たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
<第2問問1>
[インプレッション]
三圃式農業は知名度が高いわりに今までほとんど出題がなかった。あったとしても「かつて行われていた」であったり「混合農業へと発展した」程度の内容。本問は珍しいパターンだね。
[解法]
ヨーロッパの中世における農業がテーマ。三圃式農業が行われていた。
1について。「教会」は図のやや下の方にある。濠に囲まれているようには見えないが。。。
2について。図の北西部から中央部にかけて、「休閑地」、「春耕地」、「秋耕地」がみられる。これが正文でしょう。
3について。耕地が短冊状であることには特別な意味は感じない。土壌侵食は斜面において生じること(斜面を土砂が滑り落ちてしまうのだ)。図の範囲は傾斜地なのだろうか。そうとも思えないが。誤文とみていい。
4について。集落は図の下部に集まっているね。分散はしていない。誤り。正解は2。
[雑感]
図を見れば直接解けてしまう問題なので、これ以上の解説は不要とは思うが、一応発展的な内容の説明もしておきますね。
1について。周囲を濠で囲んだ集落を「環濠集落」といい、日本の奈良盆地にみられる。奈良時代に計画的に開発された地域にみられる条里集落の一種で、周囲の耕地は四角形に規則的に区切られる一方で、集落の形は「塊村」という、家屋が無秩序に密集した形。その周囲を防御のための濠が取り囲む。
2について。中世がポイント。いわゆる暗黒時代で、キリスト教文化の中、ヨーロッパ人は自分たちこそが世界の中心と信じていた(太陽が世界の周囲を動く「天動説」の時代だね)。ヨーロッパは痩せ地が多く、同じ作物を連続して栽培すると生産性が落ちてしまう(連作障害)。これを防ぐため、土地を3区分し、ローテーションさせ、それぞれ別の作物の栽培(春に播種する大麦、秋に播種する小麦)や休閑に当てていた。中世が終わり新大陸からジャガイモが流入するなどして、農業が新たな形となる。ジャガイモやライ麦の輪作、豚の飼育を組み合わせた混合農業へと進化していく。
3について。土壌侵食が生じる主な地域はアメリカ合衆国の中西部。傾斜地に耕地が開かれ、風雨で土壌が侵食される問題が生じている(なお、土壌侵食と土壌流出は同じ意味)。これを防ぐために行われているのが等高線耕作。
4について。家屋が分散して存在するのは散村。アメリカ合衆国中西部のタウンシップ制の家屋が典型的。家屋の周囲に農地(耕地や牧草地)が広がるので、農作業に便利。
<第2問問2>
[インプレッション]
手がかりが少ない問題だな。でも東アジアを当てるだけなら何とかなるかな。
[解法]
縦軸の「1ha当たりの穀物収量」は土地生産性。集約的な農業地域において高い値となる。
農業を土地生産性の観点で捉えた場合、「集約的」な農業と「粗放的」な農業が存在。前者が1ha当たりの収量が多い、土地生産性の高い農業。後者が1ha当たりの収量が少ない、土地生産性の低い農業。
大まかに土地生産性の高い農業(つまり集約だね)は人口密度の高い地域で行われていると見ていい。アジア(とくに東アジア)とヨーロッパがこれに該当。狭い土地を有効に利用して、できるだけ多くの生産物を得ようとする。「丁寧」な農業とイメージしよう。
逆に土地生産性の低い農業(こちらは粗放的)は人口密度の低い地域で行われる。アフリカや新大陸など。とくに新大陸については経営規模の大きさとも対応させて考えて欲しい。耕地(穀物畑)の面積が極めて広大なので、「収量÷耕地面積」で算出される1ha当たりの収量は小さい値になる。こちらは「雑」な農業だが、耕地が極端に広いならば、生産量はその分だけ多くなる。
さて、このことを意識して図を参照しよう。土地生産性が高いのは東アジアとヨーロッパ。この二つが2と3のいずれかとなる。残った中央・西アジアとアフリカが1と4。中央・西アジアについては東アジアと同じ「アジア」ではあるが、乾燥地域が広がり人口密度が低い。こちらでは土地生産性が低い粗放的な農業が行われる。
ここまでは簡単なのだが、ここから先がかなり考えないといけない。「灌漑」って何なんだ?灌漑とは人工的に耕地に水を与えることで、一般的に乾燥地域で行われる。乾燥地域を流れる河川(外来河川)から水を引いたり、山麓の地下水を遠方の耕地に地下水路で導いたり。なるほど、乾燥地域が広がり外来河川(ナイル川など)や地下水路(イランのカナートなど)を利用した農業が行われる中央・西アジアが4なのだろう。灌漑面積の割合が極めて高い。
