2014年度地理B本試験[第2問]解説

第2問 「資源と産業」、これもオーソドックスな大問設定。統計が大切になるのがこの手の大問の例年の傾向なんだが、今年はいかに?

 

問1 [インプレッション] 「カリブ海」とかいきなりおもしろいな。しかも歴史的なワードも登場してくるし、ちょっと新傾向っぽい興味深い問題。

 

[解法] 本来なら農産物の名称に注意するべきなんだろうが、本問についてはもっとベタなキーワードに反応したらいいと思う。アならば、「サトウキビ」より「カリブ海」、イならば「牛の牧畜」より「パンパ」、ウならば「ワタ」より「ナイル川」。

A〜Cで最もわかりやすいキーワードは「農業用水を確保する施設」だろう。つまり水が足りない地域であり、灌漑(人工的に農地に水を与えること)が必須ということ。ナイル川という外来河川によって、砂漠国エジプトの大地は潤されている。ウがCに該当。

さらにBの「奴隷貿易」という言葉も目立っている。これは中南アフリカ(黒人が多数住んでいるのでブラックアフリカともいう)から、イギリスやフランスが新大陸へと黒人労働力を大量に連れて行ったという負の歴史。カリブ海は、キューバやジャマイカ付近の海域であり、プランテーションへと奴隷が運ばれた。Bがアに該当。消去法でイがAとなる。

Aの内容についてはとくに深く追究する必要はないと思うが、難しい内容でもないので説明していこう。「保存技術」や「輸送手段」というのは要するに「冷凍船」のこと。新鮮な肉を冷凍して長期保存し、それを大消費地へと船舶によって輸送する。イの文に注目。南アメリカ大陸では企業的牧畜が発展し、そこで肉牛が飼育されたのだが、その絶対条件として冷凍船の就航がある。新大陸は人口も少なく、市場規模も小さい。製品(つまり牛肉)はあくまでヨーロッパの市場向けであるが、生肉のままで運んだらさすがにすぐに腐敗してしまう。企業的牧畜(肉牛)においては、保存技術や輸送手段の発達、つまり冷凍船が必須アイテムとなるのだ。

 

ちなみに、今回は17世紀とか18世紀みたいな年代に関するワードはポイントにはなっていませんでした。ベタな言葉に注目するということで、テキストなんかに取り上げて深く分析するには不適当な問題ではあるけれど、自分で考えて解くという思考訓練としてはなかなか巧い問題に思います。

 

[今後の学習] やっぱり一番気になるのはイの選択肢。新大陸の牧牛が発展した背景に、冷凍技術の発達があることはしっかり認識しておこう。

 

 

問2 [インプレッション] 今までありそうでなかった形式の問題。米の生産と輸出というトピックも重要であるし、米の生産・輸出の統計も重要。また、人口規模(国内消費)と生産、輸出の関係を考える上でも非常に興味深い問題。良問。

 

[解法] 米の生産統計や輸出統計は絶対に覚えておくべきもの。生産1位は中国、2位はインド。アジアで人口順であり、④が中国、③がインドとなる。なお、タイは人口7000万人であり、生産量自体は決して世界のトップクラスではない。米がそもそも主食ではないアメリカ合衆国の順位が低いのは言うまでもないね。

ただし、輸出は様相が一変する。世界最大の米の輸出国としてタイを絶対に知っておこう。先述したように人口は7000万人で決して多くなく、国内消費量もそれに比例しあまり大きくないため、輸出余力は大きくなる。生産量に対する消費量が少なく、輸出に回せる余裕が大きいということだ。①がタイとなる。

残った②がアメリカ合衆国。そもそも米の生産は少ないが、商業的な農業が営まれているため、輸出量は比較的大きい。

 

余談だが、人口大国のインドや中国も実は(多くはないものの)米の輸出国だっていうこと、みんな知ってた?日本もこれぐらい農業、がんばらないといけないよ。

 

[今後の学習] 統計を中心に学習していくという姿勢は継続してほしい。ただし、あいまいな知識はかえって墓穴を掘るので注意.しっかり理論立てて、理由をくっつけて覚えておくこと。

例えば「タイ=米」という覚え方ではいけない。確実に「タイ=米の輸出1位」と覚えること。丸覚えが苦手(理系の子はとくにそうだよね)ならば、タイの人口規模の少なさと関連させて理解すること。米は自給作物であり、主に食料となることから、人口規模の大きい国で生産が多い。しかし逆にいえば、生産はそれほど多くなくとも、人口が少なかったら輸出量が多いはずだ、10億人を越える中国やインドより絶対量としてタイの米の生産の方が多いわけはない。しかし人口が10分の1未満なわけだから、ある程度の米の生産があれば、それらは余裕をもって輸出に回せるはずである。人口と生産、輸出を関連づけることが非常に重要。

 

 

問3 [インプレッション] おっと!めちゃめちゃベタな問題じゃないですか!くどいようだが、統計は確実に。こういう問題で差がつくのだよ。

 

