たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
<第4問問1>
[ファーストインプレッション]
これはヤバかった。最初は間違えました(涙)。これ、僕がいつもから言っている「実数」と「割合」の問題やん。常日頃君たちにガミガミ言っていてお恥ずかしい。。。当の本人が見落としてしまうなんて。それにしても後から出てくるブラジルのコーヒー貿易の問題といい、実数と割合の違いで引っ掛けてくる問題が共通テストは実に多い。共通テストで大きくクローズアップされた「思考力」とは、まさに「数字」であり、実数と割合の関係なのだ。
[解法]
河川流量に関する問題。河川に関する問題って今年はとくに多く出題されているね。共通テストは確実にここを狙ってくるね。
流量で考えるべきは二つ。「降水量」と「雪解け」。降水量が多い時期は流量が増えるし、少雨ならば減る。これは当たり前。ただ、シベリアのような寒冷地域が例外で、春先に融雪・融氷期に一気に増水する。冬季は凍結するので流量はほぼゼロだが(そもそもシベリアは冬の降水量自体が少ない)、4~5月ぐらいに一気に流れ出し、流量のピーク。洪水も頻発。
ただ、本問は赤道に近い低緯度地域だし、凍結は関係ないね。シンプルに降水量のみターゲットを絞って考えればいいと思う。
ではグラフを見ていこう。グラフは最初にどこを見るべきだったかな?そう、「単位」だよね。まず横軸の「月」を確認し、1月から12月まで並んでいることを読み取る。縦軸は何と「%』なのだ。実数ではないんだね。実際の流量ではなく、年間の総流量を100とした場合のそれぞれの月の割合を占めている。逆に言えば、12の値を合計すれば100%になっているというわけだ。
アでは7月から10月ぐらいまでに流量が集中している。一方でイは12月から4月ぐらいの流量が、他の時期よりも多くなっている。
これを素直に降水量に結びつけていったらいい。D川とE川に注目。自然環境に関する問題は「赤道」を引いてしまうのがポイント(こういった「作業」って本当に大事なのでサボらないように)。Dは北半球側の、Eは南半球側の河川。Dの方がちょっと緯度が低いかな。
さて降水量の多い時期を考えるのだが、こういった低緯度地域において主に降水をもたらす要因って何だか分かるかな?別の言い方をすれば、どういった雨が降るかわかるかな?そう、それは「スコール」だよね。激しい太陽直射によって地面が熱せられ、地面付近の空気の温度が上がり、強い上昇気流を生じる。毎日午後に短時間の集中豪雨がある。スコールをもたらすものこそ「熱帯収束帯」であり、これに関連づけてこの地域の降水を考えればいい。
4月を中心とした時期や10月を中心とした時期には、太陽は赤道にて直射となり、この一帯に熱帯収束帯が形成される。つまりスコールで多雨となる。7月を中心とした時期は北半球側で太陽からの受熱量が大きくなり、北緯10度ぐらいに熱帯収束帯の中心が移る。北半球の低緯度地域はこの時期に雨季。1月を中心とした時期には南半球側の受熱量が大きくなり、南緯10度ぐらいに熱帯収束帯の中心が移る。南半球の低緯度地域はこの時期に雨季になる。
視点を変えて同じ説明をしましょう。北緯10度付近は(D川の流域がまさにそこに当たるね)7月を中心とした時期は低緯度方向から北上してくる熱帯収束帯の影響によって多雨、1月を中心とした時期には高緯度側から移動する亜熱帯高圧帯(高気圧の帯。下降気流が卓越し、雲ができにくい)の影響によって少雨。南緯10度付近(E川の流域よりちょっとだけ低緯度側かな)では7月を中心とした時期には高緯度側から北上する亜熱帯高圧帯の影響によって少雨、1月を中心とした時期には低緯度側から熱帯収束帯が南下し多雨。北半球側、南半球側、いずれも雨季と乾季が明瞭であり、夏に雨季、冬に乾季という形は決まっているのですが、北半球と南半球で季節が逆転しているので、月で考えると、北半球は7月雨季・1月乾季、南半球は7月乾季・1月雨季となるのです。
これでわかったよね。7月を中心とした時期の流量が1月を中心とした時期の流量より多いアは北半球のパターンでD、逆に1月を中心とした時期の流量が7月を中心とした時期の流量より多いイは南半球のパターンでE。これで決まり。
ではここからはもう一つのクエスチョン。「地点DとEを流れる河川の年平均流量には10倍以上の差」があるそうだが、果たしてどちらが流量が多いのだろうか。言い換えれば、どちらの地域の方が年間の降水量が多いのか?
