たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう
2007年地理A本試験
(カテゴリー1;地理A的な傾向がとくに強い)1・2・7・8・29
(カテゴリー2;地理A的ではあるが、地理B的な視点もある)3・4・15・17・19
(カテゴリー3;地理B的な傾向が強い)5・6・10・11・12・18・20・21・23
(カテゴリー4;完全な地理B問題)13・14・16・22・24・25・26・27・28・30・31・32・33・34・35・36
第1問
問1 図法ジャンルは新課程の地理Bからは外されている。一部の教科書で巻末に参考資料として説明されている程度。地理Aはともかく、地理Bでこのジャンルからの出題が今後見られるとは思わない。
問2 時差を計算する問題もおそらく地理Bでは出題されないんじゃないかな。
一応解説を。
こういった時差計算の問題では、現地の時間に直してしまうのがポイント。
例えば東京時間で20:10の時、これをホノルル時間に変換するとどうなるか。東京は19時間ホノルルの時間より早いので、逆に時計を19時間戻してあげればいい。つまり1:10である。
これが7:40に到着するのだから、飛行機に乗っている時間は6時間30分と算出できる。
バンコクについても同様に考えてみよう。東京で11:20ならば、時計を2時間戻せばバンコクの時間となる。つまり9:20である。
16:50に到着するのだから、その間隔は7時間30分となる。
問3 こういった問題も地理Bでは出にくいだろうな。
①「海食崖」は岩石海岸にみられる岩肌が露出した崖のこと。こういった地形は主に波の侵食作用によって形成される。
③「三角州」は河口付近にみられる低湿な地形。河川が運搬した土砂が、浅い海に堆積し、陸化したものである。
④「自然堤防」は河川の流れに沿って、薄く土砂が堆積したもので、列状の微高地である。水はけがよいので、畑地や住宅地となる。
正解は②の「砂丘」。単純な砂浜海岸を考えればいいと思う。ちょっとあいまいだけどね。
問4 地理Aに多いパターンだが、地理Bでも出題の可能性は低くない。注意。
最も重要なのはク。中央の大地の裂け目(断層)から蒸気が噴出しているが、これは火山活動によるものと考えていい。Bのアイスランドである。大西洋中央海嶺上に形成された溶岩台地。
キも重要。こちらはクとは異なり急峻な山岳となっている。新期造山帯のアルプス山脈であり、Cが該当。
消去法でカがAの米国西部。いかにも西部劇に出てきそうな風景なんじゃない?
とにかくク(溶岩台地の様子)とキ(新期造山帯)を目に焼き付けておこう。こういったイメージ付けも大事である。逆にカはどうでもいいと思う。これは「準平原」とよばれる地形。大地が長い年月をかけて侵食され、ほぼ平坦になったものであるが、一部に侵食から取り残された部分もある。
問5 「偏西風」が重要。緯度40~50度の偏西風帯に位置する。ニュージーランドが該当。イギリスもニュージーランドも偏西風の影響によって、西岸で多雨となり東岸で少雨となっている点にも注目しよう。
① カリフォルニア半島は、メキシコの太平洋岸。中緯度高圧帯や寒流(カリフォルニア海流)の影響によって乾燥気候がみられる。
② ナイル川河口部は砂漠であり、こちらもやはり乾燥気候。北アフリカの広い範囲でこういった気候が見られる。
③ 緯度的に考えれば偏西風の影響が強い日本であるが、大陸の東岸であるためその影響が弱く、むしろ季節風(モンスーン)の影響により気温と降水の季節的差異が大きな気候が現れる。太平洋岸ではとくに夏季の降水量が多い。
問6 言語に関する問題。アラビア語って出題頻度が高いよね。
Pはアラビア語。この言語を主に使用するアラブ民族は、西アジアから北アフリカの広い範囲に居住している。
Qはスペイン語。中央アメリカや南アメリカの多くの国で使用されている。これらの地域はかつてスペインの植民地支配を受けていた。
残ったRが消去法でフランス語。それにしてもアフリカ大陸全53か国中、約半分の国でフランス語が使用されているなんて、改めてビックリ!
