たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
こちらケアレスがありました。校正が間に合っていませんでした。申し訳ありません。
(誤り)夏の南西風によって大気汚染物質は北東の内陸側に追いやられ、1月はTが該当。冬は北東風により大気汚染物質は南西のインド洋側に拡散。Sが7月。これでいいと思う。
(正しい)夏の南西風によって大気汚染物質は北東の内陸側に追いやられ、7月はTが該当。冬は北東風により大気汚染物質は南西のインド洋側に拡散。Sが1月。これでいいと思う。
なぜか「夏」を「1月」、「冬」を「7月」としてしまっていました。
以下が修正版の解説となります。
[解法]
マについてはインドを見たらいいと思う。南アジアではモンスーン(季節風)の風向は、夏は南西風、冬は北東風。
夏の南西風によって大気汚染物質は北東の内陸側に追いやられ、7月はTが該当。冬は北東風により大気汚染物質は南西のインド洋側に拡散。Sが1月。これでいいと思う。
ただ、ちょっと悩むのが中国。東アジアのモンスーンは、夏は南東風、冬は北西風。たしかに沖縄付近を見ていると、冬に「5~10」となっており、これは大陸からの風によって大気汚染物質が吹き流されてやってきたと解釈できるのだが、他のエリアについてはさほど顕著な違いはない。むしろ、Sにおいて中国内陸部で「50以上」の地域があったりする。これって何なんだろう?
ここ、考えてみたんだが、PM2.5って結局空気中の細粒であり、その発生要因はいろいろ。ここでは「工場からの煤煙や自動車からの排ガス」ってあるけれど、もちろん他にも多種多様なものがある。おそらく僕は思うんだけど、これって、暖房用に薪炭材(木炭)や石炭を燃焼させ、その排煙が空気中に撒き散らされることによって生じたPM2.5なんじゃないかな。中国内陸部は未だに電気やガスの普及が進まないところが多く、燃料を樹木や石炭に依存する家庭も多い。蒸気機関車の煙を想像すればいい。あれが各家庭から排出されているとすれば、かなりの大気汚染物質になるよね。インドは暑いので冬にも暖房の必要はないけれど、中国はそうはいかない。人口も莫大であり、使用する燃料も莫大。排煙が空気中に撒き散らされるのは冬の方が夏より顕著なんじゃないだろうか。
さらにミの判定も。「複数の国にまたがって」が重要。第1問問1でもこういった問題があったよね。空間スケールが大きいということ。地球温暖化のように地球全体に影響が及ぶものもあれば、こういったモンスーン地域では強い風によって大気汚染物質が国境を越えて拡散する場合もある。
選択肢は2つ。海洋ごみの漂着と土地の塩性化。
まずは土地の塩性化から見ていこう。土地の塩性化ってどうやって生じるんだ?それは「過度な灌漑」による。農地に人工的に水を与えることを灌漑っていうよね。もちろん雨水に頼れない(降水量より蒸発量が多い)乾燥地域においては、灌漑に頼らなければ不可能であるし、河川(外来河川)や地下水(地下水炉によって遠方より水を運ぶ)を利用した灌漑が行われる。
ただ、この灌漑も過剰に行ってはいけない。農産物が吸収し切れなかった水はそのまま地下に浸透し、土壌中の化学物質を溶かし込む。過度な蒸発によって、その「水溶液」が地表面にまで持ち上げられ、さらに水のみが空中へと蒸散すると地表面には化学物資つまり「塩」が残されることになる。この化学物質には食塩(塩化ナトリウム)や硫酸マグネシウム、さらには水酸化カルシウムなどがあり、土壌が強いアルカリ性を呈することになる。これが土壌の塩性化(塩類化)。これにより農産物の栽培ができなくなるどころか、草すら生育できない裸地となり、砂漠化の原因となる。塩害である。
これを防ぐための方策として、点滴灌漑に代表される節水農法がある。点滴灌漑とは、灌漑の量を調節し、農作物の根本に少量ずつしか水を与えない方法である。これにより農作物は十分に生育できるが、土壌は乾いた状態が保たれ、「水溶液」はつくられない。地下の化学物質が地表面に持ち上げられることもなく、土壌の塩性化は免れる。
逆に、大規模施設などを用いて粗放的に灌漑が行われるならば、大量に散水されるため、塩害の危険性が急激に高まる。アメリカ合衆国で行われているセンターピボット農法などはその典型。地下水を汲み上げ、開店するアーム式の散水器によって円形の農地を灌漑する。この際、大量の水が与えられるため、地下にも多くの水が浸透し、土壌の塩類化が生じる。アメリカ合衆国だけでなく、オーストラリアでもこのような大規模灌漑が行われているが、これによる砂漠化や土壌劣化(土壌流出・土壌侵食)は大きな環境問題となっており、農業生産にも打撃が与えられている。
さて、どうだろうか。もちろん「土壌の塩性化」は農業が不振となるばかりではなく、砂漠化の原因ともなり、大きな環境問題を引き起こすものであるが、それが果たして「原因となる物質が複数の国にまたがって拡大する」環境問題といえるだろうか。塩性化を引き起こす物質自体はその地域の土壌に含まれている化学物質である。ナトリウムやマグネシウム、カリウム、カルシウムなど。これが灌漑によって地表面に持ち上げられるだけなのだから、例えば酸性雨の原因物質(硫黄酸化物や窒素酸化物)のように空中を飛んでいくものでもない。「複数の国にまたがる」とは言い難いのではないだろうか。対策についても、その地域における塩害ならば、点滴灌漑のような局地的な対策で間に合うものである。多くの国が共同して行うものでもないだろう。ミには土壌の塩性化は該当せず、海洋ごみの漂着が該当する。
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