再度、図2を確認。でもこれを見てもわからないんだよね。最初に確認したように単位は「%」。割合が示されているだけであって、実際の流量はこれではわからない。アの1月は「3%」であり、イの1月は「12%」。でもこれはそれぞれの河川の年間の流量に対する割合であり、比較してもしかたない。アの河川の流量がイの4倍ならば、双方の1月の流量は同じ計算になる。
流量は降水量に比例。つまり年間の総流量はやはり年間の総降水量に対応するということなのだ。ではD川の流域、E川の流域、どちらの方が降水量が多い?言い換えてみようか。どちらの方が「雨が降らない」要因が大きい?
前述したように両半球の低緯度地域の降水に大きく作用するものは熱帯収束帯と亜熱帯高圧帯の季節的な移動であり、これによって雨季と乾季が生じる。でも、もうちょっとよく図を観察しよう。最初に赤道を描いたよね。Dの方が緯度が低く(北緯5~10度ぐらいかな)、Eの方がやや緯度が高い(南緯10~20度ぐらい?E川河口から海岸線をずっと南南西に下がっていって、途中で西南西に海岸線の向きが変わるところがあるよね。この付近にある都市がリオデジャネイロとサンパウロで、両都市の間を南回帰線(南緯23.4度)が通過している)。
降水は熱帯収束帯による。基本的に太陽からの受熱量が大きく気温が高いところに熱帯収束帯の影響が強いことを考えると、より降水が多いのは低緯度のDの方ではないか。
さらに「雨の降らない要因」を考えてみよう。もちろんこれは亜熱帯収束帯。熱帯収束帯で上昇した空気が遥か上空を移動し、緯度25度付近で下降する。この下降気流による高気圧の帯が亜熱帯高圧帯で、北半球と南半球にそれぞれ一本ずつある。Dは、亜熱帯高圧帯が位置するレギュラーポジション(変な言い方だけど意味はわかるよね)からかなり離れていて、もちろん1月はこの亜熱帯高圧帯の支配下に入るものの、その影響は濃いものではない。一方のEは南緯25度に近く、亜熱帯高圧帯の影響は大きく受けるはず。7月は亜熱帯高圧帯が大きくこの緯度帯にまで張り出し、とくに雨が少ない気候になるのではないか。
熱帯収束帯に近いDは多雨、亜熱帯高圧帯に近いEは少雨。このようにシンプルに考えてしまっていいと思う。降水量の多寡を、流量の多寡に結びつけ、年間の総流量が多いのはD、少ないのはEとなる。正解は2。
[ちょっとひとこと]
気圧帯の移動は定番なので難しくなかったとは思うわけよ。グラフが「割合」を示すものであるのに対し、問題では「実数」が問われていたことがややこしいとこだったわな。
<第4問問2>
[ファーストインプレッション]
南米や東南アジアは「部員の少ない演劇部」なので、全ての国が出題対象となります。そこが「部員が多いが、レギュラー固定」のヨーロッパやアフリカとは全然違うんですよね。本問でもポイントになっているのは「ベネズエラ」だね。OPEC加盟国であり、原油資源が豊富。これがわかっているかどうかってめちゃめちゃポイント。地理を勉強しているかどうかの境界線になる国だと思う。「ベネズエラ?石油の国やん。余裕で知ってるで」っていう子は地理マスター。でも「ベネズエラ?それって食べられますか?」っていう子は、受験は考え直した方がいいやろね~。
[解法]
発電に関する問題。「エネルギー源別の発電量の割合」は比較的オーソドックスなトピックであり、南米ならばブラジルが必須。ブラジルは日本と同様にオイルショックの影響をもろに被った国であり、当時中心だった輸入原油に依存した火力発電からの転換を迫られた。日本が選んだのは原子力発電であり、1970年代から始められた原子力による発電はやがてこうkないの総発電量の30%を占めるまでになったが、2011年の東日本大震災により実質的に終了している。それに対しブラジルが選んだのは水量発電。降水量が豊かな国であり、国土南部には丘陵地も多い(ブラジル高原)。アルゼンチンへと注ぐラプラタ川水系において多くの水力発電所が設けられ、国内の発電量の大きな割合を占めている。パラナ川(ラプラタ川の上流側の名称)沿いでブラジルとパラグアイの国境にある異タイプダムなど。
