たつじん先生の共通テスト(センター試験)地理解説!楽しく勉強していきましょう

1998年度地理B追試験解説

1998年地理B追試験

とらえどころがない回だよな~。平均点はどれくらいだったんかな?知識に頼った問題やあいまいな問題もあるけれど、センター試験のセオリーに基づいた良問も多いし、手応えは十分にあると思う。

 

第1問 いきなり工業分野の出題。ちょっと戸惑うかな。問2・問4は捨て問か。それ以外にも問1・問7など難問が並ぶ。失点が多くても仕方ない。

 

問1 なぜか産業革命ネタっていうのは知識問題が出題される。中学地理でも、そして中学歴史でも登場する話題であるので、シンプルではあるものの確実な知識が求められるっていうことかな。

それでは産業革命について。そもそも産業革命って何かっていうと、大量生産が可能になったっていうこと。それまでは零細的にコツコツと生産するしかなかったのに、大きな工場に労働力が集められ、そこで大量生産が始められた。さらに、手工業から次第に機械化が導入されたりして、だんだんと生産性も上昇していった。

産業革命が始まったのは19世紀後半。つまり1850年から1900年の間。炭田の開発が進み、石炭を動力源とするシステム(蒸気機関など)が確立した時期である。

地名としてはランカシャーを知っておく。イギリス本島を縦断するペニン山脈の西麓にあたる。偏西風帯なので、風上斜面に該当し、雨が多い。この豊かな降水量がこの地域の工業化に貢献しているのは言うまでもない。中心都市は内陸部のマンチェスター。港湾都市リバプールとは運河で結ばれている。

綿工業の分野から産業革命が進行したということも同様に知っておこう。当時イギリスはインドを植民地支配していたのだが、ここから綿花を輸入し、ランカシャーに運んでから綿に加工していた。イギリスは経済的な発展を遂げる反面、それまで栄えていたインドの綿工業は壊滅した。

これくらいを基礎知識として選択肢の文章を検討していこう。

1;「天然ガス」を「石炭」に改める。とくに当時のイギリスは世界最大の石炭産出国であった。ペニン山脈は古期造山帯であり、炭田に恵まれた(現在は多くが閉山に追い込まれているが)。

2;産業革命の進行の段階としては、それ以前が「問屋制家内工業」、産業革命の進行とともに「工場制手工業(マニュファクチュア)」に移行し、さらに「工場制機械工業」に発展する地域もあった。

問屋制家内工業とは、問屋と呼ばれる者が原材料などを供給し、人々はそれを預かり、それぞれの家において零細的に生産を行うもの。

これでは効率が悪いので、次の段階として現れたのが工場制手工業。豊かな者が工場を建設し、そこに人々を集めて生産活動を行う。工場を経営する「資本家」とそこで働く「労働者」の色分けが生まれてくる。

さらに工場制機械工業に発展。生産性を高めるために機械を導入する。この時期は石炭利用した蒸気機関などの開発が進んだ時代でもある。これがさらに20世紀には石油を用いた内燃機関へと進化していく。

3;前述のように「中国」ではなく「インド」である。

4;ランカシャーは偏西風の風上斜面であるので湿潤な気候。つまり「湿度が高い」。実は綿工業には高い湿度が有利となる。綿糸が切れにくいのだ。

2が正解と判断するのはなかなか難しいのだが、消去法によって解けるかな。

 

問2 極めて珍しい地名を問う問題。これぐらい知っておけっていうことか。

「港湾は鉄鋼業の立地としても重要である」とリード文にある。よって、港湾都市にしぼって考えていけばいいわけだ。

正解は1。カーディフはイギリスの南ウェールズ地方の港湾都市。炭田に恵まれているが、スペインなどから鉄鉱石を輸入し、臨海型の鉄鋼業が成立している。

ダンケルクはフランスの北東部の港湾都市であり、臨海型の巨大製鉄所が建設されている。北フランス炭田付近に立地するが、鉄鉱石は輸入に頼っている。

イギリスにしろフランスにしろ、かつては鉄鋼業の中心は内陸部であった。イギリスのミッドランド地方は古くは「黒郷」とよばれた鉄鋼地帯であったが、現在ではむしろ自動車工業など内陸型の機械工業の中心地である。フランスのロレーヌ地方は鉄鉱石の産地として有名であり、国境を越えドイツの炭田と結びついて鉄鋼業が成立していたが、もともと鉄鉱石の品質も低く、量も多くなかったため、この地域の鉄鋼生産は次第に衰退。現在は全ての製鉄所が高炉の火を落とした。

他の選択肢について。

2の2つはヨーロッパにおける鉄鉱石の産地。キルナはスウェーデン北部、ビルバオはスペイン北東部の鉄山。このうち有名なのはキルナかな。中学地理でもその名称くらいは登場しているかもしれない。スウェーデン北部、北極圏の南限(北緯66.6度)やや南に位置。積み出し港としてのナルビクが重要。スウェーデン側の港湾ルレオはバルト海に面するが、冬季は凍結するため使用不可能となる。そのため、国境を越えノルウェー側の港湾ナルビク(ここは北極圏に位置するのだ!)に鉄道で運んでから、鉄鉱石を船で積み出す。大西洋沿岸は海流などの影響により、一年中凍結しないのだ。かつては夏季はルレオ、冬季はナルビクと使い分けられていたが、現在ではほぼナルビクだけが使用されている。

