たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう

2020年地理B本試験[第1問]解説

たつじんオリジナル解説[2020年地理B本試験]<第1問>             

 

[1][インプレッション]さぁ、いよいよ2020年地理B本試験の開幕です。とはいえ、僕の場合、第2問→第6問→第3問→第4問→第5問→第1問の順で解くので、実は8割がたテストが終わった状態でこの第1問に入っているわけですが。

例年通り、自然環境ネタの大問。地形や気候が中心となり、難易度は例年高いのですが、さて本年はどうなることか。この第1問を苦手とする受験生は多く、それはもちろん難しい問題が多く含まれるからだけど、だから後回しにするのは一つの手だと思いますよ。難易度が低く、しかし解答に時間を要する第6問などを先にゆっくりと片付けてしまい、第1問は最後に。「できなくて元々」だと開き直ってもいいし、ある程度の失点は計算に入れておきましょう。

さて、その第1問の問1ですが、毎回「大地形」からの出題が多くなっています。大地形は地理のジャンルとしては例外的に「知識」が重要視されるジャンル。だからかえって簡単とも言えるし(覚えておけば解けるので)、適切な受験対策をしていない人にとっては最難関ともなります。過去問を研究すれば出題される箇所はほとんど決まっているし、「経験値」がモノを言うんちゃうかなぁとは個人的には思います。過去問への習熟が大事。

 

[解法]冒頭の問題は「大地形」ジャンルからの出題が多く、とくに海底地形(海嶺や海溝など)は頻出。ただ、今回は地形ジャンルであることは間違いないけれど、それとはちょっと違ったパターンかな。まず陸上の地形であること、さらに「氷河の削った侵食地形」や「ワジ」など小地形が登場していること、そして「永久凍土」という地形と関係ない言葉が含まれている(あえていえば「オアシス」も地形とは関係ないかな)こと。

しかし、それでもやっぱり規模の大きな地形が主題なのは間違いない。具体的には標高だよね。標高を表す数字こそが最大のポイント。まさに「地理は数字の学問」であるし。「立体視」が重要ということ。

ではそれぞれの選択肢から数字を読み取り、土地を立体視していこう。①は「500〜1000」と低め。これは地球規模では平原と思っていいレベルじゃないかな。「安定陸塊」と考えてみよう。

②は「900〜3000」とはずいぶん半端な(笑)。ちょっとした高原で、低地でも高山でもない。この選択肢は「オアシス」がポイントになりそう。

③は「2000〜3000」で4つの選択肢中では平均的。

④は高い。「4000〜5000」ならば富士山を軽く凌駕する。「新期造山帯」の山脈だろう。

図を参照。なるほど、最大のポイントはBだね。ここ、どこかわかるかな。経度(縦軸)はインド東部からバングラデシュと同じ(インド半島とインドシナ半島の間のベンガル湾。その大きく湾曲した部分に位置するバングラデシュ)、緯度(横軸)は中国の華中と同じ(中国南部の大きく弧状に張り出した部分。長江河口やシャンハイなど)。この位置関係からみて、この位置が「チベット高原」であることは間違いない。インド半島を含むプレートがユーラシアプレートへとぶつかり、大きく土地が持ち上げられた巨大な褶曲山脈がヒマラヤ山脈であり、その北側のチベット高原も同様の成因にて形成された高峻な地形。新期造山帯であり、火山こそないものの、日本列島の標高を軽く越える高地。これが④とみて妥当だろう。

なお「永久凍土」という言葉にも注目しておこう。地下に「氷の層」がある状態で、夏でもこれが解けない。シベリアの広い範囲に永久凍土層がみられることはよく知られている。冬季に強烈な低温となるため、夏の気温が上がったとしても、地下の氷の層は完全にはなくならないのだ。チベット高原の場合、緯度が低いので冬の気温はシベリアほどには低下しないが、しかし標高が高いため夏の気温もシベリアほど高くならない(*)。地面の下の氷の層は、夏の間も保存されるのだ。

