2007年度地理B本試験[第5問]解説
2007年度地理B本試験[第5問]問1
2007年度地理B本試験[第5問]問1
[講評]合計特殊出生率が出題されたのは初めてじゃないかな?でも一般的な出生率の高低に置き換えて考えてみても全然オッケイだったので、とくに混乱はなかったはず。「出生率≒人口増加率」のセオリーから解く。ちなみに「出生」は「しゅっしょう」と読んでください。「しゅっせい」ではないので要注意。こういったところを確実に読むという気持ちが、テストでも高得点をもたらすのだよ。
[解法]まず大陸別の年人口増加率を考える。
3%;アフリカ(子供が労働力として期待されている)
2%;ラテンアメリカ(離婚と中絶を禁じるカトリック)・南アジア(ヒンドゥー教は多産を奨励)
1%;東アジア(中国の一人っ子政策)・アングロアメリカ・オセアニア(移民の流入が多い)
0%;日本・ヨーロッパ(女性の社会進出などにより少子化)
バングラデシュは「南アジア」なので2%。中国は「東アジア」なので1%。日本は0%。
「東南アジア」のタイは表中にはないが、「東南アジア=東アジア+南アジア」と考え、両者の中間の1.5%と考える。
人口増加率と出生率は原則として比例する。2000年の値に注目し、最も高い①がバングラデシュ、最も低い④が日本、中間の②と③が中国とタイである。人口増加率に差が少ないので、合計特出生率も差がないのは仕方ないこの時点では、2000年より以前の数値については注目しない。
2つにしぼってから中国とタイの判定。ここからは過去の動きにも着目する。②は一定の減り方。さほど不自然なところはない。しかし③はどうだろう?70年代に大きく低下するなど、どうも作為的な動きがみられるようだ。これをどう解釈するか?ここで「中国の一人っ子政策」が思い浮かべば勝ちなんだけれど、君たちはどうだったかな?「中国では政策によって漢民族の子供の数は1人に制限されている」という「特殊な事情」が、このグラフの「特殊な動き」に対応させて考えることができれば勝ちだったんだけどなぁ。
社会主義政権成立直後は出生率が低かったが、国家的な取り組みによって60年代に急激に人口が増加に転じた。しかし70年代以降は一人っ子政策によって出生率が抑えられることによって、人口増加率も低いレベルにとどまっている。このような中国の人口の動きが想像して、③がこれに該当すると考える。タイにはそういった特別は事情は存在せず、自然に合計特殊出生率が低下していると考えられ、②が該当
なお「合計特殊出生率」とは、「1人の女性が一生涯に産む子供の数の平均」のこと。男は子供を生めないのだから、この値が「2人」
だと丁度いいことは理解できるよね。一組の夫婦に2人の子供。ただし、病気などで若いうちに亡くなってしまう子供も多少はいるよね。だから0.1だけプラスして、合計特殊出生率が「2.1人」のときに、次世代も現在と同じ人口数をキープすることができるといわれている。逆にいえば、この値がそれより小さい時、将来的に人口は減少してしまう。日本ではかなり以前に2.1人を割り込み、現在はわずか1.3人にしか過ぎない。10組の夫婦(20人)から13人の子供っていう意味だ。親の世代の人口に比べ、子の世代の人口は3分の2になってしまうということ。こりゃヤバイよね~
[関連問題]合計特殊出生率が取り上げられたのは初めてだと思う。ということで、単なる出生率が問われた例を関連問題として挙げてみる。
99B追第5問問3参照。本問と最も類似性が高いのはこの問題。スウェーデン、スリランカ、日本、フランスの4か国の過去100年間の出生率の変化を判定する。スリランカはバングラデシュと同じく南アジアに含まれる国で、人口増加率が高く、つまり出生率も高い(もちろん合計解く出生率も高いとみていい)。他の3つはいずれも人口増加率の低い国であるが、これらの判定は過去(第2次世界大戦のころや、日本の高度経済成長期など)のデータに注目。
04A本第2問問7参照。エジプト、スウェーデン、日本、フィリピンの出生率が扱われている。人口増加率の低いスウェーデンと日本で出生率が低く、人口増加率の高いエジプトやフィリピンで出生率が高い。なお、フィリピンの属する東南アジアは、アフリカに比べて人口増加率の高い地域ではないが、フィリピンは例外的にカトリックの国であり、その中絶を禁じるなどの教義ゆえ周辺諸国より人口増加率が高く、アフリカ並みの水準となっている。
05B本第4問問5参照。インドとスウェーデンの、出生率・死亡率・総人口。人口増加率の高いインドと低いスウェーデンについて、出生率が大きく異なることを確認しておこう。
05B追第2問問7参照。人口増加率の高いアフリカの「エチオピア」で出生率が高く、人口増加率が低いヨーロッパの「チェコ」は首相率が低い。東南アジアの「インドネシア」はその中間。
