たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
<第1問問1>
[インプレッション]気候の問題ですね。降水量が問われている。数字に敏感になって解いてほしい。
[解法]エについて考えてみよう。まずは年降水量に注目。例えば日本の平均降水量は1500ミリで、国内でも降水量が少ないところ(北海道や長野県、岡山県など)で1000ミリ程度。表中の1~4のうち、1と2はそれなりの降水量であることがわかるが、3と4は明らかに少ない。エは日本、とくに北海道に近いことから、それなりの降水量はあると思われ、選択肢を1と2に絞る。
1と2は何が違うか?それは最少雨月の降水量。1はかなり少ないものの、2は比較的多い。とくに最少雨月で約50ミリならば、12か月で600ミリ。2の年降水量は775.2なのだから、おそらく多い月でも70ミリや80ミリ程度なのではないか。年間を通じ等しく雨が降っている。
1は最少雨月が13.4で年間が837.0。これは雨の多い月ならば100ミリ以上は降っているんじゃない?季節による降水変化が明瞭。
さて、これを日本に近いエの降水の様子として捉えた場合、どちらが該当するんだろうか。日本を含む東アジア地域はモンスーン(季節風)の影響が強い。夏は太平洋から南東モンスーンが吹き込み多雨となり、冬はシベリア高気圧からの北西モンスーンによって少雨となる。季節による降水量の差が大きいね。
東アジアのエは、多雨かつ季節ごとの降水量の差が大きい1が該当する。
[雑感]基準になるのは日本の気候。日本列島において、どのような理由でどのような気候が現れるのだろう。中学地理でも日本の気候は出てくるね。しっかりまとめておこう。
<第1問問2>
[インプレッション]また「流域」。やたらと流域って言葉が出てくるんだが、キーワードとして丁寧に扱おう。この河川は流域が海に達しておらず、内陸で閉じている。こういった河川を内陸河川というのだが、蒸発の盛んな地域によく見られる。強い蒸発によって河川水が消えてしまうため、こういった河川になるんだね。
[解法]「流域」ってわかるかな。ある河川について雨水が集まってくる範囲と考えよう。「集水域」とも言ったりする。図2がこの河川の流域ということは、この範囲から雨水が集まってくる。流域の外縁は一般に尾根(山脈)となっている。図2の周辺は全て山地なのだろう。グレイに彩られた部分が「お皿」のように凹んでいて、ここに雨水が集まってくる。本来ならそういった雨水が集まることによって溢れ出してしまうのだが、おそらくここは乾燥地域なのだろう。降る雨の量より、(高温であるため)蒸発量が多く、乾燥する。海へと流出する出口がないよね。水は海へと流れることはなく、蒸発して空に消えてしまうのだ。このように海とつながっていない河川を「内陸河川」という。そして内陸河川の多くは乾燥によって河川水がなくなってしまうのだから、乾燥地域を流れる「外来河川」でもある。内陸河川かつ外来河川が、このアフリカの地にあるってことだね。
では問題文を検討していこう。まずc~dの流れについて、どちらに流れているかということ。これ、外来河川なのだが、外来河川の本来の定義は「流域に異なる気候が存在する」ということ。この気候とは「乾燥気候」と「湿潤気候」。
ここでちょっと考えて欲しいんだが、一つの河川の流域に乾燥気候と湿潤気候があるとして、さて、どちらが上流側なんだろうか。
(1)上流が乾燥気候、下流が湿潤気候
(2)上流が湿潤気候、下流が乾燥気候
このどちらのパターンだと思う?ちょっと考えてみれば簡単だよね。上流が乾燥気候ならばそこで水が全部乾いてしまうのだから、そもそも河川が存在しない。上流側で十分に水を蓄え、乾燥地域に突入する。そういった河川でないと、乾燥地域には存在し得ないわけだ。つまり(2)の上流が湿潤、下流が乾燥が正解。
それをこの図2にあてはまてみよう。さて、cとd、どちらが湿潤地域なのだろう?湿潤とは「降水量>蒸発量」なのだが、そもそもこの地域は低緯度であり気温が高く、蒸発量は多くなる。かなりの多雨でないと湿潤にはならないんじゃない?アフリカ大陸の北半球低緯度地域において、多雨となるのは低緯度側(d)なのか、高緯度側(c)なのか?