問7 これ、難しいや。全然わからない。おそらく③が解答なんじゃない?断言はできないけど。すいません、十分な解説はできません(涙)。
問8 これこそ全然わからない。こっちはとくに答えすら予想できないよ。すんません(謝)。
第2問
問1 ちょっとあいまいな印象のある問題だよね。
アは米国でオッケイだと思う。そもそもハワイは米国の一つの州であるし、国内の移動だからこそ人数も多いだろう。
イとウの判定が難しいかもしれないが、日本人の観光スタイルが「短期滞在型」であることを考えれば、イを日本とみなして妥当。また観光消費額も大きいが、これはショッピングを楽しむことも日本人にとって重要な観光の目的の一つになっているからであろう。
残ったウがカナダである。米国と同様に「長期滞在型」の観光スタイル。また観光客の総数がかなり少ないが、カナダの人口(約3000万人で米国や日本よりずいぶん少ない)を考えれば、もっともなことだと思う。
ちなみに、僕はこういった「恣意的」な問題は好きではない。日本人の観光スタイルは観光地を巡りブランド品を買いあさるだけで、極めて「貧しい」ものだと印象付けるような問題だよね。でも、そうなのかな。僕は10日以上も平気で何もせずにぶらぶらしてしまう欧米型の観光を絶対的に良いものだと決め付けることはないと思う。人それぞれじゃないですか、こういった余暇の過ごし方って。
問2 他の国を当てるのは難しいかもしれないが、タイならそうでもない。タイは4か国中で人口規模とGNIが最も小さい(1人当たりGNIは中国の方が低いけれど、GNIは、1人当たりGNIと人口の積だから「タイ<中国」になるよね)。最も数値の小さいものをタイと考えればいいと思う。③が正解。
①は米国でしょう。圧倒的な数値。
②は日本かな。米国に次ぐ数値の大きさ。国内の輸送量が、旅客・貨物ともに小さい値となっているが、これは国土面積が狭く(4か国中最小)、移動距離が小さいことと関係していると思われる。
残った④が中国。国際旅客の数値のみタイより小さいが、他の数値はタイを圧倒しているし、これで間違いないでしょう。
問3 「支出」をみるとおもしろい傾向があると思うんだ。ドイツやイギリスが上位で、カナダやスペインの値が小さい。これって、人口やGNIに比例しているよね(っていうか、そもそもGNIは人口に比例する指標だから、結局人口だけに比例すると言い換えてもいいんだけど)。つまり多くの人口を有し、国自体も多くのお金を持っている国ならば、外国へと観光に出かけていって、そこで多額のお金を使っているということ。
だから④は簡単に特定できる。人口もGNIも大きい米国である。人口も多いし、金もたくさんある。そりゃ観光に費やす金額の合計も大きいって。
逆に②も簡単。人口もGNIも小さい国だと思うよ。これはスイスでしょう。1人当たりGNIは高いけれど、人口が少なく(西ヨーロッパ諸国の人口は、ドイツ・イギリス・フランス・イタリア・スペイン・オランダを除き、1000万人程度)、そもそもの母体数が小さいのだから、支出だって少ないに決まってる。
残る①と③から日本を判定しないといけない。日本の方がフランスより人口もGNIも大きいのだから支出の多い①とみていいと思うんだが、でも、②との差は決定的ではないね。
だからここは「収入」を見よう。こちらはその国が外国から受け入れる観光客数に比例するものであり、例えば観光で訪れる場所が多い広い国土を持った国でこそ大きくなる傾向があるんじゃないかな。フランスの方が日本より広いよね(約1.5倍)。だから②をフランスと考えて矛盾はない。
ちなみに、フランスは世界で最も観光客数が多い国。観光客1人当たりが費やす金額が違うので、全体の収入では米国には及ばないが、単純に観光客数だけを比べたら世界最大の観光国といえる。陸続きの国が多く、しかもEUの成立以来、国境を越えての人口移動が自由になったために、観光客を受け入れやすい状況が整っているのだ。日本とは対照的。
問4 姉妹都市の問題は地理Bでも出題されたことがあるが、その発展バージョン。
