2006年度地理B本試験[第6問]解説

2006年度地理B本試験[第6問]

 

問1

[講評]地球温暖化に関する問題。でもどうなんですかね?僕は実は地球温暖化ってホンマかな?って怪しんでいる。いや、たしかにデータ的には地球全体の平均気温って上がっているみたいだね。でもそれは果たして世間で言われているような二酸化炭素の増加によるものなのか。ほら、地球でかつては氷河期っていうのがあったわけじゃない?だから地球の気候変動っていうのは我々人間の想像力の及ばないところで宇宙的なスケールの中で生じているものではないかと思っているわけだ。

それに仮に二酸化炭素の増加によって地球温暖化が誘引されているとしよう。でもそれにしたってその二酸化炭素の増加がこれまた世間で言われているように化石燃料の使用過多によるものなのか。一部には太平洋のある海域で動物性ブランクトンが異常発生し、その呼吸運動によって酸素濃度が低くなり二酸化炭素濃度が上がっているという説もあるそうだ。何となくそっちの方が僕は信憑性が高いような気もするんだけど。

それからさらにもう一点。地球温暖化によって海面上昇が起こり、珊瑚礁の島々が海に沈んでいるのだという。これも解釈が難しい。実はこういう考え方もあるんだよ。気温が上昇するわけだから、大気の飽和水蒸気量も上昇する。だから多くの水蒸気が空気中に含まれることになるので、実は海面はむしろ低下するのだ、と。どうだろう?言われてみればそんな気がしない?

というわけで、問題とは直接関係ない話をまず最初にしてみました。「化石燃料の使用過多により大気中の二酸化炭素濃度が上昇し地球温暖化が促進。このため海水面が上昇し、珊瑚礁の多くの島々は水没の危機にある」という「常識」は、実は全くの誤りであるかもしれない。「いや。実際に水没しようとしている島々はあるぞ」と君は反論するかもしれない。でもそれにしたって怪しいんだよ。そもそもそういった島々は隆起珊瑚礁によるもので、土地のアップダウンは長い年月の間に何回も繰り返されて来た事。最初は島があった。その周辺に珊瑚礁が発達した(これを裾礁という)。やがて島は沈降を始める。周辺の珊瑚礁は発達するが、島が沈んだ分だけ、上から見ると、島→海→珊瑚礁という形になる(これを堡礁という。オーストラリアのグレートバリアリーフを考えたらいい。陸地から離れた沖合いに珊瑚礁が発達している)。そしてさらに島が沈降し、最後には水面に島があった海域を囲むように珊瑚礁が環状に広がる状態となる(これが環礁)。

さらにこれが隆起する場合もある。浅い海底全体に珊瑚礁が発達した後、この珊瑚礁全体が隆起し、陸地となる。これが隆起珊瑚礁というもので、温暖な海域にはしばしばみられる形態。そもそも島というのは、火山島か珊瑚島(隆起珊瑚礁)ぐらいの種類しかないので、おおよそ標高が高い島ならば火山島、低い平坦な島ならば珊瑚島と考えてしまっていい。

要するにどういうことかというと、こういった珊瑚礁の島って海面上昇によって海面下に水没してしまうって言われてるけれど、これが本当に科学的にみて正しいことなのかっていうこと。そもそも歴史的にみて「もともと海面下」だったわけだよ、珊瑚礁なんだから。たまたま隆起したことによって現在は陸地となってはいるけれど、再びまた地殻変動などによって海の下へと沈むようなケースもあるんじゃないかなぁ、なんてね。

そんなわけで、こういった地球の環境問題に関する設問っていうのはツッコミどころが多すぎるんで、センター出題者側としても高度な専門的な知識を問うわけにはいかない。極めてオーソドックスなところで問題を作ってきているんで、君たちも深く考えず、適当に解かなければいけないってわけだ。ん、逆にそういった考え方の方が難しいって?まぁもちろんそうともいえるんだが、センター試験における思考の深さのサジ加減っていうものも本問などを通じて十分に養ってください。それはセンスだよ、センス☆

 