そう考えればわかるんじゃないかな。赤道周辺には熱帯収束帯が形成され、毎日午後にスコールという強い雨が降る。dのような地域はその影響が強く降水量が多い(とくに熱帯収束帯が北上してくる7月などはかなりの多雨になるだろう)。それに対し、北緯25度付近では下降気流が卓越し亜熱帯高圧帯が形成、この周囲では雨が少なく乾燥。砂漠やステップが広がっているね。cの緯度帯ってこの影響が強いんじゃない?とくに地球全体の気圧帯が南下する1月にはおそらくほとんど雨が降らない。
多雨(熱帯収束帯)のd、少雨(亜熱帯高圧帯)のcと考えれば、dが湿潤で上流側、cが乾燥で下流側と考えるのが正解なんだと思う。流れる方向は「dからc」である。
さらにFについて。これはどうなんだろう?地下水路といえばイランのカナートや北アフリカのフォガラが知られているけれど、これは山地や高原にみられるもの。山麓の地下水を地下水路によって遠方の畑や集落へと導く。多くの人々が土地を掘削し、手作業によってこういった伝統的な灌漑施設をつくっているのだ。ただ、これがこのよなアフリカの北半球低緯度地域で一般的なものなのだろうかっていう疑問はあるわけだよね。前述のようにイランや北アフリカでみられるもの。さらにいえば「水資源の枯渇」もどうなのかな。環境問題として過剰な灌漑によって水資源の枯渇がみられるのは2つの事例。一つは中央アジアの「アラル海」。アラル海自体は塩水湖だが、それに流入する河川であるアムダリア川やシルダリア川はもちろん淡水。これらの河川から水を得て周辺農地へと灌漑している。本来湖に注ぐはずの水を農業用水として使ってしまっているため、湖へと流入する水量が減少し、湖の面積が縮小している。
さらにもう一つのパターンが新大陸を中心に行われる「センターピボット農法」。大規模な機械を導入し、地下水を汲み上げ、回転するアーム式の散水器で灌漑する。上空から見ると円形の耕地が並んでいる様子は、君たちも写真でみたことがあるのでは。アメリカ合衆国のグレートプレーンズはセンターピボット方式による灌漑で穀物(飼料となるとうもろこしなど)が栽培されているが、豊富な地下水を大量に揚水してしまうことから、地下水枯渇や地盤沈下などの問題も生じている。また過剰な灌漑による塩害も深刻で、同じ農業方式が行われているオーストラリアでも塩害による砂漠化が進行している。
さて、どうだろうか。「水資源の枯渇」の例を挙げてみたのだが、そもそもが地下水路とは無関係だったりするのだ。この地域は地下水路による灌漑が一般的な地域でもないし、キは当てはまらないような気がするだけどなぁ。
だから、もう片方のカが正解なんじゃないかって思う。アフリカ大陸の北半球低緯度地域って「サヘル地帯」だよね。サハラ砂漠の南縁に沿う草原(ステップ)地域で、砂漠化が進行している。砂漠化の原因には主に自然的要因と人為的な要因があり、これについてまとめてみよう。
(1)自然的要因;異常気象による降水量の減少(干ばつ)・地球温暖化による蒸発量の増加。
(2)人事的要因;家畜の過放牧・薪炭材の過剰な伐採・過耕作(休耕期間の短縮・連作など)・不適切な灌漑による土壌の塩類化
どうだろうか。サヘル地帯は経済レベルの低い地域で出生率が高く人口増加率の高い地域でもある。拡大する燃料や食料の需要をカバーするため、過剰な伐採や過放牧も行われ、サヘルでは植生が失われ砂漠化が進む。カを正解としていいだろう。
[雑感]本問は難しかったんじゃないかな。僕もかなりこじつけっぽい感じではあったよ(笑)でも一応答え確認してみたらこれで正解だったのでホッとした。おそらく流れ方に関する考え方はこれでいいと思う。Fの判定についても、オーソドックスなサヘル地帯の状況をそのまま答えればいいんだと思う。キの選択肢を気持ちよく消すことができないのがちょっと気がかりなんだが。
