2014年度地理B本試験[第1問]解説

第1問 定番の世界の自然環境ネタ。最初の図を見る限り、とくに意外性もないし、無難な感じはするかな。

 

問1 [インプレッション] 大地形の問題なんだが、このジャンルって実は海底地形や火山が頻出。本問もそれにならったものになっているね。

 

[解法] ①はちょっと難しい。たしかにハワイは火山島なんだが、ここにあるように「水没したかつての火山島が」っていうのが難しい。でも本問については②が絶対的に誤りであるので、センター過去問に習熟したみんななら確実に解答できたはず。海溝は原則として太平洋の外縁一周。一部に例外(カリブ海やインドネシアなど)もあるが、いずれにせよカナダ東岸の大西洋には海溝は存在しない、②が誤り。

 

[今後の学習] ①はホットスポットに火山が生じるシステムに言及する内容であり、やや発展的であると思う。これについては知る必要はない。それより海溝や海嶺、大陸棚の位置を知る方が絶対的に重要。合い言葉は「センター地理は海底地形」なのです。

 

問2 [インプレッション] ちょっと変わった問題だな。こうした問題は、内容より図の読み取りといった形式的な部分で罠にハマる人が多い。慎重に歩みを進めないといけないね。

 

[解法] 火山やプレート境界を意識するまでもなく、ある程度は常識的センスで融けるんじゃないかな。Aの範囲で大地震が起きたところといえばもちろんインドネシア.スマトラ島沖地震は東日本大震災に匹敵する巨大地震として知られている。Bの範囲はやっぱり日本に注目しようか。世界の地震の何%かはわが国の範囲で発生しているのだ。Cはニュージーランドかな。この国は火山国として知られているし、また東日本大震災の一週間前に起こったクライストチャーチの地震を覚えている人もいるんじゃないかな。Aは赤道周辺、Bは北半球、Cは南半球がそれぞれ主要な震源域と考えていいと思う。

日本つまり北緯30〜40度で地震が頻発しているものとしてカをBと考える。またニュージーランドを考えた場合、クでは地震がその緯度帯で地震がみられないのでこれを除外し、Cをキとする。残ったクがA。発生回数は多くないものの、赤道周辺でそれなりに地震は起こっている。

 

[今後の学習] これは理屈うんぬんよりある程度は一般的な知識で解くべき問題なんじゃないかな。日本、インドネシア、ニュージーランドが地震国であることはぜひ知っておいて欲しいし、それを利用して図を読解していこう。図の読み取りの方が難易度が高いと思うよ。思考力を生かして!

 

問3 [インプレッション] ボクの授業ではやたら有名なバイカル湖なんですが(笑)実はこんな風に真っ正面からセンターで出題されたのって初めてなんだよね。湖って個性的なものが多いから、当然こういったパターンの出題は予想できた。センター初出ネタが多いけれど、決して難易度は高くない。

 

[解法] バイカル湖からいきましょうか。シベリアに位置し、豊富な水量を利用し、周辺では水力発電およびアルミニウム精錬が盛ん。断層活動により形成された地溝湖であり、世界で最も深い湖として知られている。Lがサに該当。

さらに北米五大湖もわかるんじゃないかな。かつてこの付近まで大陸氷河に覆われ、氷河の侵食や堆積作用によって湖が形成されている。Jはスに該当。なお、最終氷期における北半球の大陸氷河の範囲は北アメリカ大陸やヨーロッパ北半部に及び、この範囲では氷河湖が多い一方、ユーラシア大陸東部には大陸氷河は存在せず、氷河地形もない。バイカル湖が氷河湖でないことも確実に知っておこう。

残ったKがシ。世界最大の湖沼(塩水湖であるが)カスピ海。「流出河川はない」湖を内陸湖というが、乾燥地域に特徴的にみられるもの(乾燥の定義は、降水量<蒸発量であることもぜひ知っておこう)。カスピ海はそうした湖沼の代表例。中央アジアは乾燥地域であり、流れ込んできた水は蒸発により空気中へと消えていく。

 

[今後の学習] バイカル湖は初登場。五大湖も直接的に氷河湖であることが問われたことはない。カスピ海も世界最大の湖ではあるのだが、これも出題例は過去にない。しかし、いずれも周辺知識が重要な湖沼であり(バイカル湖ならばアルミニウム精錬、五大湖ならば大陸氷河の存在、カスピ海ならば乾燥地域の湖沼の特徴)、むしろ必須事項であるといえる。確実にゲットしてください。

 

問4 [インプレッション] 土壌の問題。定番ですね。名称ではなく、性質が問われるのもいつものパターン。そして案外と正解率が低かったりするのも、これまたいつものパターン!?