下関と姉妹都市なのはイスタンブール。トルコ西部に位置する人口最大都市で、海峡に面する。この海峡にかかる橋は、関門大橋を造った技術によって建設された。
豊田の姉妹都市はデトロイト。ともに自動車工業の発達した都市である。
札幌の姉妹都市は、消去法によって、ミュンヘンとなる。
下関や豊田、イスタンブールやデトロイトはいずれもセンターで出題履歴がある。
問5 意外に重要だぞ。知っておいた方がいい。
「タコ=モロッコ」。アフリカ大陸の北西岸はカナリア寒流が南下し、豊かな漁場となっている。ここで獲られた魚介類はヨーロッパへ送られることが多いが(ヨーロッパで魚屋さんってモロッコ人が多いんだそうだ)、ヨーロッパ人は骨のない魚を嫌い、とくにタコは「悪魔の魚」として嫌悪されている。そこで送り先のないタコについては、どんどん日本へと送られるのだ。タコヤキなんかで日本でのタコの消費は少なくないからね。
「エビ=インドネシア」。エビは温暖な海域で養殖されるもの。とくにインドネシアの沿岸では、マングローブ林を伐採し、多くのエビ養殖池が設けられ、このことは環境問題ともなっている。
キがタコであり、クがエビなので、消去法によってカが「サケ・マス」になる。サケ・マスは寒海魚であり、高緯度で漁獲されるもの。ノルウェーやチリから主に輸入することについては矛盾はないだろう。
問6 おもしろいね。自給率については野菜に関するものが多く取り上げられる傾向があるのだが、そこから一歩突っ込んだ問題となっている。経済概念を重視した思考問題としても興味深い。
誤文は③。そもそも最も鮮度が重要であると思われる「鶏卵」を輸入するということに違和感がある。さらに、あんなに安価な鶏卵をわざわざコストの高い「航空機」で輸送して採算が取れるのだろうか。知識がなくても、ちょっと考えればこの選択肢に矛盾点が多いことに気付くはず。
① オレンジの輸入がすでに自由化されていることは必ず知っておこう。これにより、国内におけるミカンの生産量は落ち込み、ミカン農家の多くは作物の転換などを強いられている。
② 野菜のキーワードは新鮮さ。国内自給率が高く(約80%)、輸入するにしても近隣国が主(中国や韓国など)。しかしカボチャなど一部の野菜は、ニュージーランドなどからの輸入が多い。本選択肢にあるように、カボチャは保存がしやすく、しかもビニルハウス栽培がしにくく日本で栽培できる季節が限定されてしまうため、南半球のニュージーランドなどで栽培してここから輸入するという方法が一般化しつつある。
④ 小麦の自給率は約10%。主な輸入先は、米国・カナダ・オーストラリア。本選択肢に誤っている部分はない。
問7 貿易に関する知識が問われている。地理っていうより現代社会って感じかな。
① 「食料や工業原料」を輸出するのは発展途上国。先進国が輸出するのは「工業製品」である。
② 水平貿易は、先進国同士が工業製品を輸出入するもの。
④ 保護貿易とは、主に国内産業を「保護」することを目的として、輸入品目に関税をかける貿易である。この反対語は「自由貿易」。すでにEUやNAFTAでは実現しているものである。
第3問
問1 東アジアの気候を考える際に最も重要となるのは「季節風」とくに「シベリア高気圧」の影響。冬季、極端に低温となるシベリア内陸部では空気が収縮し高気圧が発生する。この影響により、東アジアの大陸部では冬季に降水量が少ない気候が現れる。図2ならば①②④はその典型的な気候。
逆に③は冬季の降水量も多いが、これは松江だろう。シベリア高気圧から吹き出した乾いた風が、日本海上空で水分をはらみ日本列島にぶつかる。これにより日本の日本海沿岸には冬季に多雪気候がみられる。
ではペキンの気候を考えよう。③は松江なので、これ以外が候補となる。ハバロフスクの判定は容易。緯度が高く、年間を通じての平均気温が低いと思われる。④が該当。