<第1問問3>
[インプレッション]いきなりアペニンなんていうマイナーな地名が出てきてビビった! でもおそらくこの問題は地名を無視してできるんじゃないかな。
[解法]表2の数値と、J~Kの文章を対応させよう。
まずサ。これ、全体的に侵食スピードが速いよね。侵食って何だ?例えば河川の3作用っていうのがあって、それが「侵食」、「運搬」、「堆積」。河川の上流部で土地を侵食し、そこで生じた土砂を河川の流れが下流まで運搬し、そして河川の流れがゆるかなになったところで土砂がその場所に堆積する。侵食はどういったところで起きる?それは急斜面だね。山間部の急傾斜のところを河川が流れ、土地を削っていく。これが侵食なわけだ。その侵食が速いってことは、よほど水量が多いか、土地が急傾斜であるということ。J~Kには降水量の説明はないので、土地の傾斜だけに注目すればいいだろう。「活断層」といえば地震活動が活発な日本のような地形である。山地が多くもちろん急斜面も多い。そして「山崩れ」の発生もあるだろうね。Jが最も急傾斜であり、侵食が速いサとなる。
ただ、ここでちょっと悩むのだ。スに「800」っていう数字があるじゃない?スの他の数字は小さいのに、なぜかこの800だけがサの数字を超えている。これって何なんだ?
そう思ってKやLの文を見ると、なるほどっていうキーワードがあるよkね。そうか、このせいで侵食スピードが速いのだ。別の言い方をすると、土砂が削られ流出してしまっているのだ。そう「森林伐採」だよね。森林は土地に深く根を張り、土壌を支える。斜面であっても土砂が削り取られるのを防ぎ、山崩れなどの災害も起こりにくい。
それなのに森林が伐採されたらどうだろう?それまで土壌を支えていた樹木の根がなくなるのだから、さほど傾斜が急でないとしても土砂はどんどんと崩れて落ちてしまうよね。侵食は急速に進むはず。スは「5~11」や「50~」など全体に低い数値でありながら急激に「800」なんていう数字が出てきてびっくりするんだけど、これが森林伐採の影響だろうね。全体に傾斜が緩やかであり侵食は進まないのだが、森林がなくなったとたんに土壌侵食・土壌流出が深刻になる。スがKに該当するのだろう。
地形が緩やかであり、さらに森林によっても支えられている。シがL。
[雑感]地名がダミーだったことがわかるよね。無視すればいい。それよりしっかり文章を読んで、統計数値に基づいて考えれば十分に答えは得られる。「侵食」っていう言葉がとても大切な問題だったね。
<第1問問4>
[インプレッション]これ、結構手強い気がするな。熱帯低気圧の動きなんだが、日本付近での台風の動き方が頭に入っていれば解けるかな。
[解法]熱帯低気圧の発生とそこからの動き方。熱帯低気圧は、赤道周辺の低緯度海域で発生し(*)そこから高緯度方向に移動する。例えば台風ならば、南シナ海やフィリピン周辺で発生し、日本列島や朝鮮半島の方向へと移動する。
ただし、日本付近での台風の動きはみんなも知っているね。大きく「く」の字にカーブを描いている。基本的には低緯度から高緯度へ、南から北へと台風は動くのだが、低緯度海域ではこの一帯に卓越する貿易風(東寄りの風)の影響を受け、南東から北西方向に移動し、中緯度海域では同じくこの一帯に卓越する偏西風(西寄りの風)の影響を受け、南西から北東方向に移動する。
この動きを頭に入れながら、図を解析していこう。こういった図では赤道を引くのは必須。QとRが北半球、PとSが南半球。QとRは大まかに南から北へ熱帯低気圧は移動するが、貿易風の影響でその進路は北西へと向く。3と4がこれに該当するだろうか。