02B追第4問問1参照。非常に興味深い問題なので徹底的な分析が求められる。出生率に関しては「最も高いアフリカ、中ぐらいのアジア、低いヨーロッパ」となるので簡単。問題は死亡率。「90-95年」の値に大きな差がないので、50年代や60年代の数値に注目しないといけない。ウは古い時代から死亡率は低かった。これがヨーロッパ。とくにウは逆に現在の方が死亡率が高いが、これはヨーロッパの高齢化によるもの。高齢社会では死期を迎える老人の割合も高くなり、死亡率が上がる。
イは大きく死亡率が低下している。経済的な発展を遂げ、医療技術や衛生条件が改善されたアジア。それに対し、「貧困」なアフリカはまだ死亡率がアジアなどに比べてやや高い。
[今後の学習]解法のところで説明しているように、大陸別の人口増加率を数値として頭に入れておくこと。それが人口の基本だ!
2007年度地理B本試験[第5問]問2
[講評]階級区分図を用いて、各階級ごとに「高位」「中位」「低位」の判定をさせるというパターンの問題は昨年初めて出題されたが、今年もその形式が継続されている。これは非常に興味深い。「グラデーションの法則」を使えば意外と簡単に解ける。
[解法]Cが「低位」なのは問題ないだろう。日本や欧米など経済レベルが高い国では児童の就学率が高いはずで「就労率」は低いと考えられる。問題はAとB。僕はここで徹底的に悩んでしまったのだ。Aに該当する国はインドやブラジルなど。これらの国は貧富の格差が大きく、一部の恵まれた階層の児童は学校に通っているかもしれないが、大多数を占める貧しい児童はそれも叶わない。もしかしたらインドやブラジルこそが「高位」なんじゃないか。
でもそうじゃないんだよね。僕は主観的なイメージを優先してしまい、客観的なデータに基づいて考えるという冷静な視点を失ってしまった。インドはともかくとして、ブラジルは工業国であり、比較的経済レベルは高い(1人当たりGNIは約4000$/人)。また同じくAに該当する国にタイがあり、同じく経済レベルは高め(約2000$/人)。少なくとも周辺のカンボジアやミャンマーよりは進んだ国である。「先進国ほど児童就労率が低く、発展途上国ほど高い」というセオリーに当てはめてしまっていいと思う。もちろん先進国とは1人当たりGNIが高い国のことで、発展途上国とはそれが低い国のこと。ブラジルとタイが入っているんだ、Aを「中位」とし、残ったBを「高位」としてしまっていいだろう。
で、確認のために「グラデーションの法則」が当てはまっているかを考える。階級区分図における各階級は、間を抜かして飛んでいる傾向は弱い。やはりグラデーションのように連続して段々と変化していくといった動きが一般的なはずだ。
たとえば南米に目を向けよう。他の地域が「低位」であるのに対し、ブラジル(とボリビア)だけがいきなり「高位」とはならないだろう。せいぜい「中位」ぐらいなのでは。
アフリカ南部もわかりやすい。アフリカ最大のGNIを有する工業国である南ア共和国で「低位」。Aが「高位」、Bが「中位」だったら何だかバランスが悪いように見える。南アで「低位」、ボツワナやナミビアで「中位」、アンゴラやコンゴ民主で「高位」とグラデーション風に変化していった方が自然に見えるよね。
もちろんアフリカ北部や中国と東南アジアの境界のように「低位」から「高位」へと段差をつけて変化する箇所もいくつかみられる。ただし、アフリカについてはサハラ砂漠という自然的要害を挟んでの変化であるし、とくに北アフリカの国々は産油国が多いので、中南アフリカ諸国とは全く状況が異なると理解するべきだろう。東南アジアについても、ミャンマーは軍事政権、カンボジアは内戦国という特殊な条件であるがゆえのことと納得してほしい。
[関連問題]児童の就労率に関する問題は過去に出題例はないが、類似したものはあるので確認していこう。
97B本第3問問2参照。先進国では進学率が高く、20歳未満の就労率は低い。
98B本第2問問3参照。就職率が下がり進学率が上昇するのは現代日本の傾向。
00B本第2問問6参照。「就業人口に占める女性の割合」に関する図であるが、本問と比較するとおもしろいと思うよ。オーストラリアのような先進国では、社会が熟成しているため、児童が労働する必要がない反面、女性の社会進出がさかん。サウジアラビアのようなアラブ産油国は、比較的裕福であるため就労している児童の割合は低いが、イスラム教の戒律があるため女性の社会進出は制限されている。1人当たりGNIが極めて低い東部アフリカの国々は、女性も児童も農業を中心とした労働に従事しなければいけない。
04A本第2問問7参照。全労働力人口に占める女性の割合と出生率に関する問題。出生率が低い国(先進国)では女性の社会進出がさかんであることがわかる。
グラデーションの法則については、本年度の類題である07B本第6問問4を参照しよう。