[解法]講評でもいっているように、結局地球温暖化なんて全然嘘かもしれないんだよ(笑)。だからこれに関する知識そのものよりも、常識的に考えてつじつまの合わないところを探して、それを指摘すればいい。

まず②について。「低緯度地域で蒸発量が増え」はまさしく正解だと思う。しかしこちらで「低緯度」とわざわざ限定してあるのに、塩分濃度が上昇するのが「海洋全域」っていうのはちょっと不自然のような。地球温暖化が進めば、北極や南極の氷は解けるわけで、そういった高緯度海域では水分が多くなる分、塩分濃度は下がるとみていいんじゃない?上の講評の部分で、多くの水蒸気が大気中に含まれることになると説明はしているものの、それもあくまで一つの仮説にしか過ぎないし、このことについては明確な答えはないと思う。しかしとにかくこの選択肢の文から考えて「低緯度の蒸発量の増加」が「海洋全体の塩分濃度上昇」と結びつくかどうかといえばやっぱりそれはおかしいんだよ。高緯度地域の状況が全く無視されてしまっているし。

③について。「降水量の変動」はあるかもしれない。しかしそういった「外的な要素」が、「地震や火山活動」のような「内的な要素」と結びつくだろうか、そんなことはないよね。「骨折したら風邪を引きやすい」って言うのと同じことだよ、そりゃ無関係だわな(笑)。

④について。「硬葉樹」は重要。常緑広葉樹に含まれる耐乾性の高い樹木のことで、夏季乾燥つまり地中海性気候のみられる地域に対応して分布する。オリーブや月桂樹が代表例。つまり「硬葉樹が熱帯雨林に移行」ということは、「地中海性気候の地域が熱帯のジャングルのような気候環境になる」ということを言っているんであって、まさかそんなことはないわなぁ。そもそも地中海性気候っていうのは温帯だし、決して熱帯ではない。

以上より正解は①でいいんじゃないかなぁ。いや、よくわからないけれど、どうやらそれっぽい(笑)。

 

[関連問題]99B本第1問問2参照。地球温暖化を促す人為的原因でないもの。二酸化炭素を生じないつまり「燃焼」ではないものを指摘する。

99B本第1問問3参照。地球温暖化により1m海水面が上昇した場合の被害について。

01B本第3問問2参照。温室効果ガスの影響。なお、温室効果ガスとは二酸化炭素の他、フロンやメタンなどがある。

00B本第2問問4選択肢②参照。モルディブは珊瑚礁の島である(つまり火山島ではないということ。火山島と珊瑚島は対になる言葉である)。

00B本第3問問3選択肢②参照。まぁでもこれは意味がよくわからん選択肢だからどうでもいいか(笑)。

 

[今後の学習]講評の部分では散々イジワルなことを言ったけれど(笑)、そんなひねくれた見方をすれば、解ける問題も解けなくなってしまうので、ここはグッと我慢してオーソドックスな考え方をしていきましょう。そんな解法センスというものを養うのも、センター過去問をやり込む目的ではあるんだよね。

 

問2

[講評]これが非常に難しいんだ(涙)。みんな案外とあっさりできたのかなぁ。僕は最も苦しんだ問題です。っていうかセンター史上たった1問だけ答えが分からなかった問題といっていい。一応②を解答としてみたものの確信はない。と思って答えを確認してみたら①だって!?こりゃ激ムズや。。。

 

[解法]講評でも述べたようにこの問題は非常に難しい。どこに取り付くシマがあるんや!?って僕なんか混乱してしまったわけだけれど、正解が①だと言われれば、まぁ何とか理解はギリギリ可能な範囲ではあるんだが。

ポイントはここしかない。「夏季の日中に山地から都市域へ吹く」風の存在。これは3つの要因から否定される。

その一、昼と夜の風向変化。一般的にみて、昼の風は海から吹く「海風」になり、夜の風は陸から吹く「陸風」となる。太陽からの受熱量が大きい昼の間は陸地の方が高温となり気圧が下がるのに対し、夜は海上の空気の温度が高いためこちらの気圧が下がる。図をみると都市域は沿岸部にある。日中の風が「山地から都市部に吹く」とは考えにくい。