ブラジルでは同じくオイルショック以降、ガソリンの代替品としてサトウキビから抽出したアルコール燃料が開発され、現在はほとんどの自動車がこのアルコール燃料で走行しているのもよく知られているね。現在は沿岸部での油田開発も進み、「世界で最も原油の産出量の増加率が高い」国となっているが、それでもやはり水力発電とアルコール燃料車がメインの「エコ」の国なのだ。
これより、ブラジルで高い割合を占めているKが「水力」。水力100%で覚えておいてもいいぐらいなのだが、意外と低いよね。60%ぐらいかな。前述のように最近は原油の産出量も増えているので、ちょっと状況が変わっているのかも。それでも水力が主要電源でることは変わらない。
ではJとLはどうだろう。ちょっと考えると「ブラジル=アルコール燃料=サトウキビ」のイメージがあるので、ブラジルでKの次に高い割合となっているJがバイオマス(生物エネルギー)であり、「再生可能エネルギー」と考えがちなのだが、そこは焦らずに考えよう。共通テストのコツとしては「多面的」に考えること。一つのネタだけで決めつけるのではなく、多くの「考える」材料を問題から取り出し、「ああでもない、こうでもない」といろいろ考えてみよう。必ずそこに「閃き」はあるはず。
本問も見るべきはブラジルだけではない。せっかく他にもたくさんの国のデータがあるのだから、それらを見ていこうよ。左上から反時計回りに、パナマ、コロンビア、ペルー、チリ、アルゼンチン、ブラジル、そしてベネズエラの統計が表されている。さぁ、君ならどの国に注目する?そう、もうわかったよね。最大の急所は「ベネズエラ」なのだ。ベネズエラはOPEC(石油輸出国機構)の原加盟国でもある世界的な産油国。「原油=西アジア(ペルシャ湾岸)」と決めつけていないかな?もちろん西アジアに集中しているけれど、地球の至るところで埋蔵が確認され、世界中でこのエネルギー資源は採掘されている。第2問問1でも原油埋蔵の分布が登場していたけれど(同じネタが何回も同じテスト内に出てくるんです!)、そこでもお南米の北部(つまりベネズエラね)は示されている。
ベネズエラのエネルギー源別発電割合を見ると、JとKがほぼ半分ずつ。この地域は雨量も多く河川の水量も多いはずだから(それは第4問問1にあるね)水力発電があるのは納得できる。高原地形も多いと思うし、ダムも作りやすいはず。K(水力)の割合が高いのは納得。
でも、原油産出量が多いこの国で、液体燃料(石油)を用いた発電が少ないはずがない。Jを火力発電とみるのは適当だろう。正解は2。
検討してみよう。他に火力の割合が高い国としてはアルゼンチンとチリがある。アルゼンチンは国土に傾斜地も少なく(温帯草原パンパの国だね)水力発電に依存はできない。実はアルゼンチンも比較的原油の産出が多い国だったりするし、また南米では最も1人当たりGNIが高い国でもあり、原油の輸入には不自由しない国なんじゃないかな。
チリは山地地形には恵まれる国であり(むしろ山しかない国?)ダムは作りやすい国なんだろうが、肝心の降水量は国土全体で十分とはいえない。南部は偏西風の風上斜面であることから多雨となるが(この点がノルウェーと重なりますね)、首都の位置する国土中央部はブドウ栽培が盛んな少雨地域(地中海性気候)、北部は寒流や亜熱帯高圧帯の影響で世界で最も「雲のできにくい」土地となっている。エネルギー資源を利用した火力発電がメインであることに矛盾はないね。