さらにAに注目して欲しい。ここ、サハラ砂漠のド真中で、亜熱帯高圧帯の影響によって極度に乾燥する。選択肢中に乾燥に関する言葉が含まれているね。そう、「オアシス」。一般には砂漠の中の湧き水のことだが、地理の場合は、砂漠地域で行われている伝統的な灌漑農業である「オアシス農業」という言葉で知られているね。いずれにせよ、砂漠のキーワードであり、Aが②だろう。

ちなみに「砂漠」というのは地形用語ではなく、植生用語である点も確認しておこう。[砂漠=植生なし]として認識しておいてほしい。乾燥の度合いが高く、樹木どころか草すら育たないのだ。地表面を覆い尽くす植生がみられない状態を「砂漠」と呼ぶ。日本のような湿潤な国は「森林」が生育。サハラの南縁に沿うサヘル地帯は半乾燥であり「草原」が広がる。Aのサハラは強く乾燥。植物がみられず「砂漠」となる。

残りはCとD。これが①と③のいずれかとなる。ここで気になる言葉はないかな。やはり「氷河」ではないだろうか。氷河には大きく2種類あり、一つが「大陸氷河」、一つが「山岳氷河」。大陸氷河は現在は南極大陸とグリーンランド内陸部にしかみられない。「氷床」と呼ばれるもので、巨大な氷の塊が大地を覆い尽くし、そして土地を押しつぶしている。現在より気温が低かった数万年前の時代(最終氷期と呼ばれているね)は、両半球の高緯度地域が大陸氷河で覆われ、その範囲は「ヨーロッパ北部」、「北アメリカ大陸の五大湖より北側」、「南アメリカ大陸南端」、「ニュージーランド南端」。これらの地域には氷河の作用による地形が多く残されている。フィヨルドや氷河湖など。

一方の「山岳氷河」。現存するものは、低緯度では標高6000mを越える高山(キリマンジャロ)、中低緯度では標高4000mを越える高原。Bのチベット高原にも(そしてそれが接するヒマラヤ山脈にも)山岳氷河は分布している。アフリカ大陸北東岸のアトラス山脈、ヨーロッパ南部のアルプス山脈も山岳氷河の分布地域。日本にはみられない。ただし、最終氷期は現在より気温が低かったことにより、3000m級である日本の高山にも山岳氷河は存在していたようである。カールやU字谷など氷河による地形が北アルプス(飛騨山脈)には形成されている。

さて、選択肢①では「氷河の削った侵食地形」とあるので、現存する氷河にこだわらず、過去(最終氷期)に氷河が存在していたことも含めて考えていいだろう。CとD、それはどちらの地域だろう。

上述のように「北アメリカ大陸の五大湖より北側」は大陸氷河に覆われていた地域である。五大湖は氷河湖(氷河の侵食により土地が削られ、さらに氷河が運搬した土砂が河川をせきとめることで湖が形成された)であり、さらにカナダやアラスカ州の沿岸部にはフィヨルドがみられる。Cの部分は、そんな大陸氷河地域のド真中に当てはまるんじゃないか。大陸氷河の作用による地形も多くみられるはず。これを正解としていいだろう。

残った③がDに該当。

(*)チベットの中心的な都市であるラサ(標高3600m)では、最寒月(1月)がマイナス3℃、最暖月(7月)は17℃。富士山と同じ標高であるが、低緯度であるため、極端な低温とはならない。草地が広がり、ヤクの遊牧が行なわれる。

 

[2][インプレッション]ハイサーグラフを用いた気候判定問題。今年は他にも雨温図を使った気候判定問題があって、ずいぶんオーソドックスな問題が並んだものだ。そちらの問題では北半球と南半球の違いを考えて解くようにつくられていたのですが、本問はどうでしょう。ハイサーグラフの問題こそ、北半球と南半球の見極めが大切なパターンが多いのですが。1月が高温なら南半球、7月が高温なら北半球ですね。

