たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう

2014年度地理B追試験[第5問]解説

第5問 問2にはちょっとビックリ。でもGNIまで考える必要がある問4、細かい部分を注視しないと解けない問5など、おもしろい問題が多い。

問1 [インプレッション]実は問2でも難民ネタが取り上げられているんだよね。そちらがちょっとヒントになっているんじゃないかなっていう感じもある。

[解法]①や②は図から読み取れることであり、これは正文とみていいと思う。もちろんアフガニスタンやイラクの位置がわからなければ判定はできないけれど、この機会に覚えておこう。もっとも、こうしたマイナーな国が重要となることは少ないけれど。
一方、③や④は図からは判定できない、ある程度の知識が必要となってくるもの。ただし、④のNGOについては、そもそもセンター地理で問われるものではない。別に知らなくてもいいと思う。ここでのポイントはもちろん選択肢③。このように「決めつけている」選択肢って要注意でしょ?本当に砂漠化の進行や水、食料の不足が原因なのかって。問2や問3①をみてもわかるように、難民が生じる主要な理由として戦争(内戦や紛争)がある。アフリカは政治的に最も不安定な地域の一つであり、さまざまな民族・部族、宗教が混在することによって内戦の可能性も大きいだろう。もちろん砂漠化のような自然条件が起因して生じた難民も少なくないとは思うのだけれども、やはり戦争によってこそ多くの難民が生じているのではないか。アフリカだけでなく、これは世界全体に言えることだが。以上より、③が正解。

[アフターアクション]決して難しい問題ではない。問2や問3が難しいので、ここで点を落とすようでは高得点は狙えない。でもこういった問題が苦手な人っているよね.解法でも述べているけれど、選択肢①②と選択肢③④とで性格が異なる。また文章のニュアンス(決めつけるような文章になっている)ことも大きなヒントの一つになる。センター試験の特徴というかクセのようなものが明確に出た問題であり、慣れていないと解答しにくいと思う。「習うより慣れよ」というわけで、センター地理は過去問をたくさん解くことによって、その雰囲気を掴み、それを解法に結びつけて欲しいとは思っているのだ。


問2 [インプレッション]セルビアってどこやねん?っていう国名でまず躓(つまず)く。消去法で考えれば何とかなるけど、コロンビアも微妙かな。センターに出た国名ぐらいは知っておこうって感じかな。セルビアが旧ユーゴっていうことがわかれば解答が難しい問題ではない。

[解法]セルビアやコロンビアなどちょっとマイナーな国が問われているが、まず最も明確な選択肢としてベトナムを特定しよう。
Bの「東西の冷戦を背景とした戦争」とはベトナム戦争のことか。ソ連の支援を受けた社会主義の北ベトナムが、アメリカ合衆国の支援を受けた資本主義の南ベトナムを駆逐し、社会主義国である統一されたベトナムが誕生した.ベトナムについては「社会主義」もキーワードである。Bがベトナム。
セルビアは旧ユーゴの構成国。旧ユーゴスラビアについては詳しい状況を知る必要はないし、かつての連邦国家が民族や宗教の対立によって多くの国に分裂したことだけ知っておけばいい。このような複雑な状況を述べているAをセルビアとみていいだろう。「民族紛争」に注目すればいい。
なお、さらに将来に説明を加えるならば、これはセルビアのコソボ問題を説明した文章である。セルビア南部のコソボ自治州にはイスラム教徒であるアルバニア系住民が居住し、キリスト東方正教徒であるセルビア人と対立していた。セルビア政府によりコソボ弾圧などもあり、事態は深刻化したが、やがて西ヨーロッパ諸国が主であるNATO軍の介入もあり、ようやく争いは収まった。現在はコソボは独立し、セルビアから分離している。隣国アルバニアに流出した難民の多くも帰還を果たしている。
残ったCがコロンビア。コロンビアは麻薬の生産が噂されている国でもある。

[アクターアクション]さすがに「麻薬」にはビックリした。こんな話題、教科書で扱うわけもなく、授業でも取り上げないでしょ。さらにコソボ問題もちょっとマイナーな話題。一般常識というわけでもないし、なかなか勉強が難しい部分ではあるね。こういった問題で失点するのは致し方無し、かな。戦争と社会主義で特徴づけられるベトナムの事例だけ、絶対押さえておこう。