[ひとこと]
ベネズエラ、めっちゃポイントですよ。
<第4問問3>
[ファーストインプレッション]
数字の問題じゃないですか。地理は数字の学問です。実数と割合を使い分けるのですね。
[解法]
図表が複数枚与えられた共通テストの典型的な問題。ただ、問題そのものはそれらを参考にした文章正誤問題になっているね。
こういった問題は最初に文章から読んでしまう。図やグラフは後回しでいい。怪しい選択肢を最初に探してしまい、誤っているであろう文章から検討していく。
1から。キーワードは「第土地所有制」と「商品作物」かな。ただ、大土地所有制には「対になる言葉」は考えにくいので(あえていえば、日本のように「大土地所有制がない」だけど、ちょっと無理がある?)、ここは商品作物一択で。「商品作物」の反対語は「自給作物」。あとで検証しよう。
さらに2。ここではもちろん「低下した」。これはグラフから判定できると思う。上昇したか、低下したかを検証しよう。
そして3。なるほど、ここでは「輸出指向型」がカギ。これ、明確な反対語があるのです。それは「輸入代替型」。輸入代替型は工業化初期の段階で、いずれの国も最初はこの工業スタイルから始まる。それが発展すると輸出指向型。つまり「輸入代替→輸出指向」というベクトルの向きは絶対なのだ。ここでは「輸出指向型の性格を強めていった」ってあるよね。これはベクトルの向きとしては正しいんじゃない?「輸入代替型を強めて行った」や「輸出指向型を弱めていった」だと間違い。
最後に4。これも選択肢2と似ているね。もちろん「減少」が重要。これもグラフから検証できる。
ただ、ここでちょっとキミたちには気づいて欲しいのだ。ここに数字のトリックがあったことに。名探偵コナンくんや金田一くんならここであからさまに反応するよ。みんなは気づいたかな。そう、実数と割合のトリックだよね。選択肢2では「農産物の割合は低下」とあるのに対し、選択肢4では「輸出額は減少」とある。前者が割合、後者が実数であるのがわかるかな。ここ、絶対にポイントになっていると思わない?共通テストの掲げる「思考力」って、曖昧すぎてわからないけれど、では具体的にはどういうことなんだ?と問われれば、とりあえず「実数と割合の違いに気づけるかどうか」て重要な要素だと思うよ。
では選択肢2を検証してみようか。「工業化が進展して輸出に占める農産物の割合は低下」とある。ブラジルは南半球最大の工業国であり、もちろん前半部分は正しいはず。カギになるのは後半。これについてグラフで読み取ってみよう。図4で「輸出額に占める農産物の割合」が示されている。1970年台から1990年台にかけて、大まかな流れとして値が低下しているとみていいんじゃないか。2は正文となる。
では今度は選択肢4を見てみよう。図5で1971年と2019年の「コーヒー」の値を見る。なるほど1971年には「50%」だった値が、2019年には「5%」程度に変化している。「割合は低下」しているのだ。
でもちょっと待ってね。選択肢4の文章には「輸出額」と書かれている。つまり、これって実数なのだ。「農産物の輸出額」に、50%や5%という割合を掛け合わせて、初めてコーヒーの「輸出額」は算出される。1971年の農産物の輸出額は20億ドルほどだろうか。これに50%を掛けて、コーヒーの輸出額は10億ドル。2018年の農作物の輸出額は500億ドルに近い。これに5%を掛ければ25億ドルとなる。どうかな?割合は低下しているけれど、基準となる農産物全体の輸出額はそれ以上に増加しているのだから、コーヒーの輸出額そのものは増加しているのだ。割合と実数の違いをキチンと認識しないといけない。正解は4。「地理は数字の学問」なのだ。
[ちょっと一言]
