たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう

2017年度地理B追試験[第2問]解説

2017年度地理B追試験第2問解説                  

資源と産業といった、ざっくりとしたジャンル分け。このジャンルからの出題は統計を重視したものが多く、この大問もその傾向が強い。統計は必須的な知識でもあり、(かなり考えないといけない)自然環境をテーマとした第1問ではなく、第2問から取り掛かった方がいいかもしれない。

とはいえ、この大問は実はちょっと考えものなのだ。いずれも統計を使用した問1、問2.問6がいずれも「超」のつく難問。「観光」といった地理Bでは出題されにくいテーマを扱った問6はともかくとして、農産物などベタな統計を取り上げた問1や問3はもっと楽でいいと思うんだけどなぁ。

ただし、そういった「悪問」の中で、燦然と光り輝くのが問5。日本の銀鉱を取り上げた問題。これはテーマ的に素晴らしい問題です。今回の試験全体でもベストの作品です!

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[ファーストインプレッション] ずいぶんベタな統計問題だね。ただ、農産物名ではなく、国名を問うている点に注意。意外にややこしいかもしれないぞ。

[解法] 農産物の生産をテーマにした統計問題。内容としてはありがちなものだが、国名を答えないといけないのがちょっとややこしいな。農作物は「コーヒー豆」、「ココナッツ」、「バナナ」。コーヒー豆については非常にポピュラーなものなので、大丈夫でしょう(っていうか、絶対に知っておかないといけない)。バナナはちょっとマイナーな印象もあるが、1998年度地理B追試験では、統計がそのまま問われたことがあるので、決して無茶な出題ではない。「ココナッツ」はかなり厄介だな(涙)。これ、大丈夫なんだろうか。

さて、ここで表を参照。選択肢の国は、ブラジル、インド、インドネシア、フィリピン(あれ?第5問でもフィリピンは大きく取り上げられているぞ。今年のメイン国だね)。コーヒー豆についてはわかりやすいんじゃないかな。1位の国は間違いなく「ブラジル」であり、Aが該当する。近年はベトナムの生産が伸びていることが最大の注目であるけれど、やっぱり「コーヒー=ブラジル」の関係は揺るがない。国土南部のブラジル高原で、肥沃な土壌であるテラローシャを利用して栽培されているのです。

さらに「バナナ」について。バナナについて君たちが必ず知っておかないとはいけないのが、日本の輸入国。熱帯の作物であるバナナは日本ではあまり栽培されないため、その多くを輸入に頼らないといけない。わが国の場合、フィリピンからの輸入が多く、フィリピン南部のミンダナオ島には日本企業の経営するバナナ農園も開かれている。

ただし、ここでちょっと注意して欲しいのが、バナナにはD、C、Aの③か国がランクインしているということ。たしかに日本からすればバナナはフィリピンから主に輸入しているかもしれない。フィリピンからの主要輸入品目にしてもバナナが含まれているわけである(これについては第5問問5も参照してください)。しかし、だからといって、バナナの世界最大の生産国がフィリピンであるとは断言できるのか?

他の候補は、インドやインドネシア、そしてブラジル(こちらはすでにAが確定しているけれど)などの人口大国。フィリピンも人口が少ない国ではないが(1億人ほど)、さすがにインドなどからみれば比較にならない、農産物というか「食べ物」の生産は、「人の口」すなわち人口の大きさと比例関係にある。バナナを自国で消費している可能性がある以上。「人口小国」のフィリピンが生産首位とは考えにくいのだ。判定が難しい。

というか、本問の場合、そもそもインドネシアを特定する問題なので、フィリピンなどどうでもいいのかも知れない。アプローチを全く変える必要があるのだろう。

というわけで、結局、ここからは特殊な統計的知識に頼ってしまうのだ。本当に申し訳ありません。僕の読みが足りませんでした(涙)。

インドネシアは、世界4位の人口大国であり、中国・インド・アメリカ合衆国と同様に、もっとクローズアップするべき重要国なのです。ここでぜひみんなに知って於いて欲しいのは、インドネシアにおける商品作物の栽培。茶、コーヒー、カカオの3つの嗜好品について、全てその生産が世界5位までにランクインしている国こそ、インドネシアなのです、アジアの国であるので茶は想像しやすいと思うのだが、カカオはかなり意外だよね。でも、油ヤシ(パーム油)の世界一の栽培国であるのだから、カカオと天然ゴムと油ヤシの栽培条件(高温多雨)が同じであることを考えれば、なるほどたしかにカカオの栽培に適した自然環境でもあるわけだ(ちなみに、天然ゴムの生産もタイに次ぐ世界2位)。さらに、茶とコーヒーはそもそも栽培環境が似ているし、茶の生産が多ければ当然コーヒーも栽培されているはず。コーヒーの高級豆に「マンダリン」っていうのがあるんだけど、これってかなりの高級種なんですよね。この問題をつくった人って、コーヒー通の人名のかもしれない。もちろん「コーヒー=ブラジル」は間違いないのだが、インドネシアもコーヒー好きにとっては忘れてはいけない国だっていうこと。Bがインドネシアとなり、正解は②なのです。