[今後の学習]強調したい点は2つ。「困った時は経済レベル」そして「グラデーションの法則」。
経済レベルに目を付けるという方法は常に正しい。経済レベルが低い地域では、その中でも例外的に経済レベルが高い国にこそ注目する習慣を付けておく。東南アジアではマレーシアとタイ、アフリカでは南ア共和国、南アメリカではブラジルが重要なのだ。例えば、カンボジアとマレーシアを比べて、マレーシアの方が社会的に低位にあるということはありえないのだ。
「グラデーションの法則」については、これのみで決め付けてしまっては危険だが、最後の確認として一応これを意識するということは大切だと思う。とくに今後、このような形式の問題が増加するかもしれない。その時に慌てず確実に解答するためにも「物事はだんだんとグラデーションのように変化する。急激に変化するならば、そこには特別な理由があるはずだ」というセオリーを念頭に入れておく。
2007年度地理B本試験[第5問]問3
[講評]1人当たりGNIがダイレクトに出題されている!このパターンは決して珍しくはないのだが、それにしても問われている国がヤバイ!インドはともかくとして、エジプトとベトナム。君たちはこれらの国についてどれくらいのイメージがあるか。
[解法]もう全然できなくていいよ。手の施しようがない問題だと思う。Kがエジプトなんだけれど分かるかな。エジプトは北アフリカに位置し、そこそこ原油も産出され、これを輸出することによって国内経済が潤っている。世界的な団体であるOPEC(石油輸出国機構)には属していないが、アラブ国家による石油産出国の団体であるOAPECには属している(センター地理BでOAPECが問われることはないと思うので知らなくてもいいよ)。またイスラム教徒が多数を占める国であり、コーラン(イスラム教の経典)の厳格な教義によって、女性の社会進出が制限されてしまっている。女子に対する教育もさかんではないだろう。男性に比べ、女性の識字率がとりわけ低いのもイスラム教国の特徴の一つ。
インドとベトナムについては、問2が参考になると思う。インドとベトナムの「児童就労率」を比べるとインドが「中」であるのに対し、ベトナムは「低」。働いている(働かざるを得ない)子供は学校に行っていない(行けない)と考え、全体の識字率はインドで低くベトナムで高いとみていいだろう。Mがインド、Lがベトナム。人口規模が極端に大きいインドでこそ1人当たりGNIの値が低くなるような気もするんだが、ベトナムの方がさらに低いというわけだ。もっとも540ドルも480ドルも大した違いじゃないけどね。
[関連問題]
1人当たりGNIから国を特定する問題。
99B追第5問問5参照。韓国の1人当たりGNIは約10000$/人。
01B本第1問問5参照。マレーシアの1人当たりGNIは約5000$/人、タイは約2000$/人。
04B追第4問問5参照。ブラジルとメキシコの1人当たりGNIは約5000$/人、バングラデシュは1000$/人に満たない。
99B追第5問問4参照。アジアやアフリカの国々の多くは1人当たりGNIが2000$/人に満たない。
エジプトについて。
04B追第4問問5参照。エジプトの1人当たりGNIなどがここで取り上げられているんだよなぁ。。。
04B本第3問問6参照。エジプトの貿易品目が取り上げられている。石油製品などの輸出が多く、1人当たりGNIはそれなりの高さなんじゃないかなと想像できる。
00B本第2問問6参照。経済レベルの高い国で「高」となっているので、②③④に選択肢はしぼられるが、東アフリカの経済レベルの低い国々で②や④が高いわけがない。よって正解は③。先進国では女性の社会進出がさかん。イスラム国家では女性の社会進出は制限される。貧困な国々では女性も労働に従事しなければ生活を営めない。豊かな国々、イスラムの国々、貧しい国々でそれぞれの事情があるということ。
00B本第2問問6参照。イスラム教国において女性の社会進出はさかんではない。識字率も男性に比べれば低くなる。
ベトナムについて。
01B本第2問問5参照。キがベトナムに関する記述だが、社会主義国であるので「市場経済化を進め」がキーワードになっている。資本主義国なら最初から市場経済だから、わざわざ「進め」とは言わないよね。
05B追第4問問5参照。ホーチミンとはベトナムの都市。シがホーチミンの説明。ベトナムは「フランス」の植民地であった。社会主義国であるが「経済政策を転換」させ(ドイモイ計画という)、外国企業を受け入れるようになった。
[今後の学習]難しいよなぁ。1人当たりGNIの出題は珍しくないものの、問われている国がマイナーすぎる。しかしどうだろう?今回こんな問題が問われたわけだから、開き直って主な国の1人当たりGNIについてはかなり詳しいところまで覚えてしまってもいいんじゃないか?