①と②については非常に悩むところなのだが、ここは単純に、沿岸部に位置し比較的降水量が多いと思われるソウルを②と判定し、内陸部にあり少雨となるであろうペキンを①とする。気温年較差も①の方が大きいようだが、これも内陸のペキンと沿岸のソウルを考えたら、妥当なことだろう。
さらにダメ押し。ペキンを含む華北平原一帯は「アジア式畑作農業地域」であり、年間の降水量は1000mmに満たない(シャンハイなど華中は年降水量1000mmを越える「アジア式米作農業地域」なのと対照的である)。②はちょっと降水量が多すぎるような気がする。300mmを越える月が2か月もあり、全体としても1000mmを越えているんじゃないか。①ならせいぜい500~600mmぐらいであり、これならば小麦作にむしろちょうどいいぐらいの雨量である。「ペキン=少雨」と考えれば、②よりも①が適当なのは明らか。
問2 ちょっと難度が高い断面図問題。地理B的ではない。
標高に注目。③と④は最高点が3000mを越える急峻な山脈がいくつもみられる。これは新期造山帯特有のもの。③と④は、新期造山帯のうちの環太平洋造山帯に沿う地形と思われる日本(R)か台湾(S)に該当。
残ったPとQであるが、これは難しい。朝鮮半島は東岸を大きな山脈(テベク山脈)が通り、新期造山帯ではないものの、それなりの標高はあると考えられる。②がQに該当。
Pはシャントン半島であるが、こちらはとくに目立った山脈などはない。中国のこの付近は安定陸塊に属し、また準平原といって長い期間の侵食による平坦な地形が全体的にみられるところでもある。このことから①がRとなる。なお準平原は地理Bでは登場しない言葉なので知る必要はない。
問3 ペキンの判定が容易だろう。ペキンを含む華北平原は「アジア式畑作農業」地域。降水量が1000mmに満たず、米作は行われない。しかし黄河のもたらす肥沃な土壌「黄土」を利用するなど世界的な小麦作地域となっている。アとイには「米」が含まれ不適格、ペキンは「ウ」が該当。「小麦」「畑作」をもちろんチェックしておく。
アとイについては「茶」がポイントとなる。茶はそもそも亜熱帯性の気候に適応した作物。日本でも西日本において主に栽培され、東日本では栽培されないことからも想像できるだろう。シャンハイの南の丘陵部(チョーチヤン省やフーチエン省の丘陵部。地図で確認しておくといいだろう)は世界最大の茶栽培地域の一つ。朝鮮半島は冷涼で、茶の栽培には適さないだろう。アがシャンハイ、イがソウルである。
問4 生活に関する問題、地理Aっぽいね。でもこのジャンルは新課程になってから地理Bでも重視されるようになったきたところなので、要注意だったりするのだ。
カ;「野菜を食べることが少ない」に注意。モンゴルである。伝統的に遊牧を営む生活文化を持つモンゴルでは、作物栽培は重要視されない。せっかく種を植えても、それが実る頃にはどこかに行ってしまっているんだから(笑)。
ク;「野菜に香辛料や海産物を加えて発酵させた漬物」とはキムチのこと。これが韓国。ちなみに韓国は、モンゴルとは対照的に「野菜」の供給量が非常に多い国なのだ。
キ;消去法によりこれが極東ロシア。なお「ニシン」や「サケ」は寒海魚の代表例なので知っておくといいだろう。
問5 工業製品の生産統計が基準となる問題。
乗用車は簡単だよね。自動車生産は第1位米国・第2位日本・第3位ドイツで、中国や韓国はその下。だから日本の数値が大きい②を乗用車と考えていいと思う。
冷蔵庫は比較的昔からある電気製品だよね。97年と02年の数値に大きな差はないと思う。③が冷蔵庫。
携帯とPCは難しいんだよね。①と④が残っているんだけど、どっちだと思う?僕はもうカンなんだけれど、①がPCで、④が携帯だと思います。PCの方が中国に生産が集中しているような気がするんだよなぁ。う~ん、最新の統計でしっかり確認しておかねばいけないな(汗)。
早速調べてみました。
パソコンの生産(2005年);第1位中国(79.2%)・第2位台湾(8.3%)・第3位韓国(4.1%)・第4位日本(2.5%)。う~ん、中国にこんなに集中しているとは初めて知った!