なお、他はDがインド(バナナの世界最大の生産国はインドなのです)、Cがフィリピン。ココナッツについては、センター初登場でもあり、全く知る必要はありません。

しかし、「農産物の統計」というより、「インドネシアの統計」に関する問題だったわけやね。こりゃ難しいわ。完全に白旗ですわ。

[アフターアクション]第一印象では簡単な問題と思ったんやけどね。実はかなりの曲者だったっていうわけだ。難しいわ、こりゃ。インドネシアについて、もっと知識を深めていかないといけない。

以下にインドネシアが上位にランクインしている統計を紹介しておくので、君たちも統計要覧などで確認しておいてください。

<農産物など>

米・・・1位中国・2位インド・3位インドネシア

キャッサバ・・・1位ナイジェリア・2位タイ・3位インドネシア

コーヒー・・・1位ブラジル・2位ベトナム・3位インドネシア

カカオ・・・1位コートジボワール・2位ガーナ・3位インドネシア

天然ゴム・・・1位タイ・2位インドネシア

パーム油・・・1位インドネシア・2位マレーシア・3位タイ

コプラ(*)・・・1位フィリピン・2位インドネシア

漁獲量・・・1位中国・2位インドネシア

(*)ココヤシの実の胚乳を乾燥させたもの。油脂成分を多く含む。油脂は食用油などに利用される。

熱帯雨林気候(極めて高温多雨)に適応する「ジャングル3人衆」であるカカオ・天然ゴム・油ヤシ(パーム油)の生産については、いずれも上位にランクイン。さらに人口大国であるので、熱帯地域の主食となりえる米とキャッサバの生産も多い。

<資源など>

石炭(産出)・・・1位中国・2位インド・3位インドネシア

石炭(輸出)・・・1位インドネシア

天然ガス(日本の輸入先)・・・1位インドネシア

すず鉱・・・1位中国・2位インドネシア

地熱発電量・・・1位アメリカ合衆国・2位インドネシア

世界的な石炭産出及び輸出国。また、天然ガスは産出量は少ないものの、日本への輸出が多い。火山国であり地熱発電がさかんに行われるが、アメリカ合衆国はそもそも国全体の総発電量が多い国であるので、総発電量に占める地熱発電量の割合は低い。実質的に世界トップの地熱発電国といっていいと思う。

<工業>

綿織物・・・1位中国・2位インド・3位パキスタン・4位インドネシア

オートバイ・・・1位中国・2位インド・3位インドネシア

綿花の栽培国ではないのに、綿織物の生産が多いのが興味深い。また、近年は工業化も進み、とくにオートバイについては生産台数も国内販売台数も多い。

しかし、ここまで調べてみて、あれっと思ったんだが、そういえば「茶」がないよね。実は、茶の生産は最新統計(2013年)によると。1位中国・2位インド・3位ケニア・4位スリランカ・5位ベトナム・6位トルコ・7位イラン・8位インドネシアの順。つまり、インドネシアはすでにベスト5の地位から落ちてしまっていたのだ!すいません、解法で思いっきり「茶・コーヒー・カカオの生産は、インドネシアが全て世界5位までに入っている」なんて嘘をついてしまって(涙)。茶って、日本でも栽培されているように、決して熱帯のめちゃめちゃ暑くて雨が多い地域で栽培されるものではなく、その点はカカオ・天然ゴム・油ヤシの「ジャングル3人衆」とは異なっている。丘陵地での栽培に適する点はコーヒーと同じなのだが、コーヒーが気温日較差の大きな気候を必要とするため、結局赤道周辺地域に栽培地域が偏るのに対し、茶はその縛りがないので、コーヒーに比べ比較的緯度が高い地域にまで栽培地が広がっている。日本やトルコが典型例。インドネシアに優位性があるわけでもなく、結果として現在の生産量は停滞しているというわけだ。むしろ、コーヒーの伸びに注目してほしいな。インドネシアの有名な高級豆は「マンダリン」です。

