。メキシコはスペインに植民地支配された国である。

[今後の学習]カナダ東部ケペック州にも注目してほしいが、やっぱりここはニューオーリンズかな。フランス人が建設した都市、ミシシッピ川の河口三角州、綿花の積出港だった、この都市を含むルイジアナ州は黒人の割合が高い、など出題ネタには事欠かない。近年は「石炭の積出港である」という間違い選択肢としても取り上げられた。メキシコ湾沿岸は油田やガス田が多く、ニューオーリンズは原油や天然ガスの積出港であると同時に、石油精製工業も発達している。

 

問3 [ファーストインプレッション]これも地理A的なんじゃない?たしかに地理B追試験で一回ワスプに関する問題は出題されているんだが。

[解法]ワスプ。WASP。ホワイト・アングロサクソン・プロテスタントの略で、アメリカ合衆国のエリート層を占める人々。何気にアメリカって階級社会だよね。ホワイトは白人、アングロサクソンはイギリス系、プロテスタントはキリスト教の宗派。そもそもイギリス人は白人だし、プロテスタントが多いので、結局イギリス系ってことなんですけどね。独立以前よりさかんに入植し、独立後のアメリカ合衆国において支配的な立場を占め、それが現在にも続いている。大統領は3人を除いて全部ワスプであるのは有名な話。ケネディ、レーガンがアイルランド系のカトリック、オバマがケニア人とのハーフ。政治家に多いことから、高学歴が多いと考えていいと思う。①がワスプに該当。他は不問。

[今後の学習]ワスプは知っておきましょうか。イギリス系が偉そうにしている。同じ白人でもイタリア系のような南ヨーロッパ系はちょっと地位が低い。なお、経済的にはユダヤ系(イスラエルの主要民族ですね)が幅を効かせているものの、政治の分野ではそうでもない。

 

[スイマセン、間違えました(涙)。再解説です]

これは完全に間違えた問題です(涙)。正直、今だにピンと来ない。この問題のポイントっておそらく「農林水産業の従事者」だよね。移民は原則として、雇用と高賃金を求め都市に流入よね。第2次産業や第3次産業に就業することが主であり、相対的に第1次産業の従事者は少なくなる。なるほど、「0.2」と「0.3」の①と③が移民となり、残った②と④が旧来の「アメリカ人」である。旧来のアメリカ人とは、独立当初からこの国を形作ってきた、ヨーリッパからの移民や黒人奴隷の子孫たちである。ヨーロッパ系とアフリカ系が②と④に該当するのです。

①と③が移民すなわち、華僑(中国からの移民)やその子孫を中心とした「アジア系」、あるいはメキシコからの移住者およびその子孫を中心とした「ヒスパニック」に該当。この2つの判定については、シンプルに「大学院博士号以上の取得者」でいいと思う。華僑(中国からの移民)は移住当時は貧しかったが、商業などで財を成した者も多く、高所得者であるだけ学歴も全体的に高いとみていいだろう。また、近年は富裕層の移住者も増加しているだけでなく、そもそも留学生としてアメリカ合衆国へとやってきて、そのまま永住する人もいるのでは。①を「アジア系」と判定し、残った③が「ヒスパニック」である。

このように後から考えてみれば、確固とした理由をつけることができるのだけれども、実際に試験で出題された場合、ここまで考えを深めて解答できるかっていうこと。難問だわな〜。

 

問4 [ファーストインプレッション]なぜ、大豆が!?先にも述べたけど、大豆ってセンターでほとんど出題例がないんですよ。それに、そもそも大豆とトウモロコシって栽培地域が重なっている(生産上位国もほとんど同じ)なので、違いが明瞭じゃない。どうやって解けっていうねん!?

[解法]これ、マジで難しい予感。心して解かねば。まず米だよね。日本で主食となっている。日本の値が高い①を米とみていいと思う。キューバでも高いのが謎なんだが、とりあえず無視で。さらにトウモロコシ。「メキシコ=トルティーヤ=トウモロコシ」っていうのいは常識?メキシコだけが突出しちえる③がトウモロコシ。

さぁ、ここからだ。トウモロコシも大豆もアメリカ合衆国が(ダントツの)世界最大の生産国。どうやって2つを区別していく?①と②を比べてみよう。アメリカ合衆国で両方とも高いのは当然。キューバはよくわからん。メキシコもどうかな。日本で、①の方が③の3倍という極端な差があることだけが手がかり。で、ここで僕は思うわけですよ。大豆はよくわからないが、日本国内において最も消費量が多い穀物は実はトウモロコシなのだ。カロリーが米に比べて低いので、この表においては数値は米よりは小さくなっているものの、でも、量において大きいトウモロコシがわずか「113」って考えにくくない?しかも単純に、大豆油って何につかうかよくわからないじゃない?それに比べれば、トウモロコシは家畜の飼料として、肉食が増えてきた日本においてもその重要性はかなり高くなっているよね。ここは数値の大きさに注目して、①をトウモロコシとする。これでどうだ!