 

[解法]ハイサーグラフについては。大雑把に傾きなどで判定してしまう人も多いけれど、そういった「直感」に頼る解法は地理という理詰めの科目ではふさわしくない。やはり数字を愚直に確認していかないと。何月に気温が何度まで上がり、そして降水がどれぐらいあるのか。数字を一つ一つ読み取る意識を持って。

①から④のグラフで真っ先に確認するのは、これが北半球なのか、南半球であるのか。これは月を表す数字をみないといけない。大まかな「傾き」では判定できないよね。

1月が高温、7月が低温となっている①と②が南半球、1月が低温、7月が高温となっている③と④が北半球。図1を参照すると、対象となる地点のうち、イとウが北半球、アとエが南半球。ウを答える問題なので、この時点で選択肢は①と②に絞られる。

イとウの判定は楽なんじゃないかな。いずれも高緯度に位置する地点であるけれど、大陸内部のイと沿岸部のウ。緯度が同じなら季節ごとの太陽からの受熱量は変わらない(季節ごとの太陽の出ている時間が変わらないってこと。緯度が同じ地点は「昼」の長さが同じ)から気温は等しくなるはずだが、海陸の比熱差の影響は大きい。③と④を比較し、気温年較差(最暖月と最寒月の平均気温の差)が小さい③が「海洋性」でウ、大きい④が「大陸性」でイ。正解は③である。

                                                                                              

[3][インプレッション]地震と火山の問題とはずいぶんオーソドックスですね。よくあるパターンでしょう。とっつきやすいんじゃないかな。プレートについて問われていますが、プレートテクトニクス理論そのものは出題されないので、おおまかにどの辺りにプレート境界があるのか知っていれば十分です。プレート境界は3種類。「海嶺=プレートの広がる境界」、「海溝=プレートの狭まる境界」が重要で、つまり海底地形こそポイントになるのですね。

 

[解法]4地域中2か所を当てるというパターンが珍しいが、とくに複雑な出題形式でもないだろう。地震と火山に関する問題で、プレート境界との関係も考慮するよう求められている。

しかし、本問についてはダイレクトに「火山」だけ考えればいいのではないだろうか。プレート境界で非常に重要なのは海底地形で、「海嶺=プレートの広がる境界」「海溝=プレートの狭まる境界」。ただし本問はカ〜ケがいずれも陸地を中心とした地域であり、海底地形を考えても仕方ないだろう。

地理学習者の中には「新期造山帯=火山」と考えている人もいるだろうがこれは全くの誤解なので考えを改めること。たしかに新期造山帯に火山が多いのは事実であるが、例外が多すぎる。例えば地球上で最も高い地形であるエベレスト山を含むヒマラヤ山脈は新期造山帯であるが、火山はみられない。一方で、プレート境界に接しない火山としてハワイ諸島がある。プレート中央部に位置し、マントル対流の突き上げがみられるホットスポットに形成された火山なのだ。

 

火山の分布について整理しよう。大まかな傾向として「火山は海」にある。分厚い大陸プレートを突き破る力はマントルにはない。薄い海洋プレートだからこそ、地下のマグマの動きが地表面まで及ぶのである。1)太平洋の外周部(オーストラリアを除く)・・・環太平洋造山帯に含まれる地形であり、弧状列島(日本列島のような弓なりの形状の島々)や大山脈がみられる。海溝に沿う。