なお、ココナッツというのはココヤシの実のこと。これから胚乳を取り出し、コプラが加工される。コプラの生産順位と割合は、1位フィリピン(41%),2位インドネシア(30%)。ココナッツだと、1位インドネシア、2位フィリピンとなるようだけど、許容範囲ではあるよね。

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[ファーストインプレッション] あれっ、同じ問題をかつて見たことがあったような???違ったかな。いずれにせよ、ありがちな問題であり、確実に得点しないといけない。

[解法] 「漁獲量」、「水産物輸出額」、「水産物輸入額」を問う問題。全て重要な統計であり、ぜひ知っておいて欲しいのだが、ここはあえて考えながら解いてみようか。

このように世界全体の図を用いた統計問題で、真っ先にチェックしないといけないのが、日本の値。アではゼロ、イは大きく、ウはそれなりの大きさ。日本はもちろん世界有数の水産国であるが、それでも漁獲量において世界1位や2位のレベルということはないだろう。むしろ、エビやマグロ、サーモンをはじめ、さまざまな水産物を輸入している国である。一方で、輸出する余裕はないだろう。国内で消費されてしまうのだ。

以上より、アが「輸出」、イが「輸入」、ウが「漁獲量」となる。日本は世界ベスト10に入るほどの水産国だが、国内で消費される魚介類の量が多いので、輸入も極めて多い(アメリカ合衆国と1位2位を争うレベル)。ただし、輸出はほとんどされていない。こう考えると納得でしょ?

せっかくなので、図の細かい部分も確認していこう。

まずウの漁獲量について。漁獲量の多い国は、中国を最大として、インドネシアやインド、さらに日本やミャンマーなどアジアの国、ロシアやアメリカ合衆国、ノルウェーがランクインし、南米のペルーとチリの値も大きい。

さらにアの輸出額。実は中国が世界最大の魚介類の輸出国なので、これはぜひ知っておいてほしいな。食料品で中国の輸出が多いって珍しいでしょ。漁獲量の極めて多い国であり、人口が多いだけに国内の消費量も少ないないはずなのだが、輸出余力(輸出するだけの余裕はある)が大きいということ。1人あたりの供給量「地理では供給と消費は同じ意味なので、1人当たりの消費量ということです」は少なく、まだまだ中国に魚を食べる文化は広まっていないということなのかな。その辺りは「世界で最も魚が好きな民族」といえる日本人との違いだね。例えば日本が中国からウナギをたくさん輸入していることはよく知られているんじゃないかな。

他の輸出国としては、ベトナムやタイ、チリ、ノルウェーなど。ベトナムとタイは、それぞれ日本とアメリカ合衆国に輸出する養殖エビでしょう。ノルウェーとチリは、こちらも養殖でサーモンかな。フィヨルドの静かな海面でサーモンが養殖されている。ノルウェーの沿岸部がフィヨルドなのは有名だが、チリ南部もフィヨルド海岸となっているので、ぜひ知っておこう。

最後にイの輸入。アメリカ合衆国と日本が多くなっているね。アメリカ合衆国は漁獲も輸出も輸入も多くなっているが、多種多様な魚介類が求められているということなのだろうか。日本の場合は、前述のエビやサーモンの他、マグロなどかつて遠洋漁業により世界中の海で漁獲されていた魚が運ばれていることも特徴。ときには冷凍マグロが空輸される場合もあり、「空飛ぶマグロ」などと言われることも。ただ、漁獲量は濫獲(乱獲)によって急激に落ちてしまいこともあり、「持続可能な」漁業を心がけないといけない。

[アフターアクション] 漁獲量の統計は非常に重要。ウの図を参考にまとめておこう。世界最大の漁獲量を誇る地域は、北西太平洋海域。中国と日本が面し、寒流(千島海流)と潮目(千島海流と日本海流)、そして東シナ海の大陸棚(もっとも、中国は実は湖や河川などの内水面漁業がとくにさかんな国なんだけどね)。

さらに、ペルーやチリが面する南東太平洋漁場。ここは巨大な寒流であるペルー海流によって、栄養分豊かな海域が形成されている。アンチョビーの漁獲。なお、アンチョビーは魚粉(フィッシュミール)に加工され、アメリカ合衆国へと送られている。家畜の飼料となるのだ。本問では、輸出上位国(アの図参照)にペルーが含まれていないが、魚介類ではなく魚粉であるので、カウントされていないんだろうね。