問6 日本の判定は容易なんだけれど、他の3つは厳しい。とくに中国と韓国ってそれほど差がないと思うんだが、どうなんだろう?形式的には地理B的なんだが、内容の難しさでいかにも地理A的な問題といえる。
老年人口割合に注目。これは人口増加率と反比例する傾向がある指標。4か国中では日本の人口増加割合がとくに低く、老年人口率が最も高くなることは十分に推測可能。④が日本である。
残る3カ国であるが、大陸別の人口増加率(3%;アフリカ、2%;ラテンアメリカ・南アジア、1%;東アジア・アングロアメリカ・オセアニア)、0%;日本・ヨーロッパ)は当然意識するべき。しかしモンゴルがイマイチわからないんだよなぁ。
とはいえ、人口増加率と経済レベルはある程度反比例する傾向があるのだから、韓国(1人当たりGNIは約10000ドルであり、どちらかといえば高い国)の人口増加率が高いわけがない。老年人口率は高めとなるだろうし、②か③が該当するはず。
さらに中国。この国は経済レベルは低いが、一人っ子政策を実施しているために人口増加率は韓国並みに低い。やはり老年人口増加率は高めとなるとみられ、②か③が該当。
ダントツで老年人口増加率が低い①がモンゴルに該当。中国や韓国より人口増加率が高そうだしね、とくに問題ないでしょ。
中国と韓国の判定をしてみよう。農地の割合について。②が圧倒的に大きいんだけど、君たちはどう思う?「農地」っていうのがポイントね。単なる「耕地」じゃないからね。これは「耕地」と「牧場・牧草地」を合わせた面積なのだ。牧場・牧草地については、きれいな牧場を想像してはいけない。これはズバリ「草原」と考えるべきで、樹木の生育できないようなやや乾燥した国ではその割合が高くなるのだ。内陸部で少雨であるモンゴルが「草原の国」と呼ばれているのは有名だよね。たしかにモンゴルの農地割合は80%を越える高率だ。「少雨気候=樹木が生育できない=草原が広がる=牧場・牧草地面積割合が高い=農地面積割合が高い」と関連づけて考えよう。逆に日本のような湿潤な国では草原つまり牧場・牧草地が少ないために、農地面積割合も低い。
このことから、国土の西半分が乾燥気候に覆われている中国でこそ、農地面積割合が高いと考え、②が該当する。果てしなく草原が広がっていることをイメージ。これに対し、日本と同じような気候である韓国は、農地面積割合も日本とほぼ同じ。
「鉱工業部門の割合」は無視したらいいだろう。よくわからない。
「都市人口率」は経済レベルの高い国で高くなる傾向があるが、たしかに1人当たりGNIの高い日本や韓国の値が高くなっている。
問7 表が見にくいよね。でも粘り強く読解しよう。
①は全体の貿易額が大きい。貿易額とGNIは比例する(例えば、GNI第1位米国第2位日本第3位ドイツであるが、貿易額第1位米国第2位ドイツ第3位日本であり、上位3カ国の顔ぶれは変わらない。たくさんお金を持っている人はたくさん物を売り買いするということ)。4か国中で最もGNIの規模が大きいのはどの国だろう?貧しい北朝鮮や人口の少ないモンゴルは問題外として、ロシアと韓国ではどうだろうか?