ビルバオはどうかな。知らなくてもいいと思う。ただしバスク地方という言い方だけは知っておいていいと思う。バスクについては97B本第2問問3選択肢2や01B本第4問問3選択肢4で出題。バスクはスペインのバスク地方の代表的鉄山。

3はともに米国の鉄鋼都市。ピッツバーグはアパラチア炭田(古期造山帯には石炭資源が豊富)に隣接。炭田立地型。クリーブランドは五大湖沿岸。五大湖西部のメサビ鉄山と、アパラチア炭田との間にあり、いわば中間立地型の鉄鋼都市。

ただし両都市とも近年やや衰退している。米国の鉄鋼生産の中心は大西洋岸のボルチモア(スパローズポイント)に移動。輸入鉄鉱石に頼った製鉄業が成立している(石炭は米国は国内自給できている)。

3;ドニエツクはウクライナの炭田立地型の鉄鋼都市。マグニトゴルスクはロシアのウラル山脈に沿う鉄山立地型の鉄鋼都市(ウラル山脈は古期造山帯であるが、石炭よりも鉄鉱石資源に恵まれる)。センター試験では本問以外出題例なし。

というわけで、本問はかなり特殊な部類に入ると思う。とくにポイントになっているのはイギリスとフランスの鉄鋼都市だったわけだが、この2カ国とも鉄鋼生産については決して世界のトップレベルというわけではない。だから、なぜ重要性の低い国が話題として取り上げられたのかよくわからない。

 

問3 これは簡単だと思う。電子部品工業や航空機工業の立地条件として不適当なものを探せばいい。

 

問4 日本における製鉄所の位置について。97本第3問問7参照。選択肢1が現在の日本の製鉄所の位置である。関東から九州北部の太平洋ベルト地帯に集中し、それ以外の地域では北海道の室蘭にあるくらい。製鉄所自体、数は減っているし(その分、1ヶ所当たりの規模は大きくなっているのだが)、新設されるとしても太平洋沿岸地域に限られている(北海道室蘭の製鉄所は第2次世界大戦前から存在している)。よって1が誤り。

外れ選択肢について。

2;関連問題00B追第1問問4。北九州工業地帯の中心都市は北九州市。ここの工業出荷額順位は近年ランクダウンしている。

かつては、京浜(けいひん)工業地帯(東京・神奈川)、中京工業地帯(愛知・岐阜・三重)、阪神工業地帯(大阪・兵庫)、北九州工業地帯(福岡)の4つが日本の工業のとくにさかんなところとして「四大工業地帯」とよばれていたが、近年では北九州工業地帯は除外して「三大工業地帯」とするのが一般的である。

3;高度経済成長期の工業化について。とくに否定するべきところはない。

4;4大公害裁判の一つ、四日市ぜんそくについて考えろってことかな。

 

問5 21世紀を迎えた現在、20世紀の遺物である社会主義について想像するのはなかなか難しい。意外な難問。

社会主義は資本主義の反対語。資本主義が自由経済を原則としているのに対し、社会主義は計画経済。国が生産活動の全てを仕切る。自由経済では貧富の差が生まれるから、完全な平等を実現するために政府が計画したプランによって国内の生産活動・経済活動が進行する。資本家(会社経営などを行う富裕な人々)が労働者を支配するという自由主義経済の考え方を否定し、資本家の存在を許さない。労働者だけの国家を目指している。

これが実現すれば、貧富の差のない理想的な世界が成立するわけだが、そんなにうまくいくわけがない。権力が一部の階層(例えば社会主義国家では政党は共産党だけなのだが、その共産党の幹部がそのまま国家の最高権力者に収まるわけだ)に集中し、さらにそれが極端になればたった一人の絶対的権力者つまり独裁者すら生むことがある。

社会主義とは、国家の利益(というか特定の支配階層の利益)が優先され、それ以外の国民の意思は無視される。

このことを考えながら選択肢を検討していこう。

1;「計画経済のためノルマが課せられ」までは正解。ただしここからが違う。ノルマがあればむしろ生産意欲は低くなる。中国が人民公社を廃止し、生産責任制を導入したのは、ノルマを軽減し自由な生産を認めることで、労働意欲を高めようとしたから。

2;国の権威を高めるような重工業は優先される。しかし国民の生活は無視される。消費財とは日用品のことだが、そのような国民にとって本当に必要な物の生産は滞った。

3;核開発などによる放射能汚染など。環境汚染は国家中心の生産活動の中で、黙殺される。その被害をくうのは常に国民である。自由な国であれば、住民運動などにより環境問題は解決されることもあるのだが。