これ、いい問題ですね。模試作る時にパクろうかな(笑)
<第4問問4>
[ファーストインプレッション]
1人当たりGNIそのまんまの問題ですね。
[解法]
1人当たりGNIの問題。1人当たりGNIが10000ドル/人の国々は知っておくべき。新興工業国で、アジアではマレーシアやトルコ、ヨーロッパでは東欧のルーマニア、そしてラテンアメリカのメキシコとブラジル。工業国ではないが、豊富な資源を有するロシアも10000ドル/人。
アルゼンチンは実はこれよりちょっと高いのだ。おおよそ13000ドル/人程度。主な輸出品が農作物って国で、南半球最大の工業国であるブラジルより1人当たりGNIが高いのはちょっと疑問なんだが、両国の人口規模(ブラジルが2億人超、アルゼンチンが5000万人に届かない)も影響しているのかな。
以上より、カがアルゼンチン、キがブラジル。両国よりかなり低い水準にとどまるボリビアはクに該当。
キのブラジルでは「GNIに占める所得上位10%層の所得の割合」が他に比べ高くなっている。貧富の差が大きいわけだ。民族構成がとくに複雑なブラジルでは、民族の違いが社会階層の違いに結びつき、貧富の差が拡大する傾向にある。ヨーロッパ系の白人は社会的地位も高く裕福であるが、奴隷の子孫であるアフリカ系の人たちは土地も家も持たず極めて貧しい。ブラジルでは、大都市が集中する南部(サンパウロやリオ)と産業の発達がみられないアマゾン低地など北部との地域間の経済格差が大とも言われている。また、都市内部においても中心部には高級住宅地が形成されるのに対し、都市の周辺にはスラムが拡大している。ブラジルでこそ貧富の差が大きく、一部の富裕層に富が独占されていると考えるのは、想像できないことはないよね。
[ちょっと一言]
やっぱり決め手は1人当たりGNIなのです。
<第4問問5>
[ファーストインプレッション]
いきなりニュージーランドの登場でビックリ。おっと、チリの首都が登場しているではありませんか。ここ、地中海性気候ですよ。チリ中部、南緯35度・大陸西岸の地中海性気候、とても大切です。
[解法]
チリとニュージーランドの自然環境に関する問題。A;チリとニュージーランド双方に該当する、B;チリのみ該当する、C;ニュージーランドのみ該当する、D;いずれにも該当しない、の4つのパターンがあるわけで、このうち、Bとなるものを特定する。
まず1から。寒流は南半球では大洋を「反時計回り」に周回する。海洋の西部(すなわち大陸東岸)では暖流(低緯度から高緯度へ暖かい水を運ぶ。暖房ですね)、東部(すなわち大陸西岸)では寒流(高緯度から低緯度へ冷たい水を運ぶ。クーラーですね)が流れる。
ニュージーランドは太平洋の西側、チリは太平洋の東側で南米大陸の西岸。前者は暖流、後者は寒流の影響が大きい国。ニュージーランドには寒流は該当せず、1はチリだけに当てはまる事例。上記のパターンBになります。これが正解だね。
2以降も見ていこう。チリの気候は非常に重要。北部、中部(首都が位置)、南部で全く異なる。選択肢1でも述べたようにチリは寒流が沿岸を流れる国。ただ、寒流の意味があるのは温暖な海域。冷たい海に寒流が流れていても意味はないよね。冬にクーラーをつけるようなものだ。それに対し、低緯度の暖かい地域を寒流を流れていたら、その影響はとても強いと思わない?本来暖かい海域に冷たい水が流れ込むことで湧昇流が生じ漁獲が豊かな海域となる。寒流の影響で地表面付近の空気が冷やされ大気が安定。雲が生じず少雨となる。チリ北部の低緯度地域はそのため乾燥気候となるのだ。ここはさらに熱帯収束帯の影響も強い地域であり、そもそも下降気流が卓越する緯度帯。寒流プラス亜熱帯高圧帯のダブル効果で極度に乾燥した砂漠が広がっている。