GNIは「1人当たりGNI×人口」で表される。
韓国;10000(ドル)×4500万(人)
ロシア;2000(ドル)×1億4千万(人)
ということで「韓国>ロシア」である。①が韓国、②がロシアであると考えていいと思うよ。
残った2つはどう考える?韓国との関係でみたらいいと思う。韓国からみて位置的に離れたモンゴルとの関係は薄いはずだ。これに対し、北朝鮮との関係は、国境を接するだけでなく、民族も同じなのだから、より深いはず。韓国からの輸出額「273」、韓国への輸入額「15」である③が北朝鮮、同じく「56」と「2」である④がモンゴル。
韓国が高ランク、ロシアが中ランク、北朝鮮とモンゴルが低ランクというように、国を「格付け」して考えたらいいと思うよ。
第4問
問1 大陸別人口増加割合と国名を対象させる問題であり地理Bっぽいんだが、しかしモザンビークやブルネイなんていうマイナーすぎる国名は地理Aならではって感じがするんだよね。
大陸別人口増加割合を考えよう。
3%;アフリカ 2%;ラテンアメリカ・南アジア 1%;東アジア・アングロアメリカ・オセアニア 0%;日本・ヨーロッパ
さらに表を参照。出生率から死亡率をマイナスすると自然増加率が求められる。本来、人口増加率は自然増加率と社会増加率の和であり、この両方を考えないといけないのだが、国ごとの人口増加を考える場合には、国際的な人口移動はさほど多いものではなく、社会増加率を無視し、自然増加率だけを考えれば十分。
よって、ここは素直に「出生率-死亡率=自然増加率≒人口増加率」と解釈して先に進もう。
ア;42.7(‰)-18.8(‰)=23.9(‰)=2.39(%)
イ;22.1(‰)-2.9(‰)=19.2(‰)=1.92(%)
ウ;9.4(‰)-9.7(‰)=-0.3(‰)=-0.03(%)
選択肢の3つの国について考える。イタリアはヨーロッパの国であり、人口増加率は低い。ブルネイは東南アジアの国であり、人口増加率は標準的だろう(南アジアが2%、東アジアが1%なので、その中間の1.5%と考える)。モザンビークはアフリカで、人口増加率は高い。
これをそれぞれに当てはめ、アがモザンビーク、イがブルネイ、ウがイタリアとなる。これが正解。人口増加率を求めることがポイント。
ここからは余談。ブルネイは東南アジアの小国であるが、天然ガス資源を豊富に有し、経済レベルは高い。国民の生活水準も高く、四方率が低いのも納得。
これに対しモザンビークはアフリカ南東部に位置する世界最貧国の一つであり、民族対立や内戦が激しく、経済レベルは極めて低い。死亡率がとくに高くなっている(おそらくこの多くは乳幼児だろう)。
問2 農産物統計や、各大陸における農業の特徴を問うた、地理B的な問題。良問である。
最も簡単なのは「生産量」。米の生産は第1位中国第2位インド、小麦の生産も第1位中国第2位インド、トウモロコシは第1位米国第2位中国。これより、アジアが最も大きな値を指しているカを「生産量」と考える。
キとクに関しては、自給的な農業と商業的な農業との差異を考える。アジアは自給的な農業形態がみられ輸出は少なく、むしろ輸入の方が多いはず。これに対しヨーロッパや北米では主に商業的な農業形態がみられ、こちらは輸出が多いはず。アジアが小さく、ヨーロッパや北米が大きいキが「輸出量」だろう。
残ったクが「輸入量」。北アメリカの値が小さく、アジアが大きいことは納得。ヨーロッパの値が比較的大きいことも興味深い。問題文参照。「地域内貿易も含む」とある。原則としてヨーロッパは穀物輸出地域だが(キにおけるヨーロッパの値は大きい)、域内にイタリアのような小麦輸入国もあるため、意外に輸入量も多くなる。イギリスやフランスから、オランダやイタリアへと小麦が輸出される様子を思い浮かべよう。