[今後の学習]正直よくわかりません(苦笑)。ま、メキシコのトウモロコシは以前にも出題されているし、知っておきましょうか。

 

問5 [ファーストインプレッション]おっと、見るだけ問題かな。多少の知識は必要だろうけど、ハードルは低いでしょう。

[解法]①「大規模な製造業」はピッツバーグの鉄鋼業やデトロイトの自動車工業。「農産物取引市場」はシカゴ。五大湖最南のミシガン湖の南岸に接する都市。あれ、他の問題でもシカゴが登場していたぞ。

②「山地」の存在がポイントかな。たしかにロッキー山脈など山岳地域ではあるね。

③農業の総生産学が最低位?では他に農業生産が少ないところを考える。例えば、北東部なんかどうかな。大陸氷河に表土を削られ、土俵は肥沃ではない。酪農地域になっている場所もあるが、それでも精算額は多いものではないだろう。とくにニューイングランド地方などそもそも規模が小さい州が多く(ボストンの辺りね。小さい州が多いでしょ)、農業生産額がそれぞれ多いとは思えないのだが。これを誤文としましょう。

④北東部の1500億ドルを越える州はニューヨーク州。世界都市とは当然ニューヨーク。

[今後の学習]あれ、意外と難しかったな。正解率は低かったんじゃないかな。アメリカ合衆国の州についてはカリフォルニア州、テキサス州、フロリダ州を絶対に知っておかなくてはいけないのだが、意外と北部の州は問題にならなかった。しかしここではニューヨーク州が登場しているのが珍しい。ちょっと確認しておきましょうか。

ちなみにピッツバーグはペンシルベニア州、デトロイトはミシガン州。他の問題でも登場しているし、「農業都市」イリノイ州のシカゴをよかったら確認しておこうか。

 

問6 [ファーストインプレッション]貿易の問題。本来ならこれに関するネタがもっとあってもいいと思うんだが。本問にしても貿易品目じゃなくて相手国だもんね。しかもどっちかというと中国がメインテーマのような気がする。

[解法]絶対にポイントはNなんですよ。1987年に圏外だったのに、2009年に一気に1位に躍り出た。これは間違いなく中国でしょう。逆に1987年にカナダの上にいるのに、2009年にはランクダウン。1980年だの貿易摩擦を考えてみよう。日本からさかんに自動車が輸出されたことによって、アメリカ政府が貿易制限を実施したほど。Kが日本と考えていい。

そしてLがメキシコ。原則として貿易額はGNIに比例するので、メキシコのようなGNIが大きくない国は貿易額も小さい。日本や中国はもちろん、先進国であるカナダより貿易額が大きいはずがない。ただし、それでもメキシコがMではなく、あくまでLになる理由はやはりNAFTAの存在。NAFTAとは北アメリカ自由貿易協定のことで、アメリカ合衆国を中心にカナダとメキシコの3カ国間で自由貿易が実現している。これにより、北アメリカ大陸のこの3つの国の経済的なつながりが強固なものになっている。っていうか、2009年にはメキシコからの輸入額が日本を越えているんだね!何度もいうけど、貿易はGNIに比例する。日本は世界2位の巨大なGNIを有する国である。それがこんな「小国」の後塵を排しているとは。すでに日本はアメリカ合衆国にとって重要なパートナーではないのだろう。

Mはイギリス。強いNAFTAの結び付きの背後で、ヨーロッパはすでに意識の外側にあるのだ。

[今後の学習]これ、いい問題ですよね。かなり難しいんだけどね(苦笑)。今後出題が予想される部分として、中国のランクアップを確認しておこうよ。日本にとっても、そしてアメリカ合衆国にとっても、最大の輸入相手国は中国ということ。国内にメイド・イン・チャイナがあふれている。そして日本は、NAFTAの経済的連携の前に、カナダやメキシコにも及ばぬ4位に転落している。