2009年度地理B本試験[第3問]解説

2009年度地理B本試験[第3問]

 

今回難易度が低かったのはこの問題みたい。正解率は高かったんじゃないかな。こうした農産物や貿易に関する問題っていうのは統計を元としたアプローチが主となるので、考えやすい面がある。逆にいえば、統計が頭に入っていなければ、全くアウトっていうこと。

個人的にはインドの小麦の収穫時期が出題された問2が嫌な感じ。

 

2009年度地理B本試験[第3問]問1

 

[講評] 出たな、イラン!イランっていうのは、昨年の追試験で大々的にフューチャーされた国。実はすごく重要な国なはずなんだけど、これまではほとんど出題がなかった。どうしてかな?とも思っていたんだけど、昨年ついに「主役」に躍り出たことによって、いよいよ本試験でも大きくメインとして取り上げられることになった。

 

[解法] そんなイランのネタで、昨年の追試験で無視されていたのが「イラン=小麦の原産地」という話題。だから当然これはヤマを張るべきネタだった。しかも小麦については、最近の出題傾向として「実は意外に乾燥地域に対応した作物」というキャラクターが強調されていたりする。もちろんイランは乾燥国だ。乾燥国イランが原産地である、乾燥気候に強い作物小麦。この組み合わせは堅いぞ!「イラン」「小麦」いずれも出るべくして出たトピックであると思う。

 

[最重要リンク] 最近ちょっと目立つんだけれども、小麦が「乾燥地域の作物」である点がやたら強調されている。もちろん降水量が少なすぎたら全く栽培できないんだけれども、それにしても灌漑などの方法(つまりオアシス農業ね)を用いれば、小麦のスムーズな栽培は十分に可能。ここでは06B本第4問問3に注目してみよう。Mが小麦なのだが、アフリカ大陸で最も小麦の生産が多いのは実はエジプト!他にもアルジェリアやモロッコなど北アフリカの乾燥国が目立つ。こういった砂漠国は主に遊牧が行われているものの、外来河川や地下水などによって水が得られる場所ではオアシス農業が営まれている。とくにエジプトは巨大な外来河川であるナイル川が国を貫き、その沿岸では灌漑がさかんになされている。このオアシス農業に対応する作物として代表的なものは「ナツメヤシ」だが、それ以外にも「小麦」をぜひとも頭に入れておいて、「小麦=実は乾燥地域でも栽培されている」ということを頭に叩き込んでおくのだ。

そうなると、小麦の原産地がイランであるっていうネタが案外と簡単に印象づけられるんじゃないかな。小麦と聞いて、北海道やフランス、米国の中央平原ばかりを考えてはいけない。かつてのペルシャ帝国(イランのことね)やナイル川の文明を支えていた食料は小麦だったということなのだ。

 

[関連問題] 05B追第1問問3選択肢2参照。B付近(中国西部のタリム盆地というところ。要するにシルクロード沿い)について「灌漑によるオアシス農業が行われ、主に小麦やブドウが栽培されている」とある。小麦もブドウも、意外に乾燥に耐える作物だったりするのだ。

05A追第2問問2参照。原産地が直接出題された例。メキシコがトウモロコシの原産地であり、イランが小麦の原産地であることが重要。

96本第3問問1参照。古い問題だが、「イラン=小麦」がそのまま問われている。

 

[今後の学習] イランって昨年の追試験で大きく取り上げられた国。規模も大きいし、本来ならもっと取り上げられるべき国だろう。

それはそれとしても、実はセンター試験っていうのは特定の国が、特定の数年間に渡って、連続して出題されることが多い。このイランだけでなく、最近ならデンマークとか、ちょっと前ならチリとかね。だから来年に登場する国についても、すでに本年の問題の中でさり気なく登場している可能性が非常に高い。ちょっとおもしろいんで、予想してみようか。

 

09B本で登場した国を挙げてみよう。

 

第1問

問1 アイルランド・エストニア・スペイン・ポーランド。メインはスペイン。

問2 アイスランド。北海がポイントなんでイギリスとノルウェーともいえるが。

問3 ノルウェー・スウェーデン。他にはスペイン・ルーマニア・リトアニア。

問4 アイスランド・イタリア・トルコ。

問5 スイス。

問7 フィンランド。

問8 フランス。

 

