たつじんオリジナル解説[2017年度地理B本試験第5問]

たつじんオリジナル解説[2017年度地理B本試験]第5問      

 

比較地誌。今回はスペインとドイツ。昨年は、本試験がインドと南アフリカ、追試験がイランとトルコ。そして今回はヨーロッパの2カ国ということで、このパターンの問題は定番化しているとみて良さそうだね。

 

問1 [ファーストインプレッション]地形と気候の問題。こういう問題って作るの大変そうやなあぁって単純に思っちゃうね(笑)

 

[解法]まず、断面図から考えよう。スペインは大きく台地地形からなる高原の国。とくに新期造山帯に含まれる地形が多く、一部では標高も高い。一方、ドイツは北部は大陸氷河に削られた平原(北ドイツ平原)であり、南部にはシュパルトバルト(黒森)のような山岳地域もあるが、古期造山帯でもあり、決して高くはない。ヨーロッパは全体として。「北で灘垢、南で急:の地形であることも意識しよう。アルプス以南は険しい地形が多く、ピレネー山脈(フランスとスペインの国境)のように新期造山帯の山岳ばかり。イタリア半島や地中海地域には火山もみられる。それに対し、ドイツ以北は平坦な地形が多く、山岳についてもスカンジナビア山脈(ノルウェー)やペニン山脈(イギリス)など古期造山帯のなだらかな山陽。アがスペイン、イがドイツとみて間違いないだろう。

さらに降水量。日本(東京)の降水量が年間1500ミリであることを考えると、Bはかなり少ない。スペインで中緯度高圧帯(亜熱帯高圧帯)の影響によって夏季少雨の地域(いわゆる地中海性気候)の地域があることを考えると、スペインでこそ全体の降水量が少ないことが想像される。Aについて、全体に(日本ほどではないが)降水量は多め。偏西風や艦隊前線の影響によって年中一定の降水がみられるドイツとみていいだろう。ドイツがA、スペインがB。

それにしても、昨年も感じたのだが、この第5問という大問、どうも今までのセンターとはちょっと色合いが違う。地図帳を見たりとか、知識に頼ったりとか、実はそういった勉強法が有効な気がする。地形についても、普段から地図帳を見ていて、「スペインは全体が茶色い(つまり瓢湖が高いってことね)、ドイツは南は茶色だが北は緑(南部で高く、北部で低い)といったようなことをビジュアルで捉えておくと解答が簡単だったんじゃないかな。降水量にしても、スペインに地中海性気候がみられることをベタ西っておいたら解答ができたと思う。地中海性気候の定義は「年間雨が少なく、とくに夏に極端に少雨となる」なので、全体の降水量も少ない。今までのセンターと雰囲気が違うのは、新テストへの布石なのか。

 

[難易度]スペインとドイツの一般的なイメージで解けると思う。★☆☆

 

[参考問題]2009年度地理B本試験第1問問3。ヨーロッパ各地の断面図。「北がなだから、南が急」というセオリーがはっきり見てとれる。標高3000メートルに達するピレネー山脈の断面図が必須。

 

 

問2[ファーストインプレッション]いわゆる栽培限界の問題だが、ライ麦は初登場。統計をしっかり抑えておけって話だね。

 

[解法]作物の栽培地域の分布が問われている。まずは栽培限界(北限)からブドウを特定しよう。ブドウの栽培限界はフランス北部のパリ盆地。これをドイツに当てはめるならば、ドイツ北部は栽培地域から外れ、ブドウ栽培がみられるのは南部だけになる。②がブドウ。

さらにオリーブの栽培限界は地中海沿岸に沿う。スペインとイタリアが主な生産国で、フランスは地中海沿岸のみ。さすがにドイツでオリーブは栽培されないだろう。ドイツにみられない④がオリーブ。

残った2つの穀物については、ライ麦がより冷涼な地域、小麦はやや温暖な地域(温暖とは言っても、あくまでライ麦と比べてっていう意味なので注意。小麦も十分に冷帯地域で栽培できるものなのだ)。ドイツ北部に多い③がライ麦、ドイツ中部やスペインで多い①が小麦。生産統計を確認しても、ドイツはたしかに世界的なライ麦生産国の一つである。

 

[難易度]ブドウの栽培限界はマスト! ★☆☆

 

[参考問題]2013年度地理B本試験第4問問3。栽培限界を意識しながら解く問題。ブドウの栽培地域が北部にまで及んでいるのがポイント。オレンジについては、スペイン南西部のバレンシア地方がとくに盛ん。