問3 [インプレッション]複数の解答を求める問題。選択肢が5つしかないのはちょっとうれしいね。ネタとしては民族が入ってくるだけにもしかしたら厄介かもしれない。

[解法]人の移動に関する問題だが、理論よりも知識が問われている。厄介な問題だけど、確実にポイントを押さえよう。
①;ユダヤとパレスチナの関係は重要。戦前までパレスチナ地方に住んでいたのはアラブ系パレスチナ人(イスラム教徒)。世界中から移住してきたユダヤ人によって彼らは住む場所を追われ、難民となった。ユダヤ人が建設した国がイスラエル。ユダヤ人やユダヤ教徒でもあり、民族・宗教的な対立も生じている。「ユダヤ」と「パレスチナ」の用法は間違っていないので、これは正文かな。
②;現在のEUについてこんなことがあるだろうか。もちろん域内の労働力の移動は自由なのだが、域外からの流入も(自由度は低いかも知れないが)禁止されているとは思えない。移民を制限していていた白豪政策やアパルトヘイトは国際的な非難によって、すでに撤廃されている。EUでこんな時代錯誤なことは行われていないだろう。誤文。
③;「初期に流入」かどうかはわからない。ここは無視しよう。ポイントは「フランス」と「ケベック」。カナダ東部のケベック州にはフランス系住民が多く、フランス語を使用するなど他の地域とは違った文化を有している。現在は沈静化しているが、かつてはテロなども勃発していたそうだ。正文。
以上より、①と③が正解。ユダヤとパレスチナ、フランスとケペックなど、固有名詞が問われているが、いずれもセンターでは狙われるワードなので、しっかり覚えておこう。
④と⑤は不問となるが、一応確認。
④;シンガポールのみならず、東南アジア一帯で最も経済的な実権を有しているのは中国系住民(華人)。とくにシンガポールは人口の4分の3が中国系住民によって占められており(これはぜひ知っておこう!)、とくに中国系住民の影響力が強い国であるはずだ。インド系はそうでもないと思うよ。誤文。
⑤;これ、難しいよね。追試ならではの特殊なネタと考えていいと思う。知らなくても大丈夫。中国では、主に内陸部の農村から、主に沿海部の都市へと労働力の移動がみられた。しかしあまりに無軌道で過剰な移動であるため、近年はやや制限されることになった。具体的には、農村で生まれた人は農村戸籍、都市で生まれた人は都市戸籍といって、生涯にわたりそれは変更できない。都市である程度働いた人は、いずれ故郷の農村に帰らなくてはいけない。決して「奨励」されているわけではない。

[アフターアクション]やっぱり難しい問題だと思う。選択肢5については、受験生のレベルで知っておくべきものとも思えないし、そもそもが最近このような戸籍制度による縛りも緩和されているので、この文章内容自体が過去のものとなっている。とりあえず正文判定問題として、選択肢1と3をしっかり理解できていればいいと思うよ。いずれもセンター頻出のメジャーなネタであるし、絶対に知っておかないといけない。ユダヤとパレスチナ、フランスとケペック、いずれも重要。


問4 [インプレッション]変わった問題。でもおもしろそうだな。1人当たりGNIは当然だけど、GNIも大切になってくるんじゃない?経済レベルと経済規模の両方を考慮しつつ、問題に取り組みましょう。

[解法]出稼ぎは発展途上国から先進国へと向かう。別の言い方をするなら、1人当たりGNIが低い国から高い国へ。発展途上国の人が先進国内でお金を稼ぎ、それを本国へ送金するのだから、「送金受取額>送金支払額」が発展途上国で、「送金受取額<送金支払額」が先進国。①と②が発展途上国でインドとナイジェリアのどちらか、③と④が先進国で日本とスペインのどちらか。
インドとナイジェリアの判定だが、これは国としての大きさで考えたらいいと思うよ。人口が多く、GNIも大きい(GNIは1人当たりGNIと人口の積)インドの方が、そもそもの金額の規模は大きくなると思う。インドもナイジェリアもいずれも低所得国ではあるけれど、インドは14億、ナイジェリアは2億という人口の大きさの違いは①と②の値の違いに明確に反映されている。①がインド、②がナイジェリア。

[アフターアクション]非常に頭を使う問題でしたね。まるで推理小説を読むような。とにかく困ったら1人当たりGNIとGNIで考えること。インドの特徴は、1人当たりGNIの低い低賃金国ではあるものの、GNIについては比較的規模の大きな「大国」であるということ。このキャラクター設定を間違えなければ何とかなる問題だと思う。


問5 [インプレッション]さりげないな〜。思わず見落としちゃうよ。ドサクサに紛れて、気づかない内に誤りワードを通過させようとしているような。言われてみれば決して難しい問題ではないんだが、それに気づくかどうかっていうと別問題だわな.知識の有無より、注意力を試しているような問題。

[解法]「西アジア諸国とホンコンでは、夫婦共働きが一般的である」が引っかかりポイント。いや、ホンコンは確かに共働きが多いんだわ。だから一瞬迷ってしまう。当然注目するべきは「西アジア」だよね。西アジアのアラブ圏を中心とした地域では、古い時代より女性の権利が制限され、社会で活躍する女性も少ない。仕事をするのは男であり、女性は家庭から出られない。この表からは職種はわかるものの、その数はわからないよね。おそらく実際に働いている女性の人数ってスゴく少ないんじゃないかな。以上より②がアウトです。

[アクターアクション]単に「イスラム地域は女性の権利が制限されている」と覚えておいたらいいよ。でも厳密にはイスラム地域だけでなく、南アジアのヒンドゥー教地域でも同様のことはみられ、むしろこうした女性差別は宗教的なものが原因とは思えないんだよね。そもそもイスラム教なんかせいぜい1500年ほど前にできた新しい宗教であるし、当然イスラム教誕生以前から女性の立場は苦しいものであった。例えば幼児婚なんていって、女性は小さな子どものうちに結婚させられたりする。当然学校にも行けないし、読み書きができないから、まともな仕事もできるわけがない。こうした西アジアや南アジアにおける状況は理解しておこう。

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