このように概数で知っておけばいいんだと思うが、一応具体的な数値も国名の後にカッコで示している。いろいろ思考を巡らせてくれ。統計の年次は2003年。
1人当たりGNI | EU加盟国 | 非EU国 |
50000$/人 | ルクセンブルク(49000) |
|
45000$/人 |
| ノルウェー(43400) |
40000$/人 |
| スイス(40680) 米国(37870) |
35000$/人 | デンマーク(33570) | 日本(34280) |
30000$/人 | スウェーデン(28910) イギリス(28320) |
|
25000$/人 | フランス(24730) ドイツ(25270) | カナダ(24470) |
20000$/人 | イタリア(21570) | オーストラリア(21950) シンガポール(21230) |
15000$/人 | スペイン(17040) | ニュージーランド(15530) |
10000$/人 | ポルトガル(11800) | 韓国(12030) |
5000$/人 | ポーランド(5280) | メキシコ(6230) マレーシア(3880) |
2000$/人 |
| ブラジル(2720) ロシア(2610) タイ(2190) |
1000$/人 |
| 中国(1100) インド(540) |
2007年度地理B本試験[第5問]問4
[講評]ちょっと変わった問題。食料供給に関する問題は珍しくないものの、「供給栄養量」が問われた例は過去にはなかった。
[解法]上でも述べたように「食料供給量」は初出であるため、これに注目するとしんどい。ここはやはり「農業就業人口の割合」に注目するべきだろう。農業就業人口割合は、第1次産業人口割合とほぼ同義なのだが、概して1人当たりGNIに反比例する傾向がある。農業のような収益性が低い仕事に従事している人の割合が高い国ほど経済レベルも低く、農業以外の収益性の高い仕事に従事している人の割合が高い国ほど経済レベルも高い。
ただしここではそのような一般的傾向を考えても正解には届かない。「日本における第1次産業人口割合は約5%である」。このことに注目して確実に解いていこう。
問題文参照。「アジア、アフリカ、ラテンアメリカの三つの地域における人口規模上位20か国について」とある。この中に絶対的なヒントがあるんだよ、わかるかな?そう、対象国の中には「日本が含まれている」のだよ!
