2006年度地理B本試験[第5問]解説

2006年地理B本試験[第5問]

 

問1

[講評]Aはオリノコ川、Bはアマゾン川、Cはラプラタ川という河川なのだが、本問の場合は河川についての知識はほとんど不要である。アマゾン川はメジャーなので多少知っておいてほしいが、オリノコ川とラプラタ川については意識しなくていい。それよりもキーワードを大切にしていこう。Aの「パンパ」にような言葉。

 

[解法]Bの「流域面積は世界最大」が重要。これはアマゾン川である。流域面積とは集水域と同義で、どれくらいの範囲に降った雨がその河川へと流れ込んでくるかということ。南米大陸は巨大な山脈アンデスが西岸に沿って走り、これより東側に降った雨はアマゾン川へと流れ込む。非常に大きな流域面積を持った河川であることが理解できるだろう。また図1を見ても、Bの流域面積が極めて大きいことが読み取れる。AやCは本流も短いし、支流もさほど多くはない。それに対し、Bは本流が長いだけでなく(もっとも、どれが本流なのかははっきりしないけどね・笑)支流も多数が広い範囲へと張り出し、たいへん集水域が大きいことが観察できる。ゆえにイの記述がB川に該当する。そして、いうまでもなくこのB川はアマゾン川。

アについては「パンパ」を知っておけばいいと思う。パンパはウルグアイからアルゼンチン東部にかけてひろがる草原地帯で、温帯草原の広がる湿潤パンパと半乾燥草原の乾燥パンパとがある。詳しい話をするとキリがないんで、とりあえずパンパという草原があるんやなぁってことだけ知っておいてください。で、これよりC川がアに該当。

消去法でウがA川になる。

B川の流域面積の大きさを図から読み取り、さらにパンパがアルゼンチンやウルグアイのものだということさえ知っていれば無理なく解答できる問題である。

参考までに各文の記述についてさらに解説していこう。

アについて。

「グランチャコ」とある。これはパラグアイやアルゼンチン北部の亜熱帯草原のこと。牧牛や綿花栽培などがさかん。なおパラグアイの主要輸出品目は綿花である。

「粗放的な牧畜」については言うまでもないだろう。粗放的は新大陸の農牧業のキーワード。牧畜にしても南米の広い範囲では一般的に企業的牧畜が行われている。

先に簡単に触れているが、パンパについてさらに詳しく説明しよう。ウルグアイからアルゼンチン東部にわたる草原のことで、湿潤パンパと乾燥パンパがある。この地域を縦断する年降水量550mmの等温線の東側、降水量が多い地域が湿潤パンパで、降水量の少ない西側が乾燥パンパ。湿潤パンパはトウモロコシや大豆が栽培される混合農業地帯となっているほか、アルファルファという牧草が栽培されこれを飼料とした牧牛がさかんである。境界部の年降水量550mm一帯は肥沃なパンパ土に恵まれ、企業的穀物農業地帯として小麦が栽培されている。乾燥パンパは企業的牧畜地帯であり、降水量が少ないことから主に牧羊地域となっている。

おっと、ちょっとややこしい?まぁ簡単に「湿潤パンパは牧牛、乾燥パンパは牧羊」とだけ知っておいてください。要するに「湿潤=牛、乾燥=羊」っていうこと。これなら簡単だよね。

イについて。

アマゾン川の流域の広い範囲は熱帯雨林で覆われ、これは「セルバ」とよばれている。

アマゾン川は長さは世界第2位であるが、流域面積は極めて大きく世界第1位。南米大陸のおおよそ半分に及んでいることは、図1からも計り知れるだろう。

「農産物の輸出港」については意識する必要はない。天然ゴムの原産地であり、かつてはこの交易で栄えた都市もあったが、現在は天然ゴムの主産地は他へと移り、とくにアマゾン低地を産地とする商品作物はない。ちなみに天然ゴムの集散地として発展した都市がアマゾン中流域のマナオス。現在は工業都市として栄えている。

「鉱産物」は重要。付近に世界最大の鉄山カラジャスが存在する。この鉱山開発は熱帯林減少の一因ともなっており、必ずその存在は知っておかなければならない。「ブラジル=鉄鉱石」だ。