第3問

問1 イラン・中国・パプアニューギニア・メキシコ。

問2 イギリス・インド・オーストラリア・フランス。メインはインド。

問3 アルゼンチン・インド・オーストラリア・スイス。メインはアルゼンチン。

問4 木材でポイントになる国は、ロシア・カナダ・マレーシア。

問5 中国・ノルウェー・ペルー。

 

第4問

問1 Bの林地村はドイツにみられる。米国のタウンシップも取り上げられている。

問2 オーストラリア・米国・チュニジア。

問3 オーストラリア・インド・イギリス・イタリア。

問4 米国。

 

第5問 カナダ・米国・メキシコ

 

第6問

問1 問題のポイントになっている国はイギリス・ドイツ。

問2 アルゼンチン・ケニア・フィリピン。

問3 コンゴ民主・アラブ首長国連邦・インドネシア。

問4 シンガポール・ドイツ・タイ・フランス。

問5 カンボジア・パキスタン・メキシコ。

 

どうだろう?判断は君たちに任せますが、何となくやたら登場している国とそうでない国が明確なのは言うまでもないよね。僕がちょっと気になる国は、3つの問題で登場しているメキシコかなぁ。メキシコはこれまでセンターでほとんど出題がなかった国なんだよね。だからすごくイメージがとらえにくい。というわけで、君たちも過去問を研究する過程でメキシコが登場してきたら、ちょっと注意してほしい。とりあえず本問では「トウモロコシの原産地」という話題が登場。トウモロコシの生産は、1位米国、2位中国であり、アングロアメリカやアジアの割合が高いのだが、メキシコでも伝統的な主穀(トルティーヤですね)として重用されている。

 

2009年度地理B[第3問]問2

 

[講評] ひさびさに見たな、小麦カレンダー。昔はよく出題されていたんだが、最近はちょっと見ない。しかもインドを当てるっていうのはフェイントだなぁ。普通は、中国や米国を当てさせるもんなんだが。

 

[解法] 小麦は「春まき小麦」と「秋まき小麦」があるが、春まき小麦を「春小麦」、秋まき小麦を(冬を越すということで)「冬小麦」といったりする。この違いは明確に。春小麦は、春の訪れを待って種をまくので、僕は「春を待つ小麦」と呼んでいます。冬小麦は秋に植え冬を通過し、初夏にかけて成長するので「冬に耐える小麦」と呼んでいます。日本でも北海道は「春を待つ小麦」で、九州では「冬に耐える小麦」なのだ。

1から見ていこう。4~7月が冬小麦の播種期となっている。冬小麦は秋まき小麦。ん、4月から7月が秋っておかしいじゃない?そうなんだよ、まずこれを不自然に思わないと。つまりこれは北半球じゃないってことだね。4月から7月が秋になるところ、つまりこれは南半球なのだ。このことから1をオーストラリアと判定する。

それに対し、2~4は北半球である。冬小麦の播種時期が北半球における秋と一致している。ただしここからがポイント。3や4は春小麦もみられるのに対し、2には冬小麦のみ。春小麦が寒冷地域に対応するのに対し、冬小麦は温暖な地域に対応。2で春小麦がないということは、この国は「冷涼な国」ではないということだ。つまりここが「暑い国」インドであると考えていいと思う。他のイギリスやフランスは、温帯なので冬小麦が基本だとは思うけれど、冷涼な気候の地域もみられ、一部では春小麦の栽培が行われているとみても不自然ではないだろう。

 

[最重要リンク] 実はこれは、本来重要である中国や米国、さらにはオーストラリアではなく、あえてインドを問うている時点で、実は小麦が主人公の問題じゃないと僕は読んだわけだ。むしろインドの気候パターンが主人公であって、小麦の存在はそれを支える脇役なんじゃないか。最重要の関連問題として05追第1問問1を取り上げてみよう。

南アジアの降水パターンは「西で少雨、東で多雨」。カンダハルはパキスタンの都市であるけれど(図から判断)、ここは少雨気候となり、グラフはアが該当。残ったデリーとチョンツーだが、これらについても降水量の多少で考える。デリーはインド西部でやや降水量が少ないとみよう。一方、チョンツーは中国南部で降水量が多いはず。イがデリーで、ウがチョンツー。