このことからアジアが特定される。農業就業人口の割合が約5%の国を含むのはウしかない。これが日本。なお日本の供給栄養量は約2700kcal/日で、とりわけ高い数値ではない。これはどう解釈する?「飽食」日本のイメージからは遠いもののような気がする。でもこれはこれで正しいのだ。ほら、海外で日本食が注目されているとか言うじゃない?日本食ってヘルシーなんだよね、欧米の油まみれの食事に比べれば。そもそも日本人って小柄だし、そんなに多量のカロリーが必要なわけじゃない。「先進国=高カロリー」っていう法則は、少なくとも日本には当てはまらない。
アとイについても同様に経済レベルを基準に考えたらいいと思う。アフリカとラテンアメリカを比べて、どちらの方が経済レベルは高いと思う?例えばアフリカ大陸で最も人口規模が大きいナイジェリア、極めて1人当たりGNIの低い貧しい国だよね。それに対し、ラテンアメリカで人口が大きいブラジルやメキシコは工業化も進み、1人当たりGNIは約5000$/人に達する。これは決して低い値ではない。このことから考えて、1人当たりGNI(つまり経済レベルつまり物価)はラテンアメリカの方が高いと考えて問題ないでしょう。
1人当たりGNIの高低と第1次産業人口割合は相反する傾向があるということは、すでに述べた。このことから考え、とくに第1次産業人口割合が高いのはアフリカの国々であると想像できる。「農業就業人口の割合」が80%に達するような国々が多いイこそアフリカとある。残ったアがラテンアメリカ。こちらはさほど農業就業人口の割合が高くない。
ちなみに、ラテンアメリカは1人当たりGNIを考えるまでもなく、アジアやアフリカに比べ第1次就業人口割合が低いという特徴があるのだ。キーワードは「企業的」な農業経営。「家族中心の零細経営的」な農業がみられるアジアやアフリカに比べ、大規模な農園を中心とした農業が営まれるラテンアメリカでは比較的農業人口が少ない。このような観点から全体的に点が左側によっているアをラテンアメリカと判定することもできた。
[関連問題]農業を含む第1次産業就業人口割合に関する問題について。
04B本第2問問2参照。アジア地域について「農業就業人口率」が求められている。経済レベル(1人当たりGNI)と農業就業人口割合は反比例するので、アジアにおいては日本の農業就業人口は「低」であるはず。
06B本第6問問5参照。三角グラフ判定。第1次産業(農業・林業・水産業・狩猟採集など)の値に注目。タイは70%から55%に、エジプトは40%から30%に、韓国は30%から10%に、それぞれ低下している。三角グラフの読み取りに気をつけよう。
03B本第2問問1参照。経済レベルの高い米国やカナダが主である北アメリカで農業就業人口率が低い。他の3つの地域はいずれも経済レベルが低いが、農業就業人口率は「企業的」な農業がみられ大規模機械化による省力化が行われている南アメリカで若干低く、伝統的な「家族中心の零細経営的」農業が営まれるアジアやアフリカでは高くなる。なお、アジアとアフリカの判定は、「集約的」アジアで土地生産性が高いことから考えればいい。
01B追第2問問4参照。イギリスの判定。イギリスの第1次産業就業割合は約1.4%。ここでは「農林水産業・狩猟」と同義なのでその数値を参照すればいい。
05B追第3問問4参照。イギリスなどの農業就業人口割合に関する問題。経済レベルと反比例する傾向を押さえればドイツがわかる。
01B追第4問問3参照。タイの判定。選択肢にある5カ国中で、先進国である米国・日本・フランスを除外し、アルジェリアとタイの判定となる。アルジェリアは砂漠国でしかも産油国であるので農業就業人口割合は高くないだろう。タイは経済レベルも決して高いとはいえず、また温暖湿潤な自然環境下で米作に従事する人々の割合が高いのではないか。そう考えれば正解できる。
第1次産業就業人口率については、イギリスやタイが問われやすい。これらの数値を直接知っておいてもいいだろう。
[今後の学習]とにかく数字にこだわりなさい。ポイントになっているのは「日本の第1次産業人口割合が約5%である」こと、「ラテンアメリカの方がアフリカより経済レベルが高い」こと。この2点さえ分かれば、解答に達することはできるのだ。思考しなさい!
参考までに第1次産業就業人口率を問う問題についてポイントを記しておこう。なお、第1次産業とは農業・林業・水産業などのことだが、林業や水産業の従事者はそもそも少ないので、ほぼ「第1次産業=農業」と考えていい。
大原則は「経済レベルと第1次産業就業人口率は反比例する」である。第1次産業とは、他の産業に比べ収益性が低い。つまり「儲からない仕事」なのだ。だからこれに従事している人が多い国っていうのは、決して経済レベルの高い国ではないよね。先進国で第1次産業就業人口が低く、発展途上国で高い。
さらにもう少し突っ込んでみよう。同じ先進国であっても、この数字は大きく異なっている。約1%;イギリス、約2%;米国、約3%;フランス・ドイツ、約4%;オーストラリア、約5%;日本、約6%;イタリア。この順番は必ず頭に入れておく。
米国やオーストラリアなど新大陸の国々では「企業的」な農業経営がみられ、省力化が進んでいる。逆にアジアに属し「家族中心の零細経営的」な農業が営まれる日本では、高齢者を中心に一世帯に何人もの農業労働者が存在し、第1次産業就業者が比較的多くなる。日本の農産物に比べ米国やオーストラリアの農産物の価格が安くなる理由はここにある。
ヨーロッパでは「北部で合理的、南部で非近代的」な農業がみられる。イギリスは世界で最も合理的な農業経営が見られる国の一つであり、農業就業者も少ない。イタリアは南部を中心に大土地所有制が残存し、土地を持たない小作人が多い。ヨーロッパにおける農業の南北格差は我々が考えるよりもずっと大きい!
