2007年度地理B本試験[第4問]解説

2007年度地理B本試験[第4問]

 

2007年度地理B本試験[第4問]問1

 

[講評]地誌はアフリカが出るなぁと予想していて、確かにそれは当たったわけだけれど、問題傾向までは予想できなかった!っていうか、今回のセンター試験の中で最も過去問との関連性が低いのがこの第3問だったような気がする。とくにこの問1なんて全く初めてのパターンなんだよなぁ。なかなか手ごわいよ。問題の難易度うんぬんではなく、初登場ということでタチの悪い問題なのです。

 

[解法]アフリカは「高原大陸」。このイメージを押し通す。具体的には、全体的に台地状の地形であり、低地の占める度合いが低い。選択肢中で、標高200m未満の低地の割合がとくに低い④がアフリカ大陸である。

ちなみにヨーロッパが②。こちらは低地の占める割合が高い。①と③は不問。

たしかに地図帳を眺めてみると、「緑色」で表される低地の部分がアフリカ大陸では少ししかないのだ。言われてみればそうなんだけどね、でもこうやって図の形で登場するとなかなかできなかったりするんだよね。

 

[関連問題]センター初見の問題。直接的な関連問題はない。ただし近年、大陸の断面図や特定の地域における土地の高低を問う問題は頻出。本問もその流れにあると言うこともできる。

06B本第1問問4参照。大陸全体の高度の問題ではないものの、大陸北西端に高所(アトラス山脈)があることが問われている。

03A本第1問問2参照。おそらく本問と最も類似した内容を持つのはこの問題。「海岸の近くに急な斜面があり、その先(注;内陸部の方向)には広い高原がある」と説明されている。全体的に台地状の高原からなっており、平地の部分の面積が限られていることを考える。

00B本第2問問4選択肢①参照。「ゴンドワナランドの一部であったアフリカ大陸」は「高原状または台地状の地形を特色とする」。

 

[今後の学習]この問題は読みにくかったなぁ。過去のセンター試験でみたことのないパターンだったし。でもそんな問題であっても、私大などではしばしば見かける問題だったりするんだよな。君たちが個人的に私大の問題をひも解く必要はないが、僕の方でいろいろ調べて、こういった「私大の定番問題」を君たちに披露する機会を設けたいと思います。

 

2007年度地理B本試験[第4問]問2

 

[講評]これも目新しい問題。気候条件(気温や降水量)だけならばこういったグラフの使用例もあったが、それに植生まで示されている点が興味深い。とはいえ、冷静に表を読解していけば十分に対応できる問題なので、各グラフの動きの差異が大きなポイントに注目して考えていけばいい。難しくないぞ。

 

[解法]便宜上、Aに沿う観測地点を「A1」「A2」「A3」「A4」「A5」とし、Bを「B1」「B2」「B3」「B4」「B5」、Cを「C1」「C2」「C3」「C4」「C5」とする。

表において「1」の点に注目。アとイは気温が高く、ウが低い。A1、B1、C1のうち、一つだけ気温が低い可能性があるのはどこだろうか。3点とも低緯度にあるので原則として気温は高いだろう。とくにA1とB1については、海沿いに点がみられ、低地であると思われる。これに対しC1のみ内陸部。気温が低くなる可能性があるのはC1だけではないか。C1が高原上に位置していれば、その分だけ(高度100mに対し、気温は約0.55℃ずつ変化することを考える)気温は下がるはず。

以上より、A1とB1で気温が低いとは考えられず、ウがCとなる。なお、C1が含まれるクの国はケニア。標高が1000mを超える高原上に国土が位置し、赤道直下でありながら「常春」の快適な気候が見られる国である。衛生環境が良いためヨーロッパ人の入植も進んだ。

 

さらにアとイの判定。両グラフの動きは大変似ている。どこで判断すればいい!?

