たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
第5問(地域調査)
[27][インプレッション]おっと、登場人物が「タロウ」さんですか。今さらながら古典的な名前を使うね(全国のタロウさん、すいません・笑)。舞台は京都府。京都府が地域調査のテーマとなったのは2006年地理A本試験以来2回め。ただ、そちらでは京都市の街の中が取り上げられていたので、今回のように丹後地方が登場したのはもちろん初めて。とはいえ、日本海側地域って登場率高いんですよね。僕は福井県が本命と思っていたので、ちょっと外しました。
[解法]では問題をみていこう。階級区分図(割合を示す)を観察するだけの問題。人口増加率(というか減少率というべきか)が表されている。
選択肢1から。宮津市を確認。南に隣接する自治体は「0〜15%」の減少率だね。誤り。
2について。京都市の北に隣接する自治体は「通勤率」が10%以上ではあるが、人口は「0〜15%減少」となっている。誤り。
さらに3。一番南に位置する自治体がこれに該当するね。通勤率は「3〜10%」であり、人口は「増加」。これが正解でしょう。
一応4も。通勤率が3%未満であるのは京都府の北半分に位置する自治体。いずれも人口が減少している。
[28][インプレッション]地形図問題。オーソドックスな印象。時間はかかるが(というか、時間はかけるべき)確実に得点できると思う。
[解法]図をみるのではなく、まず選択肢の文章を読み、ある程度のヤマを張ってから図で検討していく。ただし、正文判定問題なので、3つの誤りを指摘しないといけないのがちょっとしんどい。
まず1について。これは武家屋敷の範囲を確認するだけだろう。正誤判定は容易だと思う。
さらに2。船着き場が昔からあるものだとすれば、近代以降に新しく造成された土地にこれがあるのはおかしいよね。江戸時代からの船着き場が、そのまま残されているとみるのが適当だと思う。これはおそらく誤り選択肢。あとで埋立地を確認してみよう。
そして3。駅から大手橋まで道路があるのだろうか。しかし、駅というのはそもそも近代になってつくられたものではないか。江戸時代には鉄道なんか存在しないからね。江戸時代の時点で、「駅」の存在が重要だったわけはない。これも誤りっぽい。
最後に4。本丸の跡地に市役所があるのだそうだ。これはよくあるパターンなんじゃないかな。城下町は城を中心として発達しているわけであるし、中心部である城跡が官公庁として利用されることは多々あると思う。これ、正文っぽいな。市役所の地図記号に注目して調べてみよう。
一番確認しやすいのは選択肢4。「本丸」と「市役所」を探せばいい。イの図参照。本丸は図の北部、海岸に近いところにある。アを参照。市役所はどこだ?あれ?本丸とはぜんぜん違うところにあるね。図の西寄りのところで川沿い。選択肢4は誤りだ。
では次の候補は何だろう。2と3はおそらく絶対違うから1を検討してみようか。「新浜」や「本町」はアの図から確認するに図の北西部に位置している。イで同じ場所を確認すると「魚屋町」なんていう町名も観られるね。商人が住んでいた地区なのだろうか。薄いグレーで着色された「武家屋敷」からは外れている。これも誤り。
あれ?ってことは2か3が正文なのか。3はさすがに違いそうなので、先に2を検討しよう。図の北西部に「体育館」があり、その北に「船着き場」が設けられている。船着き場の記号について正しく知っておく必要はないが、船っぽいイラストが描かれているからわかるよね。船着き場が問われた例は。2018年共通テスト試行調査の大分市街地の問題など。
さて、この場所、昔はどうなっていたのだろう。アとイが「ほぼ同じ範囲」とするならば、アで船着き場となっていた場所はイでは海の上ではないか。つまり当時は船着き場が無かったということ。
