たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
たつじんオリジナル解説[地理総合・探究]2025年/本試験 |
<[地理総合・探究]2025年/本試験・第6問問1解説>
[ファーストインプレッション]地誌は最後の大問になったのですね。今回だけかな?扱われている地域はインド洋とめちゃ広い。「特定の地域」というより、ふわっとした系統地理の問題の寄せ集めとみていいんじゃないかな。とくに地名や都市名、細かい国名も登場していないと思う(出てたらゴメンなさい)。
[解法]熱帯低気圧に関する問題。あれ?これはちょっと難しいかも?
熱帯低気圧の発生のメカニズムを考えよう。激しい上昇気流と十分な水分に加え、空気が渦を巻くことが大事。周辺から湿った空気が吹き込み、それが低気圧の中心を旋回することで雲が成長し巨大な低気圧になる。
空気が渦を巻くために必要なこと、それは「転向力」の存在。低気圧が生まれた場合、周囲から風が吹き込むのだが、これが直線的に進んではいけない。左右のどちらかの方向にねじ曲がることにより低気圧を取り巻く渦がつくられ、強い風や大量の水分が流れ込むことで巨大な低気圧へと成長していく。
北半球ならば進行方向に対して右向き、南半球ならば進行方向に対し左向きに作用するこの力のことを「転向力」という。コリオリの力とも呼ばれるもので、地球が自転することによって生じる見かけ上の力。想像して欲しいのだが、例えば回転している巨大な円盤があり、その上を君たちが歩こうとする。真っ直ぐ歩いているつもりでも地面(円盤)が回転していればその進路は曲がってしまうよね。真っ直ぐ歩くのは難しい。地球が動いているために、その上を真っ直ぐ動いている風や海水の流れは、実際には曲線を描く。
ポイントは転向力が作用する範囲。前述のように北半球では右向き、南半球では左向きの力になるわけだが、実は赤道直下ではこれが作用しない。赤道直下の地域では低気圧の成長はみられず、雲は常に「激しい上昇気流」のみでつくられることになる。高温となる日中に強い上昇気流が生じ背の高い雲(積乱雲)がつくられる。夕方になるとそれが一気に降り下ろし、強い一時的な集中豪雨がみられる。スコールだね。日本ならば夏の日の午後にみられる夕立。対流性降雨というものだ。熱帯低気圧による降水は低気圧性降雨なのだが、これとの違いは明確だよね。何日もかけて低気圧が次第に近づき、やがて降水をもたらすものが低気圧性降雨ならば(とくに日本の上空は偏西風が吹いているので雲は西から東へと動くよね)、気圧配置図とは無関係に数時間のうちに雲が成長し一気に降り下ろすのが対流星降雨(スコールや夕立)。赤道直下の地域ではこのスコールによる降水のみがみられることになる。なお、これは熱帯収束帯の影響下でみられる降水パターンでもある。
熱帯低気圧の発生の条件は2つ。一つが「海水温が高い」こと、一つが「十分な転向力が得られる」こと。このため、熱帯低気圧は「緯度10~20度付近の海域」で発生する。日本周辺ならば、熱帯低気圧(台風)の発生域はフィリピン周辺の海域や南シナ海となる。そこで生まれた台風の卵が、周囲から吹き込む湿った風によって十分に水分を供給され、巨大な低気圧として成長しながら緯度30度付近の沿岸部(中国華南や朝鮮半島、そして本州以南の日本)を襲う。
これを踏まえて図1を参照する。緯度は図に示されているね。0度に沿って赤道を引いてみよう。転向力は働かず巨大な低気圧の発生はみられない。これにジャストミートで該当するのはエの地点である。赤道直下で熱帯収束帯が形成され激しい上昇気流によるスコールはみられるが、熱帯低気圧つまりサイクロンの上陸はみられない。これが正解。
[アフターアクション]というわけで「赤道直下で熱帯低気圧は発生しない」というセオリー一発で問題を解いてしまったけれど、実は自信がなかった(答え合わせしましたが、これで正解だったみたい。良かった~)。