4;国家優先の政策の中で軍事や宇宙産業は発達する。もちろん国民の生活を犠牲にして。

 

問6 かなりいい問題だと思う。

Cを当ててみよう。イギリスの南部とフランスの北部にある。この都市はどこか?都市名について詳しい知識は不要であるが、この2つの都市はいずれも非常に重要な都市であるので、必ず知っておくべき(というかすでに知っていると思うよ)。イギリスの首都ロンドンと、フランスの首都パリ。いずれもヨーロッパ最大の人口を持つ都市の一つであり、名称だけでなくぜひとも位置まで知っておいてほしいところ。

これを手がかりに選択肢を検討してみる。ポイントになるのは「都市型の消費財工業」だろう。大都市なのだから、都市型の工業は当たり前。人口が多い(消費者が多い)のだから、彼らの日常的に使用する物(消費財)の生産が多いのも当然だろう。「先端技術産業」についてはよくわからないが、企業の研究施設や大学などがあると考えればいい。というわけで、3が正解。

他の選択肢について。

A;オランダやフランス南部の臨海地域。「石油などの輸入に便利」がキーワードとなって選択肢1が該当。オランダの■はロッテルダム。ライン川河口の三角州が大胆に掘り込まれ人工港湾ユーロポートが誕生。世界有数の貿易額を誇る貿易港としても重要だが、プラスティックなどの生産がさかんな石油化学コンビナートが建設されたことでも重要。フランス地中海岸の■はマルセイユだろうか。フランス第2の都市であり、同時にフランス最大の貿易港。原油産出国(アルジェリア・リビア)に近いという立地条件を生かし、石油化学コンビナートが設けられた。

B;ドイツ西部に注目。ライン川中流域に広がるルール炭田である。ライン川の水運によって、スウェーデンなどから鉄鉱石を輸入し鉄鋼業が栄えた地域。「炭田」がキーワードになって選択肢3が該当。

D;フランス南部の○に注目。この都市はツールーズ。航空機のEU共同工場がある。

 

問7 こりゃ難しい?そもそも産業用ロボットって何なんだ!?

産業用っていうくらいだから、工場などで活躍しているような、作業用の機械なんだろうなとは思う。しかもロボットっていうことは、電子頭脳も持っているのでは?つまりコンピュータ。

とりあえずコンピュータがさかんな国を考えればいいのかな。となると、少なくともロシアやイタリアは外れる。コンピュータの中心は米国とアジア。とくに米国が世界のコンピュータ産業のリーダーなのだから、これを図2中のAとしてみよう。

と考えるのが普通だと思うんだが、実は答は日本なのだ。産業用ロボット設置台数世界1位(しかも圧倒的)は日本である。これってどう思う?統計を知っておくしかないんだが、センター試験の他の問題で産業用ロボットについて出題されたことは皆無だし、あるいは中学地理で登場するような話題でもない。本問は捨て問とするしかないのか。

 

問8 これも難しいかもしれない。

日本のキーワードは「60年代経済成長」である。ただし本図においては60年代のデータは示されておらず、これは手がかりとはならない。

オイルショック以降の各国の経済推移について考えていかなければいけない。

でもこりゃしんどいで(涙)。いずれもそれなりの先進国であるし、それほど数値が異なるとは思えない。しかもEUの結成が93年でその実質的なスタートが93年であることを考えると、EUを結成したことによる影響だってこの図には表されていないことになる。一体、何が手がかりやねん!?

ちゅうことでとりあえずいろいろ図をなめ回して味わっていくとしよう。

80年を100としている。日本の80年代のキーワードは「円高」「貿易摩擦」。日本の工業化がさらに進み、輸出が増えた。円の価値は高くなったものの、諸外国とくに米国からの反発は強く、以後米国内での日系法人による現地生産がさかんになっていくことになる。

自動車の生産に顕著に現れている。80年代の自動車生産台数は日本が1位で米国が2位。日本から米国への自動車輸出額があまりに大きく貿易摩擦を引き起こした。貿易制限などの措置もとられた。このため、日本の自動車メーカーは米国内に現地法人を設立し、そこで生産を開始した。実質的には「日本車」なのだが(米国トヨタ、米国ホンダなどの企業がトヨタやホンダのブランドの自動車を造っている)、米国内で生産されているので名目上は「米国車」である。90年代に入って自動車生産額は逆転し、米国1位・日本2位となった。

このことを手がかりに考えればいいのではないかな。となると、80年代は好調を維持していたものの90年代に入って急激に落ち込んだ2が日本とみていいだろう。そしてそれと入れ替わるように90年代に上昇した1が米国となる。

日本については80年代のバブル経済、90年代のバブル崩壊と結びつけて考えても納得である。

3と4はよくわからない。

 

第2問 人口に関する設問は簡単なものが多い。本大問もそれに該当すると思う。全問正解を目指そう。第1問でミスが多かった人もここで取り戻せばいい。

 