というわけでデリーが決まったので、これと小麦の栽培を結びつけていこう。インドの東部の多雨地域はアジア式米作農業地域で米が栽培されている。それに対し、インドの西部の少雨地域はアジア式畑作農業地域で小麦作が主。もちろんデリー付近でも小麦が主に栽培されているわけだ。インドの小麦栽培方式は冬小麦だが「冬を越える小麦」であるため、秋に植えることは間違いない。問題は収穫時期である。さぁ、イのグラフと小麦の収穫を結びつけてみよう。

どうだろうか?インドにおける小麦の収穫時期は3月から5月まで。なぜならインドは6月から雨季に入ってしまうために、その前に収穫を済ませてしまいたいのだ。比較的乾燥に耐える作物である小麦は、雨の少ない時期に栽培し、雨の少ない時期のうちに収穫してしまう。「インドにおける雨季は6月から9月まで」という事実と「インドにおける小麦の栽培時期は10月から5月まで」という事実を組み合わせて押さえておこう。

 

[関連問題] 08B本第4問問3参照。インドの小麦栽培地域が問われている。インドの小麦ネタは2年続けて出題されたっていうことなのだ!

96追第7問問4参照。小麦の収穫時期について。北半球の冬小麦は「5~7月」、北半球の春小麦は「8~10月」、南半球の冬小麦は「11~1月」である(南半球の春小麦は存在しない)。aは典型的な南半球冬小麦のパターンなのでアルゼンチンが該当。bは収穫時期が長く、冬小麦と春小麦の両方が栽培されているので米国。cは北半球春小麦でカナダ。dはどうでもいい。中途半端な時期なのでとくに小麦栽培国として重要でもないペルー。

90追第3問問3参照。古い問題であるが、インドがダイレクトに出題されている。雨季に入る5月までが収穫時期。収穫時期が長いBが中国だが、これは国内に春小麦地帯と冬小麦地帯の両方が存在しているから。

 

[今後の学習] 今までの小麦カレンダーの問題とはちょっとタイプが違う気がするので、対策が考えにくい。ここではとりあえず「春小麦が寒いところ、冬小麦が暖かいところ」っていうベタな知識だけ頭にしっかりぶち込んでおいてください。ここで間違ってしまうと全てが意味不明になってしまうので、最低限これだけは絶対に。「春小麦は春にならないと農業ができない寒冷地域で、冬小麦は冬でも農業ができる温暖な地域」。これ、最重要アイテム!

 

2009年度地理B本試験[第3問]問3

 

[講評] 最近よくある問題形式。農業形態の類似している地点を上げて、その中での微妙な「誤差」を問うもの。「新大陸か否か」っていうのが案外とポイントになったりするんで、その辺りに気を付けてほしいな。

 

[解法] まず国に注目。アルゼンチン、インド、オーストラリア、スイス。まず旧大陸と新大陸に分けて、インドとスイスが旧大陸、アルゼンチンとオーストラリアが新大陸。アルゼンチンを判定する問題なので、まずは新大陸特有のキーワードに注意しないといけない。

新大陸では農業(この場合は牧業だが、便宜上面倒なので「農業」としてしまう。本当な「農牧業」としないといけないけどね)は「企業的」に営まれる。つまり「大規模」。文章を読むと、1に「大牧場」っていういかにも新大陸的なキーワードがあるんだよね。これがアルゼンチンかオーストラリアになる。

ちょっとわかりにくいので、他の選択肢にも目を通す。そうするといきなりわかりやすいんやな、選択肢2が。「世界最大の羊毛の輸出国」ってあるじゃない?これ、オーストラリアだと思っていいよね。勘違いしてはいけないのだが、羊の飼育頭数自体は中国が1位でオーストラリアは2位。しかも羊はそもそも海外から持ち込まれた外来種(琵琶湖でいえばブラックバスっていうことだ)なので、オーストラリア固有のものではない。しかしそれでもやっぱり「オーストラリア=羊毛」っていうイメージは君たちにとっては鉄板だよね。これをオーストラリアにしましょう。よって1の方はアルゼンチンが該当するというわけだ。

 