それにしてもこれは難しいなぁ。。。たしかにセオリー通りに解いてしまえばあっさりとエが解答になる。「赤道直下では熱帯低気圧は発生しない」という法則だけで解くことができるんだが、でも実は他にあやしいところもあるんだよなぁ。それがイなのだ。
熱帯低気圧の発生のためには十分な水温(27℃以上)が必要であり、それが低緯度海域でしか発生しないという理由になっている。そのため、低緯度海域であっても水温が比較的低い寒流沿岸では熱帯低気圧は発生しにくい。ペルーの沿岸が代表例だね(もっとも、南米大陸は東岸でも熱帯低気圧は発生しないのだが)。南半球では海流は反時計回りになる。ウの沿岸は暖流が流れ、まさに熱帯低気圧の上陸がみられやすいところなのだが、イはどうなんだろう?ここ、微妙なんですよね。オーストラリア西岸は高緯度から低緯度へと海流がみられ、南極方面から赤道方面へと冷たい水を流す寒流となっている。だから、ここって低緯度の割に水温が低いので熱帯低気圧は生じにくい。とはいえ、イの場所ってオーストラリア北西岸であり、ちょっと場所がズレているんだよね。ここならば寒流の影響も小さく、十分に水温が高いので熱帯低気圧の成長もあるんじゃないかな。不確かではあるんだが。とはいえ、エが確実に答えであるのでイの可能性は消してしまっていい。完全に納得できた問題ではないんだけど、これでいいのかな。
<[地理総合・探究]2025年/本試験・第6問問2解説>
[ファーストインプレッション]農業の問題と思いきや気候の問題だよね。ジャンルレスの問題の代表例でしょう。と思ったら、気候の問題どころか外来河川の問題か。乾燥気候のみられる地域から外来河川を判定する。農業や気候、そして河川というマルチジャンルの問題とも言えるかな。
[解法]「天水」とは注釈にもあるように「雨水」のこと。さらに「灌漑施設を用いず」とある。灌漑とは「人工的に農地に水を与える」ことで原則として乾燥地域で行われること。乾燥とは「降水量<蒸発量」である。雨水(降水)に対し蒸発量が多い。降った雨が全て乾いてしまうので、本来はこういった地域では河川は存在しない。例えば日本は湿潤地域だが(湿潤は乾燥の反対語。降水量の方が蒸発量が多い)、河川は「余った」水を海へと押し流すもの。雨水の方が多いのだから、全てが乾くことなく海へと流出する。
しかし乾燥地域にも河川の流れがみられることがある。そういった河川は「外来河川」である。外来河川とは流域に異なる自然環境を有する河川。この場合の「異なる自然環境」とは「湿潤」と「乾燥」のこと。源流付近が湿潤地域であり、そこで十分に水を蓄え乾燥地域へと流れ込む。乾燥地域の強い蒸発作用にも耐え、水が周辺地域を潤すのだ。
シンプルに「外来河川=乾燥地域を流れる川」と考えてしまえばいい(もちろん源流は湿潤地域なのだが)。外来河川は頻出であり、数も限られているので覚えてしまっていいと思う。いずれも有名な川であり、覚えても負担は小さいと思うよ。まず中学の歴史で勉強したと思うけれど、世界四大古代文明を支えた川は全て外来河川。中国文明の黄河、インダス文明(パキスタン)のインダス川、メソポタミア文明(イラク)のチグリス川・ユーフラテス川、エジプト文明のナイル川。
さらにアフリカ西部のニジェール川。大陸縁辺部の湿潤地域に水源を発し、サハラ砂漠やサヘル地帯を貫いている。
北アメリカではアメリカ合衆国西部のコロラド川。グランドキャニオンを刻む河川。オーストラリアのマリー川も外来河川。灌漑によって流域は大規模な小麦農業地域になっているが、過剰な灌漑による塩害もみられる。
このことから「インダス川=パキスタン」を乾燥地域と捉え、天水が期待で気ないため河川からの灌漑に頼っていることを考える。Aが正解。インダス川の水を利用し綿花や小麦の栽培が行われている。