問1 人口動態の問題。図1では出生率と死亡率の推移について示されている。もちろん、両者の差が人口の自然増加率を表すこととなる。

Ⅰ期では出生率も死亡率も高い。そのため、その差である自然増加率が低い。これは産業革命以前の古い時代のモデルである。19世紀くらいであろうか。いわゆる「多産多死」。

Ⅱ期では出生率はそのままで死亡率が低下していく。衛生条件が改善され、医療技術が発達していく段階。産業革命以降の科学技術の時代。つまり20世紀前半くらいかな。自然増加率が次第に上昇していく。多産多死から多産少死へと移行する段階。

Ⅲ期は第二次世界大戦後から現在にかけての時期。

Ⅳ期は現代から未来にかけて。少産少死の段階。人口は停滞し、老年人口割合が高くなっていく。日本などいくつかの先進国はすでにこの段階だろう。

では選択肢を検討していこう。4つの文章が用意されている。図1が4つの段階に分けられていることから、一つ一つの文章がⅠからⅣのいずれかの段階にそれぞれあてはまるものと考えていいだろう。

1;人口増加率が低下している段階。つまり出生率と死亡率の差が小さくなっていく時期のこと。Ⅲ期に該当する。

2;低年齢層の割合が高いということは出生率が高い状態だろう。Ⅰ期かⅡ期である。

3;発展途上国における人口爆発ということで、出生率が高い時期を考える。Ⅰ期かⅡ期である。

4;人口があまり増えていない状態。この段階に該当する国は年々増えつつあるということで、最も現代的な段階のモデル図とみていいだろう。Ⅳ期である。

以上より解答は1。Ⅲ期を当てるので容易だろう。

ただしⅠ期とⅡ期はちょっと悩むかもしれないなあ。とりあえず2がⅠ期で、3がⅡ期であると考えてほしい。

(ちょっとおまけ)ただし図1はある国の歴史的な人口変化を示したものであり、とくにⅠ期は前近代的な時代の様子を表していることに注意。多産多死といえるが、現在の発展途上国の多産多死とは若干意味が異なる。図1におけるⅠ期(つまり産業革命以前)は人口があまり増えていない時期なのだが、現在の発展途上国は同じく多産多死といえるが、すでに人口爆発は生じている。多産多死というより、超多産多死ということなのか。たくさん死ぬけれど、生まれる数は極端に多い。

 

問2 まず明らかに誤りなのは1。米国の開発は東から西に向かってなされた。古い時代に開発された東海岸から、近年成長著しい西海岸に向けて企業や人口が移動していく。

選択肢2以降は「金が人を動かす」のセオリーに基づいた文章ばかり。人間は経済レベルの低いところから高いところに、向かって移動する。これは全世界共通(そして全時代共通の)絶対的な約束。

2;中国に行くのではなく、カナダへの移動。これは納得。1人当たりGNPを考えるまでもなく、中国は発展途上国でありカナダは先進国である。

3;都市から農村への移動は、上記の経済原則から外れる。よってこれが誤り。貧しい農村から豊かな都市へと移動する。ただし、都市が必ずしも豊かとはいえないのだが。とくに中南米やアフリカの大都市は仕事もなく失業者であふれている。それでも農村はさらに貧しいのだから、移動は止まらない。

4;ベトナムから日本への移動。おかしいところはない。

5;トルコから西ドイツへの移動。これも上記のセオリーと合致する。

 

問3 1;「1960年代」とは高度経済成長期のこと。農村と都市との経済格差が大きく、人々は金と職を求め移動した。農村と都市の差は急勾配の傾斜のようなものであり、それを逆流しようとする者は少ない。

しかし70年代の低成長期を経て、現在は都市と農村の格差はそれほどでもない。両者がなす「傾斜」は緩やかになり、農村から都市への移動はさほど顕著でもなくなった。移動パターンは多様化したのである。都市から農村に戻る者もいるだろうし、首都圏の都市から地方中枢都市に移動する者もいるだろう。

2;1と同様。60年代の高度経済成長期は都市(とくに太平洋ベルト地帯)のみが急激な成長を遂げ、ここに地方から人口が殺到した。しかしオイルショックなどにより経済が停滞すると、太平洋ベルト地帯の成長もストップし、人口が流入する理由がなくなった。むしろ都会で失職し、出身地である地方へ戻る者も多くなった。

4;2で述べたように、都市部の成長がストップした70年代になって人口が農村へと戻るようになった。これをUターン現象という。「高度経済成長期の初期」ということは50年代後半から60年代前半のことだろうか。貧しい農村から、発展しはじめた都市部へと向かう人口の流れはすさまじく、それに抗う動き(つまり都心部から農村へという移動)は極めて稀であった。

3はよくわからんが、4が明らかに誤りなので問題ないだろう。

 