逆にPとSでは大まかに北から南へと台風は動き、同じく貿易風に吹き流され、南西の方向に向かっていく。1と2だろう。
ここまで判定できれば十分。あとはカンに頼るしかないんじゃないかな。北半球の低緯度海域は、東(北アメリカ方面)から西(インドネシア方面)に向けて海流(北赤道海流)が流れている。この海流はスタート地点(北アメリカ沿岸)では水温が低いが、低緯度を流れる間に次第に温められ、水温が上昇していく。図でいうならば、Rではまだ十分に水温は上がっておらず、Qに達して極めて暖かい海水となる。
このため、熱帯低気圧が発生しやすいのは、より西方のQの方である。熱帯低気圧の発生が顕著な4がQに該当し、少ない3がR。
(*)ただし赤道直下では生じないので注意。熱帯低気圧が発生・成長するためには空気が渦を巻かないといけない。風が吹き込み、渦を成すには転向力の作用が必要。北半球ならば進行方向に対し右向きの力、南半球ならば同じく左向きの力。これにより低気圧の周囲を北半球では反時計回りに、南半球では時計回りに空気が渦を巻く。しかし赤道直下では転向力は働かず、空気も渦を巻かない。熱帯低気圧の発生はみられない。赤道周辺の降水パターンは(熱帯低気圧による低気圧性降雨ではなく)対流性降雨。熱帯収束帯に支配され、スコールによる降雨がみられる。
[雑感]ちょっと解きにくい問題だね。QとRの判定は難しい。せっかくならば、赤道直下の地域を挙げ(熱帯低気圧の発生は見られない)、北半球/赤道直下/南半球の3つの組み合わせ問題にしたら良かったのに。
<第1問問5>
[インプレッション]これは面白いね。流量については日本海側が特徴的(雪が降るので冬の流量が多い。雪解けとなるので春の流量が最大となる)なのだが、XとYの2つが日本海側地域だよね。この2つでどのように流量パターンは違うのだろう?どんな感じになるのか僕もちょっとイメージできない。どのようなグラフが登場するのか、楽しみ。
[解法]日本の気候に関する問題で中学レベル。中学生でも十分に解けるのだから、君たちはこの問題を落としてはいけないよ。
河川流量のグラフだが、川の流れはどういった時に水量が多くなる?基本的には「降水量」を考えればいいね。雨が多ければ流量も多い。実はもう一つ流量が多くなる理由があるのだが、それについては後述(XとYの判定はこちらが大事)。
日本列島の降水を考える場合には、風を考える。とくに季節風だね。夏は「大陸で暑く、海上で涼しい」。大陸内部の空気は膨張し密度が低下し(低気圧)、海上は収縮し密度が上昇(高気圧)。太平洋からユーラシア大陸へと向かう「南東」からの季節風が卓越するね。
一方で、冬は「大陸で冷たく、海洋で暖かい」。大陸内部の空気は収縮によって高気圧となり、海洋上の空気は比較的気圧が低い。風はユーラシア(シベリア)から太平洋に向かって吹く。「北西」からの季節風。
太平洋側のZを考えよう。夏になると太平洋側から湿った風が吹き込むことで多雨になる。風上側斜面では雨が多くなるんだね。逆にXやYは日本海側。南東から風が吹いたとしても、日本列島の山岳を越えて吹きおろすことになるので、この風は水分を十分に含んでいない。
逆に冬はZでは降水(雨や雪)は少なくなる。北西季節風が卓越し、太平洋側は風下側斜面であり、九州中央部の山地から乾いた風が吹きおろす。夏に流量が多く冬に少ないツがZ。
さらにXとYの判定。これ、ちょっと悩むよね。いずれも冬にこそ降水が多いと想像できる。冬の北西季節風に晒(さら)され、日本海から湿った風が吹き込む。日本列島を大きな山脈と見立てた場合には、XもYも両方とも山脈の風上側斜面である。地形性降雨による降水(雨や雪)が生じる。なるほど、タとチも両方とも冬の流量が多い。