[最重要リンク] ウルグアイからアルゼンチン東部をおおっている草原を「パンパ」というが、その東側半分が「湿潤パンパ」で西半分が「乾燥パンパ」。湿潤パンパは、ウルグアイそしてウルグアイと国境を接するアルゼンチンの最も東側の一帯。乾燥パンパは、その西側の、アルゼンチン東部から中部にかけての一帯。ん、文章じゃちょっとわかりにくいよね。っていうか、そもそもウルグアイなんていうマイナーな国がセンターに出るわけはないし、湿潤パンパと乾燥パンパを分ける必要もないかもしれない。君たちは「アルゼンチン=パンパ」と覚えておけば十分で、そのパンパについても「パンパ=草原」と覚えておけばいい。要するに「アルゼンチン=草原」なのだ。

これに関する問題が一つ。98B本第1問問6参照。南アメリカ諸国の土地利用割合を問う問題で、アルゼンチンを当てる。アルゼンチンは4なのだが、牧場・牧草地面積割合の高さに注目。「アルゼンチン=パンパ=牧草地」というイメージで十分だと思う。

 

[関連問題] 上でも述べているけれど、アルゼンチンの農業に関する問題って実はかなり少ない。とりあえず98B本第1問2がわかりやすいで、ちょっとそちらを参照してください。選択肢2(正文)がアルゼンチンに関するものだが、「大土地所有制にもとづく農場経営が展開して、小麦の栽培が行われている」というのがその説明。ま、たいしたことないよね。

また03B本第2問問6では、アルゼンチンの農業について「アルゼンチンでは、主にヨーロッパからの移民と資本導入によって農業開発が進められ、エスタンシアが解体された小規模農場が大半を占める」という誤文が提示されている。どこが違うかはわかるよね。とりあえず「新大陸=企業的=大規模」なのだ。

冷凍船に関する問題も出題されているのでチェックしておこう。93本第2問問4参照。サはニュージーランドに関する文章なのだが、古い問題で過去問を持っていない人もいると思うので、全文を抜粋しておこう。じっくり解釈してほしい。「この地域の酪農は、19世紀後半に冷凍船(冷蔵船)が就航して以来、イギリスを市場にして発達してきた。この地域が他の酪農地域と競争できるのは、冬の温暖な気候によって、牧草が年中成育しており、自給飼料を主体とする放牧により経営が成り立つためである」。ニュージーランドの酪農の発達の要因に、冷凍船の普及が重要な役割を果たしていたということ。

さらに冷凍船ネタは96本第7問問3にも。これも該当する文章を抜粋。オーストラリアで牧畜業が発達した理由について述べた文として「冷凍設備をもつ輸送船が普及し、肉類の長距離輸送が可能になったため」という文章が挙げられている。これは正文なのだが、要するに、アルゼンチンもニュージーランドもオーストラリアも牧業発達の背景には冷凍船の存在が重要だったということ。ま、とりあえず「冷凍船」が地理のキーワードの一つであることは知っておいてもいいかな。

 

[今後の学習] ベタに考えれば解答が得られるような簡単な問題じゃないのだ、実は。アルゼンチンとオーストラリアが新大陸であることを意識し、新大陸のキーワードが含まれている選択肢1と2に解答を絞り込み、その上で2がオーストラリアであることを判断し、最終的には消去法で1をあぶり出す。どう?ちょっとテクニカルでしょ?こういったセンター試験を解くテクニック的な部分も鍛えていかないといけないのだ。

とくにこの問題の最もヤバいところって、選択肢1の内容が、実は新大陸全般にいえることであって、アルゼンチンだけでなくオーストラリアにおける状況も表しているということ。つまり、選択肢1に該当する国はアルゼンチンとオーストラリア、両方あるっていうこと。他の選択肢(この場合は2)に確実にオーストラリアに該当するものがあるので、消去法でようやくアルゼンチンが判定できるという厄介さ。

というわけで、本問を研究する場合には、選択肢1についてはアルゼンチン特定のことではなく、オーストラリアでこのような文章が登場した場合にも必ず「正文」として欲しいっていうこと。オーストラリアとアルゼンチンにおける肉牛の生産にたいした違いはない。ここんとこ、注意ね。

 

2009年度地理B本試験[第3問]問4

 

[講評] 形式的には昨年と同じだよね。新課程になって、このような形式の問題が増えた。世界全図と円積図の組合せ。図を漠然とみるのではなく、具体的に国名を挙げていったらいい。