さらにヨーロッパではノルウェーの漁獲量が多い。上で述べたサーモンを始めとして、北海の大陸だなは好漁場となり、寒海魚(寒流魚)であるニシンやタラが主に漁獲されている。

他にはロシア、インド、ミャンマー、アメリカ合衆国が漁獲上位国となっている。

輸出については、とにかく中国が最大の魚介類輸出国であることを絶対に押さえておこう。なぜかヨーロッパに上位国が多いが、これはあまり考えなくていいかな。

輸入については、アメリカ合衆国と日本がツートップ。こちらもヨーロッパの値が大きいが、輸出も輸入も多いということは、様々な魚介類を食しているということの証明だろう。こちらもとくに考慮する必要はないかな。

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[ファーストインプレッション] ずいぶん普通の統計問題と思ったら、いやいやそんなことはないぞ!めちゃめちゃ難問じゃないか!っていうか、これ、悪問じゃん(涙)。手がかりが少なすぎる。これだけのデータで解けっていうのは無理だわ。

[解法] 極めて難しい統計問題。というか、これだけの資料から解けっていう方が無理。悪問。

そもそも統計うんぬんではなく、「アメリカ合衆国は木材の輸出国でもあり輸入国でもある」という事実を知っているか否かという問題になってしまう。

アメリカ合衆国で森林資源が豊富であるのは、北西部のシアトル周辺。シアトルはそもそも木材の積出港としてさかえた都市であり、ここに本拠を置く航空機会社のボーイングは創業時は木材加工会社だった。

それに対し、国内で人口が集積し、木材需要が大きい(建築材料やパルプ・紙の原料として)のは大西洋岸のメガロポリスを中心とした地域。ボストンやニューヨークのような大都市が並ぶ。この地域の木材供給を国内に依存するとしたら、国土を横断して遠距離輸送を行わないといけない。しかし、これはあまりにコスト高だ。

実はメガロポリスには、より近いところに木材資源の豊富な地域がある。それがカナダ東部である。ケペック州を中心とするカナダ東部は、冷帯気候であり、豊富な降水量にも恵まれ、大規模な針葉樹(タイガ)地帯となっている。この地域の木材がアメリカ合衆国へと輸出され、メガロポリスの人口稠密地帯の需要を満たしている。

それに対し、シアトル周辺の木材は太平洋を越え、日本へと輸出される。日本にとってアメリカ合衆国は重要な木材輸入相手国の一つである。陸路を東部のメガロポリスに運ぶより、船舶によって海路輸送した方がコスト的にも安価であるのだ。

かくして、アメリカ合衆国は木材の「輸出国」(シアトル周辺から日本へ)であり、「輸入国」(カナダ東部から大西洋岸のメガロポリスへ)でもあるのだ。こうしたアメリカの特殊性を踏まえ、キがアメリカ合衆国となる。

ここまでくれば、カとクの判定は難しくない。要するにロシアと中国、どちらが木材の輸出国かということなのだ。人口規模から想像してもいいが(人口の大きい中国は内需が大きいので、輸出余力が小さい。国内の消費が大きいため、輸出は困難なはずだ)、しかし、先ほどの問2で魚介類の世界最大の輸出国が中国であるという事実に驚いたばかり。統計にもとづいて確実に考察しよう。

ここでカギとなる統計は、日本の木材輸入先。日本が木材を輸入している相手国は、カナダ、ロシア、スウェーデン、フィンランドなど冷帯国を中心として、アメリカ合衆国も上位であり、さらにマレーシアといった熱帯雨林国も含まれている。わが国においては、木材は主にパルプ(紙)材に用いられ、加工しやすい軟材である針葉樹林が過半を占める。針葉樹資源に恵まれた冷帯国が輸入先の上位に来るのは当然である。ただし、先に述べたように、アメリカ合衆国は輸出国でもあり、輸入国でもある。輸出に特化した国としてはロシアが挙げられるのだ。カが「ロシア」となり、正解は④。

中国はクとなるのだが、こちらは輸入が多い。人口規模が大きく、さらに経済規模も大きい(マーケットが大きい)のだから、国内の供給(消費)量も莫大なものとなる。輸入量が極めて大きいことに、何の矛盾もないだろう。