他はいずれも湿潤地域であり、天水が利用できる。Bのインドシナ半島はメコン川が流れる。Cのカリマンタン島は熱帯雨林が繁茂し高温湿潤の環境。Dのマダガスカル東部は貿易風の風上側斜面に当たり多雨である。マダガスカルはマレー系の文化を有し稲作が盛ん。
[アフターアクション]とにかく外来河川。外来河川が頻出であるのは従来の傾向と変わらない。ここに挙げた外来河川については地図帳で位置を確認し、そして流れ方や国もチェックしておいて欲しい。原則として地名や都市名が問われない地理という科目だが、外来河川だけは例外だね。乾燥地域において人々の生活を支える河川なのだ。
なお、インダス川(パキスタン=乾燥地域)については2022年地理B本試験第1問問3で登場しているので確認しておこう。過去問で問われた話題は繰り返し登場するのです。
<[地理総合・探究]2025年/本試験・第6問問3解説>
[ファーストインプレッション]共通テストでは「地誌」は出題されない。大問としては地誌の形をとっているけれど、これも系統地理の問題として解くことができるね。とくにヒトの移動に関する問題なので、経済レベルの問題に置き換えることができる。経済レベルつまり1人当たりGNIの低いところから高いところへと人々は移動する。さらにいえば選択肢の3つの国の人口規模や産業の特徴ももちろん考える手がかりになる。
[解法]人・モノの結びつきに関する問題だが、もちろん経済がテーマになっているよね。輸出額と移民数だけど、まずは移民から考えてみようか。
人の流れは「経済レベルの低いところから高いところへ」。1人当たりGNIの低い国から高い国へと、高賃金の仕事を求めて人々は移動する。候補となる3カ国中、1人当たりGNIはインドネシアだけが際立って低い。中継貿易港として発展したシンガポール、オイルマネーで潤うアラブ首長国連邦はいずれも人口規模が小さいことも相待って、1人当たりGNIは高い。人口移動の流れとしては「インドネシアが流出国である」ことを真理として考えてみよう。
移民数に注目。インドからの矢印は、カとキへは移民が多くなっているが、ク向けの人数は少ない。どうかな?これだけでクをインドネシアと判定することができるんじゃないか。なるほど、そう考えてみるとクと中心とした人口流動についてもある特徴が伺える。カとクの間においては「ク→カ」が多く反対方向は少ない。カとキの間も同様で「ク→キ」の移動人数が多く反対は少ない。クが経済レベルが低い国(つまりインドネシア)、カとキが経済レベルの高い国(つまりアラブ首長国連邦かシンガポール)と判定できる。
輸出額はどうだろうか。ここはASEANの関係を考えればいいと思う。東南アジア10カ国はASEANを結成している。当初は政治的な意味合いが強かったが(ベトナムなどの社会主義国に対する備え)、近年では経済的な結びつきが重要視され、企業進出など国際分業体制が確立されつつある。域内での貿易もさらに活性化している。クをインドネシアとした場合、アラブ首長国連邦とシンガポール、どちらの方がより貿易額が大きいだろうか。輸出額に注目してみよう。
クを中心とするとカを相手とする貿易額は少ないのに対し、キとの貿易額は大きい。「キ→ク」の輸出額は極大だが、「ク→キ」の輸出額も小さくない。どうだろうか?両者の間には緊密な経済関係があるとみられ、これをASEAN域内の貿易とみていいのではないか。つまりクがインドネシアならばキがシンガポールである。正解は2である。
消去法でカがアラブ首長国連邦であるが、これについてはどうだろう(地理は答えがわかった後からの分析がとても大切なのです)。原油の世界的な輸出国であり、輸出額は大きい。ただ輸入額も大きく、インドとの貿易は双方の輸出額(輸入額)は同じぐらいにみえる。