内容的にもやはり新課程特有。一つの品目(本問の場合は「木材」)について、様々な統計を組み合わせて(本問の場合は「輸出」「輸入」「伐採」)問うている。さまざまな時計を頭に思い浮かべながら、一つ一つ検討していかなくてはいけない。結構おもしろい、考えるべき問題だと思うよ。

それからもう一つ注目するべきは、やっぱりロシアなんだわ。昨年はアルミニウムでこのような形式と内容の問題が出題された。そして今年は木材。アルミニウムと木材の共通点は、ともにロシアから日本への重要な輸出品目であるということだ。ロシアとの国際関係も最近の重要課題というわけだね。

 

[解法] 昨年はアルミニウムでこのような問題が出題されているのだが、アルミニウムと木材の共通点は「わが国の主なロシアからの輸入品目」であることだ。昨年の問題と同様に、日本とロシアとの関係にこだわって考えればいいと思う。

まず日本に注目。AとCでは円はないが、Bのみそこそこ大きな円がある。日本が世界の上位10ヶ国に入るものって何だ。

さらにロシアに注目。Aはやや大きく、Bはない。Cはカナダと並んで世界最大。

さぁどうだろうか。「ロシア→日本」の流れを意識する。「ロシアが輸出し、日本が輸入」という状況が明確となる組合せはどれか。

もっともわかりやすいものはBだろう。日本は木材の輸入国であることは間違いないのだ。もともとが森林国であり木材資源に恵まれながら、それでもなお輸入木材に依存するという木材の大消費国。Bが「輸出量」とみていいだろう。

問題はAとCの判定。わかりにくいので、順序をつけてしまおう。そもそもこの図はベスト10を示した図なのだから。

Aについて。米国が最大で、それに次ぐのがインドや中国。さらにカナダ、ブラジル、フィンランド、ロシア、インドネシア、エチオピア、コンゴ民主。アフリカの国が入っているのが特徴的だが、それよりも何やかんや人口大国が上位を占めている点に注目。

それに対し、Cはどうだろうか。こちらはカナダとロシアが2トップ。それにスウェーデン、フィンランド、さらにヨーロッパにいくつか円がみられ(細かいのでよくわからない)、そして米国とマレーシアが続く。

どうだろうか。具体的に国名を挙げてみるとわかりやすいと思う。木材に関して君たちがマストで知っておかないといけない統計は「日本の木材輸入国」。すでに述べているロシアだけでなく、カナダ、米国、マレーシアまで知っておかないといけない。「わが国の木材輸入先は、1位カナダ、2位ロシア、3位米国、4位マレーシア」は鉄板ネタ。この4カ国がCには全てランクインしてるじゃないか。Cを「輸入量」とし、残ったAが「伐採量」である。やっぱり日本とロシアの関係が重要ということだ。

 

[最重要リンク] やっぱり上でも何回も言っているように昨年のアルミニウムに関する問題。08B本第2問問1参照。

それぞれの国を取り出してみよう。こういうのも、めんどくさいかもしれないけど、練習になっていいよ。

ア;中国・カナダ・米国・中国・ノルウェー・オーストラリア・ブラジル・南アフリカ共和国。

イ;オーストラリア・西アフリカ(ギニアと思われる)・カリブ海(ジャマイカと思われる)・ブラジル・ベネズエラ・インド・ロシア・中国。

ウ;中国・米国・日本・韓国・ロシア・インド・ドイツ・イタリア。

さらにここでもやはり「ロシア→日本」の流れが重要。わが国がロシアから輸入している主な品目は、アルミニウム・木材・魚介類。そしてアルミニウムに関しては、日本国内ではほとんど生産されておらず、ほとんどを輸入に頼っているわけだが、その最大の輸入先はロシアである。このことから「ロシアで作って、日本で使う」という流れをはっきりと読み取り、アが「アルミニウムの生産量」、ウが「アルミニウムの消費量」と判定する。

イが「ボーキサイトの産出量」だが、これは熱帯の国が多いので納得だろう。

 

[関連問題] 形式的な類似問題として07B本第2問問1がある。これも具体的に国名を挙げて考える。アは「米国・カナダ・フィンランド・スウェーデン・中国・ブラジル・ロシア・インドネシア・インド・日本」、イは「米国・中国・インド・ドイツ・イギリス・フランス・カナダ・メキシコ・ブラジル・オーストラリア」、ウは「米国・ドイツ・日本・中国・フランス・ベルギー(オランダ?)・インド・台湾・韓国・カナダ」。図をあいまいにではなく、表として国名を一覧に並べて考える方が絶対に確実!