ポイントは「1」から「3」における植生だろう。アは「砂漠・ステップ」となっており、イでは「熱帯雨林」。明らかな違いがあるので、これを目印にする。

A1からA3はギニア湾に面する地点である。ここはカカオ栽培がさかんなことから予想できるように極めて高温多湿な場所。気温が高いばかりでなく、海から吹き込む湿った熱風によって激しい降水がもたらされている。衛生環境も悪く、例えば野口英世がギニア湾に面するガーナで黄熱病の治療活動を行った(そして彼自身も病に倒れた)ことで有名。この一帯の植生は「熱帯雨林」で間違いないだろう。よってイがAとなる。

残ったアがB。「1」から「4」までが「ステップ・砂漠」。C1やC2は分かりにくいかもしれないが、エジプトに含まれるC3やC4に関しては砂漠が広がっているとみて問題ないよね。

 

ちなみに、今回は問題を解くキーワードとはなっていないが「硬葉樹」にも注目してみよう。硬葉樹とは、常緑硬葉樹の一種で夏季乾燥する地中海沿岸地域などにみられる植生。耐乾性の樹木が中心で、代表例はオリーブ。夏季乾燥気候すなわち地中海性気候がみられるのは、アフリカ大陸では北西端と南西端、本図ではA5やB5、そしてS5である。グラフを見ても、それぞれ「5」の地点の植生は「硬葉樹」となっている。

 

[関連問題]線でつないだ各地点における気候変化をテーマとした問題は近年しばしば出題されている。惑わずに冷静に数値を読み取るようにしよう。

05B本第1問問3参照。南アメリカ大陸のルート別の降水量変化。

03A本第1問問1参照。アフリカ大陸西岸に沿うさまざまな地点の季節的な降水量変化。

97B本第5問問1参照。アフリカ大陸における、赤道低圧帯や中緯度高圧帯の季節的な移動を考慮した降水量の変化。

 

アフリカ大陸の気温をテーマとした問題。

04B本第1問問4参照。アフリカ大陸南西端のケープタウンが取り上げられている。夏季に乾燥する降水パターンだけでなく、最暖月平均気温が20℃を超え、最寒月平均気温が約10℃であるという温暖な気温にも注目しよう。

 

ケニアに関する問題も多い。こちらは問6の方に関連問題を挙げておいたのでぜひともチェックしておいてほしい。アフリカにおいて最もキャラクターが立っている国の一つ。

 

意外に「ギニア湾」という地名もセンターで登場例がある。

05A追第3問問6参照。「ギニア湾岸で産出される原油」とあるが、これはナイジェリアのこと。このように名称だけでギニア湾岸地域の特徴が問われることもあるので、しっかり特徴をとらえておきたい。「高温多雨」であること、「カカオの生産が多いこと」は必須。

 

さらに植生に関する問題も多いが、今回はギニア湾岸の熱帯雨林のみがポイントであり、植生一般が問われたわけではないので省略。

 

標高の高さによる気温の低減をテーマとした問題も多いが、今回はその一部だけ紹介。気温を判定する際には必ず標高を考慮すること。

98B追第5問問1参照。緯度と気温年較差は反比例。気温と高度も反比例。

00B本第5問問1参照。問題文の中に各都市の標高が記してあるので、それとそれぞれのグラフの気温と対応させて考えればいい。

 

[今後の学習]いろいろな内容を含んだ総合問題的な色合いが強い。気温に関しては、「低緯度で暑く、高緯度で寒い」が大原則であるが、本問のウの地点1のように低緯度であっても気温が高くない場合には「標高」による影響を考えなくてはいけない。

植生については今回はさほど特殊な知識は不要だったと思うが、やはり基本的な部分は確実に頭に入れておくこと。「ギニア湾=カカオ栽培=高温多雨=熱帯雨林」と結び付けることができたかな?

