2014年度地理B本試験[第5問]解説

第5問 これまたいつも通りの『現代世界の諸課題』の大問。オーソドックスな雰囲気はありますが、どうなんでしょうか。

 

問1 [インプレッション] おっと、単問から2つの答を選ぶというパターンは久しぶり。選択肢が6つあるって、新鮮に思えるなぁ。ネタとしては選択肢③がすごく重要。これは知っておいてほしいな。

 

[解法] ちょっと判定が難しい。もしかして間違っているかも知れないけれど、ご容赦くださいませ。

選択肢③が非常に重要なのですよ。中国は国家の政策として、乾燥地域である西部内陸部の植林運動を積極的に進めている。中国は森林が増加した、代表的な国なのだ。授業でたしかにしゃべってはいるんだけど、そんなに強調した覚えもないし、結構みんなできなかったんじゃないかな。心配です。

誤っているのは、まず②。オーストラリアは乾燥大陸であり、一部では砂漠化も進行している。自然的な事象として(降水量の減少や干ばつなど)によって樹林地が失われてしまっていると考えて、妥当なんじゃないかな。②は誤り。「主に景観の保全に必要な火入れ」って例えば阿蘇山周辺で行われているものだよね。日本のような温暖多雨な国は、そのまま放置しておけば自然と樹木が生えてしまう。草地として残しておくなら、定期的に火入れを行わないと。阿蘇山の観光名所「草千里」がそういう努力によって作られているものだよね。

さらにもう一つは⑤。フランスはあまりバイオマスが進んでいる国とはいえないよね。原子力発電への依存が高い国であることはみんな知っているでしょう。たしかに(去年の問題で)フィンランドが木屑を利用したバイオマスが盛んであるっていうネタが登場しているのだが、それが意識された本問の選択肢5であることは間違いない。フィンランドにしても、パルプ用の伐採時に生じた木屑を燃料として転用しているだけであり、わざわざ木を植えてっていうわけでもないもんね。

以上より、②と⑤が誤りになる。①・④・⑥はとくに問題ないでしょう。③が本当にポイント!

 

[今後の学習] こういった問題については、一朝一夕の努力でどうにもかるものではない。不断の努力があってこそ、広い知識が身に付くわけで、本問にしても難しいことは問われていないのだが、実は解答に高いセンスが必要になっていたと思う。

それからもちろん、過去問に習熟して、問題を解くコツみたいなものも付けていってほしい。例えば、②みたいな内容ってあるでしょ?絶対そんなことはないんだけどさ、でも何となく、そういうこともあるのかなって、考えれば考えるほどわからなくなってきてしまう。センター試験をたくさん解いて、問題の「解き方」みたいなものをしっかり掴んで欲しいわけだ。本問はそうしたセンター独特の雰囲気が色濃く現れた問題であり、センターにいかに習熟しているかが、正否の分かれ目だったと思う。

 

問2 [インプレッション] おっと、時々登場するセンターピボットによる農地ではないか。灌漑農業ですね。

 

[解法] 地下水を中央の散水管によって、周囲の農地に与える。アメリカ合衆国の灌漑農業地域でみられるセンターピボット農法による農地はこのように円盤状になる。最近はサウジアラビアなんかにもあるらしいけれど(そっちは地下水じゃないかもしれないけどね)。正解はベタに②でいいでしょう。

 

[今後の学習] これは写真をしっかりみて解く問題ではあるんだが、さほど難易度は高くないとは思う。1998年にほとんど同じ問題が出ているんだが、さすがに古いかな。教科書はあまり読む必要はないけれど、こういった写真だけは見ておいた方がいいかもしれないね。

 

問3 [インプレッション] オーソドックスな文章正誤問題。誤文判定問題を解くコツは、確実に違っているものを探すこと。どちらとも取れるような中途半端な選択肢は保留。

 

[解法] 決して鉱産資源の問題というわけでもないね。経済の問題なの

だ。センター地理は経済が根本にある。資本主義が突き詰められた現在の社会において、貧富の差が縮まるわけはない。高福祉で恵まれない人たちを救おうという取組みをしている国なら別かも知れないが、アフリカの発展途上国でそんなことはないだろう。むしろ資源の存在によって、それを支配する一部の人間のみが利益を独占するならば、格差はさらに拡大する一方なのだ。④が誤り。

 

[今後の学習] 資源があることによって貧富の差は拡大する。そういった状況は理解できるよね。資源をいかに有効に国の発展篦撓めに利用するか。それは大きな課題であり、非常に難しいことなのだ。