「大型船舶が航行」は非常に重要。アマゾン川は代表的な「国際河川」である。国際河川とは、複数の国を流れる河川のうち、国際条約などによって周辺国の自由航行が認められているものを指す。アマゾン川はペルーを水源とし、ブラジルを貫き大西洋に達する。船舶はブラジルを通過してペルーへと遡行することができる。(地名を知る必要はないが)ペルーのイキトスという都市は大きな河港を持ち、内陸水運の要衝となっている。

ウについて。

「リャノ」というのは熱帯草原。ここは雨季乾季の明瞭が気候であり、雨季になると周辺が水浸しになり、放牧されている牛が高地へと逃げるんだそうだ。何となく牧歌的な風景ではあるんだけど(笑)。まぁリャノなんて言葉は初めて出てきたし、とくに詳しく知っておく必要はないだろう。赤道のちょっと北側、コロンビア西部からベネズエラにかけて広がる熱帯草原なのだ。

「牧畜」というのはここで行われている牛の放牧のことで、「鉄鉱石の採掘」はベネズエラのこと。しかしベネズエラはむしろ原油(OPECの一員だぞ!)で押さえておくべきで、鉄鉱石は重要ではない。

 

[関連問題]河川流域の特徴を問う問題として類似性を感じるのは03B本第1問問5。スイスから流出する河川。ただし両問に共通していえることなのだが、決して河川そのものを問う問題というわけではなく、河川名などに関するっ詳しい地域は不要。それより河川が流れている地域のおおまかな自然環境などが頭に入っていればいい。

アマゾン川とその流域についても何回か取り上げられている。99B追第1問問1参照。アマゾン川の流量の多さ、そして流域の降水量の多さが問われる。99B追第1問問6参照。これこそアマゾン川の全てが説明されている良問。流域面積は世界最大であり、熱帯林セルバが広がっている。道路が建設され(トランスアマゾニアンハイウェーと呼ばれるもの)、開発が進む。鉱山開発や牧場建設によって開発が進み、熱帯林が失われている。中流のマナオスはかつて天然ゴムの集散地として栄え、現在は商工業が盛んな都市として重要。そして、アマゾン川は可航河川であり、内陸水運の要衝である。とくに複数の国を流れ、沿岸国への自由航行が国際条約などによって認められた「国際河川」であること押さえておきたい。04A本第1問問2参照。エの都市はマナオスだろうか。「セルバとよばれる広大な熱帯雨林が分布している」と説明されている。

パンパに関する問題。98B本第1問問6参照。アルゼンチンでは国土面積に占める牧場・牧草地の割合が高いが、これこそまさに「パンパ」。

 

[今後の学習]どうも最近南米特有の植生が問われる傾向が強いような気がする。熱帯草原の「リャノ」、熱帯雨林の「セルバ」、荒地が広がる「カンポセラード」、亜熱帯草原の「グランチャコ」、温帯草原と半乾燥草原の「パンパ」。名前だけでも知っておいてほしい。

セルバとパンパについては既に関連問題を挙げているので、ここではカンポセラードに関する問題を紹介するので確認しておいてほしい。98B本第1問問7参照。「まばらな低木の混じった草原」とあるがこれがカンポセラードで、写真1がその景観。04B追第1問問2選択肢②参照。「カンポセラードとよばれる草原地域」とある。

 

問2[講評]へぇ~おもしろい問題だなぁ。ちょっと傾向が変わっている。

 

[解法]結局このことに気付くかどうかなんだけどね、どうなんかな、難しいかな。ポイントは「海流」。海流の流れ方を考えれば、大陸西岸で寒流、東岸で暖流という大まかな流路が想像できるはず。東岸のLで寒流の影響があるだろうか。Lは大陸東岸だから、むしろあるとすれば暖流の影響。海流のみに注目すれば、この選択肢を誤りとできる。

選択肢①について。赤道低圧帯とは、赤道周辺に形成される空気の帯で、上昇気流の作用が強いため気圧が低くなっている。赤道に近い地域ではしばしばスコール(毎日午後にもたらされる一時的な集中豪雨)にみまわれるが、赤道低圧帯の影響下ではこのような降水が生じやすい。低緯度地域は太陽からの受熱量が大きく、暖められた空気は上空に昇って積乱雲となり、スコールをもたらす。