それに対し、チリ中部は地中海性気候。図からもわかるように、首都が位置しているのは「南緯35度・大陸西岸」。これ、東岸のエスチュアリーを目安に緯度を覚えておくといいよ。今回の図はたまたま緯度が示されているけれど、全ての図がこうなっているわけではないよね。でも南緯35度は南米東岸にとてもわかりやすい「海岸線」があるじゃないか。大きく切り込みが入ったこの形、きちんと目で覚えておいてね。この切り込みの位置が「南緯35度」になる。ラプラタ川河口のエスチュアリーで、波が静かな入江で天然の良港となり、アルゼンチンの首都(そして人口1000万人のメガシティでもある)ブエノスアイレスが位置している。しっかりと「南緯35度」を目で覚えよう。
さて、その「南緯35度・大陸西岸」だが、ここは典型的な地中海性気候が見られる地域。ケッペンの気候区分は基本的にテストでは出題されないし、「地中海性気候」という名称も登場しないけれど、ただ、ここが「全体的に降水量が少なく、とくに夏はほとんど雨が降らない」ことは必ず理論的に理解しよう。だからこそ乾燥に強いブドウが栽培され、飲料とするためにブドウの果汁が得られる(ワインに醸造される)のだ。
夏季には高緯度側から移動する亜熱帯高圧帯の影響下となり、少雨。冬には偏西風や寒帯前線の影響で一定の降水。夏に明確な乾季のある気候となる。なお、大陸東岸は湿った風が吹き込むことで年間を通じて湿潤な気候となり、とくに日本など東アジアではモンスーンや熱帯低気圧により夏にこそ雨が多くなる。
一方のニュージーランド。位置的にはさらに高緯度で南緯40度を越える。ニュージーランド全体は、年間を通じ偏西風の影響を受け続けるために、気温や降水量の季節的変化が少ない国。暖流の影響も強く、比較的多雨で(ただ、地域による違いはある。偏西風の風上側の西岸はとくに降水量が多く(1000ミリ以上)風下側の東岸はさほど降水量は多くない(1000ミリ未満。ただ、乾燥するわけではないので注意。あくまで湿潤ではある)、冬の気温も高い。北海道と同じ緯度でありながら、気温年較差は札幌(年較差30度)の半分程度の15度。「雪の降らない北海道」といったイメージ。
話をチリに戻す。チリの南部も緯度的にはニュージーランド同様偏西風が卓越する緯度帯。さらに言えば、同じくニュージーランドの西岸のように偏西風によって湿った風が運び込まれ、大量の降水がみられる。アンデス山脈の風上側斜面であり、多雨となる。森林地帯となっている(実はニュージーランドとチリは隠れた林業国なのです)。
両国の気候をまとめると、以下のようになる。
チリ・・・北部・乾燥(年降水量0ミリ)、中部・地中海性気候(年降水量500ミリ程度)、南部・多雨地域(年降水量1000ミリ以上)
ニュージーランド・・・西岸・多雨(年降水量1000ミリ以上)、東岸・やや少雨だが乾燥はしない(年降水量1000ミリ未満)
ニュージーランドの首都が東岸なのか西岸なのかは微妙だが(位置的にみて、どっちなのだろう)、ただいずれにせよニュージーランドで乾季の明瞭な地域はないし、乾燥気候もない。偏西風と暖流の影響が強い西ヨーロッパの気候を想像したらいいだろう。
チリの首都が地中海性気候であることを考えれば、こちらは選択肢2に該当しないのは明確だね。選択肢2はニュージーランドにのみ当てはまる上記のBパターンとなる。
一方で、選択肢1についてはニュージーランドに乾燥気候がみられないことから、チリのみ該当することは明確。すでに述べているけれど、選択肢1はパターンBとなる。