問4 日本の都道府県をテーマにした階級区分図。頻出。とくに本問のように人口を主題としたものはとくに最頻出。

選択肢参照。

1;人口増加率は郊外で最大、地方中枢都市でやや高く、都心で低め、地方で最低。例えば、千葉や福岡・宮城で高く、東京や鳥取・鹿児島で低い。

2;人口密度は人口の多いところで高いのが原則だが、面積も考慮すること。

3;第2次産業人口割合の高いのは愛知県とその周囲の県。日本全体では第2次産業人口率は30%程度であるが、これらの県では40%近くに達する。

4;昼夜間人口比(昼間人口÷夜間人口)は、都心で最高、地方中枢都市でやや高め、地方でやや低く、郊外で最低。

5;老年人口割合は、人口増加割合の裏。青年壮年層が移動し、老年は取り残される。人口の流入が多いところで老人の割合は低下し、人口の流出が多いところで老人の割合は上昇。「若者が移動する」。

以上より図2を検討していこう。

Bの方がわかりやすい。地方の県で高くなっている。これは「老年人口割合」であろう。九州がとてもわかりやすい。福岡で低く、それ以外の地域で高い。日本全体でみると、青森でなぜか低いし、東京や大阪も低くなっているが、とくにおかしいということもないだろう。

Aについて。東京・大阪・神奈川・愛知など人口規模の大きい都府県で高い。人口密度と考えていいだろう。とくに最大の決め手となるのは香川県。普段はまったく話題になることがない県である香川県の唯一のキャラクター、それは「最も狭い都道府県である」ということ。面積がとても小さいので、人口密度が高くて当然である(ちなみに香川の人口はそれほど多くはない)。

 

問5 これは計算するだけでいいね。

A地域の出生数は100人、死亡数は300人。よって200人の自然増加。

A地域への流入数は、B地域から200人、C地域から100人、計300人。A地域からの流出数は、B地域へと2000人、C地域へと500人、計2500人。よって社会増加は、2200人のマイナス。

以上より、自然増加と社会増加との合計は、-2200人。20000人からこの数値を引いて、答が導かれる。

 

第3問 都市化についての出題。第1問・第2問・第3問ともに類似したようなジャンルからの出題である点がおもしろい。

ただし難易度は違う。第2問は容易なんだが、第1問と第3問は手ごわい。第3問も第1問と同様、ある程度のロスは覚悟するしかない。問1・問2・問3は全滅でも仕方ないだろう。ただし問4以降はゲットしてほしいな。

 

問1 写真判定問題。ちょっと判別しにくい。

1;パリとセーヌ川の関係はともかくとして、そもそもシテ島っていうのがよくわからない。でもこんな特殊な固有名詞が誤っているということもないだろう。

2;駅はどこにある?よくわからん。鉄道もどこにあるのかわからん。

3;どういう意味なんだ?直径10キロとあるが。図の下にスケールのようなものがあるので10キロの長さを確認しよう。直径10キロなら半径5キロ。写真の中央を中心点として半径5キロの円を描いてみると、たしかにそれに沿うようにやや太い線(道路であろう)がみられるようだ。しかしこれが城壁の跡かどうかはわからないなぁ。

4;写真の北西部や南東部に「放射状に伸びる道路網」があるようにみえる。

というわけで実にあいまいな問題といわざるを得ない。こりゃ厳しいなあ。答は2だそうだが、駅が複数あるんだそうだ。僕にはよくわからないのだが、君たち自身の目で確かめてくれ。

 

問2 これもあいまいやねんなあ(涙)。

1;駅の南側の街路などは直線であり、直交するところや放射状になっているところもある。これは「農道をそのまま利用して」いるとは思えないのだが。

2;図をみる限り、まさにその通り。

3;これはよくわからないが、緑地帯は都市の周囲を囲んで広がっており、たしかにそのような役割もあるだろう。

4;「職住近接」はイギリスのニュータウンのキーワード。よってこれは正文だと思う。ちなみに日本のニュータウンは「職住分離」。

問1問2と難問が続いているが、ここでカギとなっている言葉は問1「あらゆる」問2「そのまま」。このような完全肯定のキーワードっていうのは怪しいっていうことか。国語の問題みたいやね。最近はこういったあいまいな文章正誤問題は少なくなったので君たちはとくに気にする必要はないと思うが、国語のこういった問題を解くのが得意な者はいろいろ考えてみてもおもろいと思うよ。

 

問3 地理用語を問う問題。ちょっと特殊。

1;韓国のキーワード。70年代から80年代にかけて実施された新農村運動のこと。農業の合理化・省力化を推進した。農業生産が上がると同時に農村で余剰労働力が生じることとなり、彼らが都市に移動して80年代の韓国の経済成長を支える要因となった。

2;米国中西部のキーワード。五大湖南岸のコーンベルト地帯を開拓した方式。

3;これが正解。

4;南アフリカ共和国のキーワード。アパルトヘイト時代の黒人の居住区。

タウンシップ制については類題も多いので知っていて当然かもしれない。よって2は速攻でカット。でもそこからは迷うんやなあ。とくに類題もないし。3択問題として、あとはカンかな。

 

問4 「都心に新たに工業が成立することはない」。都市と工業の無関係性を主題とした問題は実に多いが、本問もそのパターン。

1;「レジャーランド」

2;「工場」

3;とくに具体的な利用については言及されていない。

4;「オフィスビル」「レジャー施設」「集合住宅」

というわけで、明らかに2が誤り。

都市名にこだわりすぎてはいけない。センター地理の傾向としては都市名は重要ではないのだ。

ただしちょっと難しいんだが、「」を参照してほしい。ここで登場している「ラデファンス」という地名なのだが、これは本問選択肢3で説明されているパリ副都心の建設された場所。このパターンについては君はどう思う?