 

2007年度地理B本試験[第4問]問3

 

[講評]ソルガムって!?そんな言葉初めて聞いたよ。こんなのは無視して問題に取り掛からないとアカンよね。その割り切り方が大事だったりするんだ。

 

[解法]農業統計をベースとしている点はオーソドックス。ただ、ソルガムってのが手ごわいんだよ。だから逆にこいつは徹底的に無視して問題を解かないと混乱してしまうよ。

カカオは簡単。ギニア湾に面する高温多湿な地域が主生産地。コートジボワールやガーナなどの国名を知っておいてもいい。Lが該当。

ここからは小麦を中心に考えよう。小麦というのは比較的高級な食材。欧米の高所得国で主食となっているだけでなく、商業的に栽培される割合も高く、商品作物としての重要性も高い。また地力を大きく消耗するためとくに肥沃な土壌でこそ栽培可能であるという「ぜいたく」な農作物でもある。貧困国でおいそれと栽培できるようなものではないだろう。

ここはアフリカ最大の工業国である南アフリカ共和国に注目するといい。国民の過半数を占める黒人はまだまだ貧困にあえぎ、一部の豊かな白人が利益を独占する貧富の格差が大きな国であるが、それでもGNIの規模はアフリカ最大であるし、1人当たりGNIも比較的高い。このような国でソルガムといったわけのわからないものを多量に生産し、逆に小麦を栽培しないなんてことがあるだろうか。アフリカの中で最も恵まれた国(もちろん大多数の黒人は厳しい生活を送っているのだが、全体を平均すればやはり「アフリカの先進国」といっていい)である南アフリカ共和国で生産されているにものは、ソルガムより小麦だろう。Mが小麦。

さらにMを小麦とするとアフリカ内では北部アフリカでの生産が多いことに気付く。これはどういったことだろう。

キーワードは「小麦=イラン原産」「乾燥地域の土壌は肥沃」そして「オアシス農業」である。

そもそもヨーロッパや北米で生産が多いことから「冷涼」のイメージが強い小麦であるが、むしろ「少雨」であることが重要。乾燥地域のイランが原産地であることからも想像できるだろう。実は乾燥地域の土壌は概して肥沃であり、小麦栽培に適する。乾燥地域とはいえ、草などはわずかに繁茂している。これらが枯れて腐って、もちろん「分厚く」とはいかないが、それなりに腐植は形成されるのだ。降水量が多い地域ならばせっかくの腐植も押し流されてしまう。しかしそもそも少雨であるので腐植は流されず、その場にとどまり、これが養分として農業に利用されることもある。我々日本人は降水こそ農業に必須なものと考えてしまいがちだが、逆に多雨によって土地がやせてしまうケースの方が一般的。水分など河川や地下水路などから供給すればいい。完全に植物が生育できないところなら最初から腐植は作られないが、多少でも草が生育できればそこに腐植が形成されることは当たり前なのだ。雨と土の微妙なバランスというのは大変おもしろいと僕は思います。

さらにオアシス農業。本年はホイットルセー農業区分の出題がなかったので、ここで強引に取り上げてしまおう(笑)。オアシス農業は旧大陸(ユーラシアやアフリカ)で営まれる伝統的な灌漑農業。イランでみられる地下水路を用いた農業やエジプトで見られる外来河川を利用した農業などが典型的。ここで栽培される作物として、ナツメヤシ、米、小麦、綿花などである。ナツメヤシは乾燥地域の主食として重要なもの。米は水が豊かな地域でないと栽培できないが、乾燥地域であっても大河川のほとりなどでは水が豊かなので米が集約的に栽培されることもある。また同様に水が豊かな場所では、そういった自給作物だけでなく、商品作物の綿花さえ栽培する余裕がある。そして小麦なのだ。そもそも少雨に適することは既に説明した。さらに原産地がイランであることも述べた。「乾燥地域=オアシス農業=小麦」と考えて問題ないと思う。

逆に考えてみようか。熱帯地域では小麦は栽培されない。なぜなら多雨で土壌がやせているからだ。熱帯の土壌はラトソルというのだが、降水量が多いため土壌が洗い流され腐植に乏しい。さらに土中に含まれている金属が酸化しているため酸性度が高く、やはり農耕には適さない。このような状況下で、地力を大きく奪い取ってしまう小麦が栽培できるだろうか。不可能といわざるを得ない。