2)カリブ海・・・環太平洋造山帯から分派した新期造山帯地域。こちらにも弧状列島が。

3)ハワイ諸島・・・太平洋プレート中央部のホットスポットに形成。

4)キリマンジャロ山・・・アフリカ大地溝帯(広がる境界)に沿う。

5)イタリア半島・・・地中海沿岸の島々(半島)には火山が多い。一般にアルプス・ヒマラヤ造山帯に含まれる地域は火山が少ないが、ここは例外。

6)アイスランド島・・・海嶺(広がる境界)に沿う。

なお、アフリカ大地溝帯と海嶺は同種の地形。いずれもプレートの広がる境界であり、巨大な高原や海底山脈となっている。プレートの間からマグマが染み出し、火山を形成。キリマンジャロ山は上記の「火山は海にある」の例外となっているが、この地溝帯が海嶺と似た地形であることを考えれば納得であろう。

以上より、火山がみられる地域は地中海沿岸のカ、太平洋外周のクである。( )が正解。

キはスーチョワン盆地。長江の中上流部に開けた巨大な盆地であり、第5問問1でも長江の流れが取り上げられているので、そちらも見ておくといいだろう。プレート境界に近く、かつて大地震が発生したこともあるが、火山は分布しない。大陸内部であるため、火山がみられないと考えてもいい。

ケのブラジルは安定陸塊の地形であり、プレート境界には該当せず、地震の発生もない。(終了)

 

[4][インプレッション]「気候が理論が問われる」の代表的な問題でしょうか。センター試験で気候が取り上げられる際の典型的なパターンですね。地球の風系(気圧体の位置)は頭に入っていますか。低緯度から高緯度にかけて「熱帯収束帯」「貿易風帯」「亜熱帯高圧帯」「偏西風帯」「寒帯前線」「極風帯」「極高気圧」の順。これが季節的に移動することによって、それぞれの緯度帯において雨季と乾季が生じます。北半球の受熱量の多い7月を中心とした時期は風系全体が北上し、南半球の受熱量の多い1月を中心とした時期は同じく南下します。このシステムが理解できているとこの問題はスムーズに解けると思いますよ。

 

[解法]地球全体の風系のモデル図。非常に興味深い図ではあるが、漠然と見ていても問題の解決には至らない。選択肢の文章から読んでいこう。

まず①から。「サの緯度帯では、下降気流の影響で、『年間を通じて雨が振りにくい』」。正誤の判定をする必要のある下線部を二重括弧で示している。下降気流は雲ができにくい状態で、降水量が少なくなる。この選択肢の文章自体は矛盾する事は言っていない。とりあえず「正文」としておこうか。

次は②。「シの緯度帯では、上昇気流の影響で、『年間を通じて多量の雨が振りやすい』」。上昇気流は雲のできやすい状態。降水量は多くなる。この選択肢も誤ったことは言っていないようだ。同様にひとまず「正文」としておこう。

③と④の選択肢においては雨季となる時期が示してある。これらはちょっと怪しいんじゃないか。重点的にチェックしていこう。③は「スの緯度帯では、『1月ごろに雨季のみられる気候が形成されやすい』」とある。図3に注目しよう。スは南緯10〜20°ぐらいだろうか。南半球の低緯度地域である。この緯度帯においては1月は「低圧帯」の影響下となっている。赤道周辺の熱帯収束帯が南下することによって、スコールに見舞われる。一方、7月は低圧帯の範囲から外れ、とくに高緯度側は高圧帯の影響にある。亜熱帯高圧帯が北上しているのだろう。1月が雨季で降水量が多く、7月は乾季で降水量が少ない。正文である。

これで④が決定的に怪しくなった。しっかり文章を読んでみよう。「セの緯度帯では、『7月ごろに高温で乾燥する気候が形成されやすい』」とある。セは南緯40〜50°だろうか。図3を参照するに、1月は高圧帯の影響が、7月は低圧帯の影響が、それぞれ及んでいる。1月は南半球の夏であるが、この時期に亜熱帯高圧帯により乾季、7月は南半球の冬であるが、この時期に寒帯前線により一定の降水がみられる。④の文「7月」を「1月」に入れ替えれば正しい文章となる。これが正解。