ということは1はアフリカになるのだが、こちらは灌漑の割合が低い。アフリカも乾燥地域はあるはずだが、おそらく灌漑施設を整えるような資本力に乏しいのだろう。熱帯地域を中心に自給的な農業(焼畑農業)が行われ、乾燥地域では主に遊牧が営まれる。
ただし、この灌漑については湿潤地域でも行われることがある。乾季であったり、農産物の栽培に特に大量の水が必要な場合には灌漑が必要になる。ヨーロッパも東アジアもともに湿潤地域であるのに、2と3とで灌漑面積の割合も大きな違いがあるのはそういった事情による。もうわかったよね?いずれも湿潤地域であるだけでなく、乾季もみられない地域である。基本的には水は十分足りているはず。でも栽培される農産物の種類によって、水が過剰に求められ、それを補うために河川や溜池を利用した灌漑が必要となってくるのだ。そう、「稲作」だよね。水田が開かれ、米が栽培される場合には大量の水が必要となる。灌漑によって水を補うことが行われるのは、集約的稲作農業地域の東アジアである。水田には灌漑施設が整備され、農業用水が供給されている。3が東アジア、4がヨーロッパだろう。ヨーロッパで主穀である小麦はさほど水を必要とする作物ではない。また夏の気温も全体に低く、蒸発量も少ないため、渇水となることも少ない。
[雑感]
上記のように、縦軸(土地生産性)で候補を絞り、その後から灌漑によってどういった農業が行われているかを想像して解くのがスタンダードな解き方だったと思う。「1ha当たりの収量=土地生産性」という概念は非常に重要。丁寧な「集約的」農業は人口密度が高い地域、雑な「粗放的」農業は広い土地が確保できる地域。
<第2問問3>
[インプレッション]
遺伝子組み換えネタは頻出であるし、問われるパターンも一定。図は複雑だが、文章だけ読めば解けるんじゃないかな。
それはそうと、「長文+下線部」形式で「正文」判定は珍しい。一つの文章の中で、3つも誤りの箇所があるなんて、もはや説明文として成り立っていないんじゃないかな。意味のわからない文章になりかねないっていう心配がある。これまでは、この形式は一箇所だけ誤っている「誤文」判定に限られていたんだけどね。これも新傾向なのかな。
[解法]
文章から考察していこう。
1について。これはどうなんだろう?遺伝子組み換え作物の導入は、いわば農業の近代化であり、考えられる限りの新しい技術は使っていこうってことなんじゃないの?だから化学肥料も農薬も、農業機械も当然使われるべきだと思う。誤り。
2について。「OECD」っていうのがわけわからないよね。でも文章の中で「発展途上国」と対比的に用いられているのだから、先進国と捉えていいんじゃないかな。そうでなくても、とりあえず「発展途上国以外の国々」と考えて解けばいい。ここで図を参照。どうだろうか。アフリカの多くの国を筆頭に、インドや中国、南米諸国など発展途上国で遺伝子組み換え作物を栽培している国ってめちゃめちゃ多くない?発展途上国の定義は「1人当たりGNIの低い国々」のことで目安は10000ドル程度。ロシアやブラジル、中国、マレーシアなどがこの水準に該当し、いずれも発展途上国。逆に1人当たりGNIが高い先進国は日本やヨーロッパなど遺伝子組み換え作物の栽培がみられない国が多い。誤り。
3について。君たちはどの言葉に反応する?農業のキーワードがあるよね。そう、「企業的」なのだ。共通テスト地理ではとにかくホイットルセー農業区分が強調されている。ホイットルセーによって世界の農業は定義されていったのだが、その際に基準となった考え方に(1)集約か、粗放か?(2)自給的か、商業的か?(3)家族中心の零細経営的か、企業的か? この3つの観点が重要。
最もわかりやすいイメージとしては、アジアの農業と新大陸の農業が対照的で、アジアが「集約的・自給的・家族中心の零細経営的」であるのに対し、新大陸は「粗放的・商業的・企業的」となる。