 

 

問3 [ファーストインプレッション]]これはまた変わった形式の問題だなぁ。ただ、問われている内容は決して特殊ではない。過去問を分析してセンターの「クセ」みたいなものを見抜けば、十分に解答可能。ポイントは「人口最大都市と首都」の関係であり、さらに「ドイツの東西格差」。

 

[解法]スペインとドイツの都市に関する問題。とりあえずヨーロッパの国においては(スイスを例外として)「人口最大都市=首都」というセオリーがある。スペインの人口最大都市は首都マドリード、ドイツはベルリン。

西ヨーロッパ主要5カ国の首都と位置、そして発達の度合いは必ず知っておくべきこと。以下に一覧にする。

 

国名

首都

位地

発展の度合い

イギリス

ロンドン(1000万人)

南部・港湾

商工業の中心。国内最大の貿易港。

フランス

パリ(1000万人*)

北部

商工業の中心。一極集中。

スペイン

マドリード(300万)

中央

自動車工業など発達。

イタリア

ローマ(300万人)

南部(イタリア半島中央)

観光業など発達。

ドイツ

ベルリン(300万人)

東部(旧東ドイツ)

国内の後進地域で経済レベルは低い。

(*)都市圏人口も含む。

 

ロンドンとパリは別格で世界的にみても極めて重要な都市である。マドリードとローマはさほどでもない。一方、ベルリンは極めて貧しい地域に位置する。5つの首都を3つのタイプに分けることが重要。

 

このことをふまえて問題を解いていこう。

まず都市数だが、ドイツの場合、「西部が豊か、東部が貧しい」という形になっていることが重要。たしかに首都ベルリンは東部にあるのだが、だからといって東部に産業や人口が集積しているわけではない。東西で、大都市の数に極端な差があるカをドイツと判定する。ベルリンは北東に位置し、「2」のうちの1つなのだろう。北西部に「11」もの大都市が集まっているが、これはルール地方の都市群だろう。ドイツの都市は、人口1位がベルリン、人口2位が南部のミュンヘン(本図では南東部)、人口3位が北部のハンブルク(本図では北西部)なのだが、実は人口密度が最も高いのがルール地域。一つ一つの都市は50万人クラスだが、それらの都市が多く集まり、ドイツで最も人口が多いエリアとなっている。「11」のうちの多くはルール地方の都市群だろう。本年も出題されたエッセンなどは代表例。2016年度地理B本試験では、ルール地方の都市について「コナーベーション」という言い方で登場しているが、コナーベーションつまり連接都市とは、一つ一つの都市は大きくないとしても、都市圏(通勤圏と同意)が重なり合い、一つの巨大な都市域を形成しているもの。ルール地方はその典型。

さらに日系現地法人数。そもそもドイツの方がGNI(経済規模)が大きいので、日系企業数も多いようには思うのだが、本問では上位5都市だけのデータであるし、その辺りは参考にならないだろう。

もちろんここで重要となるのは、マドリードとベルリンの違い。というか、スバリ「ベルリンとはどんな街か」の一点だけ。かつての社会主義地域である東ドイツに位置し、経済発展から取り残されている。人口規模だけは大きく、首都であるがゆえの再開発も進むが(サッカー・ワールドカップの決勝戦はベルリン。ちなみに開幕戦はミュンヘン)、工業化は進まず、東ドイツ全体も人口減少地域である。こんなベルリンに日系企業が進出してくるだろうか。人口規模最大でありながら、4位や5位の都市より数値が低い。Eがドイツに該当。

Dがスペインだが、1位のマドリード、2位のバルセロナ以外には目立った都市はない。

 

[難易度]ベルリンの特徴がわかればいけると思うんだわ。意外にサッカー好きはマドリードとバルセロナの2都市にこだわって、スペインから当てることができたかな。★★☆

 

[参考問題]2016年度地理B本試験第4問問2。デュースブルク(ルール地方西部の都市。ライン川に接し河港を有す)について「ヨーロッパでも有数の連接都市(コナベーション)を後背地にもち、外国企業や金融機関など中枢管理機能の集積がみられる」という文章で説明している。ルール地方も多くの都市が並び、コナーベーションを形成している様子を知ろう

 

 

問4[ファーストインプレッション]これ、おもしろいね。貿易をこの形で表す図はよく見るけれど、4カ国ともクローズになっているのは初めてみた。いつもは中央の国がオープンになっているんだけどね。でも解き方に気づけば、実は簡単に解けちゃう問題なんだわな。ヒントは「GNI」。