 

問5 おもしろい良問。

1;中国の人口移動ネタ。貧しい内陸部から豊かな沿岸部へと人口が移動する。ただし、中国の人口のほとんどは漢民族であり、この流入する労働者たちも漢民族である。沿岸部にもともと住むのも漢民族なのだから、民族対立や商況対立が生じるとは考えにくい。

5;第2問問2選択肢3のネタとも重なっている。発展途上国において特定の大都市に人口が集中する傾向は止まらない。ナイジェリアの人口最大都市ラゴスも同様。農村から労働者やその家族たちが金と仕事を求め、殺到する(しかし仕事などないのだから、都市周辺のスラムに住み着くこととなるのだが)。

1については誤文である判別が難しいが、5については容易だろう。2問とも当ててほしいが、最低でも1問はゲットできる。

他の選択肢について。

2;発展途上国の都市はインフラ面の整備が遅れ、交通渋滞が先進国の都市より激しい。都市自体の面積規模も小さいところが多い。

3;発展途上国の大都市の多くではスラムが拡大し、住宅問題が深刻。都市が増え続ける人口を受け入れることができないのだ。

4;都市にあふれる貧しい子供たち。彼らは生きるためにストリートで銭を稼ごうとする。

 

問6 とくに解説の必要すらないのでは。問4と同様「都心部で新たに工業は成立しない」のだ。というわけで4が誤り。

3;これはまさにその通りだろう。オフィスだけでなく、普通のアパートでも都心部に近いほど高額になるね。

2;高級料理店ということは献立の単価が高いわけだから、地価の高い都心部に集まるんやろね。それに比べ大衆料理店は、いわば日用品を売っているコンビニみたいなもんやから、とくに都心ってこともないのではないかな。

1;これが一番悩むんやなあ~。都心部は流通の中心であるわけで、そこに多くの商品を取り扱う卸売店が集まってきそうな感じもするんだが。しかしここでは問題文を参照してみよう。「収益性の低い機能は競争に敗れ、より都心部から離れた郊外に立地するようになる」とある。卸売店というのは商品を小売店に流通させるはたらきがあるのだが、例えば小売店で100円で売られているものは、卸売店ではもっと安い金額で取引されているはずだ。つまり単価は安いわけで、収益性は高くはない。このことから考えるに、都心部よりも郊外に立地しやすい傾向が卸売店にはあるとみていいだろう。また卸売店は一気に大量の品を扱うので、それなりに広大な土地を必要とすることが多いだろう。狭い都心よりも土地の広さに余裕のある郊外の方が適しているといえる。

 

第4問 山田さんによる地域調査。どこなんだろうか。よくわからんが。

難易度は低い。全問正解を狙う。差がつくのは問6だと思う。これができるかできないかで、君の地理の力が決まる。

 

問1 とくに言うことはないだろう。地形図問題は地形の立体視がポイントということ。

ちなみに縮尺は冒頭の文に書かれている。

 

問2 立体視をしてほしい。多くの集落が標高10mを超える台地上に位置していることがわかるだろうか。かなり等高線が見にくいが、とりあえず標高を表す数値は至るところに見られるので、それで十分にヒントになるだろう。よって正解は2。

外れ選択肢について。

1;輪中というのは、堤防によって周囲を囲まれた地域のこと。ここにつくられた集落を輪中集落という。濃尾平野(愛知県・岐阜県・三重県の境の低地地域)に分布するものが有名。この地域は、揖斐川・長良川・木曽川が合流する低地であり、人々は水害の被害を避けるため河川の周囲に堤防をつくり続けた。河川が密集しているところなので、堤防も密集するようになり、いつの間にか集落全体が堤防によって囲まれるようになってしまった。

4;自然堤防は河川沿いにできた微高地。数十センチ程度のわずかな盛り上がりであると考える。高燥地であるので水田には利用しにくく、畑地や樹林となる他、洪水を避けるため村落が列状に連なることがある。

5;後背湿地は、河川から見て、自然堤防の背後に広がる低湿な地形。水田として利用されることが一般的。

(洪積台地とは何か)センター試験レベルでは、洪積台地のことは単なる台地と考えておけば十分。っていうか実際のところ単なる台地に過ぎないわけで特別に変わった地形というわけではない。標高数十m程度の高燥地で、水はけがいい乏水地である。畑地や樹園地などとしての利用が中心。水が得にくく、耕地としての開発が進められたのも江戸時代以降の時期が中心。台地上に新田集落がみられることは多い。