ここでは企業的が重要ワードであるので、(3)の観点のみに絞ろう。アジアでの農業の経営規模は小さく、家族によって行われることが一般的。つまり「農家」による農業だよね。アメリカ合衆国の農業が企業による「アグリビジネス(農業ビジネス)」であるのとは対照的。上位5カ国にはアジアのインドが含まれている。1人当たりGNIの低い発展途上国であり、とくに第1次産業就業人口割合が高い国である。零細経営の農家によって綿花などが栽培されている(そういえば、他の大問でインドの耕地面積割合の高さが問われていたね)。「企業的」が新大陸のキーワードであり、他の上位国(北アメリカのカナダと米国、南アメリカのブラジルとアルゼンチン)には当てはまるものかもしれないが、インドには該当しない。この選択肢が誤りなのである。
4について。これは日本が典型。ヨーロッパの多くの国もこれに含まれる。日本では原則として遺伝子組み換え作物の商業的な栽培は禁止されている(花卉など食用とならないものは可能)。しかし、アメリカ合衆国から輸入されるトウモロコシや大豆などの多くは遺伝子組み換えによるものであり、我々は日常的にこれらを摂取していることになる。人体への影響は不明である。
[雑感]
やっぱホイットルセー農業区分だよね。問2でも土地生産性が問われており、「集約的・粗放的」の考え方が重要だった。農業については、もちろん統計などの知識も重要だが、このような理論も非常に重要となる。
<第2問問4>
[インプレッション]
一見オーソドックスな問題に見えるんだが、実はとんでもない。これ、かなり厄介なヤツですよ。もしかしたらこの試験中最大の「問題作」かも知れない。これ、かなり頭使うよ。でも、だからこそできた時の気持ちよさもあるんだけどね。
とりあえず、牛と羊については「牛=湿潤」、「羊=乾燥」という特徴だけは理解しておこう。羊の毛はなぜあるんだろう?それは皮膚からの水分蒸発を防ぐためだよね。乾燥気候に適応した体のつくりになっているのだ。
[解法]
牛肉、鶏肉、羊肉の統計だなんて楽じゃないかって一瞬思うんだけど、それが大間違い。これ「生産量」や「輸出量」ではなく、「生産量に占める輸出量の割合」だなんて何のことやらよくわからない統計指標が問われているのだ。この指標についてまずは徹底的に考えないといけない。
「生産量に占める輸出量の割合」なので、計算式としては「輸出量÷生産量」となる。輸出量に比例し、生産量に反比例する。巨大な食料生産国であるはずのアメリカ合衆国や中国、ブラジルの値が決して「高」ではないのは、生産量が多すぎるからじゃないかな。生産量は分母になる。
さらにこういった計算式もなりたつよね。「生産量=国内消費量+輸出量」。国内消費量の多い国はこれらの図では「高」とはなりにくい。国内でほとんどが消費されてしまうならば、輸出余力が低く、輸出量が相対的に少なくなる。前述のアメリカ合衆国の意外なほどの低さってこれが原因なんじゃないかな。とくにAではアメリカ合衆国は「低」になっているよね。国内でほとんどが食べられてしまうから、あまり輸出されていない。
一方でオーストラリアは全体的に「高」となっている。人口が少ない(GNIも小さい)国であるので国内消費量も少なく、輸出余力が大きいのだ。このようにいろいろな観点からこの図を分析してみよう。いろいろなことがわかるよ。
ではここからは一つ一つの肉の特徴について見ていこう。日本を基準に考えるといい。日本は牛肉についてはオーストラリアやアメリカ合衆国から輸入している。かつてはアメリカ合衆国産の牛肉が主だったが、BSE(狂牛病)問題の際にアメリカ合衆国からの輸入がストップし、新たな輸入先としてオーストラリアが注目されたという事例がある。南半球のオーストラリアはBSEに汚染されていなかったのだ(ただ、フィードロットと呼ばれる集中肥育場で飼育がなされるのはアメリカ合衆国と同様であり、決して質のいい牛肉とは言い難いけどね)。アメリカ合衆国はすでに述べたように国内消費も多いだろうから、よくわからない。オーストラリアに注目し、この値が「高」でありAとBのいずれかが牛肉だろう。