問3 岩手県かぁ。今年のセンターって地形図で青森県がテーマとなったり、冷害ネタが多かったり、やたら東北が出題されてるよね。それはともかくとして、問題そのものは意外に選択肢に悩む、難しいものとなっている。
キーワードは二酸化炭素。これは石炭や原油など化石燃料の消費によって生じるもの。図2を参照する限り、季節による増減を繰り返しながら、全体としては上昇傾向にある。
①岩手県でみられる季節変化はグアム島より大きい。問題はこれが「日本や中国の産業活動の影響」によるものかどうかっていうことだ。世界で最もエネルギーを消費し、二酸化炭素の排出量が大きいのは米国。これ以外にロシアやヨーロッパなどでも二酸化炭素の排出が多いのだから、決して日本と中国だけの責任ではないと思う。二酸化炭素濃度上昇は地球全体の環境問題なのだ。
②「発展途上国の焼畑」の影響だろうか。先進国の産業活動によるものが主だろう。
③これ、よくわからないんだよなぁ。たしかに南極大陸にはほとんど植生はないんだが。
④二酸化炭素濃度上昇の原因には「人間による森林破壊」があるのは事実だが(光合成できなくなるからね)、しかしそれが「第一の要因」なのかなぁ。それは大きな疑問。化石燃料の大量消費が最大の要因なんじゃないのかな。
以上より、③が正解となる。っていうか本当にこれが正解?僕はとりあえずこれを正解にしてみたけれど、もしかしたら間違ってるかもしれません。それほどあいまいな問題なのです。
問4 過去にも類題があるので簡単でしょう。良問です。
酸性雨の影響で酸性度が上昇し生態系が破壊されてしまった「死の湖」が北欧には多い。これを中和し生物の住める環境に戻すために、石灰が散布されることがある。
選択肢の中で、酸性雨と関係があるのはどれだろう?酸性雨とは薄い硫酸や硝酸を含んだ雨のことだが、これは「硫黄酸化物」や「窒素酸化物」などが原因。硫黄酸化物は主に石炭の燃焼によって生じ、窒素酸化物は自動車の排気ガスに含まれている。このことから考え、「石炭=化石燃料」であるので、①を正解とする。
②原子力発電所の事故は放射能汚染の原因。酸性雨は関係ないね。
③産業廃棄物の不法投棄は水質汚濁や土壌汚染の原因。これもやはり酸性雨とは関係ない。
④フロンガスは2つの環境問題に関係する。一つは「オゾン層の破壊」。フロンガスは自然界で分解しない物質であるので、成層圏へと上って地球を取り巻くオゾン層を破壊してしまう。これにより太陽からの紫外線が地表までそのまま届き、皮膚ガンや眼病などの原因となる。もう一つは「地球温暖化」。温室効果ガスとしてもっとも知られているのが二酸化炭素だが、フロンガスにもその要素がある。気温が上昇し、海水面が上昇するなどの問題が予想されている。ただし、やはりこれも酸性雨とは関係ない。
環境問題には多くの種類がある。本問でそれらについて整理しておくといいだろう。
問5 統計に基づいた良問。
サ;中国と米国での産出が多い。石炭である。
シ;ロシアと米国。天然ガスである。
ス;消去法により、ウランである。
参考までにそれぞれについて詳しい解説を。
サ;「埋蔵量は豊富」とあるが、枯渇が懸念されている原油に比べ、石炭はまだ100年以上採掘可能とみられている。原油との比較で考えよう。「分布の地域的な偏りも小さい」とあるが、これも原油との対照で考える。原油は約3分の1が西アジア(とくにペルシャ湾岸)に偏在しているが、石炭にはそのような極端な偏りはない。「発電用に需要の増大が見込まれる」とあるが、火力発電用の需要は依然として大きい。
