2011年度地理B本試験[第4問]解説
第4問 地誌問題はアフリカ!地理B本試においては、07年以来4年振りの登場。早いペースに驚き。それだけにネタ切れなのか、ちょっとマイナーな国まで登場しているぞ。
問1 [ファースト・インプレッション] あ、これ、苦手な問題(涙)。ちょっと前に中国で同じパターンの問題があって、すごく苦しんだ。感覚的に解いたらダメなんだろうな。理論的に解いてみよう。
[解法] 「1600m以上」っていう切り方がわかりやすいと思うんだわ。等高線を想像してみればいいんだが、ある標高より上を全部塗りつぶしたとすれば、それは閉曲線の内側を塗りつぶすことになるので、一つのまとまった塊になる。それに対し、「1100~1400m」とか「500~800m」だと、山の中腹しか色が塗られないために、真ん中の開いたドーナツ型の模様になるはず。言われてみれば、そういうのが目立つ図ってない?
ボクはマダガスカルに注目するとおもしろいと思うんだわ。アに注目しよう。黒く塗られている部分は、中央部が空白のドーナツ型だよね。これに対しイはそんなことない。一つの塊になっている。ウはちょっとよくわからないが、面積的にみてイより広い範囲に分散している。イが「1600m以上」、それを囲むウが「1100~1400m」、そしてそれをさらに外から囲んでいるアが「500~800m」とする。どうだろうか。これでいいと思う。正解は2。
さらに検討。イとウにはおもしろいところがあるんだわ。それがエチオピア付近。イではエチオピア高原の部分がはっきりと黒く塗られている。一つの塊だ。中央が空いているわけではない。この部分に注目しながら、ウを参照してみる。どうだろうか。イで黒くなっているところをそのまま囲むように黒色の部分がドーナツ型に見られるではないか。イを「1600m以上」、ウを「1100~1400m」、アを「500~800m」と置くと、キレイに重なるんじゃないかな。同じことは大陸北西端のアトラス山脈でも当てはまる。全体を漠然として見るのではなく、限定された部分だけに注目して、図を重ね合わせることを想像しながら、考えていけばいい。何とかなるぞ。特別な知識は不要の思考問題である。
[最重要リンク] 2009年度地理A追試第4問問1が全く同じ形式の問題。中国が取り上げてあって、「500~1000m」、「2000~3000m」、「5000m以上」の3つの区分。問題としてはこっちの方が絶対に難しい。なぜなら、クンルン山脈とテンシャン山脈の間に巨大な盆地(タリム盆地。タクラマカン砂漠があるところ)が存在しているからだ。内陸部の、本来なら標高が高いと思われる部分に、低地があったりしたら、やっぱり戸惑うよ。
[ここが新しい!] 単なるパズルだ。パズルが得意な人は解ける。がんばってみようぜ。ちなみにボクはこうしたパズルとかすごく苦手です(笑)。
[今後の学習] 中国とアフリカで同じ問題が出たので、他の地域でも出題されそうでちょっと不安。今回のこの問題あるでしょ。拡大コピーして、ア~ウを3枚とも切り抜いて、アフリカ大陸の輪郭線に沿って重ねてみよう。そして蛍光灯の光に透かしてみたりして、それぞれの黒い部分が重なっていないことを確かめてみよう。
求められている知識自体は難しくないんだが、そもそもの図の意味がわかりにくい。ちょっとした図工の時間だと思って、上記の作業に挑戦してみよう。なるほど、って感じで、図の意味が捉えられたらいい。もう一度、同じパターンの問題が出る可能性は高い。