ただ、ここでちょっと考えて欲しいのだ。タとチの決定的な違いって何だろう?なるほどって気づくところがあると思うよ。そう、「4月」だよね。チでは圧倒的に4月すなわち春の流量が多くなっている。これってどういうことだろう?4月って降水量が多い月だったかな?夏や冬に比べれば季節風の影響は小さいし、梅雨でも台風の時期でもない。降水はさほど多くないだろう。4月の流量の増加は降水とは関係ない。
では何なのだ?最初にもちょっと触れたけれど、河川流量が増える理由には降水以外のパターンがある。キーワードは春だよね。そう、「雪融け」なのだ。冬の間に河川上流部の山岳地域に積もった雪や氷が春の訪れによって融け、融雪水が一気に流れ込むことによって河川流量が急増する。シベリアのような極端な寒冷地域(つまり冬の間は完全に河川が凍結する)で典型的にみられる事象だが、もちろん日本の寒い地方にも当てはまる。低地では雪や氷の凍結はみられないだろうが、上流の山岳部はこの時期、雪氷に覆われている。
XとYを比べ、緯度が高く、より寒冷であると思われるXでこそ、こういった「冬の凍結と春の雪融け」の影響ってはっきり出るんじゃないかな。Xがチとなり、タがYとなる。Yで7月の流量が多いけれど、梅雨や台風による多雨が見られやすいってことなのかな。東北地方のXではそうでもない。
そういえばチでは1月や2月の流量が比較的少ないけれど(それでも太平洋側に比べれば多いが)、これもYに比べると、河川が凍結していることが多いってことかもしれないね。
[雑感]東北地方の春を思い浮かべて欲しいな。雪によって閉ざされていた山村に春が来る。雪融けによって川が一気に流れ出す。そういった日本の伝統的な風景がイメージできる問題でもあるよね。良問でした。
<第1問問6>
[インプレッション]一応地形図問題なんだが、ちょっと変わってておもしろいと思う。扇状地や自然堤防の捉え方が特徴的。
[解法]選択肢の文章から検討していこう。
「浸水の危険性」についていずれの文章も説明している。ただ、その高低には差があり、危険性の高い方から「3>1>4>2」である。浸水は一般に低地において被害が大きく、高いところでは安全。土地の高さを考えた場合、2が最も高所で次いで4。3が一番低いところであると見られ、1も比較的低い。
さらに「土砂災害の危険性」にも注目。こちらは、同じく危険性の高い方から「4>2>1=3」。1と3の記述は同じなのでイコールとしたが、しかし先ほどの「浸水の危険性」とはちょうど反対の関係になっていることがわかる。つまり、4と2が高所で、1と3が低地となる。さらにいえば、土砂災害が生じるのは山地斜面などの傾斜地。4や2は山地に接するところにあるのではないか。図は立体で表されているので、このことは読み取りやすいと思う。さらにいえば、4と2の表現の違いにも注目。4では「土砂災害の危険性は最も高い」
ではここで初めて図をみてみよう。マからメはどういった地形なのか。その前に「そのほか」の二つの地形をはっきりさせよう。そのほかの一つ目、細かい点々が描かれているものは図の北西部にある。図7の立体図よりこれが「山地」であることはわかる。さらに二つ目の空白。これも同じく図7を参照すると、図の全体に広がる平坦な地形であることがわかる。「低地」と考えていいんじゃないかな。
改めてマからメの判定。これらが「旧河道」、「自然堤防」、「扇状地」、「台地・段丘」のいずれかだそうだ。わかりやすいのは「台地・段丘」だと思う。山地が標高数百メートルの地形ならば、台地は数十メートルほど。地形図ならば等高線で高さは示されるものの、そこまで際立って高い地形ではない。これ、図7の南東部にないかな。テーブル状の盛り上がった地形。図8と対照させ、メが「台地・段丘」となる。