そのニ、夏と冬の風向変化。一般的にみて、夏の風は海から内陸部へと吹き込み、冬の風は内陸部から海へと吹き出す。これもその一の説明と同様に海陸の比熱差によって説明できる。夏のように太陽からの受熱量の大きな時季の風向が「内陸部→沿岸部」となることはない。

その三、東アジアにおけるモンスーンの風向。より広い視野をもって、東アジア全域にまで視点を広げてみても結果は同じである。日本上空に吹く季節風の風向は、夏季が南東から、冬季が北西から。関東平野における夏の風の風向が「山地から都市域」つまり北よりの風であるとは考えにくい。

以上より、①が誤り。あれ?3つも説明できたぞ。何だこりゃ、決して難問ではないのかも。僕が勝手に間違えただけ!?

 

[関連問題]ヒートアイランドを扱った問題としては、96本第1問問6がある。本問との共通項としては空気の動きが重要視されているということ。ヒートアイランドによって温度が上昇した都心の空気は膨張し、気圧は下がるのだ。理系的な考え方が重要である。

 

[今後の学習]ぶっちゃけわからなかったので大きなことは言えないのですが(笑)、やはり「空気の動き」が大切なのだということだね。風向などに関する記述があったらまずそこに注目し、それが正しいか否かを判定しないといけない。この時もちろん必要になってくるのは、科学的な視点。比熱を考えたり、膨張や収縮による気圧の変化を考えたり。地理とはサイエンスなのだ。

 

問3

[講評]結局、大さん井盆地で何が行われているかっていう問題なんだけどね。それがはっきりと意識できていたかどうか。

 

[解法]オーストラリアの大さん井盆地のキーワードは「牧羊」。企業的牧畜地域であり、大規模に毛羊の放牧が行われている。ここで得られる地下水は塩分が多く、人間の生活用水や穀物栽培のための灌漑用水とはならないのだ。せいぜい質の悪い牧草が育つ程度。しかし羊はそういった牧草ですら十分に飼育することができる。

このことから③を誤りとする。農作物を作っているわけではないので「灌漑農業」は当てはまらない。それに牧草が成育するだけであり、ここに「肥料」は投下しない。それにどうかなぁ?肥料により「地下水汚染」っていう事象も、あるのかもしれないけれど、あまり一般的な事柄ではないし、これも誤りなんじゃないかなぁ。

選択肢①について。その通り。このような地下水の過剰揚水によって地盤沈下なども生じているらしい。

選択肢②について。パンジャブとはインドからパキスタンにまたがる地方名。パキスタンを流下するインダス川や地下水などからの灌漑によって小麦や綿花の栽培がなされている。ただし灌漑は無造作に行われた場合、土壌の塩性化を助長する可能性がある。灌漑を行うには、点滴灌漑や排水溝の整備による地表面の洗い流しなどによって塩害を防がないといけない。

選択肢④について。近年は規制されているので顕著ではないが、工業揚水の過剰揚水による地盤沈下は日本の各所で起こっている。

 

[関連問題]最も直接的な関連問題は98B本第1問問2選択肢④だろう。オーストラリア南西部の帯状の地域、これはマーレー川流域であり「企業的穀物農業地帯」として小麦の栽培がなされている。マーレー川は外来河川であり、降水量が少ない地域を流れているだけに河川流量も小さい。このため、降水量の多い山脈の反対側から導水トンネルを掘り、農業用水を導くことによって灌漑農業が成り立っている。

マーレー川については03B本第1問問7、スノーウィーマウンテンズ計画については00B追第1問問7で、名前だけ(しかも外れ選択肢であるが)であるが登場している。

選択肢①について。98B本第3問問6参照。米国グレートプレーンズにおけるセンターピボット農法の説明。写真のような円形に散水する施設がみられるが、過剰な地下水揚水のため地盤沈下などの問題が生じている。