それに対し鶏肉。これは君たちもスーパーでブラジル産の鶏肉をよく見かけるんじゃないかな。鶏肉も牛肉と同じような事情があり、かつては北半球の中国やタイが主な輸入先だったが鳥インフルエンザの流行で、それらの鶏肉産地が壊滅的な打撃を受けてしまった。BSE同様に、ウイルスの伝播がない南半球のブラジルが主な輸入鶏肉の産地になったのだ。現在はタイも復活しているようだが、日本の主な鶏肉の輸入先としてブラジルを必ず知っておこう(そしてスーパーに行ったら必ず確認しよう)。そう考えると、ブラジルが「高」となっているCが鶏肉なんじゃないかな。タイも「高」となっているし。ブラジルは世界最大の肉牛飼育国であり、牛肉の生産も極めて多い。しかし、こちらもやはりアメリカ同様国内消費が多いんじゃないかな。ブラジル料理って牛肉ってイメージはあるよね。だから、牛肉の輸出余力はあまり大きくなく、AやBは「中」となっている。ブラジルの牛肉の生産が多すぎるのだ。
というわけで、残ったAとBのいずれかが牛肉、いずれかが羊肉。これは迷うね。決定的なところはどこだろう。例えばインドは参考にならない。ともに「高」となっている。「えっ、インドで牛肉が高い値になっているの!?」って疑問に思う人もいるかも知れないけれど、これは不思議ではないよね。そもそもインドは牛肉の生産が少ないのだ。そしてそれ以上にインド人は牛肉を食べない。生産量が少ないので分母は小さくなる。また国内消費量はさらに少ないから相対的に輸出量は多くなる。輸出余力は大きいよね。
さらにニュージーランドも微妙なのだ。実は先ほどはあえて触れなかったが、日本の牛肉の主な輸入先の一つにニュージーランドがある。だからニュージーランドが「高」であるAが牛肉かと思うんだが、でも、そもそもニュージーランドって羊の国だよね。牛が人口の5倍、羊が人口の10倍いると言われている国。牛肉以上に羊肉が輸出品として重要なのかも知れない。ここ、全く判断できないのだ。
ではどこで見る?AとBで決定的に違っているのはカナダ。Aでは「高」、Bでは「低」。さらにアルゼンチンがある。Aでは「低」、Bでは「高」。これ、どう思う?アルゼンチンは湿潤パンパで牧牛、乾燥パンパで牧羊というように、牛肉も生産も羊肉の生産もともに多い国だと思う。だから判定は難しいのだ。でもカナダなら何とかなるんじゃない?カナダは決して人口・GNIともに大きな国ではないし、国内消費量もさほど多くないはず。これはアメリカ合衆国や中国とは事情が異なる。オーストラリアに近いかな。となると、結局のところ輸出余力を決定するのって生産量ってことになるよね。生産量が多いからこそたくさん輸出できるのだ。カナダはその自然環境ゆえ、ある家畜についてはおそらくほとんど存在しないんじゃないかって予想ができるわけだ。それって何?
そう、わかるよね。カナダは冷涼な国であり蒸発量が少ない。それでいて一定の降水がある湿潤国である。砂漠やステップなどの乾燥地域はほとんどみられない。ゆえに、乾燥気候に適応した家畜である羊については飼育頭数は極めて少ないんじゃないかって想像できないかな。そもそも羊の肉は生産されていないのだ。輸出余力も何もあったものじゃない。Aを「羊肉」と判定するのは決して無理のあることではないよね。ロシアの値が高いのが気になる?ロシアは中央アジアに近い南部にステップ地域にあり、比較的乾燥地域は国内に多く含まれている。これ、モンゴルも決定的な要因にならないか。モンゴルこそ乾燥した国だよね。羊の飼育頭数は多いはず(遊牧されている)。それに対し、湿潤気候が生育条件となる牛についてはモンゴルでの飼育には適さない。そもそも牛肉の生産がないので、B(これが牛肉だと思う)のモンゴルは「低」となっている。
他の部分もいろいろ検討してみると面白い。牛は乾燥地域には分布しないので、乾燥国ではそもそも牛肉の生産がなく、もちろん輸出する余裕もあるはずがない。西アジアや北アフリカの乾燥した国々ではおしなべて「低」となっている。しかし、これらの国々ってAの羊肉では「中」になっていたりするんだよね。イランやスーダン、エチオピアなど。特にイランは羊の飼育頭数が多い国であり、羊肉を周辺諸国へ輸出しているのだろう。
ヨーロッパはよくわからない。たしかにイギリスは羊の飼育頭数が多い国ではあるけどね。ドイツは周辺諸国に牛肉を輸出しているのだろうか。しかしこの国こそ人口・GNIが大きく国内消費量も多いように思うんだが。ま、ヨーロッパはあまり見なくていいかな。
[雑感]