クのインドネシアとの貿易はあまり盛んではないようだが、その一方でキのシンガポール向けの輸出は多い。なるほど、インドネシアは石炭の世界的な産出国である同時に、かつてはOPECに加盟していたほどの産油国でもあるし、天然ガスについては日本の主な輸入先の一つである。エネルギー資源の豊富な国であり、他の国から輸入する必要はそもそもない。原油が主な輸出品目であるアラブ首長国との関係は薄いとみていいんじゃないか。
移民数はもっとわかりやすい。インドからカへと太い矢印が入り込んでいる。アラブ首長国連邦などオイルマネーで潤う西アジアの産油国では建設ブームが生じ、都市そのものが作られている。ドバイは最新鋭の未来都市である。建設業の労働力としてとくに低賃金の南アジアからの移民を多く受け入れているのだ。移民とはいえ彼らへの社会保障は手厚くなく、劣悪な環境での労働や生活を強いられている。アラブ首長国連邦へはインドネシアからの出稼ぎ労働者も多いようだ。シンガポールは高賃金であり他国で仕事を探す必要もない。そもそも人口500万人程度の小国なので、移民も少なくなるね。
[アフターアクション]もちろん1人当たりGNIの問題。地理では1人当たりGNIの考え方に基づく問題が多く出題されているが、「ヒトの移動」に関する問題はその典型的なもの。賃金水準に基づいて考えよう。
それにしてインドからアラブ首長国連邦への移民の流れが大きいことには改めて驚かされる。もちろん経済格差が最大の要因だが、インドが人口大国っていうのはやっぱり大きいよね。人口規模が大きいからこそ流出する人口も多い。しかしその一方でアラブ首長国連邦も凄いと思うんですよね。もちろん賃金水準が高いんだけれども、こちらは国そのものが小さいじゃない?そもそもそんなにたくさん仕事があるのかっていうこと。っていうか、「ある」んだろうね。
労働者は「高い賃金」と「豊富な雇用」を求めて移動する。高い賃金はもちろん1人当たりGNIの高さ。それに対し豊富な雇用つまり仕事の多さは、その経済規模に比例する。つまりGNI。GNIが大きい国、市場(マーケット)の規模が大きい国はそれだけ仕事も多いはずで多くの労働者を迎え入れる土台がある。でもアラブ首長国連邦って小さい国じゃない?それなのにこんなにたくさんのインドからの移民を受け入れているなんて、どんだけ仕事にあふれているんだ!?ってことに驚かされる。ペルシャ湾岸の産油国の都市建設の勢いは我々の想像をはるかに凌ぐレベルなのだろう。
<[地理総合・探究]2025年/本試験・第6問問4解説>
[ファーストインプレッション]一応ジャンルとしては宗教なのかな。でもできるだけ宗教に関するベタな知識を用いず、思考に由来して問題に取り組んでみよう。共通テストが導入された2020年以降、宗教に関する出題はほとんどみられなかった。本問もとくに「宗教」の特別な知識が求められているわけではく、頭の体操のつもりで解いてみようよ。
[解法]3つの国の宗教事情が問われている。Fは東アフリカに位置する国だが国名は知らない。「国内の第1位の宗教人口割合」が80%未満であり、比較的多様な宗教が見られると想像される。
Gは分かるんじゃないかな。これはインドだね。インドで主に信仰されているのは「インドの」宗教、つまり「ヒンドゥー教」。カースト制度や牛を大切にする文化をベースとして発祥した宗教である。しかしインドでもヒンドゥー教徒の割合は80%未満であるようだ。他の宗教を信仰する人もいる。というか、「いる」というレベルではないかもしれないね。インドは人口14億人を超える大国。80%がヒンドゥー教徒としてもほぼ10億人。他の宗教の信者が20%ほどとは言っても、それだけで3億人近い人数になる。これはインドネシアやアメリカ合衆国の全人口と同じレベル。
