たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
問4 [インプレッション] アメリカ合衆国の農業の問題。っていうか農産物といった方がいいのかな。適地適作が徹底した国でもあり、地域ごとの農業(農産物)が固定化されている。テストには当然取り上げやすい国であり、そしてキミたちにとっても答えやすい問題パターンなのです。
[解法] 形式としては目新しいが、問うてる内容自体はオーソドックス。ありふれた問題と思っていいんじゃないかな。
ホイットルセー農牧業区分は当然意識してほしいけれど、本問の場合は農産物がしつこく書かれているし、それに従って考えていったらいいんじゃないかな。
文章から解析していこう。
カ bで「トウモロコシ」、dで「果樹」。cについては肉牛やら小麦やらいろいろ書かれているけれど、要するに「灌漑」がキーワードになっている。つまり降水量が少なく、どちらかといえば乾燥に近いということ。トウモロコシはやや温暖で降水量の多い地域で栽培される穀物で、冷涼少雨の小麦、高温多雨の米との中間的性格。アメリカ合衆国でトウモロコシが登場するのは混合農業。飼料作物・穀物(大豆とトウモロコシ)を栽培し、家畜(豚や牛)を飼育する。五大湖の南側のやや温暖な一帯において混合農業がなされる。K(b)は冷涼であるので外れ、五大湖の南側であるL(b)とM(b)が候補となる。dについては果樹だが、なるほどL(d)は地中海式農業がみられる地域であり、ブドウ栽培に特徴がある農業が行われている、ただし、M(d)に果樹が存在しないかといえばこれは判定が難しい。温暖多雨な地域であり、実際フロリダ半島(アメリカ合衆国南島部の半島)はオレンジの産地としても知られている。
よって、切り札となるのはcなのだ。乾燥地域であることを考えれば、L(c)とM(c)の判定は一目瞭然。アメリカ合衆国においては西部で少雨、東部で多雨という傾向がはっきりしており、国土中央部を通過する年間降水量500ミリの等降水量線はよく知られ、これより西側では乾燥気候、東側では湿潤気候となる。それを考えると、M(c)は明らかに多雨地域に位置するのに対し、L(c)はその500ミリの等値線上あるいはやや西側の地点となる。極端な乾燥気候とは思えないが、半乾燥のステップぐらいの気候とみるのが適切なのでは。以上より、カはLが該当。
キ bで「耕作と畜産を組み合わせた」とあり、これはまさしく混合農業のこと。cは「綿花」、dで「大豆」、「イネ」、「サトウキビ」とあり、大豆はともなくとして、他はかなり温暖な地域で栽培されるものばかり。M(b)は混合農業、そしてM(c)やM(d)は温暖な地域ということで、イネやサトウキビの栽培がみられると考えられる。キはMに該当。
本来なら消去法でクがKになり終了なのだが、良問なのでもう少し解説を続けます。
ク bで「酪農」。cでは「夏から秋に収穫する小麦」とあるので春小麦。アメリカ合衆国における酪農地帯は五大湖周辺。冷帯で寒冷な気候がみられる(五大湖は冬季に凍結するよ)だけでなく、かつて大陸氷河によって地表面が削り取られてしまっているため穀物栽培には適さず、主に牧草地として乳牛が飼育されている。K(b)はまさにそんな酪農地帯なのだ。ちなみに酪農の成立条件の一つに「大消費地との近接」があり、生乳や酪農製品を売りさばくマーケットは絶対的に必要なのだ。その点、アメリカ合衆国の北東部にはボストンやニューヨーク、シカゴなどの大都市が居並び、販売市場には不自由しない。彼の地の消費が酪農を支えたのだ。
またK(c)にも注目。年降水量500ミリの等値線に沿う地域であり、肥沃な土壌が分布(*)している。K(c)を含む北アメリカ中央平原のアメリカ合衆国とカナダの国境エリアは、大規模な小麦農業地帯であり、春を待って種を播く、春小麦が栽培されている。なお、K(d)については考慮しなくていい。そもそもさほど農業がさかんな地域でもないし、特別にこの地を特色づける農業キーワードがあるわけでもない。果樹っていうのはリンゴかな、とは思うけどね。
(*)黒土の一種であるプレーリー土。肥沃な土壌は半乾燥地域にて形成。一帯は草原となっているが、枯れた草が追い重なって発酵し腐植となる。この肥沃な土壌を利用して大規模な小麦農業が行われているのだ(企業的穀物農業)。
[アフターアクション] 解説文はずいぶん長くなってしまったけれど、別に複雑な問題っていうわけじゃない。キーワードが多すぎて、それを一つ一つ説明したので分量が多くなってしまっただけなのだ。だからむしろヒントや手がかりが豊富な簡単な問題の部類に入る。
しかも問われている内容は、ホイットルセー農牧業区分と農産物であり、センター地理の肝である。付け焼き刃で勉強するよりも、十分に時間をかけて、じっくりと対策を練ってください。テクニックで解く問題ではない。でも、だからこそ、キミのセンター地理力が試されるのだ。
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