このことから考え、Kのような低緯度地域で降水量が多いことを赤道低圧帯の影響に結びつけることは妥当だろう。正文。

選択肢②について。中緯度高圧帯とは、緯度20~30付近一帯に形成される空気の帯。赤道付近で上昇した空気がこの緯度帯で下降し、気圧が高くなる。雲の発生が抑えられ、乾燥気候の一因となる。この中緯度高圧帯によって形成された代表的な乾燥地域としてはサハラ砂漠やオーストラリアの各砂漠がある。図2においても、全体的に緯度20~30度付近一帯で降水量が少ないのはこの影響であろう。

選択肢③について。日本から見てちょうど地球の反対側である。季節こそ逆転するが、日本と同じような気候が現れるとみて妥当だろう。夏(1月は南半球の夏)に前線や低気圧によって多雨となるのはわが国と同様。

選択肢④について。「偏西風帯が北上する」ことについて検討する。地球全体の風系の移動について考えてみよう。偏西風帯のレギュラーポジション(つまり春や秋の位置)は緯度40~50度付近一帯。これが1月を中心とする時季には南下し、7月を中心とする時季には北上するのだが、多雨(100mm以上)のエリアが1月の図ではやや南に位置しているのに対し、7月の図においてはやや北側に移動し、南緯35度付近を範囲に収めている。この多雨地域の変化を、地球の風系全体の季節的な移動に伴う偏西風帯の移動と重ねて考えることは可能だろう。

ちなみにこの都市はチリの首都サンチアゴである。夏季乾燥型の気候すなわち地中海性気候がみられるところ。1月を中心とする時季に南下する中緯度高圧帯に覆われ少雨となり、7月を中心とする時季には北上する偏西風帯や寒帯前線(高緯度低圧帯)の影響により降水が多くなる。

 

[関連問題]直接的な関連問題としては04B本第1問問3。大陸の西岸を北岸を流れている。寒流とは寒冷な海域の海水を暖かい海域に運ぶもので、南半球においては南(南極方面)から北(赤道方面)に向かって流れる。この方向を考えながら、南半球での大きな海流の流れ方が反時計回りであることを思い浮かべよう。

また、同じネタが3年連続で登場していることにも注目してほしい。04B本第1問問1(点Cの気候。アルゼンチン南部の少雨気候)、04B本第1問問3(ルートN。チリ南部の多雨とアルゼンチン南部の少雨)、そして本問。偏西風の影響によって、アンデス山脈の風上斜面側であるチリ南部では地形性降雨のため降水量が多くなり、風下斜面側であるアルゼンチン南部ではむしろ砂漠までみられることを理解しよう。

 

[今後の学習]ぶっちゃけ海流の問題なんだよね。それに気付けばすごく簡単な問題だと思う。でも結局「それに気付くか」なんだよね。わざわざ等温線まで用いた大げさな問題形式の中で、「寒流」という言葉に目がいくかどうかってやっぱりそれなりに難しいことだと思う。しっかり文章を読み込んで、そしてこの言葉に着目すること。気候の問題なんだと決め付けずに、あっこれはもしかしたら海流の問題なんじゃないかって考えることができる柔軟性が問われているんだぞ!

それからもう一点。やっぱり地球の風系の移動っていうものがここでも重要視されている。気候は、ケッペンの気候区分なんていう結果だけを追ったものではなく、風系の移動という「なぜそのような気候が生じるか」というシステム的な部分こそが重要視されるということだ。せっかくなんでもう一度確認してみようか。

1月の図において、最も降水量が多い地域が南半球側にある。この時季に南下する赤道低圧帯の影響によってアマゾン南部に月降水量300mm以上の地域が生じている。一方、地球全体の風系が北上する7月には、「300」の等値線が北半球側にある。この時季には赤道低圧帯が北上しているのだ。

中緯度高圧帯の移動についてもわかりやすいと思う。1月と7月を比較した場合、月降水量が100mmに満たない地域の範囲は、1月がやや南側に偏り、7月はその範囲が赤道付近にまで拡大している。

偏西風帯や寒帯前線の移動については、解法の選択肢④の説明の部分で触れているのでそちらを参照すること。

 

問3

[講評]結構手ごわい問題だね。苦しんだ人も多かったみたい。だってまさか「ドミニカ共和国」なんていうマイナーな国名が登場するとは思わないよね。ちょっとビックリです。

 