Hも国名はわからないね。東南アジアであることはわかるんじゃないかな。東南アジアは大陸部と島嶼部で文化が異なる。インドシナ半島を中心とした大陸部(Hの国が含まれる)は大河川の流域で稲作が行われている。「仏教=農業地域」である。托鉢の習慣がある仏教は、食料に余裕がある地域でしか成立しない。出家した僧に大量に供物を与えることができるだけの芳醇な農業地域。Hは仏教徒の割合が高いと考え、その割合は80~90%に達する。
東南アジアの島嶼部は商業地域。インド洋沿いの交易路はアラブ商人たちが香料などの商品を取り引きした重要な商業ルートである。商業宗教であり、当時は最新鋭の考え方として都市や港の住民を中心にイスラームが広がった。マレー半島やインドネシアの島々はイスラーム地域となっている。
さて、これらのことを意識して文章を読解してみよう。
まずはサから。キーワードは「世界有数のムスリム(イスラム教徒)人口」を擁しつつ、しかし「宗教人口割合の第1位はイスラームではない」こと。イスラームが多い国でありながら、イスラームより支配的な宗教があるということではないか。これ、インドに該当するのでは。インドで支配的な宗教はヒンドゥー教であり「宗教人口割合の第1位はイスラーではない」という定義と合致する。しかし、仮にイスラームがインド人口のたった1割だったとしてもその信者数は1.4億人に上る。「世界有数のムスリム人口」とも合致する。
さらにシについて。ここで特徴的なキーワードは「仏教徒」。仏教は世界宗教ではあるが、その広がりには限界がある。仏教は「托鉢」の習慣があり、僧侶が各家庭をめぐって食料などの供物を得る。このように他者に食料を無償で供給する余裕があるのは農業が盛んな地域に限られるよね。穀物や野菜、果樹が豊富に栽培される高温で湿潤なモンスーンアジアこそそうした「豊かな農業地域」に該当する。東南アジアのHが「仏教徒」の存在する国であり、シはHに該当。
最後にス。これはよくわからない。農業宗教・仏教、商業宗教・イスラームに対し、侵略者の宗教がキリスト教。ヨーロッパ諸国は武力によって世界各地を自らの支配下とした。その際に自らの文化を強制しキリスト教も伝播された(そもそも「宣教師」という宗教を伝える(押し付ける?)存在があった宗教はキリスト教のみ。仏教は自ら経典をインドへと取りに行ったし、イスラームは商業のルートに沿って自然に広がった)。スは消去法によってFだろうか。アフリカ各地はヨーロッパの植民地となった歴史がある。その際に「キリスト教が浸透」したのだろうか。正解は( )となる。
[アフターアクション]とにかく宗教に苦手意識を持っている人が多すぎる!宗教ってそんなに特別なものかい?宗教は生活文化である。湿潤地域には湿潤地域の生活文化があり、乾燥地域には乾燥地域の生活文化がある。それだけのことなんだけどね。農業が容易なアジアの湿潤地域はさほど労働力を要しなくても食糧生産が可能であり、男性は出家という「非労働者」となることがある。出家した僧は各家庭をめぐって食料を恵んでもらう。これを「托鉢」というね。農業が困難で食料を得にくい地域で托鉢なんかしたらめちゃめちゃ怒られるでしょ?湿潤地域だからこそ仏教が成り立つのであり、逆に言えば湿潤地域の人々の生活文化を反映したものが仏教なのだ。
乾燥地域は穀物が足りない。家畜の飼料として穀物を消費してしまうなんて勿体ないことができるかい?乾燥地域では豚の飼育を禁じて、貴重な穀物は人々の口に直接入るようにしている。ただし、乾燥地域の家畜である羊は穀物を餌とせず、その辺りに生えている草を食べて勝手に成長してくれる。こんなに便利は家畜はないでしょ?乾燥地域で重用される家畜は豚ではなく羊なのだ。
さらに言えばイスラームはコーランのもとに人々は完全に平等。そもそも身分差別を必要とするのは農業地域なのだ。農耕のための奴隷が必要なため、身分制度を作り、奴隷に労働を押し付ける。これ、インドのカースト制度だよね。インドは農業地域なので奴隷が必要なのだ。ちなみにインドでは牛は使役用(田畑を耕す)であったり、搾乳用(インドでの重要なタンパク源となる)として「財産」として扱われている。インドで牛が大切にされているのはこれが理由。ちなみに牛も羊と同じく草を食べて勝手に成長する。人間が餌をあげないと育たない豚とは決定的に違っている。