非常に難問であるが、とにかく必須統計として、「日本の木材輸入先」を確認しておいて欲しい。カナダと並んで、ロシアが代表的な輸入先となっているはずである。

[アフターアクション] かなり難しい問題だったと思う。とくにアメリカ合衆国の特定は厳しかったな。ここでは中国をピックアップして覚えておこうか。中国は内需「国内での消費」が大きい国なので、原則として輸出は少ない(問2の魚介類は貴重な例外)。中国は国を挙げての植林活動に積極的な国であり、森林の増加が目立っている。「熱帯林の減少」などとよく言うので、我々の感覚として地球の至るところで森林は失われていると思っているかも知れないが、実はそれは誤解。商業林として価値が高く、巨大な資本力を有した企業によって管理されているカナダや北欧の針葉樹林は保護されており、面積は減少していない。とくに中国において、森林面積が拡大していることはぜひ知っておこう。内陸部における砂漠化を食い止めるために大規模な植林がなされ、これは「緑の長城計画」と言われている。本問で取り上げられているように、中国は木材の輸入が極めて多い国なのであるが、それを補う努力も行われているということ。

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[ファーストインプレッション] ベーシックな文章正誤問題。しかも「誤文」を判定するから解きやすい。

[解法] いきなり正解(つまり誤文)は①でしょ。1970年代より国内の炭田は閉鉱が相次ぎ、現在はその全てが閉鎖されている。「再開発」はされていないし、「自給率が高まっている」どころか、急減し、現在は0%となっている。

他の選択肢もベーシックな内容を取り上げており、必須ネタばかり。

②について。太陽光発電は新エネルギーの一つ。化石燃料の燃焼によって二酸化炭素は排出されるので、火力発電の割合を低下させることは二酸化炭素の削減につながるね。

③について。1970年代に二度オイルショック(石油危機)が起こった。現在でも日本は原油(石油)への依存度が高い国であり、その備蓄は必須。

④について。「メタンハイドレート」というキーワードは知っておいてもいいと思うよ。海底に眠るエネルギー資源で、日本近海に多く埋蔵が確認されている。開発が進み、将来的には日本の重要なエネルギー源の一つとなる可能性もある。

[アフターアクション]こういったベーシックな問題で確実に得点することが大切。高校地理というより、中学までの社会科の学習内容とも言えるんじゃないかな。

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[ファーストインプレッション] 非常に興味深い問題!当試験のナンバーワン問題でしょう!「銀」がテーマとなった特殊性とその意味に注目。

[解法] 銀が出題される予兆はあった。2014年度地理B本試験で、世界全体を対象として、金鉱・銀鉱・鉄鉱の産出量が問われる問題が登場していた。今回の問題は、その流れを組むものであるだろう。

選択肢④が極めて重要!「日本の銀鉱山」とは、島根県の石見銀山のこと。「石見銀山遺跡とその文化的景観」は2007年にユネスコ世界遺産に登録されている。

国内の世界遺産がセンターで問われたのは本問が初。個人的には、日本で夫も重要な世界遺産はここだと思っている。大航海時代の世界(とくにヨーロッパ)からみれば、日本は銀の産出地として重要なのであり、石見銀山は日本を象徴するものなのだ。長く日本の主要輸出品目は銀と絹(シルクロードで西方へと送られたという歴史があるね)だったわけで、とくにヨーロッパ人が銀(そして金)を手にすることで貨幣を作り出し、世界の経済構造を作り上げたのだ。世界遺産が問われたというより、銀の歴史がメインテーマとして取り上げられたと解釈すべき問題である。

他については、世界遺産にこだわらずとも解答できると思う。ドイツのルール地域は石炭資源が豊富だったことから、鉄鋼業が興った。「ドイツの石炭鉱山」が歴史的にも文化的にも重要であることは想像できるだろう。さらに、「チリの銅鉱山」も同様。チリ北部の乾燥地域は世界で最も乾燥する地域であり、そこで露天掘りによって銅鉱が採掘されている。こちらも重要性が高い。

それに対し、そもそもシンガポールに金鉱山など存在するのだろうか。シンガポールは商業国家であり、資源産出に特徴がある国ではない。①が誤りとなる。

[アフターアクション] 上でも述べたように、本問は「世界遺産」の問題ではなく「銀」が問われた問題だと思っている。銀については、2014年に生産「歳出」統計が登場しているので、そちらをチェックしておこう。銀鉱の代表的な産出国はメキシコとペルーであり、それぞれアステカ文明とインカ文明は銀によって栄えた。スペインの侵略により文明は滅ぼされ、銀はヨーロッパ人の手に渡った。