[解法]まずメキシコに注目しよう。メキシコはメスチソの割合が高い国。メスチソとは、インディオと白人の混血のこと。インディオはラテンアメリカ地域の先住民でアジア系の人種つまりモンゴロイド。白人はコーカソイド。この時点で、選択肢が①か⑥にしぼられる。

で、ここからなんだがこれが難しいんだよなぁ。そもそもドミニカ共和国なんてマイナーな国、誰も知らないもんね(ちなみに野球ファンなら知っているかもしれないけど。米国メジャーリーグにはホームラン王のサミー・ソーサを始め、ドミニカ共和国出身の選手がかなり多い)。ただしここから考える。白人と黒人の混血はムラートといい、比較的よく耳にする言葉。君たちも知ってるんじゃない?それに対し、黄色人種(つまりインディオ)と黒人(ネグロイド)の混血は何という?これって知らないよね。もちろん特別な言い方はあるんだが、そんなものは逆に知らない方がいい。センター試験にそんな特殊な用語は出るわけないじゃないかと割り切ってしまうことが大事。

これらのことから、まさかモンゴロイドとネグロイドの混血が話題にされるわけはないのだから、ここは黒人と白人の混血が当てはまるのだろうと推測する。以上より、bがネグロイドであるのはすでにわかっているので、aをコーカソイドとする。

 

[関連問題]こういった人種・民族に関する問題は地理Aに多く、地理Bでここまで難しい問題が問われることはなかった。まさに地理Bに地理A的なエッセンスが含まれる、新課程特有の問題といえよう。

当然、関連問題にも地理Aのものが多い。

99B追第2問問1参照。非常に重要な問題だと思う。ここで「ムラート」と「メスチソ」が登場しているのだ。やはりそれぞれの言葉の意味は確実に知っておかなければいけないということだろう。「ムラートは黒人と白人の混血」「メスチソは黄色人種と白人の混血」としっかりインプット。

99A追第1問問2参照。混血について問われているわけではないが、ウルグアイで白人の割合が高く、ハイチで黒人の割合が高いことが取り上げられている。

98A追第1問問2参照。モンゴロイドがベーリング海峡(ユーラシア大陸と北米大陸の間)を越え北米大陸に移動し、現在のイヌイット、アメリカインディアン、インディオの祖となったことが取り上げられる。

98A追第1問問4参照。ネグロイドの分布域が南北アメリカ大陸で拡大した。ヨーロッパの植民地支配によってこの地域に多くの黒人が連れてこられたことが述べられている。

 

[今後の学習]これ、結構キツイよね~、これからこのレベルの民族ジャンルの問題がどんどん出てくるのだろうか。どうやって対策するか。

とにかく最低限メスチソについては知っておかないといけない。これは先住民であるインディオとヨーロッパから流入した白人の混血のこと。メキシコなどでその割合が高い。

このメスチソの知識さえあれがあとは何とかできたんじゃないかなぁ。ドミニカ共和国について知っておけっていうのはいかにも酷だと思うんだよね。

「多くのあいまいな知識より、少しの確実な知識」ということで、「メキシコ=メスチソ」だけしっかり知っておけ!

 

問4

[講評]これね~結構難しいと思うんだよ。「ブラジルで鉄鉱石が採れる」ことは知っていても「ブラジルで石炭は採れない」なんてことまで知っているかということ。どうかな?「存在する」ことを知っておくのは当然かもしれないけれど、「存在しない」ことをわざわざ知っておけっていうのは辛いよね。本問はそういった問題なのだ。

 

[解法]ブラジルは石炭が取れません。よって③が誤り!

と、結局これだけ何だよね。君は解けただろうか。解けたとしたらどういう解き方をしただろうか。

ブラジルで石炭が採れないというのは非常に重要なことなのだ。地体構造的にいうと、南アメリカ大陸には古期造山帯はない。古期造山帯は石炭紀の地層を含み、石炭資源を豊かに埋蔵していることが多い。米国のアパラチア山脈やオーストラリアのグレートディバイディング山脈など。しかし南アメリカ大陸は安定陸塊と新期造山帯によって形成されており、古期造山帯の地形は存在しない。ゆえに石炭資源も非常に乏しい。