これとは対照的にイスラームに身分制度がないのはそれが商業の宗教だから。農業地域を基盤としないので奴隷的労働が不要。逆に商業においては人々全てに購買力が備わっていることが大切。国民全てが自由に使えるお金がある方が経済は循環するでしょ?だからイスラームは身分差別を好まない。経済のために「人々は平等なのだ」と訴える。さらにいえばイスラームには「ザッカート」という教義がある。富める者は貧しい者に強制的に財産を渡すのだ。これは仏教地域の托鉢とは関係なく(仏教が純粋な弱者救済であるのに対し)ザッカートは経済を回すことが目的。貧乏人にお金を渡したら間違いなくそれを使うでしょ?貯金する余裕なんかないんだから。そして彼らが使った金がすぐに富裕層へと渡ることになり、さらに富裕層が富栄えることになる。「お金を使うことは良いことだ」という経済の概念が入った宗教がイスラーム。砂漠の非農業地域の宗教って感じがするでしょ?都市型宗教、経済の宗教、お金の宗教なのだ。
おっと、こういった話をしているとキリがないよね(笑)いずれにせよ宗教って実はとてもおもしろいものであり、人々の生活が反映されたものなのだ。苦手意識をとりさらい、宗教から見えてくる人々の生活を観察することを楽しんで欲しい。
ちなみにH・シはミャンマー。仏教国だが、西部のバングラデシュとの国境沿いにはムスリムのロヒンギャ族が居住し、中央政府から迫害の対象となっている。一部がバングラデシュ(イスラームの国である)に難民として流出している。
F・スはタンザニアじゃないかな。タンザニアは社会主義の国だから宗教うんぬんということはないのだけれども歴史的にはインド洋交易の拠点だったこともあり、イスラームが広まっている(イスラームは商業宗教)。ムスリム商人の言語(アラビア語)と地域の言語がまざりあった共通語はスワヒリ語。ケニアからタンザニアの沿岸部で商人たちが使った言語で、現在は両国の公用語ともなっている。キリスト教についてはよくわからないが、タンザニアもヨーロッパの植民地となった歴史があり、その際に宣教師が送られたのだろうか。
<[地理総合・探究]2025年/本試験・第6問問5解説>
[ファーストインプレッション]モーリシャスとモルディブだなんて一体どこやねん?ってな国ですが、何が問われているんでしょうね。一生行くことのない国でもあるし、見聞きすることもほとんどない国ですよね。何が問われているのでしょうね。
[解法]いくつかの図表が与えられた問題。こういった問題は先に文章を読んで答えの見当をつけてしまいましょう。
まず選択肢1から。「サトウキビプランテーションが発達し」とある。サトウキビな熱帯の高温で湿潤な地域で栽培される。この2つの島はおそらく暑くて雨も多いだろうから、サトウキビ栽培はできるでしょう。プランテーションはわからないけれど、これに取って代わる言葉はないと思うので(例えばサトウキビならばテンサイや綿花など他の作物に入れ替えることができる)このままプランテーションで正しいでしょう。正文っぽいな。
さらに選択肢2。「フランス統治期に導入された移民労働者の宗教が反映されている」とある。そもそもフランスの植民地なんだろうか。なるほど、表を見るとモーリシャスの旧宗主国に「フランス」とある。オランダやイギリスの植民地だった時代もあったようだ。複雑な歴史背景を持った国なんだね。さて宗教については「ヒンドゥー教」とある。ヒンドゥー教ってどんな宗教なのだろう。名前から分かるように「インドの宗教」(インドはヒンドとも言う。ヒンドゥーは「ヒンドの」という意味。つまり「インドの」宗教)だね。