発展途上地域においても違いがあり、ラテンアメリカでは比較的第1次産業就業人口率が低い(それでも先進国よりは高い数値だが)のに対し、アジアやアフリカの数値は高い。これは新大陸であるラテンアメリカでは農業の大規模経営化が進ため農業従事者の数は抑えられる。逆にアジアやアフリカは伝統的な「家族中心の零細経営的」な農業であるため、農業従事者の数は多い。一家そろって手作業で農耕に励む様子を思い浮かべる。
以上、「経済レベルの高低」「企業的な家族中心の零細経営的か」を頭に入れておくと、第1次産業就業人口率は理解しやすい。
2007年度地理B本試験[第5問]問5
[講評]サル問(サルでも解ける簡単な問題)。
[解法]今回唯一のサル問。例年ならこういったサル問が複数あって、その分だけ平均点が押し上げられるんだが、今年はこの1問だけなんだよなぁ。平均点が低かったのはここに最大の原因があるわけだ。
それはともかく問題の解法をば。
もちろん①が解答(つまり誤文)。オーストラリアは、かつては旧宗主国であるイギリスとの関係がとくに深かったが、近年は日本や米国、そして東南アジアとの関係が深まっている。位置的なことを考えればオッケイだよね。ニュージーランドも含めてオセアニア地域にとってアジアの重要性が近年大きく高まっていることを理解しよう。ラテンアメリカじゃないよね。
[関連問題]今回はちょっと変わった視点から関連問題を解析してみたいと思う。ポイントは文の長さ。
実はセンター試験の文章正誤問題っていうのは、それが正文指摘問題だろうが、誤文指摘問題だろうが、最も長い選択肢が解答である場合が多い。ほら、本問がそうでしょ?選択肢①の文章が最も長い。で、これが解答となる。
今回の出題からそういった例を探してみよう。
第1問問1;解答は④。最も長い文である。
第1問問5;解答は③。最も長い文である。
第1問問6;解答は①。最も長い文である。
第2問問3;解答は③。2番目に長い文である。
第2問問4;解答は④。最も長い文である。
第3問問1;解答は③。3番目に長い文である。
第3問問3;解答は②。2番目に長い文である(同数2位が3つあるので、最も短い文ともいえるが)。
第3問問4;解答は④。2番目に長い文である(同数2位が3つあるので、最も短い文ともいえるが)。
第4問問4;解答は④。最も長い文である。
第4問問5;解答は①。3番目に長い文である。
第5問問5;解答は①。最も長い文である。
第6問問2;解答は④と⑦.2番目と3番目(3番目は同数が2つ)に長い文である。選択肢は7つ。
第6問問3;解答は①。最も短い文である。
どうだろうか?解答14個のうち、6個が最も長い文。ただし地形図問題である第6問問2・問3を外すと、11個中6個となる。これってかなりの高確率じゃない?