99B本第4問問5選択肢④参照。ここでもグレートプレーンズにおけるセンターピボット農法が話題とされている。

選択肢②について。灌漑農業に塩害(土壌の塩性化)の危険性があることはしばしば出題対照とはなっている。98B本第5問問7選択肢①参照。乾燥農法の方が伝統的なものであり、自然と調和している。灌漑はむしろ土地に負担をかけるやり方。巧く行わなければ塩害を助長する「両刃の剣」。

99B本第4問問7参照。適切な灌漑を行わなければ、塩害は深刻化し、これは砂漠化の原因ともなる。選択肢②「点滴灌漑」や選択肢③「排水溝の整備」はいずれも「適切な灌漑」の例。無計画にいい加減に灌漑してはいけません!ということ。

なお、本問の「パンジャブ地方」という言い方は初めて。一応、05B追第1問問6文章キはインダス川の説明であるが、たしかに灌漑について説明されている。

選択肢④について。98B本第5問問2参照。海岸沿いの埋立地のような低地では、工業用水のくみ上げすぎによる地盤沈下などの災害の危険性がある。

 

[今後の学習]ホイットルセー農業区分に基づいて考えることが基本なんだと思う。オーストラリアの農牧業については「大さん井盆地=企業的牧畜」としっかり頭にインプットしておいて、そして本問をみた場合にすぐさま「企業的牧畜は灌漑農業ではないぞ!?」というイメージが湧いてくるか。むしろ灌漑農業は企業的穀物農業が行われているマーレー川流域であり、こちらとの混乱を狙ったものなんだなと、鋭く分析してほしい。もっとも、マーレー川流域にしても「肥料により深刻な地下水汚染が生じている」わけではないが。

 

問4

[講評]これも難しいなぁ。普通なら「リベリア」なんていう特殊な国名が答えになるわけはないよ。まぁとりあえずあまり国名にとらわれないようにってアドバイスするしかないなぁ。

 

[解法]冷静なツッコミどころとして「伝統的な生活様式をいかした砂漠化対策」って何やねん!?っていうのがあるわな(笑)。具体的にどうすることなんだろう?

というような観点で③を誤り(つまり正解)とできればいいんだが、それにしたってどうにもあいまいだよね。決定打というわけではない。

 

[関連問題]う~ん、問題そのものがあいまいなんでちょっと挙げづらいかな。とくに①や②については先進国一般で行われていることと考えれば、とくに過去問から出題例を引っ張ってくる必要もないよね。

③については選択肢の文そのものがメチャクチャなんでこれもどうでもいいでしょう。

④にはちょっと注目したいんだよね。まず最初に参照してほしいのは97B本第2問問3。「先住民族の歴史や現状」についての問題なんだが、全体的には「伝統的な生活を維持する例は少なく、むしろ貨幣経済が農村地域にも浸透している」という主題が提示されている。例えば「アボリジニーは都市部に住むものが多く、自給的な生活を維持する者は少ない」わけであり、「イヌイットは定住化が進み、購入した食料に依存するようになっている」わけであり、「インディオは自給的生活をおびやかされている」わけである。さらに00B本第5問問7選択肢③参照。ここでは「地域の伝統的な文化や暮らしの維持が難しくなってきている」とある。どうなのかな~?世界の流れとしては確実に都市文明がどんな僻地にでも浸透し、次第に伝統的な生活は放棄されつつあるのが絶対的な定理となっているのだ。

しかし本問の選択肢④は「伝統的な生活はみられなくなった」ことが誤文となっているわけで、あえてベクトルの向きは反対方向。これは一体どういうことなのか?