問2 [ファースト・インプレッション] 食べ物ネタって最近多いな。生活っていうジャンルにしても、第3問で住居の問題があったし。もっとも、その住居の問題がむしろ気候環境の問題だったように、本問にしても食文化と見せかけておいて単なる農業の問題。農産物統計がどこまで意識されているかどうかが運命の分かれ目。
[解法] 1;オリーブは地中海沿岸のキーワード。ナツメヤシも乾燥の度合いが高い地域。Aが該当すると思っていいでしょう。
2;ラッカセイでキミたちが絶対に知っておく国はセネガル。やや乾燥した気候を利用して、当時の宗主国であるフランスによって商品作物であるラッカセイの強制栽培が行われた(プランテーション農業)。このためセネガルでは現在でも自給作物の生産はおぼつかなく、商品作物(この場合はラッカセイ)の栽培と輸出に経済が依存したモノカルチャーが見られる。アフリカ貧困の最大の原因。
ラッカセイからセネガルを考え、セネガルはサヘル地帯の国であるので、まさにサヘルのBがこれに該当する。正解は2。サヘル地帯はサハラ砂漠の南縁の半乾燥の草原地帯。砂漠化(植生喪失)が進行しているエリアであることはよく知られているね。
3;アフリカで米といえばマダガスカル島。降水量の多い東岸地域で伝統的に栽培されている。さらにココナッツとあるけれど、これはココヤシのこと。ココヤシは熱帯の沿岸地域に分布し、まさにマダガスカルのような島国では一般的なものなのだろう。
4;これはよくわからないけれど、消去法で残ったCになるのかな。
[最重要リンク] とにかくラッカセイ。ラッカセイの生産上位国は中国などだが、絶対にセネガルを知っておくべき。1999年度地理B本試第4問問6選択肢4。「セネガルでは、主要な自給作物である落花生の増産を図るため、雑穀との輪作から単一耕作に移行した結果、砂漠が拡大した」という誤文。正しくは「自給作物」ではなく「商品作物」。フランスによって強制栽培させられたのが落花生であり、食用ではなく油脂採取用。セネガルと落花生、そしてプランテーション、フランスとの関係を知っておく。
[ここが新しい!] 食文化っていうのがそもそも新しいんだが。でも農作物の問題として解けるよね。問題ないと思います。ヤムイモってセンターには出て来ないんだけど、一応統計を挙げておきましょうか。ヤムイモの生産は、1位・ナイジェリア、2位・コートジボワール、3位・ガーナ。東南アジア原産のはずですが、熱帯アフリカで生産が多いんだね。ちなみに他のイモ(キャッサバ、ジャガイモ、サツマイモ)は南アメリカ原産。アフリカ原産のイモはないのです。
[今後の学習] 地中海沿岸のオリーブ、砂漠地域のナツメヤシ、ステップ(降水量の少ない草原)地域のラッカセイ、熱帯アフリカのキャッサバとヤムイモといったように農産物に注目して、栽培環境や栽培地域を結びつけて考えていくのが基本。文章を読んだ時に、このようなキーワードを確実に拾っていけるかどうかが大切。なお、マダガスカルについては第1問でも登場していたし、特別にチェックしておこう。南半球の貿易風帯に当たり、風上斜面側である島の東岸で降水量が多い。熱帯雨林も繁るこの地域において、米作がさかんに行われている。
問3 [ファースト・インプレッション] ラクダっていうのが新鮮だよね。砂漠の生き物って簡単なイメージがあるけれど、かといって地理で登場する動物でもないし、統計としてはどうなんだろう。ちょっと想像しにくい。ラクダがジョーカーになりそうな問題です。ブタはおそらく宗教的な側面がポイントとなるのかな。
[解法] こうした問題の場合、とにかく最初に数字をチェックすることを大切にしよう。やたらクが大きいんだよね。アンバランスなほどに。アフリカにおいて最大の飼育頭数を持つ家畜って何だろう?
