2011年度地理B本試験[第5問]解説

第5問 現代社会の諸課題というテーマは、通常は第6問にみられたパターン。本年は第5問。とはいえたいした意味はないでしょ。そもそもこのテーマ設定自体、いろいろはジャンルからの寄せ集め。「それ以外」って感じで、統一性は薄い。

 

問1 [ファースト・インプレッション] 冷静に解けよ。目立つ部分だけに気を取られてはいけない。仮に正解にたどり着いたとしても、それは正当な解き方ではない。常に解く手順を意識しておかないと、他の多様な問題に対応できない。まず「現在の実数」て考え、それでもわからなければ「過去からの変化の割合」で考える。この手順は絶対に守る。

 

[解法] 問題を解く手順が重要となる。「実数→割合」の手順を守ること。まず最初に絶対的な数量の大小で判定する。それだけで答えが出ることも多い。ただし、もちろんそれだけではわからないこともあるので、その場合は変化の割合を考える。相対的な数値の高低である。「絶対的な数こそ絶対なのだ」という気持ちを持つべし。

 

では、現在の大陸(地域)ごとの人口について整理しよう。

 

世界全体の人口を64億人とおいて。

 

40億人・・・アジア

8億人・・・アフリカ

8億人・・・ヨーロッパ・旧ソ連

8億人・・・アメリカ

 

さらに細かく分けてみる。

 

ヨーロッパ・・・5億人

旧ソ連・・・3億人

アングロアメリカ・・・3億人

ラテンアメリカ・・・5億人

 

以上より、2000年段階で人口が3億人であるCがアングロアメリカとなる。アングロアメリカについては、「アメリカ合衆国およびカナダ」という注記もあるので、直接計算してしまってもいい。アメリカ合衆国の人口が3億人、カナダが3千万人なので、Cがアングロアメリカになるのは自明。

ただし、ここからがちょっと難しい。アフリカは8億人でいいけれど、ヨーロッパはどうしたもんか。問題はヨーロッパにロシアが入っているかどうかっていうことなんだよね。旧ソ連全体で人口は3億人。ロシアが1.5億人で半分を占めているが、他にもウクライナが5千万人、カフカス諸国や中央アジア諸国などそれ以外の国で1億人ほどの人口。これ、ヨーロッパにどれだけ含まれているのか。中央アジアはさすがにアジアだと思うので、カザフスタンやウズベキスタンはカウントされていないとは思うのだが、ロシアとかどうなんだろうね。問題文に注釈がないのだから考えようがない。つまり、ヨーロッパの実数がわからない以上、2000年段階の人口規模だけでこの2つを判定するのは不可能。

 

というわけで、実数だけで判定するにはギブアップ。ここで満を持して「割合」が登場してくる。

 

大陸(地域)別の人口増加割合について。

 

3%;アフリカ

2%;ラテンアメリカ・南アジア

1%;東アジア・アングロアメリカ・オセアニア

0%;日本・ヨーロッパ

 

おおまかに経済レベル(1人当たりGNI)に反比例している。

すでにCのアングロアメリカはわかっているので、ABについてアフリカかヨーロッパであるかを判定しよう。ポイントはもちろん人口増加率。もっとも、1700年の段階では両者とも1億人程度なので、300年という長いスパンで考えたら人口増加率も等しい。でもさすがにこんな江戸時代のデータにまで戻るのはナンセンスだね。第二次世界大戦後の1950年以降に注目すればいいと思う。経済先進地域で医療の発達によって平均寿命が伸びる一方老年人口割合も上昇し、出生率が低下して人口が停滞しているのがヨーロッパ。Bに該当。

子どもも重要な労働力と考える発展途上地域であるアフリカでは、出生率は高いまま維持されている。乳幼児死亡率も低くはないものの、それを上回る出生数であるため、人口は急増する。Aがアフリカ。2が正解である。

 

[最重要リンク] 人口を増加率ではなく、実数として捉える問題。

2004年度地理B本試第4問問1。

世界の総人口は2000年段階で60億人。よって選択肢が1と3に絞られ、まさか大きく減少している1ではないだろうので、3が正解となる。

「世界の人口は急増しているのだ」という妙な先入観があると、二次カープを描いている4を選んでしまうかもしれないが、よく考えてみれば、世界最大の人口大国中国は一人っ子政策によって人口増加率が低く抑えられ、先進国では少子高齢化で人口は停滞している。そそも急激に人口が増加しているわけはないのだ。