つまりインドからの移住者がこの国には多いということなのだ。彼らが代々信仰していた宗教がこの地に持ち込まれた。モーリシャスの住民構成もインド系の人が多いのだろう。さて、ここで一つ疑問なのだがこのインドからの移民は「フランス統治期」に導入されたものなのだろうか。そもそもインドとフランスって関係あるか?インドがコンピュータ大国であることはよく知られているね。その背景としてインドの人々が英語に堪能ということがある。英語は世界の共通語的な役割を果たしているが、コンピュータソフトの世界でこそその意味が大きく、例えばコンピュータソフトは英語で開発されている。もともと理系の技術者の多いインドであるが(人口が多いからね。さらに数字のゼロを発見したのはインド人であるなど、理数科目に強い民族でもあるのだ)さらには彼らが英語を自在に操ることができるということも大きな優位点となっている。インドは州ごとに公用語が多様な国ではあるが、最大の使用人口をもつヒンディー語が連邦公用語であり、英語が準公用語となっている。
このような背景を理解すると、インドはかつてのイギリス植民地だったことが推測できるだろう。イギリス領時代に英語が広く普及した。モーリシャスにヒンドゥー教徒が多いのはインドからの移民の末裔だと思われる。イギリスがインドとモーリシャスを同時に植民地としていた時代に、インドから多くの労働者が送り込まれたのではないか。フランスは適当でなく、この選択肢が誤り。
②が誤り(正解)とわかったので③と④は判定の必要はないが、とりあえず確認だけしておこうか。
選択肢3について。モルディブは「地球温暖化による国土面積の縮小が懸念されている」とある。こういった洋上の島は「火山島」か「サンゴ礁島」のいずれかである。火山島ならば標高が高いので(例えば屋久島など想像してみよう)多少海水面が上がったところで水没する範囲はごく狭いし、人間の居住に不利益が生じることもない。それに対しサンゴ礁島は標高が低く、海水面が数メートル上昇しただけで広い範囲が水没してしまうことがある。文章内でモルディブについては「サンゴ礁」の島であると説明されており、写真でもそれっぽい感じがするよね。平坦な島であり、地球温暖化の影響を受けやすい。
さらに④について。これは僕もよく知らないなぁ。こういった政治的ネタがテストで問われることはない。本問においてもハズレ選択肢であり(誤文判定問題なので正文ということ)答えにはならない。「中国沿海部から東アフリカを経由する一帯一路構想の海上シルクロードルートに位置している」のだそうだ。一帯一路も海上シルクロードもよくわからないので、今回は無視していいでしょう。
なお選択肢1に戻るけれど、モーリシャスの写真にたしかにサトウキビっぽい農産物が写っているね。確実にサトウキビと言い切れないので解答のポイントにはならないけれど、一応参考にして欲しいかな。
[アフターアクション]宗教の問題とは言えるが、問われているのは「インド=ヒンドゥー教」という簡単な知識。これなら中学生でも十分に理解できるだろう。上でも述べているけれど、そもそも「ヒンドゥー」というのは「インドの」という意味でもあるしね。宗教ジャンルにやたら神経質な人がいるけれど、そんなのは気にしなくていいと思うよ。世界で最も信仰心の厚い国は間違いなく日本なんだから、宗教を基盤とした考え方が我々にとって理解の外にあるわけがない。宗教は自然環境の中にあり、日本に住む人々は古来より自然の中に神を見出していた。やがて伝わってきた仏教を日本流にアレンジし、神道と合わせて日本固有の宗教とした。家庭内に仏壇があり、さらにお墓参りを欠かさないなど祖先を厚く敬い、年間の様々な行事が神様や仏様の名の下に行われている。こんなに日々の生活が宗教で彩られている国はないと思うよ。
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