それはともかく、ブタが一番わかりやすいと思う。ブタがイスラム圏に分布しないことはみんな知っているよね。乾燥地域で生まれた宗教イスラム教は、乾燥地域にそぐわない家畜であるブタを嫌悪している。そのため、湿潤地域でありブタが本来なら飼育できるはずのインドネシアにおいても、イスラム教の教えが優先して、やっぱりブタは食べられない。アフリカにおいてイスラム教が広まっているのは、北アフリカのアラブ地域(アルジェリアとかリビアとかね)と、かつてアラブ商人たちによってイスラム教が伝えられたセネガルなどサヘル諸国。というわけで、この地域に●が描かれていないキがブタとなる。もっともセネガルには小さいけど●があるんだけどね(笑)。まあ、同じくサヘル諸国のマリやニジェール、チャドが無印だから納得してよ。
で、ここからはカとク。ラクダは砂漠でいいと思う。サハラ砂漠周辺に分布するカがラクダ。残ったクが牛となる。飼育頭数が異常に多いのはこれだったのか。エチオピアとかケニアに多いんだよね。これ、おそらく衛生環境を考えてのことだと思う。牛のような家畜は、伝染病や寄生虫に弱い。だから不衛生な熱帯雨林国であるコンゴ民主には少ないでしょ?一方、ケニアは高原国であり、やや気温が低いために(ケニアは草原国なのだ)牛の生育には絶好の環境となっている。「牛=多雨」と単純に覚えておくと、コンゴ民主に牛が少ないことを不審に思ってしまうわけだが、焼畑農業が無畜農業であることと結びつけて考えるとおかしくないでしょ。よって正解は6。
[最重要リンク] 乾燥地域のラクダはわかるとしても、意外とブタとウシの判定が難しかったのでは?とにかく、イスラム地域には徹底してブタが存在しないことを強調しておこう。北アフリカに少しでも●がある時点で、クは絶対にブタではないのだ。
2002年度地理B第3問問6。Sがブタなんだが、西アジアから中央アジアのイスラム地域には全く分布していない。いくつか点が見えますが、気のせいです(笑)。っていうか、よく見たらインドネシアには多少だけど点が見られるぞ!?いや、これもやっぱり気のせいなんでしょう(笑)。
ちなみにこれはドットマップといって絶対分布を表す統計地図なんですが、それぞれの1点当たりの家畜頭数が興味深い。SのブタとTのウシが50万頭で、Uの羊が20万頭。アジアってどの家畜もたくさんいるような気がするんだけど、なぜこんなに1点当たりの頭数を変えてきたのかな。よくわからないです。
[ここが新しい!] さっきからずっと総頭数が気になってるんだわ。牛ってこんなに多いの?っていうかブタがそもそも少なすぎるのか。いわゆる3大家畜である牛とブタと羊については、その数のイメージを持っておいてもいいかもしれない。
世界全体の頭数は、牛が約14万頭、羊が約11万頭、ブタが約9万頭で実はブタって意外に少ない。しかもブタの約半分は中国に集中しているので、他の地域ではむしろかなりマイナーな家畜なのだ。
参考までに3大家畜の大陸別の分布割合を表にしておきます。
| アジア | アフリカ | ヨーロッパ | 北アメリカ | 南アメリカ | オセアニア |
牛 | 31.6 | 19.1 | 9.4 | 12.2 | 24.9 | 2.8 |
羊 | 41.9 | 25.7 | 12.6 | 1.7 | 6.7 | 11.4 |
ブタ | 58.3 | 2.7 | 21.6 | 10.7 | 6.1 | 0.6 |
整理しましょう。
牛は各大陸に平均的に分布。あえていえば南アメリカ(ブラジルとアルゼンチン)。
羊は北アメリカに少なく、オセアニアに多い。それ以外は平均的に分布。
ブタは中国以外のアジアとアフリカ、南アメリカ、オセアニアにはいない。
アジアは、中国を除いてブタはいない。