最優先で考えるべきは実数なのだ。

 

[ここが新しい!] 人口増加率がトラップになっている。人口増加率は、ヨーロッパで低く、新大陸であるアングロアメリカでそれなりに高い。増加率に注目してしまうと、Bをアングロアメリカ、Cとヨーロッパとしてしまう。先に目立つところに目を付けてしまう文系思考の人たちは容易にこのトラップに入り込む。だから、一見したイメージにとらわれず、冷静に数値を分析する能力を持つ理系思考こそ、この問題を解くには大事なのだ。

 

[今後の学習] とにかく実数を見るクセを。さらに具体的な数字で考えるクセを。とくに本問の場合、注釈の「アングロアメリカ=アメリカ合衆国+カナダ」に注目するだけで、Cをアングロアメリカに特定できた。統計は基本的に実数を見るものなのだ。割合は、それでもわからない場合に参考程度にするもの。受験にしたって、センター当日の得点だけが決め手になるんであって、この一年間の浪人でどれだけ点数を伸ばしたかっていう成長率なんて関係ないでしょ。割合より実数が大切だって意識は絶対に持っておいてください。

そういえば本問の説明で「北アメリカ」を「アングロアメリカ」としているけれど、まさに「アングロアメリカ=アメリカ合衆国+カナダ」なので、そのつもりで読んでくださいね。

 

 

問2 [ファースト・インプレッション] 最近ちょこちょこ供給栄養量って話題になってるよね。これについてもしっかりとした定義をしないといけないなぁ。原則として1人当たりGNIに比例するものの、日本のようなヘルシー民族は高い経済レベルにも関わらず意外とカロリーは低い、みたいなね。でも本問の場合は、穀物自給率や乳幼児死亡率の方が重要であるし、おそらくこっちだけで解けちゃうんだろうな。見た瞬間思ったことはそれです。

 

[解法] 「5歳未満児死亡率」つまり乳幼児死亡率は、1人当たりGNIに完全に反比例する。選択肢の4カ国を1人当たりGNI順に並べると、「ドイツ>韓国>サウジアラビア>インド」の順。韓国の方がサウジアラビアより高いことに注意。これは覚えておかんとどうしようもないことだけどね(苦笑)。これにより、1をドイツ、4を韓国、3をサウジアラビア、4をエチオピアとする。ただし、1と4については微妙な差なんで、他の要素からも確認しないといけない。

そこで重要になるのは「穀物自給率」。これは一般的に商業的な農業形態がみられる地域で高く(輸出しているということ)、自給的な農業形態がみられる地域で低い(輸入に依存する場合もある)。穀物といっても、小麦もトウモロコシも米もあるのでなかなか判定は難しいのだが、それでもヨーロッパが商業的な農業地域であり、アジアが自給的な農業地域であることは異論の余地がないだろう。共通農業政策が実施され農業が保護されているヨーロッパにおいては、多くの国で小麦(ヨ−ロッパで穀物といえば小麦でしょう)の自給が達成され、EU全体も輸出地域となっている。1をドイツとすると、穀物自給率が101%となり、完全自給を果たすどころか輸出余力さえある。これ、ヨーロッパの国としては納得でしょ?1はドイツでいいと思う。

逆に韓国だが、日本と同じような状況と考えていいんじゃないかな。米はさかんに作られているだろうが、小麦やトウモロコシの生産はおぼつかなく、その多くを輸入に依存している。わが国と同様に自給率が30%程度というのは納得の数字である。4を韓国と決めてしまっていい。

ちなみに1人1日当たり食料供給量は、一部の例外を除いて、1人当たりGNIに比例する。なるほど、その通りでしょ。

 

[最重要問題リンク] 韓国の1人1日当たり供給栄養量って実は2年連続で登場しているのです。

2010年度地理B追試第5問問4参照。

ここで、アメリカ合衆国、ニュージーランド、韓国、日本について、それぞれ1人1日当たり食料供給量が、3691kcal、3397kcal、3039kcal、2838kcalと示されている。韓国の値を知っておけば、そのまま解けた問題なのだ。