次は旧河道がわかりやすいかな。旧河道とは文字通り、かつて川だったところ。上流から下流へと、土地を横切る細い帯を探せばそれが川の跡だろう。これはミが該当するのではないか。現在の河道が黒い帯で示されているが、その周りに並んでいるのが旧河道。かつてはここにも水流があったが、現在は干上がっており、細長い低地となっている。なるほど、図7で確認すると、たしかにミとほぼ一致して溝というか帯状の地形がみられる。
そして残ったものは2つ。山地に沿うムと低地に分布するマ。とくにマは旧河道の周囲に見られることに特徴がある。どちらが扇状地で、どちらが自然堤防か。
扇状地については「扇形」と考えている人もいるようだが、今すぐその考えは改めよう。扇状地がむしろ明確な扇形になることはほとんどない。扇状地については「山地と平野の間につくられた緩斜面」という認識をもつ。断面図で考えた方がいいよ。急傾斜である山地と、平坦である低地との間に形成された緩やかな斜面。河川が山地から運んできた土砂が、傾斜が緩やかになった山地と平野との境目を埋めるように、堆積したのだ。本図でいうとムがそれに該当。山地の周囲に見られるね。山地から流れ出した土砂がここに溜まっているのだ。問題文も注釈を見て身いい。扇状地には「崖崩れの堆積物による地形を含む」とある。山地周辺の地形であるのだ。
そして残ったマが自然堤防。河川沿いの微高地であり、高さはせいぜい数メートル。洪水時に河川から流れ出た土砂が堆積したもの。旧河道の横に多いが、旧河道がかつて河川だったころに、洪水により土砂が周囲に流出したのだろう。
ではここで問題に戻る。メはなんだろうか。マからメのうち。明らかに高所である地形はム(扇状地)とメ(台地・段丘)。選択肢1から4の文章のうち、2と4が該当。ではどちらがいずれの文章に該当するのだろうか。やはりここは「土砂災害の危険性は最も高い」だろう。先ほども触れたが、問題文の注釈に「崖崩れ」の文字がある。なるほど、山地に沿う扇状地の方が、土砂災害の危険性は極めて高いということか。ムを4としてみようか。そうなるとメが2になるのだが、ちょっと気になる部分が。2には「浸水の危険性は最も低い」とあるが、そうだとすると「ム=4」は多少は浸水の可能性があるということ。これはどういうことだろう。ここで思うのだが、浸水すなわち洪水なのだが、これは河川によってもたらされる災害であることを考える。扇状地はそもそもが河川が作った地形である。山地を流れる河川が平野に出た時に、上流側で削った土砂を堆積させることでつくられた緩い斜面が扇状地。そう考えると扇状地と河川はセットなのだ。しかもそれは山地から流れ出した急な流れ。上流部で激しい雨が降ったならば、扇状地付近で洪水が生じてもおかしくはない。「メ=2」に比べると多少は浸水の可能性もあるのだろう。これにより、ムが4、メ=2に決定。正解は2。
他はミの旧河道は溝状の低地であり、洪水時には水が流れ込む。3が該当。それに比べるとマの自然堤防はわずかながら盛り土の状態であり、多少は水害が緩和される。1に該当。
[雑感]本問はおもしろい。扇状地と自然堤防の定義がとてもいいと思う。とくに扇状地。扇状地のことを上から見た形で「扇形」と決めつけている人がいるけれど、それは真っ赤な嘘。本図からわかるように、山地の周辺にこびりついた土砂なのだ。断面図で考えるといい。山地と平野(低地)の間にできた緩い斜面であり、河川が山地を削ってもたらした目の粗い砂礫(小さな石ころ)で構成されている。
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