アフリカは、ブタはいない。
ヨーロッパは、いずれの家畜もみられるが、あえていえばブタが多い。
北アメリカは、羊がいない。
南アメリカは、牛しかいない。
オセアニアは、羊しかいない。
極端にいえばそういうことです。家畜分布ってすごく偏っているね。このネタで3問ぐらい模試の問題が作れそう。
ちなみにラクダの頭数と分布はよくわかりません。調べたらわかるんだろうけど、別にいらないでしょ。
[今後の学習] ラクダはいらないと思うので、とにかくウシとブタだよね。とくに分布地域に特徴がある家畜がブタなので、これをクローズアップする。場所の偏りが最も際立っている家畜。
ブタの約半数がいるのが中国。イスラム地域、乾燥地域を含め、他のアジア諸国には少ない。アフリカにもブタはほとんどいない。
ヨーロッパと北アメリカには比較的ブタが多いが、これは混合農業との関係性で押さえること。ヨーロッパではドイツとポーランド。ジャガイモとライ麦が輪作され、ブタの飼育と有機的に結びつけられている。北アメリカはコーンベルト。五大湖南岸のコーンベルトは混合農業地帯で、トウモロコシと大豆の輪作、ブタやウシの飼育がみられる。とくにアイオワ州は、トウモロコシと大豆の生産、ブタの飼育頭数がいずれも全米1位という「世界最大」の農業地域。
とにかくブタの分布地域が最もハッキリしているぞ!
問4 [ファースト・インプレッション] なんちゅう国の登場や!?ザンビアなんて本当に完全に初登場。アフリカ地誌はほんの4年前に出題されたからネタ切れなんだろうか。でも、そういうえばかつてはカメルーンも出題されたことがあるぞ。おそるべし、アフリカ。とはいえ、ザンビアなんて全く関係ないし、4つの国のうち最もメジャーなケニアが問われているわけだからとくに難問というわけでもないでしょう。茶がポイントだね。
[解法] ありがちな統計問題。しかも1つの国を特定するだけなので、難易度はさらに下がる。3カ国に3つの統計を組み合わせるパターンの問題ではないしね。ザンビアなんていうわけのわからない国が出ているが、無視していいでしょう。
ケニアは高原の国。旧イギリス領ということもあり、茶のプランテーションが多く開かれた。Ⅲが正解です。
1がモロッコ。ヨーロッパに近く、経済レベルが低いという立地を生かしての衣類工業。2がアルジェリア。OPEC加盟国なので、原油モノカルチャー。サンビアは不問。
[最重要リンク] ケニアです。2004年度地理B追試第2問問4。Fの国がケニアなのだが、茶の含まれているクを選べばいい。全体的に台地状の地形となっており、全体の標高が高いのがアフリカ大陸の特徴だが、とくに東アフリカは、巨大な地溝帯に沿う変動帯(プレートの広がる境界)となっており、高原地形が広がっている。ケニアは赤道直下にありながら標高が高いため気温がさほど高くなく、ヨーロッパ人にとっても過ごしやすい気候条件となっている。コンゴ盆地が高温多雨で熱帯雨林になっているのに対し、ケニアの高原はサバナ(サバンナ)とよばれる熱帯草原である。このような地形と気候条件が茶の生育に適していることを考えよう。
なお、茶の栽培国としてセンターで最も出題されるのもこのケニア。一般的によく知られている中国の福建省やインドのアッサム地方は問われない。スリランカはちょっと問われるかな。でもケニア、とにかくケニアが大切。