残ったKがソルガム。いわゆる雑穀の一種だろう。粗末な穀物であり、例えば生産が多いナイジェリアであっても決してメジャーな食糧とはいえないと思う。例えばナイジェリアの食料供給で高い割合を占めるものはデンプンであり、すなわちイモ類。焼畑農業によりキャッサバ(これはイモの一種だよ。知ってるかな)が栽培され、それを加工したタピオカが彼らの主食である。ナイジェリア人の胃袋はキャッサバによって充たされているのだ。

今回はソルガムが登場したけれど、これについては徹底的に無視して問題を解くのがコツ。あくまで消去法で考える。ナイジェリアについてはやはり「焼畑=キャッサバ=イモ類=デンプン」で頭に入れておくのが正当な方法だと思う。

 

[関連問題]この形式の問題って初めて出たんだよなぁ。あえて言えば、04B本第3問問7で地中海沿岸地域のみに限定して、ブドウ・オリーブ・オレンジの生産統計が登場したことがあるぐらいかな。形式は違うけれど。

それからソルガムっていう言葉(知らなくていいけれど)も初出。ソルガムっていわゆる雑穀の一種なんだけれど、かなりマイナーな存在。雑穀といえばむしろ中国の「こうりゃん」の方が有名だったりするだが、こちらも問われたことはない。でも「こうりゃん=中国」だけ覚えておこうか。米や小麦が栽培できないような貧しい農村では、それらの代わりにこうりゃんという穀物が栽培され、中国人の胃袋を充たしているのだ。

 

乾燥地域で小麦の栽培が十分に可能であるっていうネタも君たちにはピンと来ないかもしれない。以下の問題を参照しておこう。

99B本第4問問5選択肢①参照。オイルマネーで潤うサウジアラビアでは、砂漠気候でありながら灌漑によって小麦の栽培が成立しており、輸出さえ行われている。

97B本第5問問4参照。オアシス農業の説明。小麦の説明はないが、灌漑によってさまざまな作物が栽培されているのだ。

05B追第1問問6参照。インダス川を示すキに注目。インダス川は乾燥国パキスタンを流下する外来河川。灌漑によって小麦や綿花、ナツメヤシなどの栽培がなされている。パキスタンはそれらの作物の世界的な生産国でもある。

05B追第1問問2参照。選択肢②が重要。Bのような乾燥地域では伝統的な灌漑農業すなわちオアシス農業が営まれている。小麦やブドウが栽培される(ブドウが意外?いやいや、ブドウは根っこが非常に長い作物で、比較的少雨気候に耐えるのだ。だからこういった乾燥地域で栽培されていたとしてもおかしくはない)。

 

[今後の学習]カカオについては問題ないだろう。ギニア湾に面する国々(コートジボワールやガーナ)で生産が多い。ギニア湾の位置を目で確認。

小麦についてはやっぱり判定が難しいんだが、「困った時には経済レベル」っていう言葉を君たちに捧げよう。ある国について偏ったイメージでとらえるではなく、経済規模(GNIの大小)や経済レベル(1人当たりGNIの高低)といった具体的かつ客観的な数値によって判断するっていうのがいいと思う。本問にしても、キャラが立っている国として南アフリカ共和国を取り上げてみたけれど、「多くの黒人が貧困にあえぐ貧富の格差が大きな国」っていう一般的なイメージの裏側に「アフリカ最大のGNIを有し、1人当たりGNIも高い工業国」という側面もある。南アフリカ共和国のGNIの大きさと1人当たりGNIの高さについては統計で確認しておこう。とくに黒人が多く「ブラックアフリカ」とよばれている中南アフリカの中では別格の存在。本年度は第5問問2でも南アフリカ共和国に注目すると解きやすい問題が登場していた。要チェックの国!