だから地形図問題にはこの定理は当てはまらないとしても、それ以外の文章正誤問題については、最も長い文章から成る選択肢が解答である可能性が高いということが言えるのだ。もちろん最初から「最長の文=解答」と決め付けてはいけない。しかし、どうしても迷ってしまって解答をしぼり切れない。そういった場合はあくまで「やむを得ない処置」として最も長い文を選ぶという手は覚えておいて損はない。
[今後の学習]この程度の問題は特別な対策なしでサクッと解いてほしいものである。ただし本問の内容をふまえた類似問題が次年度以降出題されることも考えられるので、各選択肢の内容はチェックしておくべき。
選択肢①について。オセアニア地域にとって重要性が高まっているのはアジアであることを知っておく。
選択肢②について。シンガポールでは公用語は4つある。マレー語、中国語、タミル語(インド南部の言語)、英語である。ただし全国民が4つの言語を並列に話すのではなく、例えば中国系の住民は家庭では中国語、公的な場(学校など)では英語を用いたりしているんだそうだ。民族的な言語に加え、英語が共通語として用いられていると考えていいんじゃないかな。インドでも同じようなパターンがみられ、公用語は10以上あってそれぞれの地方でそれぞれの言語が主に用いられているんだが、全国共通語として英語が使用されている。
選択肢③について。これはどうでもいいと思うんだけど、またまたパリが登場だね。センター作問者にパリ好きな人が1人いるんじゃないかな(笑)。とりあえずフランスの海外県の例として、オーストラリアの東方海上に浮かぶ「ニューカレドニア島」を知っておくといい。きれいなサンゴ礁に囲まれリゾート地として有名だけれども、地理の問題的には「ニッケル鉱」を多く産することが重要。
選択肢④について。南アフリカ共和国の人種隔離政策(アパルトヘイト)について。90年代になってようやくアパルトヘイトに関する法律は全廃され、黒人にも政治的な平等な権利が与えられることになった。人口は黒人の方が多いので、1人1票の選挙ならば黒人が優勢、すでに黒人の大統領も誕生している。しかし、政治的な平等と経済的な平等は全く違い、いまだに黒人の多くは貧困にあえぎ、経済的な実権は白人が握っている。以上のことを頭に入れておこう。
2007年度地理B本試験[第5問]問6
[講評]GNIの問題。計算しましょう。
[解法]「ODAの実績」と「GNIに対するODAの割合」から当該国のGNIを算出する。
どちらでもいいが、とりあえず現在に近い2004年のデータに注目してみよう。
①8859(百万ドル)÷0.19(%)
②8475(百万ドル)÷0.42(%)
③18999(百万ドル)÷0.16(%)
④7836(百万ドル)÷0.36(%)
実際に計算してもいいけれど、値の大小だけなら暗算でもできるよね。「GNIに対するODAの割合」がほぼ同じなのに、「ODAの実績」が大きく違う①と③については、③の方がGNIが大きいことが分かる。また②と④については両方の値が似たようなものなので、GNIの値も同じぐらいの規模だと思う。①と②・④を比べると、「ODAの実績」に差はないが「GNIに対するODAの割合」が違う。①の方が②や④よりGNIが大きいと考えられる。
以上より、大小関係を比べると「③>①>②=④」となる。
では、4か国のGNIはどうだろう?GNIは、1人当たりGNIと人口の積である。
米国;35000($/人)×3.0(億人)
日本:35000($/人)×1.25(億人)
フランス;25000($/人)×0.6(億人)
イギリス;25000($/人)×0.6(億人)
これを計算し「米国>日本>フランス=イギリス」となる。
よって、③が米国、①が日本、②と④はフランスとイギリスのどちらかということになる。
[関連問題]ODAに関する問題は過去にもある。
01B本第4問問5参照。ODAの意味について。
01B本第4問問6参照。米国、日本、フランスのODA供与についてその相手国と性格を問う。イスラエルを中心した西アジア地域の安定のために供与する米国、将来的な工場進出のためアジア地域のインフラ整備のために供与する日本、旧植民地へと供与するヨーロッパ。
04B追第2問問6参照。地域的なつながり、旧宗主国と植民地との関係が重要。
GNIを計算する問題。
01B本第4問問1参照。例えば、米国とカナダのGNIを計算してみて、その差を算出してみるといい。1人当たりGNIが約1.5倍、人口が約9倍、米国がカナダを上回る。GNIならば、米国はカナダの約13倍である。なお、ここでは「国民総生産」とあるが、これはGNIと同義と思っていい。
[今後の学習]ODAについては90年代は日本が第1位、00年代は米国が第1位となっている。この順位をそのまま覚えてしまってもいいかもしれないけれど、やっぱりそれでは対応しきれない部分が出てくるよね。本問の場合は、ODAに関する問題というより、GNIを計算する問題なのだと開き直って計算問題として解くやり方がベターだと思うよ。
わざわざ計算するのがめんどくさい?でも表からGNIの大小を計算するのは暗算でも簡単にできると思うし、それぞれの国のGNIについては1人当たりGNIと人口から計算するまでもなく「米国が世界最大、それに次ぐのは日本である」と直接的に頭にぶち込んでしまっておいてもいいと思うよ。そもそも世界のお金の30%は米国に集まっていて、日本には15%。すなわちこの2か国だけで世界全体の半分近くのお金を独占しているのだよ。すごいな、世界って、何て偏っているんだ!?