なお、「解法」で1人1日当たり供給栄養量と1人当たりGNIの間には原則として反比例の関係があるけど、一部の例外があるって言ったでしょ。その一部の例外って実は日本のこと。日本は世界有数の1人当たりGNIの高さを誇っている。しかし、その一方、1人1日当たり供給栄養量の値は発展途上国並みとなっている。肉や油脂を多用しない、ヘルシーな食文化は世界に誇ってもいいと思うよ。

 

[ここが新しい!] ドイツと韓国の判定って実は微妙でしょ。おそらくこの問題で決定的なデータって穀物自給率だと思う。だから、この値を、とくにヨーロッパのいくつかの国について、覚えてしまおう。

ヨーロッパは全体としては食料輸出地域なので、穀物自給率も100を越えている。でも、実際には国単位で考えてみると、穀物を輸出できる力を持った国って限られている。

主なヨーロッパの国の穀物自給率は、以下の通り。

 

フランス 173

ドイツ 101

イギリス 99

イタリア 73

スペイン 68

オランダ 24

 

ちなみに日本は28%である。

フランスが圧倒的な穀物輸出国である。ドイツやイギリスはおおよそ自給を達成していると思っていい。逆に気候が厳しい南ヨーロッパ諸国は穀物の輸入地域となっている。園芸農業のオランダは例外で、野菜や乳製品など高価格の農産物を生産・輸出している一方で、低価格の穀物は輸入に依存している。

フランスが世界的な小麦輸出国であることはよく知られていて、オランダ、スペイン(ともに2006年度地理B追試験第5問問3)やドイツ(本問)は出題されている。どうかな、次はイタリアかな。イタリアが世界有数の小麦の輸入国(ブラジルに次ぐ世界2位)っていうのを知っておいたら使えるんじゃない?

 

[今後の学習] 3つの指標が登場している。

「5歳未満児死亡率」は1人当たりGNIと密接な関係にあるので、非常に重要。

「1人1日当たり供給栄養量」は最近少しずつ出題されている。日本の値が発展途上国並みに低いことを知っておく。

「穀物自給率」はヨーロッパが重要。フランスの高さとオランダの低さは絶対に知っておく。それ以外の国についても「ここが新しい!」でまとめておいたので参照しよう。

 

 

問3 [ファースト・インプレッション] またやっかいな国が登場している。スーダン、そしてミャンマーだなんて。場所すら知らないんじゃないの?気候環境が全く異なる国なので、その辺りがヒントになるといいんだが。

 

[解法] いくら何でもマイナーすぎるでしょ。スーダンとミャンマーはいずれもセンターではほとんど見受けられない国であり、これらの判定は難しいよ。とりあえず唯一のメジャー国ロシアを特定してしまおう。

Pに注目。「1990年代の国家体制変革」、「連邦国家」でロシアでしょう。ソ連(ソビエト連邦)が崩壊して新たに生まれた15個の国のうちの一つがロシアだが、このロシアもその内部にいくつもの国を含む連邦国家である。「独立を求める民族運動」というのはチェチェン共和国などのことだろうか。チェチェンは名称こそ共和国であるが、完全な独立国ではなく、ロシア連邦の中に含まれている。イスラム教徒が多く、ロシアからの分離独立が求められている。

QRだが、これもとりあえずキーワードはあるんだが、気が付くかな。地理のキーワードについては気候や農業などの自然に関する言葉を優先して考えること。社会的条件など人間の手によっていくらでも変わるが、自然環境は変えられない。ポイントとするのは自然のキーワ−ド。

そうなると何が適当かな。Qの「干ばつ」しか考えられないのだ。他は全て社会的なキーワード。判定が難しい。

スーダンはアフリカの国だが、サハラ砂漠やサヘル地帯の東部に当たり、乾燥の度合いが高い。雨が降らないことによる干ばつの危険性と常に隣り合わせの国なのだ。Qをスーダンと考えて妥当だろう。

残ったRがミャンマー。この国は実は「軍事政権」がキーワードになる国なのだ。東南アジアの最も西部に位置するミャンマーは、軍事政権による圧政が続き、外国企業の進出も進まず、経済発展は遅れている。アウンサン・スーチー女史による自由化要求運動の高まりもあったが、そのスーチー女史が政府によって逮捕され軟禁状態になるなど、民主化は停滞している。

 