木材ネタとしては97B追第2問問7参照。しかしここではロシアが登場していないんだよね。インドネシアが主役です。

地理Aでも似た様な問題があり、それが04A追第1問問7。「木材伐採量に占める針葉樹の割合」から寒暖を推測し、米国(この国は暑くもなく、寒くもない国だ)を判定する。もっとも、これもロシアがないんだけどね。

 

[今後の学習] 問題を解くテクニック的な部分はいいよね。全体を漠然とみるのではなく、確実な統計を頼りにターゲットを絞って考えること。さらに、図ではあるけれど、ベスト10の国を書き出して、具体的な国名から考えること。この形式の問題が新課程以降増加しているので、慣れておくことが必要。

そういった形式的・テクニック的な部分以外で言えば、やはりここは「日本とロシアとの関係」が最重要テーマなのだ。「わが国のロシアからの主な輸入品目は、魚介類、アルミニウム、木材である」「わが国の木材輸入先は、1位カナダ、2位ロシア、3位米国、4位マレーシア」という統計は絶対に頭に入れておいて、いつでも使えるように準備しておくこと。統計を知っておくのは最低限のこと。これを使いこなせて初めて得点となる。統計なんぞ夏までには全部覚えてしまって、秋からはそれを使って問題を解く経験値を上げることに努める。

 

2009年度地理B[第3問]第5問

 

[講評] 水産業ネタ。水産業が出たこと自体はちょっと意外だけど、問われている内容は、一部を除いて、ベタなのでとくに問題ないでしょう。しかし、その目新しい部分だけは今後に向けて要チェックだと思う。

 

[解法] 最も分かりやすいのはイだね。アンチョビーについてはペルー海流の流れる太平洋南東海域に特徴的な魚種であることを絶対に知っておくべきだと思う。エクアドルやチリ、そしてもちろんペルーという名前が出てきたらアンチョビーでオッケイにしてください。イがペルー。

さらにウがポイントかな。魚も農産物と同様に、暖かいところのものと寒いところのものがはっきりと分かれ、それが出題のポイントになるケースも多い。寒海魚の典型例は「ニシン」と「タラ」だが(いずれもカズノコやタラコのように卵が我々の食材になるという共通点がある)、もちろん「サケ」もそれに該当する(こちらも卵の「イクラ」が食材だよね)。中国とノルウェーを比べればもちろん「寒海」なのはノルウェー。ウをノルウェーとする。この場合はサバは無視しましょう。

残ったアが中国。これは消去法。

アンチョビーとサケといった魚種にこだわって解くのがこの問題の正攻法。

 

[最重要リンク] 寒海魚については頭に入れておこう。本問ではサケが取り上げられているが、これ以外には「タラ」「ニシン」が代表例で「シシャモ」もある。全て卵が重要な食材であるという共通点がある(これって偶然?)。

02B本第1問問5参照。ノルウェー海や北大西洋海域は、暖流が流れているかもしれないが、それもたいした温度上昇でもない。基本的には冷たく寒い海と考えるべき。こういった海域に生息する魚種としてここではニシンやシシャモが登場している。ノルウェーやアイスランドの一部が暖流の影響によって不凍港になっているとはいっても、やっぱりこうした寒海魚が漁獲の基本となっているのだ。

 

[関連問題] 中国の漁業について。

03B追第1問問3参照。中国が含まれる海域がイだが、この説明は5。「この海域では、広い大陸棚と潮目(潮境)に恵まれている。周辺に世界有数の魚介類消費国が多くみられる」。1人当たりの魚介類消費量が多いのは日本と韓国だが、国として魚介類消費量が多いのは(人口が多い)中国。

05B本第3問問7参照。「食用の魚介類の消費量」という項目がある。日本、韓国、中国の中でもちろん中国が最大。これを中国が世界最大の漁獲量を誇る国であることと結びつけて考える。もっとも、人口当たりの消費量に換算したら日本や韓国の方が中国を上回るのだが、何しろ中国の人口は日本の10倍だからね。日本人が1人当たり、中国人の10倍以上の魚を食べれば、日本が最大の魚介類消費国とはなるんだが、さすがにそこまでじゃないね(笑)。