さらにアを再度検討してみると、海岸線に沿って「垂直の壁」があることがわかる(線に沿って、連続する小さな半円が描かれる)。これは明らかに人工物であり、工事によってつくられた地形。すなわち「埋立地」である。浅い海に新しく土地が造成される場合には「埋立」と「干拓」があるのだが、こういった記号で示されたものは埋立地である。干拓とは干潟に堤防(土手)を建設し、内側を排水することで土地をつくる。干拓地そのものは海面より標高が低く、地盤のゆるい低湿地であるため水田などに使用される。一方で埋立の場合は、高度経済成長期には臨海型の工業用地となることがしばしばみられ、広大な土地を確保しやすいことから大型施設が建設されることが多い。この宮津市においても体育館や宮津会館など公共施設が新設されているようだ。これが正解だね。
一応3についても。アでみられる「宮津駅」から「大手橋」までの直線道路。道幅も広く、これに沿って税務署(ソロバンのコマ)、裁判所(三角形の立て看板)も立地している。でも、これに相当する道路はイでは確認できないね。誤りなのです。
[29][インプレッション]おっと「地形図」問題ですが、従来の地形図ではなくネットの「地理院地図」を用いているのが特徴。これからはこっちが主流となるのかな。僕も模試作成の場合は対応していかないと。
さて、その地理院地図による図を利用した視線判定問題なのです。図がちょっと見にくいなぁ。解けるんだろうか。
[解法]視線判定問題は、地形図上において視線の位置を固定し、それを1から4の写真に具体的に対応させること。Aについて判定してみよう。Aの矢印を延長し、直線を描いてみる。これがキミの視線となる。「天橋立」は砂の堆積によってできた回廊状の陸地(つまり砂州)なわけだが、これが視線の左右、どちらに見えるだろうか。Aから覗き込んで見れば、天橋立は、左側の手前から中央奥に向かって伸びている様子が伺える。どうかな、これは単純に2を答えにしてしまっていいんじゃないかな。天橋立の伸びている方向をみれば、これがまさしくジャストミートだと思うよ。
一応他の選択肢も確認。Dがわかりやすい。矢印を延長するとそのまま天橋立に沿っている。1の写真をみてみよう。真ん中に縦線を引いてみるといい。これが「視線」であり、ちょうど中央の細長い地形と重なっている。これが天橋立だろう。地形図のDの矢印と、1の中央に描いた縦線が一致。
さらにBに関しては4なんじゃないかな。遥か遠方に天橋立が見え、それが左右に伸びている。ということは残った3がCに該当するようだが、でも3の写真がよくわからないんだよね。う〜ん、何だろう。Cからの視線ならば天橋立が右手前から中央奥に向かって伸びている形になるはずなんだが(つまりAとは左右逆転)、3の写真ではその様子が判別できない。
[30][インプレッション]なるほど、これは簡単な問題なんじゃないかな。中学の問題によくありそうな。
[解法]まずカは「湿った」でしょう。地域調査の大問は日本海側の地域が出題されることが多く、そこではもちろん雪にまつわる問題が登場する。本問もそのパターンだね。日本列島は冬は「西高東低」の気圧配置。大陸内部に形成されたシベリア高気圧から吹き出す北西季節風にさらされる。冬の季節風は本来乾いた(水分の少ない)空気であるが、日本列島の場合、日本海の存在が重要となる。暖流の影響で水温が相対的に高い日本海からは十分な量の水蒸気が大気中に供給され、水分を含んだ季節風が日本列島にぶつかることで雲を生じ、積雪をもたらす。冬の「湿った」空気が日本海側地域の特徴なのだ。
さらにキについては「織物製品の輸入」とある。安価な労働力を求め海外に工場が展開したわけだね(工業立地の問題も第2問や第4問で問われているね。ネタの重複が多い共通テストなのです)。ここはもちろん「安価」。
そして最後にクだが、ここでは21世紀の日本の工業の展望が示されている。ここでは「商品開発」とあるね。まさにその通りで、これからは「手」を使うのではなく、「頭」を使う。新製品の開発や新たな技術の研究にこそ、先進国が生き延びる方策がある。そして「付加価値」なのだ。高品質で高い付加価値を持つ工業製品を世界へ提供できるのも、やはり先進国。イタリア北部のサードイタリーはその典型的な地域。伝統的な技術を活かし、旧来の中小工場のネットワークを利用して、「一点物」の高級品を生産する。高品質な皮革製品や衣服は現代イタリアの象徴でもある。日本も見習うべきものだろう。これより「ブランド化」が該当する。「大量生産」はいわゆるファストファッションであり、こちらは安価な製品。発展途上国に工場が進出している。