[最重要問題リンク] 「干ばつ」で行きましょう。アフリカの、とくにサヘル地域に位置する国のキーワード。2008年度地理B本試第5問問6。Mのソマリアについて「干ばつなどの災害のほか、度重なる内戦の混乱で難民が発生した。」とある。キーワードは間違いなく「干ばつ」。干ばつが他に出た例としては、エチオピアもあり、特定の地域に偏っている。スーダン、エチオピア、ソマリアの位置を確認し、干ばつがキーワードになる地域を目で覚えよう。

 

[ここが新しい!] ミャンマーはたしかに軍事政権なのだが、民主化運動もさかんであり(しかしそのほとんどは軍隊によって鎮圧されてしまう)、不安定極まりないもの。センター試験って、実はこうした「変化の可能性がある」国って原則として出題されない。いつ状況が変わるかわからない国は問題として取り上げにくいし、現代社会や政治経済、あるいは世界史(現代史)ではそういった時事問題も扱う必要性があるかもしれないが、地理でそこまでリスクを負う必要はないよね。絶対に変わらない「自然環境」を問うたらいいだけなのだから。それなのにこの問題はそのような手段を用いてはいない。あくまで「軍事政権」一発でミャンマーを当てさせようとしている。これ、結構特殊なことだと思うよ。

自然環境が入れにくかったとしても、例えば宗教についての説明を入れてもいい。第4問問6ではエチオピアの説明に「キリスト教」ってあったでしょ。ミャンマーにしても、数年前の民主化デモに際して、国内の僧侶たちが決起して立ち上がった事件があった。そういうネタも入れることができたわけで、本問のRの選択肢はちょっと意味がわからないのだ。

 

[今後の対策] 結局スーダンやらミャンマーやらの特殊な国をどうするかっていうことなんだな。普通の地理の先生ならば「地名や国名が問われるから地図帳を見るクセをつけなさい」って言うんだろうけど、そもそも地形とか国名ってそんなに出題されないからね(笑)。地図帳を見るのって実はすごくムダが多い行為なのだ。受験生として時間が限られているキミたちならば、地図帳は無視してしまった方がいいんだわ、実は。

基本は過去問。過去問に一回登場した国は再度(しかも連続して)問われる可能性が高い。チェックおいて損は無い。

ミャンマーについても2010年度地理A追試験第4問問5で登場。地理Aの追試験は手に入りにくいかもしれないけど、地理の先生から借りて、各自コピーでもしてください。ボクは持ってます。

「経済発展をめざして1990年代後半にASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟したが、民主化と経済開放が遅れているため、工業化が停滞している」とある。この時点で「グンン時政権」と関連づけて整理しておけば、2011年の本問にも対応できたはず。「前年の地理A追試→今年の地理B本試験」という流れ。ちなみに今年のこの問題は地理Aとも共通問題だったので、とくに地理Aで2年連続と考えてみると、すごくありがち。

ただし、スーダンに関しては本当に完全に初登場なのだ。これはどうしたもんか。ボクは思うんですが、これ、無視しちゃっていいと思う。今回の問題についても、ロシアとミャンマーが特定できれば十分に解ける問題だったので、スーダンについては考慮に入れなくても良かったわけでしょ。全然知らなくてオッケイ。でも、一回出題されたから今後も出題されるかもしれない、だから覚えなくてはいけないが、ポイントはどこだろう?って考えている人はいるだろう。ただ、これも全然心配しなくていい。これもノーチェックでいいと思う。東南アジアみたいに国の数が少ない地域においては、ミャンマーとかカンボジアとかマイナーな国もしっかり知っておかないといけないのだが、アフリカって50か国以上あるでしょ?だからマイナーな国は本当にマイナーだし、たしかにかつていろんな国が登場しているけれど、意外と一回だけ出題されて、それでおしまいって国もすごく多いんだわ。過去にはカメルーン、チュニジア、ソマリア(「最重要リンク」で取り上げています)、タンザニアとか結構ちょこちょこ出ているんですよ。でも彼らは一回限りの登場。とりたてて知る必要はない。本年もこのスーダンとか、ザンビアとか登場しているわけだが、本当にマイナーな国だし、どうでもいいと思う。もちろん文化とか興味深い国なので、大学に入って余裕ができたら勉強するなり実際に訪れるなりして、これらの国々のすばらしさに触れてほしいと思っているんだが、センター地理が目前に迫ったこの時期に、残念だけど彼らを顧みる時間はない。