そもそもセは南半球なので「7月ごろの高温」の時点で間違っていたわけだが。気候の理論を問う問題としては、簡単な部類に入る問題だったんじゃないかな。

 

 

[5][インプレッション]うわっ、これ、難しそうやな(涙)。以前も樹木の高さの問題が出たけれど、それもむずかったんやなぁ。。。っていうか、みなさん、樹木の高さのイメージってあります?熱帯林って確かに巨木が多い印象ですが、逆に冷帯林のタイガも高い木が立ち並んでいるイメージでしょ。例えば地中海に分布する硬葉樹木は低木だったりするんですけど、はっきしたものはそれぐらいかな。なかなか難しい問題だと思いますよ。

 

[解法]樹木の高さがテーマとなっている。これだけではなかなかわかりにくいと思う。熱帯のジャングル、冷帯のタイガ、どちらの方が高い樹木が多いのかって、パッと言われて分かる人っていないと思います(僕はわかりません)。

こういう時は問題文の注釈に頼ろう。なるほど、こんな風に書いてある。「その地域の植生を構成する樹木の最大の高さ。樹木の生育していない地域では0mとなる」。そう、もちろん重要なのは後半だね。「樹木の生育していな地域」には、乾燥地域や寒冷地域、高山などが当てはまる。乾燥気候のうち、「ステップ」は草原であり樹木はみられない。さらに乾燥の度合いが高い「砂漠」は草すら生えない。「砂漠=植生なし」の状態。①から④のうち、気になるのは③と④。いずれも「0m」の部分がある。つまり樹木がない。これを乾燥地域つまりステップや砂漠と考えてみてはどうだろう。

図1参照。PからSを見てみよう。なるほど、Rがわかりやすいと思う。オーストラリアは乾燥大陸であり、国土の広い範囲が乾燥気候に覆われている。ステップの範囲が広いが、大陸内部には砂漠も広がる。北部は熱帯気候であり湿潤気候となっているが(*)、大陸の中央部から南部にかけては乾燥気候となっている。これを③とみていいんじゃないか。

さらにPを見てみよう。これ、かなり重要。Pの最北端は「サヘル地帯」にかかっている。アフリカ大陸の最西端(セネガルのヴェルデ岬)から東方に帯状に広がる一帯が「サヘル」。サハラ砂漠(Aが含まれる広い範囲)の南縁に沿う草原。この位置は必ず目で覚えておこう。「アフリカ大陸の最西端」が目印となるので決して難しくないと思う。

Pの北部はステップ(草原)であり、樹木は存在しない。北端が「0」となっている④がこれに該当するのではないか。

さて、これで候補は2つに絞られた。北部で樹高が高く南部で低い①、全体的に樹高が高い②、これらが、シベリアのQ、ブラジルからパラグアイのSに該当する。さぁ、どっちがどっちなんだろう?僕はぶっちゃけ思うんだが、みんなはここまで出来たらいいと思うよ。本問はやっぱり難しいや。はっきりとした決め手があるわけでなし、選択肢を2つまで絞ったら、あとはカンで解いてしまっていいと思う。それで正解率は50%になるわけだし、それで十分なんじゃないかな。本当の難問なら正解率は極端に下る(いかにも正解っぽい選択肢が用意されており、それに誤って誘導されてしまうので、ほとんどの者は不正解となってしまう)。そういった問題に比べれば、正解率が2分の1なら「御の字」だと思う。無理に難問は解く必要はないし、こういった問題でエネルギーを使うことはない。

とはいえ、さすがに解説で解答を放棄してしまってはいけないので(苦笑)ここからさらに解析を行っていこう。なるほど、と思うところは多いと思うよ。

まず①と②に注目。樹高が高いのは①では北部、②ではほぼ全体になっている。でも、よく見るとこれがちょっと違うんだわ。①では20mを余裕で越え、30mに達しようとするものもある。それに対し、②ではようやく20mを越えるところがある程度で実はそれほど高木ではない。