 

問4 [インプレッション] 北ヨーロッパとアメリカ、そして発展途上国という組合せは、問5とも共通している。問4、問5ともにネタは同じなのだ。国民の生活を第一に考える福祉国家が集まるヨーロッパ、経済成長が重要で大量生産大量消費を国家運営の根幹とするアメリカ合衆国、そして経済レベルが低いため、国民福祉も充実せず。大量消費も行えない発展途上国。こういったキャラクター分けで考えよう。

 

[解法] リサイクルに関する問題はかつて一問あったけれど、廃棄物は初めてだね。

「1人当たりの年間一般廃棄物発生量」ってどんな国で多くなるのだろう。やっぱり、大量生産大量消費の先進国だと思うわけだ。とくにアメリカ合衆国を思い浮かべたらいいんじゃないかな。アメリカ合衆国は1人当たりのエネルギー消費量も圧倒的に高い値となっている無駄遣い国。アをアメリカ合衆国とする。イとウはあまり差がないから保留。

さらに「リサイクルされる量の割合」を確認しよう。イは34、ウは3。大きな違いがあるよね。やっぱり環境を考えてリサイクルにも真剣に取り組むのは先進国、とくにヨーロッパでこの考えが進んでいるとみていい。イがスウェーデンで、残ったウが発展途上国のメキシコ。まだそういった環境に対する配慮のような思考には欠けている。

 

[今後の学習] 国のキャラクターわけは非常に重要。リサイクルに熱心なヨーロッパ諸国、無駄遣いの国アメリカ。そういった区分けが大切になる問題なのでした。で、最初にも言ってるけど、このキャラ分けは問5にも引き継がれるのです。

 

問5 [インプレッション] あぁ、昔模試でこういう医療と公的支出をネタにした問題を作ったっけなぁ。あまりセンターで問われる話題ではないのでとっつきにくいんだけど、考えて何とかしましょう!

 

[答]アメリカ合衆国には国民皆保険のシステムがなく、個人個人がそれぞれに保険会社と契約して、医療費を負担するという話がある。だから金持ちは高度な医療を受けられるが、貧しい者は保険にも入れず、医療において貧富の格差が広がっている。

このことを念頭におくと、医療において公的支出の割合が高い日本とキ、低いカとクというグループに分けられるのだが、アメリカは後者のグループに入るだろうね。一方、スウェーデンに代表される北ヨーロッパ諸国は福祉が充実しており、税金も高いが、医療保険や年金も含め、それを国民に還元するシステムが整っている。北欧の人って貯金しないとかいうじゃない?高齢者になったら国が全部負担してくれるので、個人が貯金をするまでもないのだ。北ヨーロッパの国としてデンマークを考え。これがキに該当すると考えていいんじゃない?

で、残ったカとク。どちらがアメリカ合衆国なのだろう。さっきも言ったけど、アメリカの場合、国民保険はないけれど、金持ちは自分で高い保険料を払うことができるのだから、かなり高度な医療を受けられる可能性がある。だから医療費全体で考えると、それなりに高い金額になっているはずなのだ。一方、インドはどうしても貧富の差が極端に大きな国だよね。まともに病院にいけるような富裕層はごくわずかであり、ほとんどの国民は学校にもいけないし、字も読めないし、そして病院にも行けない。このことを考えると、「GDPに占める医療費の割合」が15.2ととりわけ高いのがアメリカ合衆国であり、4.2と低いのが、まともな病院すら少ないインドと考えて妥当じゃないかな。貧富の差が最も大きく現れるものは、こうした医療体制だと思う。

 

[今後の学習] TPPによって日本もアメリカと同じように国民が個々に保険会社と契約する体制になるのかもしれないし、逆にオバマ政権が実は日本のような国民皆保険を推進していたりして、これからどんな風になるかわからないところでもあるのですよ。だからこそ、君たちの関心はスゴく高いのかもしれない。ボクは授業でこうした政治や経済、国際関係の話もよくしていて、みんなとても興味深そうに聞いてくれる.こういう問題を前にすると、実はそうした「教科書から離れたトーク」こそ、センター試験の問題に直結するものだったりするのだなって改めて確信する。余談を「余分な話」と思ってまるで聞いていない人もいるんだけど、センター地理がこうした総合科目である以上、余談がむしろポイントを突いていることすらある。余談の精度を上げていくのが我々の役目であるし、君たちも余談だからこそ、より集中してボクの言葉に耳を傾けてほしい。

 

 

 

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