 

 

問4 [ファースト・インプレッション] オランダ登場ですか。昨年の本試験で2問に登場していたオランダが、またしてもここで登場。同じ国が繰り返して登場する傾向が強いのがセンター地理でもあるのです。

 

[解法] ODAの問題じゃないでしょ。「ODA総額」と「GNIに対するODA総額の比率」が示されているので、GNIが計算できるわけだね。選択肢の4つの国についてGNIの規模を概算すれば解ける問題なわけです。

1~4について、GNIを計算してみましょう。

 

1;109.6(億)÷0.0039=28193(億)

2;93.6(億)÷0.0018=52000(億)

3;69.9(億)÷0.0080=8738(億)

4;44.4(億)÷0.0020=22200(億)

 

以上より、2>1>4>3 となる。

 

選択肢の4か国をGNI順に並べる。GNI=1人当たりGNI×人口 である。

選択肢の4か国はいずれも1人当たりGNIの高い先進国。

それならば、GNIの大小は、人口によって決定されることになる。

人口が最も大きい日本のGNIが最大で、2が該当。

それぞれ人口6000万人のフランスとイタリアが、日本に次ぎ、1と4に該当。

オランダは人口1500万人で、GNIも最も小さくなり、3に該当。

 

「供与額が最大となる地域」はトラップ。オランダの大きな植民地は、インドネシア。たしかにヨーロッパの国の場合、かつて植民地支配した国にODAが供与される傾向があるのだが、だからといって「東南アジア」の2を選ぶと間違う。君たちを引っ掛けようといる完全なトラップです。

 

[最重要リンク] 同じ問題です。2007年度地理B本試第5問問6。

ODAの実績とGNIに対するODAの割合からGNIを計算する問題。ただしこちらでは登場している国がアメリカ合衆国、日本、イギリス、フランスであり、この中で日本を特定する。日本はアメリカ合衆国に次ぐGNI2位の国であり、それに従って考えれば良かった。

 

[ここが新しい!] オランダのGNIが問われたっていうのが新しいね。オランダのGNIなんてわかるわけないから、人口規模から推測しないといけない。今回は他の問題でもチェコの人口が話題とされており、ヨーロッパについては主要国だけでなく、中小国の人口規模も大まかに知っておくべき。

 

[今後の学習] トラップに気をつけなくていけない。トラップに引っかからない最良の手段は「理系的思考」を持つこと。文章正誤問題ならば、気候や農業など自然環境に関するキーワードにまず注目する。問5ならキの「多くの樹種を特徴とする森林」なんていう自然環境を説明する文が含まれている。こうしたものに絶対的に注目。さらに数字に注意。とくに実数が重要。問1ならば、アメリカ合衆国とカナダの人口の合計からアングロアメリカを特定する。

本問にしてもその通りで、「供与額が最大になる地域」って単なる文章データであり、自然地理的でもないし、数値がないから漠然としている。これ、トラップの可能性が高い。

だから数値であるODA総額とGNIに対するODA

 

 

問5 [ファースト・インプレッション] 地理Aの問題みたい。本当に地理Bの問題なのか。そうだとしたら、地理B的な要素が問題を解くカギになっているはず。気候とか農業といった自然的なキーワードに注目。

 

[解法] うわっ、びっくりした。ここで登場しましたかっ。サンシャダム!長江の中流に建設された世界最大規模のダムであるサンシャダム。建造物自体は完成しているのだが、家屋の転居などに時間がかかり、貯水が進まず、未だに稼働には至らない。ただし、巨大過ぎるダムであるので、発電や治水などの「メリット」よりも、生態系の破壊や河口付近の侵食といった「デメリット」の懸念の方が大きい。

サンシャダムってちょこちょこセンターに登場していなくはなかったんだよね。でも明確な出題パターンが絞り切れない「あいまいアイテム」の筆頭だったわけだ。だって、まだ動いていないから効果も被害もないでしょ。どうやって出題するんだろ、どういう形で問われるんだろ、ってずっと頭を悩ませていたのですよ。

で、その結論なんですが、とりあえず「巨大ダムと来たら長江」で覚えておけって。もうそれしかないって。絶対に出るアイテムなんだが、その問われ方がわからない。それなら仕方ない。その存在だけ知っておけっていうこと。