センター試験で世界遺産が全く登場していないというわけではないが、本問のように、世界遺産であること以上に重要な意味がある場所(地形や遺跡など)が問われているのだから、世界遺産にしぼって勉強する必要はないと思う。

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[ファーストインプレッション] 観光はテーマとしてはかなりマイナー。地理Aではしばしば取り上げられなくはないのだが、地理Bでは特殊かな。さらに選択肢の国もポーランドやらメキシコやら珍しい国が登場。ニッチ(隙間)的な問題ではあるよね。

[解法] 観光に関する問題とは珍しいので、これまでの解法が通用するか。なかなかおっかなびっくりの問題ではあるのです。さらに、同じ統計とはいっても、農業や工業、貿易とは異なったパターンがありそうだからね。かなり考えないといけないかも知れない。

さて、表をみてみよう。「1990年の値を100とした場合の2013年の値」は、いずれも100を大きく上回っており、どの国でも観光収入がアップしていることがわかる。しかし、よくみると「世界全体に占める割合」は①と②で値が下がり、③や④で大幅に上昇している。とくに①については。1990年の段階では世界全体の総観光収入のうち、1割近くを占める「観光大国」だったことがわかる。現在も停滞はしているものの、それでも5%を占めているわけで、非常に観光客にとって魅力がある国なのだ。これを「フランス」と解釈することは十分に可能だろう。バカンスがさかんなヨーロッパにおいて、フランス南部の地中海沿岸はコートダジュールと呼ばれ、最も人気のある観光地である。

さらに④に注目してみよう。ここは伸び方が著しい。とくに、1990年の段階ではわずか0.1%に過ぎなかったのだ。世界に国が200近くあるのだから、単純計算で平均は0.5%。それにも遠く及ばない。1990年の時点で極端に観光収入が少なかった理由を考える。東ヨーロッパに自由の風が吹き、社会主義政権が打倒されつつある社会的混乱期にあり、西ヨーロッパなどからの観光客の足を遠ざけたのであろう。現在も0.9%と、あまり大きな値ではないことからも、とくに観光がさかんという国でもない。ポーランドと考えていいのではないか。もちろん伸び率は極めて高いのだが、これは2000年代のポーランドのEU加盟がその背景にあると考えられる。

さて、問題はここからなのだ。中国とメキシコ、この判定が難しい。②と③のいずれなのだろうか。

やはりここは③の急激な伸び率(2329)と、現在の世界全体に対する割合の高さ(4.3%)に注目するべきなんだろう。例えば、メキシコという国はたしかに大国の一つであるが、それでも世界全体の25分の1以上を占めるほどの国かっていうことなのだ。やっぱり、4.3%を占めているという事実は重いものだと思うよ。

それにこの統計に限らず、20世紀後半から21世紀にかけての中国の成長率の高さは常に際立っている。1980年代から経済開放をスタートし(経済特区の設置は1980年代)、その後、数十年間をかけて中国は急激な成長を遂げた。社会主義国の中国は「閉じられている」というイメージもあるかも知れないが、しかし日本から中国本土への観光は決して珍しいものではないし、2008年には北京でオリンピックも開催されている。観光の面から考えても、決して中国は「取り残された国」ではない。また、そもそもの中国の物価の上昇という側面もある。1人当たりGNIは急成長し、この20年間で何倍にも上がっている(何倍どころじゃないかもね。10倍以上!)。飲食費、宿泊費、交通費など全てかなり上がっているはずで、これが「2329」という高率に反映されていると考えていいんじゃないか。③を中国と判定する。

よって残った②がメキシコとなり、これが正解。1990年から2013年におけるメキシコの大きな変化は、NAFTA調印(1995年)なのだが、これはあくまで「自由貿易」協定であり、商品の移動は自由になっているが、人の移動に関してはその限りではない。そもそもアメリカ合衆国からの観光客が少ない国ではなかったが(1990年における2.1%という値は小さいものではないね)、それが劇的に増加することはなく(255),むしろ世界全体における地衣は低下している(1.2%).アメリカ人もアジアやオセアニア、南米など観光が多様したのかも知れない。

[アフターアクション] 今年はメキシコがよく出題されているような気がするが、本問については消去法で考えればいいかな。「もともと発展しており、現在の成長率は高くない」西ヨーロッパの国、「急成長によって世界の主要国となった」中国、そして「マイナーな地域であるが、成長率は高い」東ヨーロッパというキャラクター分けができればいいだろう。「観光」の問題であるが、観光のみに特化した問題というわけでもない。

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