そもそも「洪積」とは「洪積世」のこと。洪積世というのは今から1~2万年前のヨーロッパや北米が大陸氷河に覆われていた時代。日本は縄文時代。地球上の氷の量が多かったので海水が少ない海退期に当たり、日本列島がまだ大陸と陸続きだった時期。しかし1万年前に地殻変動が起き、日本が大陸から切り離されると同時に、列島各地で隆起や沈降が生じた。関東地方では大規模な地形の隆起がみられた。それまで浅い海底だった部分は海上へと持ち上げられ、現在の千葉県から茨城県にかけて広がるなめらかな砂浜海岸となった。また洪積世に低平な地形だったところも同時に数十メートル持ち上げられ、台地となった。千葉県の下総台地や埼玉県の武蔵野台地など。このように、洪積世に低平だった地形が隆起によって現在(ちなみに現在のことを沖積世とよぶ)台地となったものを「洪積台地」とよぶのだ。関東平野の他、北海道の十勝平野や宮崎県などに分布する。いずれも洪積世の末期に大規模な隆起がみられた地域である。

 

問3 容易な写真問題。

Bは手前に荒地が広がっていて奥に学校がある(学校の地図記号はわかるかな)。このことより、写真の前部に草が生い茂っており(これが荒地なのだろう)その背後に校舎のような建物がある3が解答となる。

Aは1。低地が広がっており、そのはるか先にやや盛り上がった台地のような地形がある。

Cは2。手前が畑地。奥にあるのはビニールハウス。点線で囲まれた斜線はビニールハウス・温室の地図記号なんだそうだ。

Dは4。手前が水田(ちょっと写真ではわかりにくいけれど)。道路が奥の方で上り坂となっており、台地の上に工場が見える。

 

問4 ちょっとひねった問題かな。慎重に解かないといけない。

1;P付近には沼があったそうだ。沼といえばもちろん低湿な地形。「P」とかかれているところは台地上であり、高燥であるので、沼があったのはそのやや左の水田として利用されている部分だろうか。そこは現在でも水田なのだから「畑地へ変わった」わけではない。

そもそも沼地のような低湿な地形が畑として利用できるケースは稀だろう。水はけが悪いから作物が腐ってしまうかも。ちょっと無理があるんじゃないかな。

2;コンニャクやタバコのように加工する作物を工芸作物という。工芸作物の多くは商品作物である。綿花や茶などが代表的なところ。これらは自給的な作物ではないのだから、換金用(つまり商業的に)作られていたのは当然のこと。

3;図2を読み取ろう。麦・タバコ・コンニャクは減ったものの、水稲は増加し、野菜類の生産量も伸びた。出荷額についてその金額が直接的に示されているわけではないが、「急減した」ということはないだろう。

4;これはカンで考えるしかない。小麦は例えばパンの原料。その消費量が近年低下したとは思えない。この地域で麦の生産が減ったのは、安価な米国の小麦との競争に敗れたからだろう。

5;これはまさにその通り。図1の地域が日本のどこなのかはわからないが、野菜が増えたということは都市出荷用としての栽培がさかんになったと考えていいだろう。近郊農業というものだね。関連問題は97B追第2問問5など。「鮮度がとくに求められる野菜」についての類題は多数。各自探してみよう。野菜は地理の重要なキーワードやで!

というわけで、2と5が正解。土地利用(選択肢1)、図の読解(選択肢3)、食文化についての一般常識(選択肢4)、野菜ネタ(選択肢5)など、さまざまな話題が取り上げられていることがわかる。総合的な力が問われる良問。

 

問5 土地利用に関する問題。水田は低湿な地形に広がる。扇状地の扇央や台地の上など乏水地でもみられることはあるが、その場合はため池などを利用して、水を確保している。原則として高燥な水の乏しい場所は水田として利用されることはない。

このことより4が誤り。Z地域はその全域が台地上であり、こんなところに水田を開くのはちょっと厳しいと思う。

他の選択肢について、おまけコメント。

1;たしかにビニールハウスはみられる。ビニールハウスという狭い空間の中で丁寧な農業が行われているのだから「集約的」になるのは当然。肥料や燃料(保温用)も多く使用するだろうが、それだけ収益性も高いはず。値段が高い物を作っているんじゃないかな。

2;さすがに薪として樹木を使用することは現代の日本ではまず有り得ない。発展途上国ならそういった薪炭材としての利用もあるやろけどね。

3;レタスやネギが多い。ビニールハウスでも野菜が栽培されているんじゃないかな。

 

問6 数字に強い者が得点できる。つまり理系の君たちは必ずゲットすべき問題である。

生産性と聞いて、まず何を思い浮かべる?「土地生産性」や「労働生産性」という言葉だろう。

2;(農業生産額÷農地面積)で表されるものは、土地生産性。単位面積当たりの農地で、どれくらいの農産物出荷額が得られるのか。例えば単位面積を1haとするならば、単位は(円/ha)ということになるだろう。