寒海魚について。

03B追第1問問3参照。選択肢2の文章が重要で「産卵期に河川を遡上する魚類」というのはサケやマスのこと。これはウの海域の説明なのだが、カナダやアラスカ州の太平洋岸は暖流のアラスカ海流が北上し、冬でも凍結しない不凍港となっており、ノルウェーと似た様な自然環境となっている。暖流の流れる海域なのでプランクトンは多くなく、決して漁獲量そのものは多くないものの、サケなど寒海魚には恵まれている。

今後の学習

講評のところで「目新しい」と書いたけれど、それはズバリ中国の話題なんだわ。関連問題の項目でも述べたけれど、中国については消費量の話題しか今までは出題されていなかったし、それにしてもとりあえず「漁獲量世界1位が中国」というネタだけわかっていれば十分に対応できたのだ。しかし今回の問題ではもう一つ突っ込んできた。それだけのネタでは対応できなくなってくるかもしれない。

というわけで来年以降の対策として「魚介類の世界最大の輸出国は中国である」ということと「日本の最大の魚介類輸入先は中国である」ということをぜひ知っておこう。これは決して意外なことではないよね。スーパーに行って鮮魚売り場に行って、ウナギのパックを手に取ればいい。思いっきり「中国産」って書いてあると思うよ。「ウナギ=中国」のイメージを固めておこう。

 

2009年度地理B本試験[第3問]問6

 

[講評] おっと、問5で終わりと思いきやこんなところに問6が。でもいかにもとってつけたような何だか存在感の薄い問題だな。とはいえ「統計を意識する」といった地理の鉄則が表れており、研究対象としては軽視できない。

 

[解法] 文章正誤問題を解く際に君たちが真っ先に考えることって何かな。僕は「対になる言葉を持つ語を探す」ことが最優先。要するに反対語を持つ語をピックアップしていって、それを「ひっくり返す」ことで簡単に誤文が作れるわけだから、そこだけ注目していけば、おのずと誤りを指摘できるわけだ。本問の場合、最も怪しい言葉って何だろう?

まぁその話はひとまず置いといて、文章を読んでいこう。まず1について。これは消していい。センター地理は「政治」に関する内容は問わない。これはEUが行っている政策だよね。そんなことを地理で問うわけがない。これは答えにはならないよ。こんなんを選んではいけない。本問は誤文指摘問題なので、これは正文ってことでしょう。脇役に過ぎない。

さらに「穀物メジャー」。こんなん知ってる?センター過去問にも登場していないし、そもそもこうしたカタカナ言葉っていうのはセンター地理で主役として取り上げられることもない。そりゃ「スプロール現象」みたいに重要なものもあるよ。でもそれらは過去に難解も出題されているわけだ。過去問を研究している者ならば、穀物メジャーなんていう言葉が大切でないことぐらいすぐにわかるよ。

そして3。これはちょっと悩む。文末の「受けやすくなっている」っていう言葉にまず注目して欲しいんだけど、こうした「あいまい」な表現を含む文章は「正文」である可能性が高い。どっちとも取れるじゃない?「受けやすくなっているから、実際に受けてしまうのだ」とも取れるし、「受けやすくなっているけど、実際には受けていない」とも取ることができる。はっきり言い切らない卑怯な文章だよね。ただし、ここじゃなく「高まっており」って方がすごく気になるんだよな。このように形容詞が含まれている部分は、容易にひっくり返すことができる。でも、これはいいんじゃないかな。日本が海外に食料を依存する割合は年々高まっており、食料自給率は低下の一途をたどっている。こういったイメージはとくに誤ったものではないと思う。

で、最大のポイントの4なわけだ。っていうか、こいつ、明らかにうさんくさいよね(笑)。いかにも犯人っぽい。どういうことかというと、「誤り選択肢を作りやすい」っていうことなのだ。文末に「割合が高い」ってあるよね。この「高い」を「低い」にひっくり返すだけで、簡単に誤り選択肢を作ることができる。こういったヤツが犯人(誤文)である可能性は非常に高いのだ。