シ;「利用には新たな施設の整備が必要なため普及は限られていた」とある。天然ガスは採掘時には気体であるが、そのままでは輸送に困難であるため、冷却して液体にしないといけない(液化天然ガス)。「新たな施設」とは冷却設備のこと。例えば日本のODAはかつてはインドネシアに多額供出されていたが、これは天然ガス田の開発や輸出用の港湾整備に加え、もちろんこの冷却設備の建設費用でもあった。
なお、天然ガスのポイントはこの「冷却」にあるといっても過言ではない。気体から液体にする際に、気体の中に含まれていた不純物(硫黄など)を取り除いてしまうために純度が高くなり、燃焼効率も高くなる。不純物の多い石炭などに比べ、燃焼時間が短くとも同じだけのエネルギーが得られるため、結果として二酸化炭素の排出量を少なくできる。このため天然ガスは「クリーンエネルギー」と呼ばれ、石炭や原油などに比べ、とくに「需要の拡大」が予想されているのだ。
ス;ウランについては「カナダ」をぜひとも知っておこう。「この資源による発電」とはもちろん原子力発電のこと。
問6 ODAの問題というより、位置的・経済的、そして植民地などの歴史的関係を考える問題でしょう。
①アジア。日本からの供出額が大きい。日本は経済的なつながりの多い東アジアや東南アジアに多額を援助し、社会資本(道路や港湾など)をさかんに建設している。
②ラテンアメリカ。位置的・経済的につながりの深い米国からの供出額が大きい。またスペインからも多額援助されているが、これはこの地域に旧スペイン領だった国々が多いから。ヨーロッパ諸国のODA供出先は、彼らがかつて支配した旧植民地が主。
③アフリカ。フランスに注目するといいと思う。アフリカには旧フランス領だった国々が多く(アルジェリアやコートジボワールなど)、現在でも関係が深い。
④オセアニア。オーストラリアが含まれている。近所付き合いは大事なのですね。
問7 地理Bではちょっとお目にかからないパターンだと思う。難しいです。
Xはアフガニスタン。この国ではイスラム教原理主義者の政権(タリバーンっていうやつね。聞いたことあるでしょ)によって、多くん仏教遺跡が破壊された。イスラム教は偶像崇拝を禁じるので、仏像などは許せなかったってことだろうね。貴重な文化遺産の喪失に、国連はじめ世界中からこの国に非難が集まり、やがて米軍によるアフガン侵攻の呼び水になったのも有名な話。このことから「仏教」「破壊」がキーワードとなり、②が該当。
地理の学習ではここまででいい。ここから先は現代社会や世界史の話になる。そういった無責任な観点(?)からあえて一言。タリバーンによる仏教遺跡破壊のニュースが世界を駆け巡り、世界の多くの人々がタリバーンを非難した際に発したタリバーンのセリフ。「あなたたちは、アフガニスタンの人々が貧困で死んでいくのは全く無視したのに、たかだか人間の形をした岩を壊したぐらいで大騒ぎをする。命と物、どちらが大切なんでしょう?」。もちろんとんでもない屁理屈なんだけれど、僕はこれは一つの真実なのだと思う。僕らは、宗教とか思想、権力といったようなものに目を奪われて、人間の命といった本質的な部分を見逃しているのかもしれない。
第5問
問1~問5 2007年度地理B本試験第6問と一致しているので、そちらを参照のこと。
問6 貿易統計問題。ベーシックな問題で非常に重要。
Xは中国。中国は世界第2位のトウモロコシ生産国でもある。
Yはニューカレドニア。ニューカレドニアはオーストラリア大陸北東海上に浮かぶサンゴ礁の美しい島であるが、鉱産資源ではニッケル鉱の産出で名高い。なお、ニューカレドニアはフランスの一部である。
Zはカナダ。わが国の主要な木材輸入国として、カナダ・ロシア・米国・マレーシアを知っておきたい(しかし、なぜオーストラリアがランクインしているんだ?八戸港、変わってるなぁ)。
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