[ここが新しい!] そもそもケニアはセンターに非常によく出題される国なので、今さら注目するも何もないだろう。茶についても、高原(丘陵)という栽培条件はよく登場するので、これも言うまでもない。アルジェリアと原油の関係も新鮮みはない。かといってザンビアなどという特殊な国が今後も出題されるかといえば微妙だと思う。一応銅山はあるんだが、世界的にみれば産出量がとりわけ多いというわけでもない。ボクが最も本問で気になる国は、何といってもモロッコなのだ。とにかくモロッコに注目しておこう。1人当たりGNIが低く、西ヨーロッパの経済先進地域から距離が近いという立地条件が重要。安価な労働力が得られることから、衣服のような単純労働力による軽工業が発達するのだ。モロッコと同様に西ヨーロッパから衣服の工場が進出している国としては、ルーマニアとトルコがあるが、共通性を感じるでしょ。日本からだって周辺の低賃金国(中国どころか、最近はベトナムやカンボジアが増えている)に衣服の工場が多く設立されている。モロッコが出題された。次はトルコとルーマニアの可能性が高い。衣服ときたらこれらの国を考えよう。
もちろん統計でも確認しておいてね。その時には、この3カ国以外に、ブルガリアやポルトガル、チュニジアなどもチェックしておくといい。いずれも「低賃金で西ヨーロッパに接する」という共通の立地条件がある。
それからモロッコはもう一つ。寒流に面し、アフリカ最大の水産国の一つ。日本向けのタコの水揚げが多い国。「魚介類」もチェックしておきましょう。アフリカ沖合いのタコって、味が日本人に合うらしいよ。
[今後の学習] こうした統計問題はベタなんで、絶対に落としてはいけない。ただし、貿易統計だけを取り出して覚えるのは効率が悪い。今回の問題については、農業(農作物の栽培条件。茶が高原であり、ケニアはアフリカ大地溝帯に沿う高原国である)、資源(アルジェリアはOPECに加盟し、原油モノカルチャーである)、工業(近隣の低賃金国に軽工業の工場が進出し、モロッコはその条件を満たす)といったように、むしろ他のジャンルから「越境」してアプローチする問題なのだ。農業、資源、工業など、基本的なジャンルをしっかり固めること。えっ、ザンビア?そんなヤツいたっけ?(笑)それじゃかわいそうだから、銅鉱だけ知っておこうか。
問5 [ファースト・インプレッション] どうだ、岩塩が出ているじゃないか。岩塩って実は結構センターに登場しているんで、注意が必要だと思っているわけだ。
[解法] 意外に難しいぞ。これで失点した人が多いんじゃない?それぞれの文章のキーワードを考えていこう。
サは「スワヒリ」。これ「象牙」に思わず目が行ってしまうんだが、それが実は甘いトラップ(笑)なわけだ。トラップが各所に仕掛けられている問題を、ボクは罠の巣、すなわち「トラップネスト」と呼んでいるんですが(笑)、本問はまさにその代表。
シは「岩塩」。これも「金」っていうトラップがある。トラネスだなぁ。それから岩塩で候補を絞れたら「二つの異なる気候帯」っていうのも納得できる。重要なヒントになっている。
スは消去法でいい。そもそもアフリカのほぼ全域がヨーロッパによって植民地支配されたわけであり。「ヨーロッパ風の建築や街路パターン」は至るところにある。
さて、スワヒリ語から行きましょう。前回のアフリカ地誌の時(2007年地理B本試)に、この言語は問われている。アフリカ東海岸のケニアやタンザニアの伝統的な言語で、これらの国の公用語の一つとなっている。このことからRをサとする。
さらに岩塩。これは蒸発量の多い乾燥地域で得られるもの。アフリカの場合は、サハラ砂漠の南縁サヘル地帯が岩塩産地であり、北アフリカのアラブ商人たちが岩塩を求めてサハラ砂漠を渡ってきた。この時に交易で栄えた都市がトンブクトゥーという当時のマリ王国の宮古であり、イスラム教が伝えられたことで巨大なモスクも存在している。サヘル地帯は「黒人・イスラム教」地域なのだ。サヘル地帯に多い▲がこれに該当する。Qがシ。そうなると「二つの異なる気候帯」っていうのも納得なんじゃない?気候区っていうと難しいけど、個々では気候帯だからリラックスして考えればいい。赤道から広がる熱帯と、サハラ砂漠からサヘルのステップの乾燥帯との境界線に当たっている。乾燥帯の方から岩塩、熱帯の方からは森林産物など。