ここはこのように解釈するしかないな。「完全否定」と「部分否定」の違い。本問選択肢④は「みられなくなった」と断言しておりこれは「完全否定」。それに対し97B本第2問問3や00B本第5問問7は、完全になくなったと言っているわけではなく、こちらは「部分否定」。だから要するにどういうことかといえば、先住民の生活において伝統的な文化や習慣、そして自給的な生活は失われつつあるが、しかしそれらが全て完全に消えたわけではない」というような実にあいまいな結論。まぁこんな風に解釈するしかないんだろうね。そう考えると実に興味深い選択肢があって、それが00B追第2問問5選択肢②。こちらでは「トナカイの放牧や野イチゴ、コケモモなどの採集を行って生活している人々は、現在ではいなくなった」とあり、実はこれは誤文。やっぱり「完全否定=×」「部分否定=○」と解釈して、問題を解くというやり方が一番いいような気がする。

ついでなんでもう一つ。05A追第2問問7参照。スラブ系民族の分布。東部を中心にスラブ系以外の民族すなわち少数民族が居住している様子がみてとれる。

 

[今後の学習]センター試験ではあまり国名にこだわるとよくないようだ。本問にしても、イギリス、ドイツ、リベリア、ロシアとあるが、イギリス特有のこと、リベリア特有のこと、と決め付けて考えるのは良くないと思う。イギリスやドイツについては「ヨーロッパの先進国一般」の状況、リベリアについても「アフリカの発展途上国一般」の状況であると考えた方がベターなんじゃないかな。

例えば、①についてはこう考える。ヨーロッパの先進国の多くでは人口の高齢化が進んでいるし、年金制度の充実やバリアフリー化は当然行われているとみていいだろう。②についても同様。ヨーロッパの先進国の多くでは、リサイクルや環境を考えた取り組みがなされているであろう。③についても、「リベリア」の部分を「アフリカの発展途上国」と代入して文を読んでみればいい。④はちょっと特殊かもしれないが、例えばこんな風になるんじゃないかな。「世界の少数民族の中には、伝統的な生活を今だ送っているものもいる」というように。

センター試験で、特定の国にのみ言えるような特殊な事例が問われることは少ない。ある国が選択肢に示されている場合には、その国を含むある特徴を有したグループ(例えばヨーロッパの先進国、あるいはアフリカの発展途上国)全体のことを考えて、一般化してから考えるというアプローチが必要になってくるだろうね。

 

問5

[講評]三角グラフの読み取りがカギとなっている。三角グラフは3つ合計した数値が100となる指標を表す際に用いるグラフで、本問のように産業別人口割合を示すのに非常に便利。とにかく三角グラフの読解だけは確実にしてください。それだけでオッケイ!

なお、第1次産業とは農林水産業のことで、第2次産業とは鉱業と鉱業(製造業と建設業)のことで、第3次産業とはそれ以外の全ての業種を含む。ただし一般的に「第1次産業=農業、第2次産業=製造業、第3次産業=商業・サービス業」と考えておけばいいだろう。

 

[解法]まず三角グラフを読解してみよう。

「第1次産業」と書かれている辺をA、「第2次産業」の辺をB、「第3次産業」の辺をCとする。第1次産業人口割合を読み取る際には辺Cの平行線を設定することが重要。例えばタイの1980年の第1次産業人口割合を読み取るのだが、この点を通過し、辺Cに平行な線C´を描いてみよう。そしてC´と辺Aとの交点を読む。第1次産業人口割合は約70%である。

第2次産業人口割合については、辺Aの平行線A´を設定し、辺Bとの交点を読む。約10%である。

第3次産業人口割合についても同じように、辺Bの平行線B´を設定し、辺Cとの交点を読もう。約20%となる。

以上より、タイの1980年の産業別人口割合は、(第1次:第2次:第3次)は(70%:10%:20%)と読み取れる。

参考までに他の数値も挙げておくので、各自読み取りを練習してみて、答え合わせをしてみてほしい。スムーズに読解できるかな?