統計のおもしろさ的にみても(変な言い方・笑)、興味深い。鉄鉱石産出上位国と石炭産出上位国は一致している。つまり鉄鉱が採れれば石炭も採れるということ。中国、オーストラリア、米国、ロシア、インド、カナダ、ウクライナ、南アフリカ、いずれも鉄鉱石と石炭がともに豊富に産出される国である。もっとも、産出上位国ではあっても、鉄鉱石しか産しないスウェーデンと、石炭のポーランドがあるが、ヨーロッパという広い範囲(それでも米国やロシアに比べれば狭いのだが)でとらえれば、両資源とも豊富に採掘されるとみなしていいだろう。で、その非常に珍しい例外がブラジルなのだ。ここは石炭は全く採れないが、鉄鉱石は世界最大の産出量。「片方しかない」という極めて珍しいレアケースとしてブラジルをとらえておくべき。

環境問題的にも重要。石炭がないことが熱帯林の減少に結びついている、といわれたらどうだろう?鉄鋼業の成立のためには鉄鉱石と石炭が必要なのだが、ブラジルには石炭がない。このため、鉄鉱石を溶解させる燃料として豊富な熱帯林を伐採し使用したという過去がある。貴重な森林をそのような用途で切ってしまっていいのだろうか。ブラジルも罪なことをしたものだ(涙)。

この問題はこの「ブラジル・ノットイコール・石炭」から答えを導けばいいのだが、参考までに他の選択肢についてもコメントを。

選択肢①について。ブラジルは「人口最大都市と首都が一致しない国」の代表例。首都ブラジリアは計画的に建設された政治都市であり、内陸の高原に位置する。旧首都は港湾都市のリオデジャネイロであり、人口最大都市は沿岸に近いサンパウロである。図3でいうと、「南東部」という文字の真下にある最も大きな円がサンパウロ。ブラジル高原南部に位置し、肥沃なテラローシャが分布しコーヒー栽培がさかんな地域である。その右側がリオデジャネイロ。世界三大美港にも数えられる美しい港湾を有し、ポルトガルの植民地経営の根拠地としても発展した歴史をもつ。ここから移転した首都ブラジリアは「中西部」のエリアにある大きい方の円。内陸部開発の拠点でもある。

選択肢②について。上でも既に説明しているがサンパウロのこと。決して港湾都市ではないが、コーヒー豆の主産地として発展してきた。もちろん現在もリオデジャネイロと並んでブラジル商工業の中心地の一つである。

選択肢④について。これは人口移動の原則を考えればいいだろう。経済レベルの低いところから高いところへと人々は流れるのだ。特に具体的に考える必要はない。

 

[関連問題]02B追第1問問5選択肢②参照。森林が燃料として使用されたことが述べられている。鉄鉱石を溶解し、鉄鋼業を成立させたことを考える。

02B追第1問問5選択肢③参照。ブラジルは石炭を産する国ではないので、酸性雨も生じにくい。酸性雨の主たる原因は、石炭を燃焼する際に発生する二酸化硫黄。石炭は不純物として硫黄を含んでいるのだ。

 

[今後の学習]統計がポイントになっていることは間違いない。本問のように「産出されるもの」だけではなく「産出されないもの」をあえて知っておくということも重要なのだ。

 

問5

[講評]僕はこの問題を見た瞬間に「量」っていうところに目が奪われるわけだ。実数つまり絶対数が問われているということ。この意味がわかるかな。

 

[解法]

「漁業生産量」については問題ないよね。寒流に面しているペルーの漁獲がこの3か国中では最も多い。ペルーは世界的にみても、中国に次ぐ漁獲国。Zがペルー。

ここからは「肉類の生産量」に基づいてブラジルとメキシコを判定。君たちはどう考えた?例えば、牛肉の生産統計を知っておいてもいい。第1位が米国で第2位がブラジル。あるいはホイットルセー農業(農牧業)区分に基づいて考えてもいい。ブラジルの広い範囲は企業的牧畜地域であり、この農牧業形態では一般的に肉牛か毛羊が飼育されているのだが、ブラジルで羊はちょっとイメージから外れるので、やはりここは肉牛だろう。あるいは牛が湿潤な気候環境を好むことを考えてもいい。ブラジルは主に熱帯の国でメキシコは主に乾燥帯の国だから、牛が多いのはブラジルでしょ?