 

2007年度地理B本試験[第4問]問4

 

[講評]文章正誤問題ではあるけれど、どれだけ統計が意識できているかがポイント。「何となく」で読んだらいかんよ。統計といった確実な手がかりに基づいて思考を進めよ。

 

[解法]統計が取り上げられる農産物や鉱産資源などにしぼって各選択肢を解析。

①「オリーブ」「リン」。オリーブは硬葉樹であり、地中海沿岸のような夏季乾燥する気候に適応したもの。硬葉樹の分布地域はアフリカにおいては北西部と南西部。Pがこれにジャストミートで該当する。南アフリカにおいては「C5」の場所は硬葉樹林帯であるが、Sはこれに該当しない。「リン」についてはモロッコが産出上位国。Pはチュニジアだが、モロッコと位置的にはさほど離れていないため、とくにつじつまが合わないということはないだろう。

③「落花生」「ゴム」。アフリカで天然ゴム生産をチェックしておくべき国はないので、ここでは落花生に注目する。「落花生=セネガル」。小国であるセネガルは世界全体から見た場合には突出した生産上位国ではないものの、逆にセネガルから見た場合には落花生は非常に重要な農産物でありこれから取られる油脂は貴重な輸出品である。かつてフランスによって植民地支配されたセネガルは、商品作物である落花生の栽培を強制されたという負の歴史がある。独立後もこの経済体制は変わらず、現在もセネガルは落花生に依存したモノカルチャー経済を持つ国となってしまっている。Qが該当する。なお、落花生は砂地での栽培に適し(花が地面、やや乾燥した地域での栽培が多いことも知っておくといいだろう。

④「金」。金鉱の産出国としては、南アフリカ共和国・オーストラリア・米国の3つを必ず知っておくべき。いずれもイギリスによって植民地支配されたという歴史がある(イギリス人ってゴールドが好きなんやなぁ)。Sが該当する。

 

考えるのはここまででいい。②については不問。消去法で一応Rが該当するのだが。おそらく「季節風」というのがここではキーワードになっているのかもしれないね。センター試験で季節風という言葉が出てきたら「東アジアから南アジア」を考えるべきなのだが、東アフリカのインド洋沿いに位置するRならば、季節風を利用して訪れる交易船などもあったのだろう。

 

[関連問題]とくに農産物や鉱産資源の統計に注意してください。

04B本第3問問2選択肢4参照。「リン」というキーワードが登場している。モロッコは重要なリン産出国。

04B本第3問問7参照。「オリーブ」の生産統計。南ヨーロッパと北アフリカの地中海沿岸地域に生産が集中。

99B本第4問問6選択肢4参照。セネガルは落花生の生産国。

97B本第5問問6参照。選択肢1が南アフリカ共和国の説明だが、ここでは金と並ぶこの国を代表する鉱産資源の一つであるダイヤモンドが取り上げられている。

05B追第4問問7選択肢3参照。ここでヨハネスバーグという都市名が初登場。

00B本第2問問7選択肢③参照。南アフリカ共和国には多くのインド系住民がいるが、かつて鉱山労働者として流入した人々やその子孫。

 

[今後の学習]文章が提示されている問題だからといって、文章全体を読む必要はない。キーワードを絞って、それのみに注目して考えていくべき。とくにここでは「オリーブ」や「金」などの農産物や鉱産資源が提示されているのだから、これらの生産統計を最優先して考えるのは当然のこと。とにかくいつでも統計を頭に思い浮かべるのだ!

っていうか、今年は南アフリカ共和国が若干クローズアップされぎみだったなぁと思っているのは僕だけ?

 

2007年度地理B本試験[第4問]問5

 

[講評]今回唯一の民族・宗教・言語に関する問題。非常に難しい。昨年もこのジャンルからの出題は一つだった。しかも難しい。この傾向を2年連続センター試験は引きずった。捨て問でしょう。とくに意識する必要はない。

 

[解法]スワヒリ語というのはケニアやタンザニアの言語。「西岸」ではなくて「東岸」なのだ。よって①が誤文(解答)。

選択肢②~④の文章については眺めておくだけでいい。アフリカ諸国の国境は民族分布を無視した直線的なものが多いが、これはヨーロッパの植民地支配の影響によるもの。アフリカの熱帯雨林では焼畑農業が営まれ、そこでは主にキャッサバが栽培されている。これはイモの一種であり、つまり根菜。

 

[関連問題]スワヒリ語の出題例はない。

 