そして、本問のクの文章。ここで登場したわけだ。「世界最大規模の水力発電ダム」というキラーアイテム。これが長江のサンシャダムであるのは絶対的なこと。クはFに該当。すげー、びっくりした。本当に、おそらくボクのこの興奮はキミたちには伝わらないと思うけど(笑)。

ではここで落ち着いて。残ったカとキを判定。そうすると、やっぱりあった、あった。ファースト・インプレッションで言っているように自然環境に関するワードが問題を解くカギになる。キの「多くの樹種を特徴とする森林」がまさにそれに当てはまるね。Eのスウェーデンも森林に恵まれた国であるが、この国は冷帯。冷帯林はタイガといって、ある特定の樹種だけの単純な樹相になる。これを純林という。これに対し熱帯林は、1haの中に同じ樹種は2つと存在しないと言われるほどに複雑な樹相を持つ。高さや太さが全く違う草木が入り乱れ、シダ植物や寄生植物、食虫植物に葉緑素を持たない植物まで!キがGに該当。正解は2。

 

[最重要リンク] サンシャダムに関する問題。地理Aの昔の問題で、ちょっと手に入りにくいと思うんで、引用して紹介します。本来は図もあるんだが、それは省略です。

 

2001年地理A追試験第3問問5

水鳥の生息地の自然環境を保護するために、ラムサール条約などに基づいて国際的な取組みが行われている。次の図3は、オセアニアからユーラシア大陸北東部への、水鳥の主な渡りの飛行ルートを示している。図3中のカ~ケの各地域の自然環境の特徴や環境保全上の問題について述べた文として最も適当なものを、下の1~4のうちから一つ選べ。

 

1 カ(東南アジア沿岸部)では、水鳥の中継地となるマングローブ林が工業用地やエビ養殖池の造成により激減したが、国際的な復元事業によってその面積は増加に転じた。

2 キ(中国華中地方)では、河川や湖沼、水田など野生動物の生息に適した水辺環境が保たれていたが、上流に巨大ダムが建設された結果、多くの湖沼が失われた。

3 ク(日本本州)では、水鳥の中継・越冬地となる干潟が農地や工業用地などの造成により失われたが、残された干潟の保全に対する関心が高まってきている。

4 ケ(シベリア東部)では、広大な湿原や草原が野生動物の豊かな生息地になっているが、日本の開発援助により都市建設プロジェクトが始まっている。

 

正解は3です。1が違うのはわかるでしょ?マングローブ林など熱帯林はやっぱり減少してしまっているんだよね。4も違うでしょ。「都市建設」って何よ?油田やガス田など資源の開発は行われているので、こっちの方は知っておいて。で、ポイントは2なんです。これ、どこが違うと思う?賢明な諸君はお気付きでしょう。中国の華中といえば長江で、長江のダムといえばもちろんサンシャダムなんですが、この問題が問われた2001年の段階でサンシャダムは完成していないし、その環境に与える影響も与えられていない。3だけ生き残って、これが正文となる。

 

[ここが新しい!] 最重要リンクとこの項で同じネタを挙げるっていうのは、よく考えると矛盾していることなんだけど、あえてその禁を破ってまで取り上げたいほど、サンシャダムの衝撃はでかい。

2008年度地理A追試第4問問4でもサンシャダムはとりあげられているんだが、長江の説明文として「中流域の峡谷に世界最大級の多目的ダムが建設中であり、下流域で水量が減少するなど、環境への影響が生じている」とある。そう、まだ「建設中」なんだわ。で、この時点ですでに「環境への影響」が生じているそうだが、完成して稼働を始めたら、それ以上の深刻な影響が発生するに決まっている。ホント、2012年以降どういった形で出題されるんだろうか。とにかく「長江=サンシャダム=環境への影響」だけは意識しておこう。

 

[今後の学習] サンシャダムが今後どうやって出題されるのか、ボクには予想ができません。もしかして、豊富な水力発電によって石炭大量消費という中国の問題点を解決してしまう「天使」なのかもしれない。逆に、生態系を破壊し、三角州や砂浜海岸を減少させてしまう「悪魔」なのかもしれない。次の出題機会を楽しみにしているのですが、いかようになるか!?

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