 

[解法]4カ国間の貿易の問題。4つとも国が不明である点(普通は中央の国だけ明らかになっていたりするんだが)、輸出と輸入のみ示されている点などが特徴的。

貿易品目はわからないが、貿易額だけはわかるのだ。決定的なセオリーとして「GNIと貿易額は比例する」というものがある。GNIとか経済規模のことで、その国のマーケット(市場)の大きさを表す。要するに「その国が持っているお金」の総量のこと。お金をたくさんもっているのだから、売り買いにしても思いっきりできる。つまり貿易額自体が大きくなるということ。

選択肢の4カ国をGNI順に並べる。GNIは1人当たりGNIと人口の積なので、以下に示す。

 

 

1人当たりGNI

人口

ドイツ

45000ドル/人

8000万人

フランス

45000

6000

スペイン

30000

4500

ポルトガル

25000

1000

 

どうかな? ドイツ>フランス>スペイン>ポルトガル の順が明らかだよね。ドイツやフランスがたくさんお金を持っていて、スペインやポルトガルはそうでもない。この関係がわかれば、図も簡単に解釈できる。

図参照。最も目立つのは、サとシの間の貿易額だろう。他とはケタが違う。どちらがどちらかは特定しにくいけれど、とりあえずサとシの2つがドイツかフランスのいずれかということになる。そしてその両国と、スとセとの貿易をみてみよう。サ・シとスの間の貿易額の方が、サ・シとセとの間の貿易額より大きい。GNIは、スの方が大きいだろう。スがスペイン、セがポルトガル。「困った時はGNI」で考える典型的な問題なのだ。

 

[難易度]GNIで解くっていうやり方に気づくかどうかなんやなぁ。そうしたら楽なんやけどね、そこまでがしんどいっていうか。★★★

 

[参考問題]2009年度地理B本試験第5問6。アメリカ合衆国、カナダ、メキシコの貿易の問題。GNI順がそのまま貿易額順となり、アメリカ合衆国>カナダ>メキシコ。

 

 

問5 [ファーストインプレッション]かつての宗主国と植民地の関係を問う問題なんだけれど、ちょっとした変化球になっている。このことに気づくかどうかなんだが、センター問題をたくさん解いて、感覚を身につけるってすごく大事だと思うよ。

 

[解法]わざわざ「歴史的経緯や文化の共通性」って書いてあるもんね。歴史的経緯ならば、スペインがラテンアメリカを植民地としていた歴史、文化の共通性ならば、ラテンアメリカの多くの国がスペイン語を使用していること、そういったことを考えたらいい。「南アジア」を「南アメリカ」に変えましょう。「ラテンアメリカ」でもいいけれど、メキシコやカリブ海の人々はアメリカ合衆国への移民が多いので、除外した方が無難かな。

②は必ず知っておきましょう。イギリスやフランス、スペインは多くの植民地を有し、そこからの移民を多く迎え入れたが、植民地をもたなかったドイツはそれができない。一方、トルコは植民地にならなかったため、出稼ぎ労働者が赴く先の先進国に不自由した。両国の利害が一致し、「迎え入れるドイツ、送り出すトルコ」という関係が成り立った。ドイツの戦後復興や高度経済成長の基礎となったのは、トルコ人労働力である。

③と④については、「バカンス」について理解してほしい。北部ヨーロッパは夏はかなり涼しく、長期休暇(バカンス)ととって家族で地中海沿岸地域へと旅行し、滞在する。涼しいドイツは「観光客を送り出す」側であり、地中海に面する温暖なスペインは「観光客を受け入れる」側である。

 

[難易度]これぐらいは解いてほしいなぁ。文章題ではあるけれど、「気づく」ことはできるはず。★☆☆

 

[参考問題]2010年度地理B追試験第5問問6。スペインとラテンアメリカの関係は、本問のような「スペイン視点」ではなく「ラテンアメリカ視点」で問われる方が多いかな。この問題の選択肢③では、ブラジルについて「植民地であったときの宗主国の影響から、公用語にスペイン語を用い、カトリック信者が多く、ヨーロッパに似た街並みがみられる」という誤文が登場している。誤りポイントは、もちろん「スペイン」ではなく「ポルトガル」。ブラジルはラテンアメリカ唯一のポルトガル語を公用語とする国。なお、「カトリック」は正解なので、注意してね。

 

 

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