スは消去法でいい。Pが該当し、6が正解。
[最重要リンク] 地理Aで申し訳ない。2003年度地理A本試験第1問問4。ニジェール川に沿う隊商都市トンブクトゥーが著されている。
本年の図4でいうと、Qの▲があるでしょ。サヘル地帯にあるうちの左から3つ目。ちょっとだけ高緯度側に張り出している。この▲の都市のいくつかは外来河川であるニジェール川沿いに成立した町であるが(地図帳でニジェール川の流れ方を見ておくとおもしろいよ)、トンブクトゥーもその一つ。
トンブクトゥーに関する説明文。「かつては隊商都市として栄えた。砂の中に埋もれてしまった繁栄の歴史が知られている。」
トンブクトゥーは黒人王国マリの都だった。岩塩交易で栄え、北アフリカから多くのアラブ商人たちを迎えた。次第にイスラム化が進み、巨大なモスクも建造されている。しかし、この交易も衰退し、さらに砂漠化による環境悪化もあり、現在は打ち捨てられた都市となっている。
[ここが新しい!] いや、難しいですよ。この問題は。とにかくトラップが多い。象牙と金で誘導されてしまう。でも悪問とも思わないのだ。象牙や金より重要な「岩塩」や「スワヒリ語」というキーワードがカギとなっているからだ。なぜ、その2つの言葉の方が重要かって?それは彼らは過去のセンター試験において、はっきりと出題されたネタだからだ。一般的に大事と思われる言葉より、センター試験に登場した言葉の方が重要視される。そのことがはっきりと印象づけられた問題。今回のセンター全36問中でも、上位に入る好問題ですよ。テキストでも使おうかな。
[今後の学習] この問題からいろいろなことを吸収しましょう。Qについてはもう大丈夫ですね。上記のトンブクトゥーがわかれば十分。「岩塩」は絶対的なキーワード。せっかくだからニジェール川の流れ方を確認しておいて、そのほとりに都市が成立していることを理解しておくといいね。
Rは「スワヒリ語」だけがキーワードになっているけれど、他にもちょっと出題されそうな言語がるのでぜひチェックしておく。過去に出題されたちょこっとマイナーな言語は、イスラエルのヘブライ語、イランのペルシャ語など。それからパキスタンとアフガニスタンの一部で使用されているウルドゥー語と、バングラデシュとインド東部のベンガル語。とくに、ペルシャ語とウルドゥー語は、スワヒリ語と同様に、大阪外大に学科があるので、再び出題の可能性はかなり高いぞ。
さらにP。これは解法の時は消去法でいいって言ったけど、実はこれが一番大切なんじゃないか。まず注目はケニアの首都ナイロビ。ケニアの首都であり、首位都市(プライメート・シティ。人口や経済が集中する国内最大都市)。ケニアの国土は高原に広がり「ホワイトハイランド」とよばれている。衛生環境が良好で、ヨーロッパ人が内陸部まで植民した。現在でもナイロビ市内には比較的ヨーロッパ系の白人が多い。そういえば、ウィリアム王子がケイトさんにプロポーズしたのはこのナイロビだし、イギリス王家にとっても非常に重要な都市なのだろう。
それに対し、興味深いのがギニア湾岸。ここは沿岸部にしか都市がないでしょ。これは、高温多雨の極めて不衛生な環境条件であるため、伝染病や寄生虫を恐れたヨーロッパ人たちが内陸部まで入り込めず、沿岸にいくつかの港を開いただけにとどまったことに起因している。でもこの港湾が大切なのだ。現在のシェラレオネは当時は胡椒海岸、コートジボワールは象牙海岸、ガーナは黄金海岸と、それぞれ交易される品目と「海岸」(内陸部に入れないので地名は全て海岸名となる)が組み合わされた名称で呼ばれていた。トーゴからナイジェリアのラゴスまでは奴隷海岸。人間が商品として扱われていた。そんな「海岸」から発展した都市が居並ぶ。