[31][インプレッション]おっと、ここで誤文判定問題が登場。共通テストでは珍しいですよね。解きやすいはずなんだが、どんなもんかな。
[解法]選択肢を先に見てしまおう。ちょっと妙なものはないか。
1から。「小学校の廃校は、若年層の継続的な流出や少子化が背景にある」。なるほど、これは納得できる。そのとおりだろう。
次は2。「住民の高齢化により、伝統的な文化や技術の担い手が減少している」。うん、これもそう言えるだろう。若者がいなければ、昔から続きている村祭りもできないかも知れない。
そして3。「自然環境への関心の高まりにより、都市と農村の交流が進められている」。これも正しいんじゃないかな。グリーンツーリズムのようなことだね。
最後に残った4。どうやらこれが怪しいな。「移住者の増加は、宮津市における人口の郊外化が背景にある」。ちょっとこれは意味がわからないな。問題文を検討してみよう。
「移住者の増加」という項目がある。「米作りや狩猟を行うことを目的として移住してきた人がいる」、「移住者の中には。古民家を改修して居住する人がいる」とある。どうなんだろう?こうした人々については宮津市ではない他所から移住してきたのではないだろうか。遠方から農業などを目的にこの地へと移住し、そこで古民家を改修するなどして住み始める。選択肢4の「郊外化」についてはこれと全く関係ないキーワードではないか。郊外は都心部と対をなす言葉であり、都市圏のキーワードだね。都市圏(東京大都市圏)における都心部と郊外の人口変化については第3問でも出題されていた。都市圏が拡大する、つまり郊外が広がることで、都心部から郊外へと移り住む人々が増える。地価が高く住環境の悪い都心部を離れ、環境の良い郊外へと広い一戸建ての住居を構える。郊外化によって移住が生じるとすれば、それは「都心部から郊外へ」の移動であり、タロウくんが資料2でまとめたような「移住者の増加」とは無関係だね。これが誤りでしょう。
[32][インプレッション]いよいよラスト問題(とはいえ、僕は第2問から解説を作り始めているので、まだ第1問というラスボスが残っているのですが)。第5問の印象として、「難易度が低い」ってのがありますね。ここまで第2問から第4問を見てきたけれど、実に難しい問題が並び、かなり頭を使わないと解けない(これは果たして地理のテストなのか?地理ならもっとストレートに知識を問うていいと思うよ)のだが、第5問はいきなり簡単になるから、ここでしっかり得点を稼ぐことが必要。しかし、地形図の判別やグラフの読解が必須の問題が並び、時間はかなりかかってしまうと思う。しっかり「時間を使って、確実に解く」ことを心がけて欲しい大問だね。
[解法]外国人観光客の問題だが、コロナ禍でよくもまあこんな問題を作ったなってかなり意外。そういうこと、気にしてないのかな。漠然と図をみても仕方ないので、問題文を直接みていくことにしよう。
まずサであるが、これは「外国人延べ宿泊者数」の図をそのまま読解すればよく、大阪府で値が大きいことが分かる。なお、この図は図形表現図(円積図)といい、図形(この場合は円)の大きさによって量の大小を表現する。実数を表す図だね。絶対的な数。
これに対し、相対的な数である割合を示すのが「2013年に対する比」を表した階級区分図。割合であり、計算によって求めた数値の高低をエリアごとの色や模様で表す。「2018年の宿泊者数」を「2013年の宿泊者数」で割ることによって指数を求めているんだろうね。
「2013年に対する比をみると、外国人延べ宿泊者数が少ない県で高位を示すところが多く」とある。これを確認してみると、これに該当するのは岩手県や山形県など東北地方、鳥取県・島根県の山陰地方、鹿児島県など。いずれも自然が豊かで「温泉」や「農山漁村」などが観光の対象となるところと見ていいんじゃないかな。ショッピングやテーマパークは首都圏が中心でしょう。大阪府とFの組合せで1が正解。
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