ここで④に注目してみよう。④の最南部、極めて樹高が高くなってるよね。その高さは30m以上に達する。④がPに該当するわけだが、最南部は赤道直下。アフリカ中央部のコンゴ盆地であり、植生は熱帯雨林。多種多様の常緑広葉樹が生い茂る密林である。

どうだろうか。このことから考えて、熱帯林は極めて樹高が高いとみなしていいんじゃないか。20mや30mの樹木は他の地域ではなかなかみられないものだ。

このことから考えて、①の北部は樹高が20mを越えるほどの高さなのだから、これを「熱帯林」と判定することは可能だろう。①の中央から南にかけては背の低い温帯林なのかもしれない。あるいは熱帯でもやや降水量が少なく熱帯草原(サバナ)になっているとも考えられる。しかし、最北部については街がなく熱帯の密林である。どうだろう?QもSも全面に渡って樹木がみられるのは間違いない。しかし、Qが全体にシベリアの霊体地域であるのに対し、Sは北部がアマゾンの熱帯雨林地域にかかっている。①をSと考えて妥当なんじゃないか。北部はアマゾン川流域の低地で熱帯林が繁茂する。中央から南はやや気温が下がり、降水量も減って温帯となっている。①が正解である。

Qが②となるわけだがどうだろう。シベリアの冷帯地域であり、針葉樹林に覆われている。針葉樹の純林(樹種が一様)をタイガと呼ぶ。針葉樹林もかなり樹高は高そうだが(スギやヒノキを想像してみたらいいね)、やはり熱帯雨林の常緑広葉樹には及ばないのだ。

(*)オーストラリア北部には、雨季と乾季がはっきりした熱帯気候であるサバナ気候が広がる。夏(1月)は南下する熱帯収束帯の影響で多雨、冬(7月)は北上する亜熱帯高圧帯の影響で少雨。サバナの植生は「長草草原と疎林」。熱帯草原ではあるが、まばらに樹木が分布する。それらは乾季には葉を落とす落葉樹である(「熱帯=常緑樹」の例外)。

 

[6][インプレッション]最近よくあるパターンの問題ですね。災害の発生件数を図形表現図(円積図)で示した形式。南北アメリカと範囲が広いのが特徴ですが、小さな国も多いので、どの円がどの国を占めているか具体的にわかりにくい部分も。とはいえ、そんな細かいところにこだわなくても解ける問題とは思います。

選択肢は3つ。地震、森林火災、熱帯低気圧。一番わかりにくいのが森林火災とは思います。わかりやすいのが熱帯低気圧かな。北アメリカの低緯度地域(とくにカリブ海やメキシコ湾周辺)で発生するハリケーンは熱帯低気圧の一種です。

さらに地震も判別しやすいのでは。環太平洋造山帯やカリブ海の火山島を中心に考えればいいでしょう。

 

[解法]自然災害の問題で、今回のテーマは「地震」、「森林火災」、「熱帯低気圧」。

取り上げられている範囲は北アメリカと南アメリカの全体で極めて広くなっている。それだけに地域ごとの自然環境の違いは明確であり、解答は容易だと思う。

まず熱帯低気圧から考えてみよう。熱帯低気圧については大雑把に、低緯度の海上で発生する巨大な低気圧と考えくれたら十分(*)。水温の高い海域で誕生し、成長しながら低中緯度の沿岸域を風雨や高潮が襲う。成長のためには転向力(地球の時点によって生じる力。北半球では進行方向に向かって右に、南半球では同じく左に、力が加わる)が必要であるので、転向力の作用がない赤道直下では発生・発達しない。