[解法] 金鉱の産出国の共通点は「差別政策」。

アメリカ合衆国では西部で金鉱が発見されたため、白人たちが東部から太平洋岸まで押し寄せた(ゴールドラッシュ)。この時に先住のアメリカインディアンは住処を追われ、多くの命を奪われ、現在も砂漠の中に設けられた保留地に封じ込められている者も多い。

オーストラリアも同様にゴールドラッシュが生じた国で、やはり先住のアボリジニが迫害された。そればかりでなく、金鉱を白人が独占するために、中国などからの移民を禁じ、それが有色人種の移民を制限する白豪政策に発展した。

南アフリカ共和国も金鉱資源が豊かな国であるが、こちらも白人がそれを独占するために、黒人やインド系住民(カラード:有色人種)を差別した。アパルトヘイトである。アメリカ合衆国、オーストラリア、南アフリカの値が大きいキが金鉱。

さらに銀鉱のキーワードは中南米で発達した二つの文明、アステカ帝国とインカ帝国である。大航海時代(16世紀ごろ)、世界に覇を唱えていたのがスペイン.彼らは当時の重要な貴金属である銀を求め.世界中に勢力を拡大していたのだが、その時に目をつけられた(狙われた!)のがメキシコのアステカ帝国とペルーのインカ帝国。宣教師を送り民衆の心をつかみ、十分に準備してから軍隊を送り、2つの高度なインディオによる文明を滅ぼした。メキシコ以南の中南アメリカがスペインよって植民地支配された理由の一つに、銀の存在がある。メキシコとペルーの値が大きいクが銀鉱。

残ったカが鉄鉱石となる。鉄鉱石は安定陸塊に分布する資源であり、原則として面積が大きな国で産出量が多い。ロシア、カナダ、アメリカ合衆国、中国、ブラジル、インド、オーストラリアはいずれも鉄鉱石の産出上位国。とくにブラジルに注目しておくといいかな。他の6か国は石炭の産出も多く、鉄鉱石と石炭を区別する場合には、「ブラジルで産出される鉄鉱石」、「ブラジルで産出されない石炭」という区別をしておくといい。

 

[今後の学習] 統計が基本であることは間違いないのだが、ここでは銀鉱に注目して欲しいな。銀鉱はこれまでも少しずつセンターには登場してきたわけだが、本問のように主役として舞台に上がってきたのは初めてのこと。上述したように、スペインの侵略と関連づけて押さえておくのがベターに思うよ。アステカ文明とインカ文明なのです。

ちなみに銀には抗菌作用があり、さらに毒物(ヒ素や六価クロム)に化学反応するという特性があるため、食器の材料として用いられる。スペインの王は自分の命が惜しい(食べ物に毒をもられないように)がために、アステカやインカのインディオを皆殺しにした。歴史とはそういった残酷な矛盾の上に成り立っているものなのですね。

 

 

問4 [インプレッション] これも統計を大きく取り上げた良い問題ですね。韓国は比較的よくこういった問題に登場する国.フィリピンはめずらしいけれど、東南アジアの一般的な国という括りで考えたらいいんじゃないかな。軽工業と重工業、経済レベルの向上がポイント。

 

[解法] 選択肢に注目。衣類、自動車、木材である。木材が一次産品、衣類が軽工業製品、自動車が重工業製品となる。とくに工業においては、経済成長とともに、国内の主要工業が軽工業から重工業に移動していくのだが、この表からもその様子をしっかりと読み取ってみよう。木材は、カナダやスウェーデンなど先進国でも輸出地域はあるのだが、やはり原則としては発展途上国で輸出が多い品目であると考えるべきだろう。とくに価格が安いので、経済規模が大きくなり輸出全体の金額も上がってくると、相対的にこうした一次産品の地位は低下するものである。

では表を読み解いていこう。こうした問題では過去より現在に注目するのがコツ。韓国はすでに世界有数の工業国であり、経済レベルも高い(1人当たりGNIは20000ドル)。2010年の韓国において、一次産品や軽工業製品が上位輸出品目になっているとは考えにくい。シが「自動車」である。フィリピンのような発展途上国でシが2位にくいこんでいるのを不思議に思う人もいるかもしれないが、2位とはいえせいぜい3.6%である。またそもそもの製品価格が高いので、台数自体は少なくとも、こうした金額に関する統計ならば意外なほど上位にくることもあるだろう。納得だね。

そして今度はスとサの比較である。前述のように木材は一次産品であり、工業化がほとんどなされていない国において主要輸出品目の一つとなっていてもとくに不思議ではない。一方、衣類は軽工業製品であり、重工業製品である自動車工業が発達する前の一時期、その国の主要工業製品となっていた段階が必ず存在するものである。韓国において主な輸出品目が1980年のサから2010年のシへと移行していること、あるいは2010年において経済レベルの高い韓国ではすでにサは上位品目ではなくなっているのに対し、発展途上国のフィリピンではまだこの国の経済を支える重要な品目の一つとなっていることにも注目。サを軽工業製品の「衣類」と考え、残ったスを「木材」と考えるのは妥当だろう。

