たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう

2015年度地理B本試験[第2問]問5 解説

問5 [インプレッション] これ、好きだなぁ。今回の試験の中で、テキストで使ったらおもしろいだろうなって問題のナンバーワン。割合と実数の関係も大事になってくる統計学の問題としてもおもしろい。問うてる内容は簡単なんだけどね。

[解法] タイを特定する問題だが、簡単なので日本から解いてしまおう。日本は農産物の多くを海外からの輸入に依存しており、一方で農産物の輸出はほとんど行っていない。輸出額が極めて小さい④が日本。
でも、ここでおもしろいな、と思うわけだ。日本って「世界最大の食料輸入国」っていうイメージない?この図をよく見てみようよ。④の農産物輸入額は、①や②より少ないではないか!日本は決して「最大」の輸入国ではないのだ。
①は何だと思う?輸入が多いが、輸入も多い。結局この国は規模が大きいということ。人口が多い分だけ多様な農産物が食せらるし、その流通もさかん。これが中国なのだ。もっとも、14億人の人口でこの値なので、1人当たりの量にすれば全然たいしたことないんだけどね。
②はドイツ。人口規模やGNIは日本の3分の2程度で決して大国とはいえないが、EUという自由貿易圏に属しているために、国境を越える商品の移動が活発。もちろん農産物についても例外ではなく、国の大きさに比して輸出や輸入ともに大きくなっている。えっ?工業国であるので、どちらかといえば輸入が多くなっているのは納得にせよ、輸出もかなり多くなっていて、これが意外だって?いやいや、ドイツは混合農業の国で農業はそもそもさかんであるし、それに小麦に関しては輸出国でもあるのだ。先進国には農業も、工業も両方とも盛んな国が多い。
そして注目してほしいのが、輸出と輸入の差。①は輸出が800、輸入が1000で差し引きマイナス200。②は輸出が400、輸入が900でマイナス500、④は輸出がゼロ、輸入が600を超え、マイナス600と考えよう。なるほど、こうした観点からすると、日本が最も農産物が足りない国であり、「世界最大の食料輸入国:という言い方もあながち見当はずれではないってことだよね。こうした状況を我々は打破していかないといけないわけだが。
あ、最後になっちゃったけど、答えは当然③です(笑)。タイは世界最大の米の輸出国であり、当然農産物の輸出額がそれなりに大きい(人口規模があまり大きくないので、値そのものはドイツや中国より少ないが)。その一方で、輸入に関しては少ないとみていいんじゃないかな。農業がさかんな国であり、そもそも食料自給率は高いでしょ。「輸出額>輸入額」のバランスになっているのは③だけなのです。

[アフターアクション] おもしろい問題だなと思う。とにかく「タイ=世界最大の米の輸入国」とう知識だけ頭に入れておいて、あとはいろいろ考えて解く。輸出額だけで考えてしまうと、③は①や②に劣ってしまうので混乱するが、タイの人口が7000万人であり、ドイツ8000万人や中国14億人より小さいことを考えれば、実数で劣っていたとしてもとくにおかしくないことがわかるよね。こういった統計学のセンスを持っていると、より問題が解きやすかったと思う。

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