南アフリカ共和国にもいくつか都市がみられる。南西端のケープタウンは地中海性気候でブドウの栽培で有名な都市。内陸部のヨハネスバーグは金鉱の発見に伴って成立した鉱業都市。
問6 [ファースト・インプレッション] 国とその説明という3点止めの問題。選択肢の国は、エチオピア、ガーナ、南アフリカ。これなら何とかなるか。メジャーとまでは言えないかもしれないけれど、名前を聞いたことのないようなマイナーな国でもない。ふんばりどころだと思う。土俵際から切り返せ。
[解法] トラネス(前の問5の説明を参考にしてね)の予感もするんだが、とにかくトラップに引っかからないように注意しながら説明文を読み進める。
タはどれだ?「人種差別」でいいと思う。もっともアフリカ全域で人種差別が行われていた訳で、南アフリカ共和国だけが特別というわけでもないが、でも「アパルトヘイト」は無視できない事例だ。とりあえずこれを南アフリカ共和国と代入しておこう。
シはどれ?「キリスト教」でいい。アフリカの宗教は、北アフリカからサヘル地帯のイスラム教、それ以外の地域の伝統宗教という色分けになるのだが、このエチオピアについてはその伝統宗教がキリスト教であるという特殊性がある。布教の初期の段階で迫害されたキリスト教が、パレスチナ(今のイスラエルがある地域)から紅海を辿り、エチオピア高原へと伝えられた。伝統的な形をよく保存する、古代の正統派キリスト教の姿はここにある。
スはどれだ?「イギリス」なのか。残った国はガーナだが、この国はたしかにイギリス領である。問題なかろう。周辺のフランス領の国ってコートジボワールなどのことだろう。5が正解となる。もっとも南アフリカ共和国も昔はイギリス領だったんだけどね。
[最重要リンク] 2004年度地理B追試第2問問7。
エチオピアについてこのように説明されている。
この国の人口の約40%が信仰する宗教は、ヨーロッパで広く信仰されているある宗教の一宗派である。国の縁辺部では、これとは異なる西アジア起源の宗教が勢力を有し、精霊崇拝(アニミズム)も残っている。
「ヨーロッパで広く信仰されているある宗教」はキリスト教。これだけでエチオピアと決めていい。なお「これとは異なる西アジア起源の宗教』というのはイスラム教。キリスト教とイスラム教は兄弟宗教で同じ西アジア起源なので、わざわざ「これとは異なる」と注釈が入っている。周辺にアラブ民族の国が多いので、エチオピアにもその影響が一部に及んでいるということだろう。また「精霊信仰」とあるが、これもアフリカのキーワード。北アフリカ~サヘル地帯のイスラム教徒、エチオピアのキリスト教徒以外は、伝統的な精霊信仰が残っている民族・部族も多い。
[ここが新しい!] 音楽ネタなんていうのは形式的なことだから無視していいでしょう。本問で本当に難しいのは、比較的長い説明文の文章だけど、キーワードが「人種差別」、「キリスト教」、「イギリス」のそれぞれ1つずつしかないっていうこと。ちょっとやっかいだな。ちなみにガーナが旧イギリス領っていうのは初めて出題されたネタ。コートジボワールがフランス領だったことと合わせて知っておきましょう。
[今後の学習]
3点止めの問題だから2つが分かったらいいんだよね。おそらくほとんどの人が、南アフリカ共和国とエチオピア、ガーナとエチオピアのいずれかのパターンで解いていったんじゃないかな。エチオピアが最重要となっているはずです。
そしてそのエチオピア、とにかく今回の最大のキーワードは間違いなく「キリスト教」。これでいいと思う。過去問にも登場しているし(「最重要リンク」参照)、かなりインパクトのあるネタだと思う。絶対に頭に叩き込め。