とくにここでは「米」と「小麦」の貿易量を比較している(*)のだが、どうかな?これって「統計」に基づくものじゃない?統計要覧を調べたらデータが記載されているはずだ。地理っていう科目は、みんなも気付いているように、実はかなり理系的でしょ?数字に基づいて、厳密に解答が出る。あいまいな、フィーリングで解く問題じゃない。「何となく」なんていう言葉は通用しない。

実際、米と小麦の貿易量については、小麦の方が多いとみていいよね。米はその90%がアジアで生産されているんだが、アジアの農業は「自給的」であり、そもそもそこに住んでいる人が食べるために栽培されている。それに対し、小麦であるが、これは米に比べ「商業的」な性格が強い。小麦の生産1位は中国で、2位はインドだが、これらはアジア諸国であり、自給的だと思う。しかし、3位の米国や4位のフランスはどうだろう?新大陸やヨーロッパでは商業的な農業が主で、小麦のような本来自給的に栽培される作物についても、商品作物として輸出用に栽培されることがある。人口分だけ作れば十分なのに、人口を越えるほどの生産量を上げ、「余った分」は積極的に外国へと輸出される。

このような小麦の商業的な栽培を考えれば、まさか米の方が小麦よりも貿易量が多いとは思わないよね。選択肢4は、ちょうど正反対のことを言っているわけです。

(*)正確には「総生産量に対する総輸出量の割合」だけれども、実は米と小麦ってそれぞれ世界全体で約6億トン生産されており、総生産量は等しいとみていい。だから総輸出量の割合にしても、そのまま輸出量の大小に置き換えてしまっていいのだ。

 

[最重要リンク] 選択肢の1と2はどうでもいい。分析の価値もない。正解(誤文)の選択肢4は意外とベタなネタなので、こちらも今さら研究する必要もないと思うんだわ。ここはちょっと気になる選択肢3を取り上げましょう。

となると、必然的に浮かび上がってくる問題が04B本第2問問7の日本における食料問題を扱ったもの。それぞれの選択肢を検討してみよう。

1は誤文。「米の輸出量は急増」してはいない。っていうかそもそも日本は米の輸出国ではない。むしろ輸入国。国際的な協定によって、国内消費量の5%分の米を強制的に輸入しないといけないようになってしまったのだ(これを「最低輸入量(ミニマムアクセス)の受け入れ」という)。つまりわが国の米の自給率は95%。

2は正文。オレンジなどは「輸入量が増加」している。

3は誤文。「牛肉の輸入量は増加しなかった」のではなく「増加した」のだ。

4も誤文。「水産物輸入量は減少した」のではなく、増加した。

どうだろうか。全体として、輸入量は増加する傾向にあり、「輸入に依存する程度が高まって」いることは確かだろう。これは事実として知っておくべきかな。

 

[関連問題] 選択肢1について。EUのネタ。

00B本第1問問6参照。EUについていろいろ説明されている。ま、政治や条約、国際機構に関するネタは地理Bでは問題とされないので、どうでもいいんですが(笑)。

選択肢2について。穀物メジャーネタ。

05A追第3問問5参照。穀物メジャーがつくった設備によって、穀物(この場合はトウモロコシ)が輸出される様子が写真で示されている。ま、地理Aのしかも追試やし、どうでもいいかな(笑)。

選択肢3については、上の最重要リンクを参照。

選択肢4について。小麦の貿易のネタ。

01B本第2問問2参照。わが国は小麦を、米国・カナダ・オーストラリアから輸入。

 

[今後の学習] この問題に必要なのは「テクニック」だと思うよ。でもそのテクニックっていうのは特殊なものではなく、センター過去問をたくさんこなすことによって、自然と養われるタイプのものだと思う。選択肢1については「こんな政治に関する話題が問われるわけないや」で簡単に消し、選択肢2についても「こんなカタカナ言葉が出るわけないや」で速効で削除し、残った3と4についても「4には比較の構造があるじゃないか。米と小麦を入れ替えたらいいんだろ」って感じで、これを誤りと判断する。

どうだろう?そんなに無理な話じゃないと思うよ。こうやってテクニックを磨くこともやっぱりセンター試験の得点力アップには有効なことだと思う。本問は、そういったテクニック的なことを再確認するために、非常に適した問題なのだ。