近年、言語に関する問題が出題された例を挙げてみよう。

06A本第4問問3参照。ヨーロッパにおける3大言語系統であるスラブ系・ラテン系・ゲルマン系に加え、ウラル系(アジア系)までが問われている。スラブはロシアやポーランド、旧ユーゴスラビアなど東部、ラテンはイタリアやフランス、スペインなど南西部、ゲルマンはドイツや北欧、イギリスなど北西部。ヨーロッパでアジア系の言語を使用する民族が多数派を占めるのはフィンランドやハンガリー。

06A本第4問問4参照。言語の点において非常に重要な国がベルギー。北部のゲルマン系の民族は、ゲルマン系言語であるオランダを使用し、南部のラテン系の民族は、ラテン系言語であるフランス語を使用する。バイリンガル国家である。

05B本第3問問4選択肢③参照。朝鮮民族の説明。固有の「表音文字」とはハングルのこと。英語のアルファベットなど、文字自体に意味がなく、音のみを表す文字を表音文字という。

05B追第3問問3参照。ア;「ケルト系」言語はアイルランド、イギリスの一部(北部のスコットランドなど)、そしてこのフランス北西部の半島に住む民族が使用する。イ;「ウラル系」はそのままアジア系と読み換えていい。同義である。フィンランドやハンガリーがアジア系。ウ;フランス南西部からスペイン北部にまたがる地域に居住するバスク人は独自のバスク語を使用している。

05A本第2問問2選択肢④参照。インドの多数派言語はヒンディー語である。

05A追第2問問6参照。ラテン語(ロマンス語)派の言語の使用国としてイタリアやルーマニアなどがある。

04B本第3問問3参照。地中海沿岸の国々の民族や言語・宗教が問われている。イランのペルシア語やイスラエルのヘブライ語など。

04A本第2問問2参照。カナダでは英語とフランス語が公用語とされている。ブラジルの公用語はポルトガル語。アラビア語が主に用いられている範囲は西アジアから北アフリカの広い範囲。ロシア語はロシアの主要言語だが、ソ連時代にロシア人が旧ソ連を構成していた周辺諸国へと進出したためそれらの国でもロシア語を使用する人々が比較的多い。

04A本第2問問3参照。アは中国人の説明。「表意文字」とは漢字のことだが、この言い方は大切だと思うのでぜひ知っておこう。表意文字とは表音文字の反対語で、かつてのエジプト文明の絵文字などもこれに含まれるが、現代の世界では漢字だけが該当する。

 

言語というと分かりにくいかもしれないが、結局「言語=民族」なのである。民族についての学習を基本とし、それに加えて言語も関連づけて勉強するといいだろう。

 

[今後の学習]本来なら「スワヒリ語」のような特殊な言葉は解答とはならない(正文指摘問題ならば誤文であるし、本問のような誤文指摘問題ならば正文である)。しかし本問ではそのセオリーがくつがえされてしまっている。こりゃムリだ。解答の必要すらない。

ただし一応過去の出題例からヤマを張っておくことはできるかもしれない。下に特定の国や地域でのみ使用されている言語の例を挙げておくので余裕がある人は知っておこう。

 

ハングル語・・・朝鮮半島

ベンガル語・・・バングラデシュからインド東部

ヒンディー語・・・インド主要部

タミル語・・・インド南部(東南アジアのインド系移民はこの地域の出身者が多く、彼らは現地でもタミル語を使用している)

ウルドゥー語・・・パキスタンからアフガニスタンにかけて

アラビア語・・・イラクからモロッコまでの広い範囲

ヘブライ語・・・イスラエル(ユダヤ民族)

ケチュア語・・・ペルーの先住民

 

個人的に気になるのはウルドゥー語かな。僕の母校である大阪外国語大学にはスワヒリ語学科やウルドゥー語学科があるのです。スワヒリが出るんなら、ウルドゥーも来そうじゃない?