どうだったかな。これ、難しいよね。「輸出量÷生産量」をどう考えるかなんだわ。輸出量は「生産量ー国内消費量」でもあるので、これらを総合すると「(生産量ー国内消費量)÷生産量」であり、結局のところ分子にも分母にも生産量が含まれるので、この解釈が難しい。っていうか、都合よく解釈してしまえばいいんだろうけどね(笑)。生産量が極めて多いはずの国(アメリカ合衆国など)については「分母としての生産量」を強調し、値が意外に低いことの理由にしてしまえばいい。逆に生産量が極めて少ない(カナダの羊肉など)国については「分子としての生産量」で考えてしまう。ちょっとご都合主義だけど、個々の状況に合わせてフレキシブルに考えて、最も矛盾のない解答を導き出すことが、まさしく本問の狙いなんだと思う。本当にいい問題です。今回の試験全体のトップかも。
<第2問問5>
[インプレッション]
交通ネタは地理A特有なのだが、ここではさほど交通に特化した問題ってわけでもなさそう。考えれば解ける問題になっているんじゃないかな。それにしても、この形式の問題って共通テストで目立つね。模試を作る際に参考にしよう。
[解法]
フランスとポルトガルにおける輸送手段に関する問題。「国の地理的位置」って言い方が気になる。結局、位置に注目しなさいよってことなんだが、フランスはヨーロッパの比較的中央に近い位置にあり、周辺を多くの国で囲まれていることはわかると思うけれど、ポルトガルってわかるかな?ヨーロッパ大陸の最も西側の国であり、スペインにのみ隣接している。こういった国の外国との輸送方法って何だろう?
図を参照。各輸送手段別の割合が示されているだけであり、実数(輸送量)はわからない。実数がわかれば、GNIの違いで「大きなフランス、小さなポルトガル」がわかるんだけどね。
ただ、上述のような「位置」がポイントになると思うよ。1から4のグラフを参照し、3以外は全て「海上交通」の割合が高い。日本と違って陸続きの国が多いヨーロッパにおいて海雲交通がメインってのが意外だけど、ポルトガルなら納得かな。国土の広い範囲が海に面し、港も多いと思う。国境を接する国がスペインだけであるし、他の国からの輸送については船舶によるものが一般的なんじゃないか。輸出・輸入ともに海上交通が圧倒的である2と4の組み合わせがポルトガルなんじゃないかな。イがポルトガルで、もう片方のアがフランスになる。
次は輸出と輸入の判定をしてみよう。ここで気になるのは3の航空輸送の割合の高さ。何を輸送(輸入か輸出かわからないが)しているんだろうか。航空輸送される代表的な工業製品にIC(集積回路)があるよね。軽量高付加価値であるので、航空機で輸送したとしても十分に採算が取れる。日本でも九州の空港の近くにIC工場が多く立地し、製品が航空機で各地に運ばれていることはみんなも知っているね。IC工業は臨空港立地なのだ。でも、ICだけでこんなに割合が高いなんてことがあるだろうか。そもそもフランスがICの貿易に特徴があるなんて聞いたことないぞ。
さぁ、ここで必死に考えないといけない。航空機って運ぶものって何だ?君たちは何か思い浮かぶかい?コロンブスの卵というか、なるほどって気づくものがあるよね。逆に盲点になるっていうか。確かにそれはフランスを特徴づける工業製品だ。
そう、航空輸送をするもの、それは「航空機」そのものじゃないか。完成品の航空機をそのまま空港から他の国へと輸出する。これは立派な航空輸送であり、航空機そのものの価格が高いことを考えれば、輸出額において大きな割合を占めることは不思議ではない。
フランスの航空機といえば、南部内陸部の都市トゥールーズだね。ここには航空機のEU共同工場がある。ヨーロッパ各地から集められた部品がこの地に集められ、航空機本体が組み立てられる。国境を超えた分業体制(国際分業)が成り立っているのだ、そして航空機はフランスの重要な輸出品目である。なるほど、航空輸送の割合の高い3がフランスの輸出額になるのだ。
というようにこの問題を解いてみたのだが。。。ここで重要なミスに気づきました(涙)。本当にみなさんすいません。皆さんの中にはすでにお気づきの人もいたでしょう。「たつじん、何しとんねん」とツッコミながらここまで読んでくださっていたのでは。これ、問われているのは「輸出額・輸出量」でしたね。すっかり、「輸出額・輸入額」のつもりで解いていました。やっぱ問題文はしっかり読まないとダメですね。焦ってはいけません。反省です。皆さんも気をつけてください。