ま、こんな感じで考えてくれたらいいとは思います。でも僕はね~、邪道かもしれないけれど、あえて上に記したような解法とは別の思考パターンによってXをブラジル、Yをメキシコと判定したのだ。それが最初にも言ったけれど「実数」の考え方。

中南米っていうのはヨーロッパ的な文化が伝わったところでもあるし、肉中心の食生活になっていると思う。日本みたいに魚を食べる文化はないよね。たしかにペルーやチリなど漁業のたいへんさかんな国も多いけれど、それは「自給的」ではなく飼料として米国などに売るような「商業的」な理由が主となっている。人が食べるわけではないのだから、人口の多さと漁獲の多さは全然関係ないでしょう。

それに対し、肉ってどうだと思う?新大陸だからそもそも畜産自体が「商業的」に行われているとは思うけれど、彼らの食生活が肉中心である以上「自給的」な生産も多いはずだよね。人が多ければそれだけ消費量も多くなるわけで、これらを国内での畜産業によってまかなっているとすれば、「人口規模と肉類生産量の大小は比例する」というセオリーが成り立つのではないだろうか。

しかも選択肢の国々をみる。ブラジル、メキシコ、ペルーだよ。これを人口順に並べるのは簡単だよね。ブラジルは世界第5位の人口大国であるし、メキシコも人口1億人を超える国。ペルーの人口は詳しくは知らないけれど、ブラジルやメキシコに匹敵するものではないだろう。よって、ブラジル>メキシコ>ペルーの序列が決定する。同じラテンアメリカ人であり、1人当たりの肉類消費量は変わらないだろうから、国全体の消費量も同じく、ブラジル>メキシコ>ペルーとなる。例えば、ブラジルが肉を輸入しているとは思えないよね。むしろ輸出しているはずだ。そんなブラジルの肉類生産量が他の2か国より小さくなるわけがないので、Xをブラジルと判定して間違いないだろう。

Yもやはり人口規模を考慮してメキシコになる。ラテンアメリカ第2位の人口の多さを誇る国であり、その胃袋を充たすためにはこれぐらいの生産量は必要なのだろう。ちなみにメキシコの人口が1億人を超えるのに対し、アルゼンチンは約5000万人。例えば君たちはアルゼンチンこそ代表的な畜産国であり、肉類の生産が多いと考えているかもしれないが、実際にはメキシコと大差がない(っていうかやや少ない)。でもこれも意味わかるでしょ?メキシコとアルゼンチンを比べた場合、メキシコは人口が多いわりには肉類の生産は少なくて、アルゼンチンは人口が少ないわりには肉類の生産は多い。「1人当たり」に直したらアルゼンチンの方が高い値となるわけだ。「実数」として劣るアルゼンチンだが、「割合」は高い。この2か国の性格を比べた場合に、肉類の生産国として明確なキャラクターを持っているのはアルゼンチンなのだ。

 

[関連問題]本問は決して食文化そのものを問うものではないけれど、「肉類」に関してはそれと結びつけて考えることも可能。よって食文化や食生活に関する問題をまず挙げておこう。

05B本第3問問7参照。韓国、中国、日本の魚介類消費量。東アジア地域の食文化から考えて、人口が多い国でこの値も大きくなっている。

02B本第3問問7参照。本問と同じく、肉類と魚介類が取り上げられている。ただしこちらは「1人1日当たり」なので注意。人口規模に比例するものではない。

01B本第2問問2参照。ブラジルが輸入地域となっているので牛肉ではない。ブラジルは牛肉の主要輸出国の一つ。

それにしても南米の漁獲ネタって本当によく出るよなぁ。代表的な出題例を。

04B本第1問問7参照。チリの漁獲量など。

03B本第2問問7参照。エクアドルやチリの主な輸出品目の中に魚介類がある。

01B追第4問問6参照。ペルーの漁獲の多さ(世界第2位!)。

 

[今後の学習]漁獲統計はしばしば出題されているのでこちらの判定は容易だったと思う。問題は肉類だよね。上で説明したように人口と結びつけることもできるけれど、それは南米では肉を食べる文化が一般的だからで、他の地域に該当するかはわからない。しっかりと牛肉の生産と輸出の統計は確認しておくべきだろう。結構盲点だと思うよ。米国とブラジルが重要。インドは牛の数は多いけれど、食用とはしていない。

 