熱帯低気圧の種類として3つのものを知っておいて欲しい。太平洋北西部が「台風」、インド洋が「サイクロン」、北アメリカが「ハリケーン」。

台風はよく知っているね。日本の南方海上(南シナ海、フィリピン海)で誕生し、中国華南や日本列島、朝鮮半島などに達する。

「サイクロン」はインド洋の広い範囲。ベンガル湾で発生し、バングラデシュに上陸する。サンゴ海で生まれ、オーストラリア北東岸に風雨をもたらす。インド洋の南東部ではマダガスカル周辺でもサイクロンの発生はみられる。

「ハリケーン」の主な発生域はメキシコ湾やカリブ海など。北アメリカ大陸周辺でもとくに温暖な海域である東側で主に発生する。暖流であるメキシコ湾流の影響も強い。西側のカリフォルニア州沿岸は寒流(カリフォルニア海流)の影響で水温が低い。

このことをふまえて考えるに、北アメリカ大陸の中低緯度東部で多くの国々での発生件数が多いタが「熱帯低気圧」であると考えていい。この付近には多くの小国が並び、具体的な国名はわからないが、トータルで考えれば発生件数は極めて大きくなる。最大の値はメキシコのようだが、メキシコ湾で発生した熱帯低気圧がこの国の東部に上陸するのだろう。

さらに「地震」について考えてみよう。地震が頻発するのは、新期造山帯を中心としたプレート境界や火山の近く。南北アメリカにおいては環太平洋造山帯に含まれる太平洋沿岸地域が主。環太平洋造山帯から分派するカリブ海地域にも火山帯は広がり、多くの火山島がみられる。太平洋沿岸のほぼ全ての国で発生している(中央アメリカの細かい国々は判定できないが)ツが「地震」と考えていいのではないか。カリブ海のキューバでも発生している。

コロンビアに注目して欲しい。南米大陸の北西端に位置する高原国。2004年地理B追試験では、コロンビアについて以下のように説明されている。

「この地域では、地震や火山噴火がたびたび;大きな被害を及ぼしてきた。山の斜面では、熱帯地域としては肥沃な土壌をいかして多くのコーヒー園が開かれ、良質のコーヒー豆が生産されている」

コロンビアは日本と同様に複数のプレートが重なる複雑な地体構造を有し、やはり日本と同様に地震が頻発し火山活動が活発な国である。チではコロンビアでの発生数がゼロである。これが地震ということは考えにくいのではないかな。正解は⑥である。

なお、チは「森林火災」であるが、これがよくわからない。図中の地域では、中央アジアやブラジル、ペルーなどが森林面積割合の高い国・地域であり、森林に関する災害も多そうなのだが。

ただ、熱帯地域で降水量が多いために、仮に火災が生じても雨で消えてしまうのでは。熱帯雨林地域は焼畑農業が盛んであるが、これもやはり多雨地域であるため、火災が燃え広がることはないそうだ。

アメリカ合衆国やオーストラリアではしばしば森林火災の拡大が深刻な問題となっている。カリフォルニア州やオーストリア南部など比較的降水量が少ない地域で、何らかの原因で火災が生じればそれを消化する手段は自然界にはない。アメリカ合衆国で森林火災の発生数が多いことにはそういった背景もあるのではないか。

(*)熱帯低気圧の定義は「前線を伴わない低気圧」。例えば中高緯度で低気圧が発達する場合には、高緯度側の寒気団、低緯度側の暖気団の境界付近に位置し、低気圧が前線を伴うかたちとなる(温帯低気圧)。一方、熱帯低気圧は低緯度で発生するため、周辺に寒気団が存在せず、暖気団のみに囲まれているため、前線を伴わない。熱帯低気圧が高緯度方向へと移動し、寒気団にぶつかることで前線を生じた場合、温帯低気圧へと変化する。熱帯低気圧と温帯低気圧は勢力の違いではなく、前線の有無による区別であり、例えば熱帯低気圧が温帯低気圧に変化したからといって風雨が弱まるわけではなく、依然として注意は必要である。

 

 

 

 

 

 

 

 

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