 

[解法] 土壌の問題なんだが、「成帯土壌」と決め打っている。これはめずらしいかな。いつもならそんな断りはなく、成帯土壌と間帯土壌がごちゃまぜになって出題されているのだが。

成帯土壌というのは、気候帯に沿って分布する土壌。湿潤土壌のラトソルとポドゾル、半乾燥土壌の黒土、乾燥土壌の砂漠土などがある。

湿潤土壌は差性を呈し、熱帯のラトソルは赤色、冷帯のポドゾルは灰白色。とくにラトソルに関しては、酸化した金属を含むことを絶対に知っておく。多雨で錆びてしまったというイメージを持っておこう。

半乾燥土壌は弱アルカリ性であり、厚い腐植に覆われた肥沃な土壌。黒土(黒色土)とよばれるが、地域によってチェルノーゼム(ユーラシア)、プレーリー土(北アメリカ)、パンパ土(南アメリカ)と名称が異なる。

乾燥土壌はアルカリ性。過剰は蒸発作用によって土中から化学物質が地表面まで持ち上げられ、水酸化カルシウムを形成する。

さて、ここでPに注目しよう。五大湖の南側、西ヨーロッパ、中国華北などに分布している。大まかに温帯地域と考えていいんじゃないかな。温帯地域の土壌は上では触れていないので、消去法で考えてみよう。

①は灰白色がキーワードで冷帯のポドゾル。②は酸化した金属を含むということで熱帯のラトソル。④はそもそも植生に乏しく、塩類集積も進むということで砂漠土となる。消去法で③が正解。

温帯地域に分布する③の土壌は褐色森林土。ここでは「褐色」をキーワードとして考えていいと思う。

 

[今後の学習] ちょっとやられたな。やっぱり土壌の問題は難しいや。温帯地域の土壌である褐色森林土は実はあまり今まで出題例がなかった、それだけに学習の盲点になりやすい。本問にしても、①・②・④は非常にわかりやすい(それぞれポドゾル、ラトソル、砂漠土であることは明確)のだが、肝心な③が非常にわかりにくい。とりあえず確実に「褐色」だけは確実なキーワードとして捉えておこう。

 

問5 [インプレッション] なかなか捻った問題。メキシコがちょっとわかりにくんだが、他はオーソドックスかな。気温の高低や年較差に大きな影響を与える要素として緯度があることを、必ず認識しておこう。

 

[解法] Uを当てるのだから、そんなに難しくないと思う。中緯度(やや高緯度かな)の大陸東岸の気候ということで、例えば日本の北海道を考えればいいんじゃないかな。札幌の気温はぜひ覚えておこう。最暖月平均気温25℃、最寒月平均気温−5℃。つまり年平均気温10℃、気温年較差はは30℃。これに最も近い値のものとして④を選択する。

 

[今後の学習] 気候はケッペン気候区分が出題されることはなく、具体的な数値を知っておくことが重要となる。とくに日本の気候はイメージしやすいので、札幌[25℃・−5℃・1000mm]、東京[25℃・5℃・1500mm]、那覇[25℃・15℃・2000mm]という、最暖月平均気温・最寒月平均気温・年降水量の値はぜひ知っておいて、使ってみよう。

なお、①〜③は難しいと思う。Tが③となる。平均気温が30℃に近いというのはかなり特殊な状況。アラビア半島の砂漠の中なのでこういった特殊な気候がみられる。周囲に水分がない大陸性の気候となるため、比較的低緯度にありながらも(本来低緯度ならば、季節による太陽からの受熱量に変化が小さいため、気温年較差は小さくなる)、意外に気温年較差が大きくなる。

Sが②。西ヨーロッパの典型的な気候。中高緯度に位置し、年平均気温は決して高くない。しかし暖流や偏西風(南風なので温暖)の影響により冬季の気温が比較的高いことから、気温年較差は小さい値となる.同緯度の大陸東岸の東京で気温年較差が20℃となることと比較してみよう。

Rが①。ここは図からはよみとりにくいのだが、おそらくメキシコシティだろう(本年度は銀鉱の産出の問題もあり、ちょっとしたメキシコブーム?)。低緯度なので気温年較差は小さいのだが、標高が高く、平均気温はその分だけ低減されている。

 

問6 [インプレッション] この出題パターンは以前にあったな。でも、その時も正解率は低かった。決して難しいことは問われていないのだが、グラフの読解を丁寧に行わないと、予想もしない結果となる。注意です!

 

[解法] Yの1月を特定する。南半球なので夏。1月は南半球側の受熱量が大きく、赤道低圧帯が南緯10度付近にまで下がってくる.オーストラリア北部のYaはこの時期スコールに見舞われ、多雨となる。①が正解。

 

[今後の学習] 他の地域の判定は不要と思う。風系の移動をシミュレーションし、赤道低圧帯の影響を考慮し、多雨となる緯度帯を推理する。なお、Ydは南緯35度大陸西岸(*)に位置し、地中海性気候が出現する。1月(夏)は、南下する中緯度高熱帯の影響によって少雨となる。

(*)一見すると大陸東部に近いが、オーストラリアの場合、東西の気候を分けるのは東岸を縦断するグレートディバイディング山脈。Ydはこの西潟に位置するので、気候については「西岸」と考えていいのだ。アデレードという都市である。