問6

[講評]非常に変わった問題だと思う。結局貿易品目について尋ねているんだが、だったらこういった文章正誤問題の形式ではなく、図や表を用いた設問形式にすればいいんじゃないか?その方が全然わかりやすいし、いかにもセンター地理の問題っぽいぞ!内容にしても、ストレートに4か国の貿易統計を問うたらいいと思うんだけどなぁ。何だか重箱の隅を突いたようなイジワル問題になっているような気がするよ。

 

[解法]絶対に外れるのが③。チリは銅の国。金と銅を混乱させたいんやな、っていう出題者の意図もわかって、たいへん気持ちよく(笑)この選択肢を除去できる。

さらに④。この選択肢もなかなかうまい作り方だなぁ。結局NAFTAが理解できてるかどうかってことだよね。北アメリカ自由貿易協定、カナダ・米国・メキシコ3か国の間に自由貿易が実現しており、これらの国々の間の貿易は非常にさかん。米国にとって最大の貿易相手国はカナダ、第2位はメキシコ。そしてメキシコにとって貿易の約80%は米国相手のものである。米国からカナダにさかんに電気機械組立工場が進出していることを想像する。米国からみれば安価な賃金の労働者を雇用できるというメリットがあり、メキシコとしては多くの雇用を確保でき、技術なども参考にすることができる。

で、①と②が残るんだ。これは難しいのでできなくてもいいと思う。ただしちょっと考えてほしいんだが、ここからはやっぱり文のニュアンスなんだよね。①は「主要な輸出品」とある。第1位にこだわっているわけではないんだ。主要やねんから2位でも3位でもかまわないわけだよ、ぶっちゃけ。そうなるとこの選択肢は否定しにくくなる。いったいどこまでが「主要」の範囲なんだろう。

それに対し②の方ははっきりしている。こちらは「第1位」なんだから。農産物なんだからたまには不作の年もあるかもしれない。そんなちょっとしたことで第1位が第2位になってしまうってこともあるよね。でもそれじゃあダメなんだ。確実に「第1位」でなければこの問題の場合は正文にはならない。

どうだろう?どちらの方が「誤り」の選択肢となりやすいか。誤りである可能性が高いか。あるいは問題を作る側の心理に立ってもいい。やっぱり「第1位」って断定するのって結構根性いるんちゃう?それに対して「主要」って方はアバウトやん、ちょっと違っていたとしても、たとえば第5位ぐらいだったとしても、強引に「主要」だって言い張っちゃえば何とかなるんじゃない?そんなわけで、文のニュアンスの部分であいまいに言っている①を正文とし、はっきり断定している②を誤文とする。どうかな?すごく無責任な解法に思えるかな?(笑)。いや、でもね、この問題の場合はこの解き方が最も適切なんだと思う。こうやって解くしかないよ、わからんのだ。

 

[関連問題]関連問題っていうかそのまんまの問題が03B本第2問問7。エクアドルの最大輸出品目は魚介類なのである。もちろんこれを知っていれば本問は②を正解にできた!

でもそんなのちょっと無理だよね(笑)。解法で示したようなやり方(③と④を外し、①と②は文のニュアンスで決める)で考えるのがやっぱり一番ベターだよ。

選択肢③と④については非常にオーソドックスなネタであるので、ここでは関連問題は省略です。①のアルゼンチンについては03B本第2問問6選択肢④参照。アルゼンチンの首都ブエノスアイレスが示され「農産物の集散地」「小麦」「食肉加工」とある。アルゼンチンについてはこういった農畜産物の生産が主産業であることを意識付けておくといい。

形式だけが似ている問題として03A追第3問問3がある。こちらは東南アジアの貿易品目を文章正誤の形で出題していて、マレーシアはそもそもが米の輸出国ではないというネタ。現在は機械工業が発達しているマレーシアであるが、かつては一次産品輸出国であり、その主な輸出品目は天然ゴムだったわけだよね。やっぱりこちらも難易度が高めかな。

 

[今後の学習]厄介な問題なんだよね~かなり。どうしたもんかなぁって本当に思うよ。選択肢③と④が誤りであることは問題ないと思う。結局ポイントは選択肢②が誤りであることをいかに証明するかってことだよ。そうなるとやっぱり文のニュアンスからいかに判定するかってことに焦点がしぼられるかだと思う。問題(もちろんセンター過去問ですよ)を研究して、こういった問題に慣れておくことが大事になってくるはずだ。それしかないよな。習うより慣れろって感じ。