さて、気を取り直して問題へと戻ります。ただ、フランスのポイントが航空機であることは間違いないよね。そして、最先端の技術を駆使した航空機は当然価格は高いわけだ。「量」は少なくとも「額」は大きくなる。航空輸送の割合が低い1が「量」であり、割合の高い(しかも圧倒的!)3が「額」になるはず。正解は3。これ、実はフランスの航空機工業の問題だったわけだね。
[雑感]
というわけですっかり問題の内容を間違えて解いていました。今こうやって解説を作っている時に気づいた。でも、勘違いして解いていた初見の時も答えは3にしているので、結局問題そのものには正解しているんですけどね(自慢にはなりませんが・笑)。
本問は「交通手段」がテーマと思いきや、本質は全く別のところにあり、一つが「ポルトガルの位置」。海上輸送が発達しやすいところにあるということ。そもそもポルトガルがテストに取り上げられるなんて極めてレアケース。とくに今までは気候や農業など自然環境に関する内容の出題に限定されており、このような産業に関する内容が問われた例は初めて。
もう一つが「フランスの工業」。航空輸送とフランスの航空機工業を結びつけることができるかどうか。
表面に現れない問題の裏テーマ(位置と工業)に気づけるかどうかっていう問題ですね。問題文の解釈も含め、十分に時間をかけて解く必要のある問題だったと思う。
<第2問問6>
[インプレッション]
一見するとシンプルな統計問題なんだけれど、実態はどうなんだろう?再生紙っていうのがSDGsっぽくて、いかにも2020年代の問題って感じがするね。
[解法]
統計を用いた問題という点がいかにも第2問って感じがする。問われているのはパルプと古紙。
そもそもの紙の消費量は経済規模に比例するんじゃないかな。GNIが大きい国で消費行動が活発であり、紙も例外ではない。パルプも古紙も紙の原料である。カ~クにおいて、パルプと紙の合計をそれぞれの国のGNIに対応させる。パルプと古紙の合計は
、カ>日本>キ>クの順。GNIは、アメリカ合衆国>日本>ドイツ>カナダの順(GNIについては1人当たりGNIと人口の積なので、その都度計算してもいいけれど、上位国は順位を覚えておいていいと思うよ。1位;アメリカ合衆国、2位;中国、3位、日本、4位;ドイツ、5位;インド。カナダはこれらより下)。よって、大雑把に、カ=アメリカ合衆国、キ=ドイツ、ク=カナダとしてみよう。おそらくこれで問題ないと思うよ。ではパルプと古紙の関係。たとえばカのアメリカ合衆国とクのカナダではXの方が値が大きくなっている。単純なイメージなってしまうけれど、アメリカ合衆国って「無駄遣い」って感じがしない?エネルギー資源の産出国であるけれど輸入量も多く、1人当たりのエネルギー消費量も極めて大きい。そういった「無駄遣い」の国でSDGsに配慮した古紙の再利用って進んでいるんだろうか。やっぱりそういった環境への意識が高いのはヨーロッパ諸国じゃないかな。古紙再生がドイツで進んでいると考えると、ドイツと思われるキでYの値(おそらくこちらが古紙)の方がXより大きいのも納得。Xがパルプ、Yが古紙。日本もヨーロッパほどではないけれど、比較的古紙の際利用が進んでいる。一方でカナダはアメリカ同様にパルプの方が多い国だが、たしかにカナダも1人当たりエネルギー消費量が多いなど、無駄遣いの傾向はあるかも。そもそもカナダは森林資源が豊かな国であるので、古紙の利用を進めるより森林を次々と伐採し植林を積極的に行なって林業を振興させた方がいいのかも知れない。カナダはパルプの重要な輸出国の一つでもあるよね。
[雑感]
非常にオーソドックスな雰囲気の問題であるし、解法で示したように国についてはGNIだけで解けてしまったりする。ただ、やっぱりこの問題も他の問題同様に、解き終わってからいろいろと振り返ってほしいんですよね。同じ先進国であっても環境への意識は大きく異なり、北米諸国が「使い捨て」優先であるのに対し(尤も、これも解法で言及しているけれど、カナダの場合は林業を中心とした国内産業振興の意味もあるかも知れない)、ヨーロッパではSDGsに基づく環境保護の意識が高い。日本も古紙の回収と再利用はかなり進んでいるイメージだったけれど、ヨーロッパよりはかなり遅れているね。
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