 

2007年度地理B本試験[第4問]問6

 

[講評]ノーベル賞とか全然関係ないよね(笑)。それぞれキャラが立っている国だから、キーワードだけ拾っていけばいい。それよりもカ、キ、クの3カ国の国名はわかるかな。みんな重要な国だから、位置と名称ともに必ず知っておかなければいけないね。カは簡単だし、キも分かると思うけど、クがちょっと難しいかもね。白地図による学習も大切なのだ。

 

[解法]まずカ~クの国名を明らかにしておこう。カはエジプト。アフリカの北東端に位置する砂漠の国。ナイル川の下流部に位置する国。キはナイジェリア。ギニア湾の奥に位置する。「アフリカの脇の下」の場所である。クはケニア。赤道直下ではあるが、高原上に位置するため熱帯雨林とはならずサバンナの国となる。

ではX~Zの文章を判定していこう。「石油」に注目。アフリカで石油とくれば、OPEC加盟国であるリビア・アルジェリア・ナイジェリアを最優先で考える。エジプトでも一応原油は採掘されるのだが、やはりナイジェリアが圧倒的。統計で確認しておこう。Xがキである。

Yの「アラブ」に注目。アラブ人(アラブ民族)とは北アフリカの主要民族。サハラ砂漠の北に位置するエジプト・リビア・アルジェリア・モロッコなど。Yはカに該当。

消去法でZがクとなる。

 

[関連問題]重要なキーワードについて確認していこう。

アフリカのOPECが話題となった例について。

06B本第4問問1参照。アルジェリアが取り上げられている。旧フランス領であり現在もフランスとの関係が深い。

04B本第3問問2選択肢②参照。リビアはOPEC加盟の産油国。

 

アラブ民族について。民族に関する話題なので基本的に地理Aでの出題が多い。

04A本第2問問2選択肢③参照。アラブ系民族は、西アジアから北アフリカにかけて。

04A本第2問問3参照。ウのユダヤ人に関する文章を読んでおこう。西アジアのアラブ人地域に、戦後移住してきてイスラエルを建国したのがユダヤ民族。このことは現在に続くアラブとユダヤの対立の根源の一つである。

02B追第3問問5参照。「アラブ系」が登場。しかしアラブ民族はイラクやサウジアラビア、エジプトなどの主要民族であり図4の国には該当しない。

01B追第2問問7選択肢①参照。パレスチナ人はアラブ系の民族。ユダヤ人によって国土を奪われ、難民となった。

 

ケニアについて。

04B追第2問問4参照。ここでもケニアについてその位置が問われている。なおケニアの主要輸出品目として必ず茶を知っておくことが重要。赤道直下であるが標高が高いためやや涼しく、ちょうど茶の栽培に適しているのだ。もちろん茶を好むイギリスによって植民地支配されていたことの影響もある。

99B追第5問問7問8参照。ケニアの首都ナイロビが取り上げられている。赤道直下であるが、高原に位置し「常春」の気候がみられるため、衛生環境が良く清潔であるため、ヨーロッパ(とくに旧宗主国であるイギリス)から白人が多く入植した。

00B本第2問問5参照。ケニアの土地利用割合が問われている。気温が低い分だけ降水量が少なく(上昇気流の作用が小さくなるからね)、熱帯雨林とはならずサバンナとなる。熱帯草原が広がる国なのだ。

04B追第3問問3選択肢②参照。ケニアはイギリスの植民地だった。

03A本第1問問2選択肢③参照。ケニアは東アフリカ大地溝帯に沿う高原国。

 

[今後の学習]出題されるポイントは決まっている。

OPEC加盟国としてリビア・アルジェリア・ナイジェリアは必ず知っておいて、それぞれの貿易品目(もちろん原油の割合が非常に高い)も統計要覧で確認しておくこと。

アラブ人という言い方も非常によく出てくるのでチェックしておくこと。西アジアのイラクから北アフリカのモロッコに至る広い範囲に居住する民族。アラビア語を使用している。またイスラム教のコーランがアラビア語で書かれていることから、イスラム教徒の割合も非常に高い。

ケニアは単独で出題されることが非常に多い。「赤道直下だが高原=やや冷涼で伝染病などの心配がなく衛生条件が良い=イギリス人が入植し、白人の居住も少なくない=茶の栽培がさかん」ということを関連させて押さえておこう。野生動物の宝庫であるサバンナの国っていうイメージをそのまま持っておいてもいいけどね。