2015年度地理B本試験[第1問]問5 解説
問5 [インプレッション] これ、今回最も驚いた問題の一つ。メサとビュート、それからタワーカルスト。これ、全部センター初登場なんですよ。そもそもあまり一般的な地理ネタでもないので、厳しかったかな。とはいえ、カタカナ言葉が問われているわけではない。文章をしっかり読んで、思考問題として解くことは十分に可能だと思う。
[解法] 文章を精読。「地点X(アメリカ合衆国西部)には、テーブル状や塔状の地形がみられる」。なるほど、砂漠(植生なし)の中にいくつかそういった突起物がみられるのが写真Xだ。「それらの垂直な壁」。なるほど、縦に切り立った岩壁がある。で、それらは「その直下の斜面の地層に比べ」。写真中央の塔状の地形はたしかに上方が垂直の壁からなる塔状の地形、下部が斜面を有する円錐状の地形の組み合わせとなっている。で、両者を比べてみて、どちらが「侵食されやすく、どちらが侵食されにくい」のか?これは明らかなんじゃない?硬くて侵食されにくい地形だからこそ、中央に塔状の突起物が残された。それ以外の部分は軟らかいから先に削り取られてしまったのだ。ここは「侵食されにくい」でオッケイでしょう。
さらに後半。「地点Y」は中国南部かな。写真を見る限り、平坦な地形の中にいくつも塔状(写真Xにみられるように角張ってはおらず、やや丸みを帯びているが)の地形がみられる。「この地形は(キ)作用により形成された」とある。選択肢は2種類で「氷河による侵食」か「石灰岩の溶食」。ちょっと待て、そもそもアジアは氷河期にも大陸氷河はみられず、ヨーロッパのように氷河に起因する地形は少ない。あったとしても標高が極めて高い高山(山岳氷河)ぐらいであり、地点Yがそういった場所に該当するとは思えない。写真も平坦な地形が主だし。そうなると、そもそも論として「氷河」は外してしまっていいのではないだろうか。石灰岩地形が、二酸化炭素を含んだ雨水によって溶かされていくことを溶食というが、地点Yの妙な地形はそういった作用によって形成されたものなのではないか。とりあえず「氷河」をNGワードとして、「石灰岩の溶食」を正解とする。
[アフターアクション) 珍しい問題だな、と思う。これが今後の傾向になるとも思いにくいので、特別な対策は不要なんじゃないかな。一応、過去に似た形式の問題があるので、そちらを紹介しておこう。2011年度地理B追試験第1問問5より。
次の写真1中のタ〜ツは、氷河によって形成された地形を撮影したものである。下の文章はそれらの写真について説明したものであり、空欄P〜Rには、タ〜ツのいずれかが当てはまる。P〜R
とタ〜ツとの正しい組合せを、下の①〜⑥のうちから一つ選べ。
山岳地域の谷頭部が氷河に削り取られることによって(P)のような地形が形成され、これが他方向から切り合うと(Q)のような地形になる。(R)は谷底部が氷河によって削り取られた侵食地形で、これが沈水するとフィヨルドになる。
正解は以下の通り。
Pはツ。山頂付近が湾状にえぐられているのがわかるかな。山岳氷河により侵食された地形で、カール(圏谷)という。このような侵食が四方から行われることにより、中央部だけ尖った山頂が取り残される。これがホルンで、Qはチとなる、このチの写真が重要で、今回の地点Yの写真と比べて欲しい。雨水によって石灰岩が溶食された場合はYのように丸みを帯びた「塔」となるのだが、氷河の侵食による「塔」はチのように激しく切り立っている。
なおタがR。一見するとツと似ているのだが(同じ氷河による侵食地形なので似るのは当たり前なのだが)、こちらは森林も同時に撮影されており、標高が低いことがわかる。これが海に沈むとフィヨルドという峡湾となる。フィヨルドと関連した問題は第3問問1選択肢④(ベルゲン)、第4問問2選択肢④(チリ南部)でも登場。本当によく出題されるネタなのです。