選択肢3。両国とも高緯度であるため、最終氷期にはいずれも大陸氷河(大陸氷床)に覆われていた。今の南極大陸を想像したらいい。沿岸にはフィヨルドがみられる。チリはわかりやすいね。南緯45度より高緯度側の海岸線が複雑に入り組んでいる。これこそまさにフィヨルド。チリ南部は多雨であるのに農業が発達せず、人口も少ないのだが、それは大陸氷河の影響で土地が痩せているから。フィヨルドの深い入江は世界最大のサーモンの養殖。日本とチリは自由貿易をしており、我々が安くサーモンを食べることができるのはこの氷河地形のおかげ。
ニュージーランドも見てみよう。同じく南緯45度以南。南島の南西岸にちょっとそれらしい複雑な海岸線は見られないかな。同じくフィヨルド。
さらに山岳氷河。次の選択肢とも重なるけれど、両国とも新期造山帯の山岳国であり、標高の高い地形も多い。高緯度でそもそも冷涼であるため、それら高山地域には山岳氷河が見られる可能性が高いよね。
選択肢4。変動帯というのは主にプレート境界部に当たる地殻変動が激しい地域。ともに新期造山帯である環太平洋造山帯に含まれる国。新期造山帯だからといって火山があるわけではないけれど、環太平洋造山帯には火山があるんですよよ。海洋プレートは薄いので、そこを突き破って地下からマントルが流出する。分厚い大陸プレートの地形(例えばヒマラヤ山脈)はどんなにプレートがぶつかっても、地殻変動が活発な変動帯であっても火山がみられないのとは対照的。
[ちょっとひとこと]
地中海性気候の合言葉は「緯度35度・大陸西岸]です。
<第4問問6>
[ファーストインプレッション]
おっと貿易の問題。ニュージーランドの貿易統計は何年か前にフィリピンとの比較地誌の問題で登場している。連続の出題。チリは極めて輸出品目に特徴がある国だね。北部の乾燥地域で採掘される銅鉱、中部の地中海性気候地域のブドウ(果実)、南部のフィヨルドで養殖されているサーモン(魚介類)。とてもわかりやすい国だと思う。魚介類については沿岸が寒流の影響で好漁場となっていることを挙げてもいいね。
[解法]
両国の貿易が問われている。まずサとシを判定しよう。鉱産物の割合だが、これは明確なんじゃないかな。チリ北部は世界有数の鉱山地帯であり、とくに銅鉱の産出が多い。雨が降らないことが鉱産資源の採掘に有利なのは言うまでもないね。火山地域は一般に地球内部のマグマから多くの金属物質が噴出することで資源の豊かな地域となり、日本のその一つ。かつては金鉱や銀鉱、銅鉱の世界的な産出国だったことは知られているね。しかし、多雨地域である日本では採掘が困難でコスト的に見合わず、さらに銅山の周辺地域では河川に鉱毒が流出することで下流側の住民に健康被害が生じる。現在、日本の銅鉱は全て閉山されている。
一方のチリでは乾燥地域に銅山があるため、鉱毒流出の懸念がなく、大規模な露天掘りが行われている。鉱産物の割合が圧倒的に多いサがチリ。
XとYの判定。ニュージーランドはかつてのイギリス植民地であり、イギリスとの社会的・経済的なつながりが強かった。しかし、現在はオーストラリアやアジア、南北アメリカなど環太平洋地域との関係性が緊密になっている。東アジアが21.3から37.5と15ポイント以上数値を上げているのに対し、XとYはそれぞれ数値を下げ、とくにYの下がり方が激しい。19.5から8.1へと10ポイント以上、値が低下している。この大きな変化こそ「西ヨーロッパ」なのではないか。かつての宗主国イギリスとの関係がだんだんと薄れてきているのである。Xの値も下がってはいるけれど、これは意識しなくていいでしょう。東アジア(中国だよね、もちろん)の値が急上昇しているので、相対的にXの値が下がっただけだと思う。Yに比べれば下がり幅は小さい。
[ちょっとひとこと]
あれ?第3問だったかな?似た問題なかった?パリとかマドリードとかのやつ。「宗主国=植民地」の関係ね。
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