タイ;2001年(45%:20%:35%)

エジプト;1980年(40%:20%:40%)2000年(30%:20%:50%)

韓国;1982年(30%:30%:40%)2000年(10%:30%:60%)

イギリス;1980年(3%:38%:59%)2002年(2%:23%:75%)

それぞれ3つ合わせた数字が100になっていることも確認しておこう。

ではそれぞれの選択肢を見ていこう。

①タイの「農業従事者の比率は急減」しているだろうか。

②エジプトの「製造業従事者の比率は高まった」か。同じく「商業やサービス業の従事者の比率はほとんど変わらなかった」か。

③韓国は「農業従事者の比率はほとんど変わらなかった」か。同じく「製造業従事者の比率が減った」か。

④イギリスでは「製造業従事者の比率が減った」か。同じく「商業やサービス業の雇用が増え」ているだろうか。

一つ一つ確認していけばいいでしょう。もちろん④が正解。

 

[関連問題]三角グラフが用いられている問題。

04B追第1問問7参照。火力発電・水力発電・原子力発電。これも3つ合わせて100%となる指標である。

92本第3問問4参照。第1次・第2次・第3次産業人口比。今回の問題と類似点は多い。

産業別人口割合に関する問題は非常に多いけれど、本問の解法には直接関係ないので省略。

 

[今後の学習]

しかしこれはいい問題だなぁと思う。なんやかんや特別な知識が問われているわけでなく、三角グラフの読解とそれぞれの産業の意味さえわかれば、解ける問題なんだよね。思考問題として完成度が高いなぁ。とにかくポイントは2点。「三角グラフの読み方」と「第1次・第2次・第3次産業の区分」である。別に難しいことではないね。

 

第6問

[講評]これも手こずった。難しいと思うよ。

 

[解法]年代を追った統計数字が表されてる場合は、過去のデータなどに注目するとかえってややこしくなるから、現在の数値だけに注目して解いた方が良かったりする。しかし本問は形式的にはそういった問題にあてはまるものの、だからといって2002年のデータだけを見ても全くわからないんだなぁ。非常に難しい。

だから問題の内容に注目するしかない。ここでは「米国の貿易赤字」が問われているわけだ。米国が世界最大の貿易赤字国であることはみんな知ってるよね。輸出に比べ輸入が多い。となると、ここからあることに思い当たるわけだ。つまり「貿易摩擦」というキーワードに。80年代の日米貿易は極端な貿易額の不均衡によって「貿易摩擦」の問題を生じた。自動車を中心とする日本の米国に対する輸出額が極めて大きく、輸入額との間に大きな差があり、日米貿易は、日本からみて貿易黒字、米国からみて貿易赤字となった。

このことが図3ではどこに表現されているだろうか。80年代は示されていないので、最も古い時代の「92年」に注目。AやCに比べBの幅が圧倒的に大きいではないか。どうかなぁ、これを日本に対する貿易の赤字額とみて間違いないんじゃないかな。

さらにAとCについて。ここで決定的に違うのはその伸び方。Cは92年の段階では数億ドルに過ぎなかったのに、今(02年)では十億ドルを超え、その額は対日貿易赤字額を超えている。これを近年とくに経済を発展させてきた中国とみていいのではないか。米国からみて、というより、世界経済の中で急激にその重要性を高めている国であることからCを中国とする。

残ったAがドイツ。ドイツの場合は貿易の過半がEU内の国間でなされるものであり、米国との間にさほど深い貿易関係がないと考えてもいいだろう。よって金額が日本や中国より小さいものであってもとくに不審なところはない。

 

[関連問題]雰囲気的には99B本第3問問4に似てると思うんだよね。グラフの形が似てるだけでなく、最も新しい数値をみるのではなく、全体的な流れをみないと解けないところも似ている。近年の中国急成長だけでなく、80年代の韓国高度経済成長もここではポイントとなっている。

 

[今後の学習]いやぁ~これね、やっぱり難しいと思うんだよね。何かもっと決定的な要素が欲しいなとは思うんだが。例えばEUやNAFTAに関するような。でも両者が結成された93年や94年辺りってそんなに数値に変化はないよね(あえていえば日本に対する貿易赤字額が小さくなっているが。でもこれは日本における不況のせいだしなぁ)。だからとにかく君たちが知っておくことは2点で「80年代における日米貿易の様子」と「近年における中国の急成長」。センター試験でしばしば問われているこの2つのトピックを利用してこの問題を解くしかない。ちょっと困難なことかもしれないけれど、センター過去問の中にヒントが隠されているのだということを我々は常に意識しなければいけないのだ。