 

[今後の学習] 統計問題とはいっても、決して暗記問題ではない。軽工業製品から重工業製品へと国内の主要産業が変化していくベクトルの流れをいかに意識できるか。

なお、韓国は1980年代に高度経済成長の時期を迎え、この期間に軽工業から重工業への転換が進んだ。日本の工場も1980年代までは韓国(まだ低賃金だったのだ)に盛んに進出していたが、21世紀の現在、すでに韓国の日系企業はごく少数となっている。なるほど、ボクが高校生のころはたしかに「メイド・イン・コーリア」の服が一般的だったけれど、今はそんなの考えられないものね。衣服工場は韓国からタイ、中国、そしてフィリピンやベトナムに移動している。重工業についても韓国はすでに世界的な自動車メーカー(ヒュンダイなど)を擁する国であるし、中国やタイでも外国から生産拠点が移動するなどして自動車生産が拡大している。近い将来、フィリピンやベトナムに自動車工業が移動する可能性は、十分に大きい。

 

(おまけ)木材については余り考えなくていいと思う。ただし、ちょっとだけ知っておいて欲しいことが。かつて日本の主な木材(熱帯林)の輸入先はフィリピンやタイであった。しかし過剰な伐採によって森林面積が大きく減少し、フィリピンやタイからの木材輸入は減少した。この両国は熱帯国としては極めて森林面積割合が低い国(30%程度。マレーシアやインドネシア、そして日本は約60%)なのだが、その原因は日本による無秩序な森林伐採にある。

 

 

問5 [インプレッション] ここで文章正誤問題とは極めてバランスがいい。しかし統計問題にくらべると、あいまいな部分が多いので、慎重に解答すること。とくに誤文指摘問題なので「絶対に誤っている」部分を必死で探してみよう。

 

[解法] 誤文選択問題である点に注目。確実に誤っているものを探す。

ここで君たちにぜひ知っておいて欲しいのが、原子力発電が行われていない国について。国土の広い部分が地震帯や火山帯に覆われ不安定な国においては原子力発電所は稼働しない。イタリアやニュージーランド、フィリピンがこれに該当する(その例外が日本なわけですね。地震国・火山国でありながら、世界で最も熱心な原発推進国の一つなのです.世界的にみて日本が原発をつくるのはあきらかな非常識なのです)。

そしてそれ以外にぜひ知っておいて欲しいのがオーストラリア。この国は世界的なウランの産出国でありながら、実は原子力発電所は存在しない。豊富な石炭資源を利用しての火力発電がメインであり、原子力に依存する必要がないのだ。そもそもそんな国で「原子力産業」が成り立つはずはないだろう。③が誤りとなる。

蛇足ながら、おまけのトピックを。オーストラリアを含むオセアニアは非核地域となっている。かつてオーストラリア、ニュージーランド、アメリカ合衆国でANZUS(アンザス)という軍事同盟が結ばれていたが、アメリカ海軍が核兵器をオーストラリア国内に持ち込もうとしてオーストラリア政府が反発し、この軍事同盟が破棄されてしまったという歴史がある。形だけ「非核三原則」を唱えている日本に同じマネができるかい?相当の覚悟ガルと思うよ。日本国内にはいくらでも核兵器は持ち込まれているでしょ。でもそれを表立って非難できない日本政府って?

 

[今後の学習] 授業でもオーストラリアが非核であることは強調していると思う。原発の問題は出にくいとは思うのだが、こういった形での出題はあるわけだな。原子力発電が行われていない国については絶対に知っておこう。それにしても、オーストラリアは自分の国だけは非核といっておいて、核兵器の原料になりうるウランについては輸出して、外貨を稼いでいるわけだよなぁ。ここに何となく矛盾を感じてしまったりする。オーストラリア、ウランなんか「売らん」かったらいいのに。。。(スイマセン、ダジャレで締めました・笑)

 

 

問6 [インプレッション] そもそも株式市場なんて意味がわからないんだから(笑)、おそらくグラフを見て考える問題ではなく、単なる知識を問うものなのだろうなっていう見当はつく。なるほど、それっぽい選択肢があるよね。

 

[解法] これは一発で解いてしまっていいでしょう。イギリスはEUには加盟するものの、共通通貨ユーロは導入しておらず、現在もポンド紙幣が流通している。③が誤り。

 

[今後の学習] 「イギリスはユーロを未導入である」というトピックは、一年間センター地理をしっかり勉強していれば自然と身に付く知識であろうし、さほど意識することはないかな。過去問でも何回も登場しているわけで、やっぱり「過去問絶対主義」でいいと思う。確かにEUは現在進行形の話題(例えば2013年にも新規に加盟した国がある)ではあるんだけれども、問われる話題っていうのは実は使い古されたネタばかりだったりする。センターには時事問題は出ませんから、案ずることはありませんよ。

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