1:(農業生産額÷農業就業人口)で表されるものは、労働生産性。農業従事者1人当たりが、どれくらいの農産物出荷額を稼いでいるのか。単位は(円/人)かな。

というわけで、君たちが普段から耳にしている「土地生産性」「労働生産性」という言葉は、選択肢2や1のような計算法によって表されている。「生産性」ってそもそも何なんだろう?これって「平均」っていう意味じゃないのかな。収益性の高い農地もあればそうでないものもある。でもそれをまとめて平均してしまう。よく働く人もいればそうでない人もいる。しかしそれも平均してしまおう。

そういう考えを当てはめた時に、残る選択肢3(農業生産額÷農業労働時間)と4(農業生産額÷非農業収入)ならば、どちらの方が生産性を求める式として、意味があるだろう?

僕は3の方だと思う。上の式で「時間当たりの生産額」が求められるのは明確。単位は(円/時間)あるいは(円/分)となるだろう。どれくらい効率よく農業生産が行われたかの指標となるはずである。まさに「生産性」を表す。

それに対し、4はどうなんだろう。農業生産額が100万円として、非農業収入(例えば会社などに勤めて給料をもらう)が200万とする。それを上の式に当てはめるならば、0.5という割合が算出される。これって何を表すのか。この値が1より大きければ、農業収入の方が多いわけで、このような状態の兼業農家を第1種兼業農家という。1より小さければ、農業外収入の方が多くなり、これを第2種兼業農家という。選択肢4の計算は、兼業農家について第1種であるか第2種であるかを判定するためのものであると考えられる。

 

第5問 気候に関する大問が第5問だなんてちょっと珍しい気もするね。意外と解きやすい問題が並んでいると思うよ。

問5と問6が手ごわい印象やけど、問5はできるはず。落とすとしたら問6くらいかな。1問ロスで抑えよう。

 

問1 気温年較差が生じる最大の要因は緯度。低緯度地域は一年中、昼(日の出から日の入りまでの時間)の長さにほとんど変化がなく、そのため季節による気温の変化はほとんどない。それに対し、高緯度地域では季節による昼夜の長さのバランスは悪くなる。とくに北極や南極の周辺では、夏季は白夜(昼24時間・夜0時間)となり、冬季は極夜(昼0時間・夜24時間)となるほどである。

図1において、気温年較差のない1と2は赤道直下の地域と思われる。季節による気温変化がはっきりとみられる3と4は緯度の高い北緯45度付近と思われる。

標高については言うまでもないね。

 

問2 本大問の難易度が比較的低いのは、本問のように誤文選択式の文章正誤問題が多いからだと思う。正文を判定するのはあいまいだったりして意外と難儀。でも誤文ならば、明らかに間違っている部分を一ヶ所指摘すればいいだけやし、かなりマシではあるね。

誤文は4。南米大陸の西岸には乾燥地域が広がるというネタは頻出。そのわかりやすい例は99B本第4問問3。

南米大陸西岸は高緯度地域は偏西風の影響により湿潤である。

南緯35度付近(チリの首都サンチアゴが位置する)では夏季に中緯度高圧帯におおわれる地中海性気候。ブドウの栽培やワインの生産がさかん。

それより低緯度の海岸地域では、寒流の影響が大きいため、乾燥気候が見られる。低緯度であるため日射がきつく、気温は基本的に高い地域である。しかし沿岸の海上の気温は寒流に冷やされ、周囲の空気に比べたいへん低くなってしまう。高度の低いところの空気が収縮し高密度となるので、上昇気流が発生しにくく、雲が生じず降水量は抑えられる。このため、チリ北部からペルーからエクアドルの沿岸地域まで(そしてはるか海上のガラパゴス諸島まで!)乾燥地域が広がることとなる。とくに海流の影響に加え、中緯度高圧帯の影響も強い南緯25度付近(チリ北部)は世界で最も乾燥する大地といわれている。

 

問3 生物の問題というよりも、これくらいなら常識の範囲かな。標高が高くなるほど気温は低くなるわけで、それに対応して樹木の種類も異なる。気温が高いところから低いところに移るにつれ、「常緑広葉樹」「落葉広葉樹」「針葉樹」の順に変化する。

 

問4 小地形に関する問題。通常の年度ならばこの分野からの出題はなかなか手ごわい問題が多いのだが、今回に限ってはそんなことはなさそうだ。これくらいならできるよね。

氷河地形というものは我々にとってはなじみの薄いものである。日本は、ヨーロッパ北部や北米大陸北部のようにかつて大陸氷河に覆われていたわけでもないし、その影響も小さい。標高のきわめて高いところに一部だけ山岳氷河がみられるようであるが、それにしてもごく限定的なケースであり、あまり考慮することはない。

そんな日本であるので、氷河地形というものは国内にはほとんど見当たらないようだ。前述のように高所では山岳氷河による侵食地形や堆積地形などもあるかもしれないが、そんな細かいものはどうでもいい。

しかし選択肢の中に、日本の地形として重要なキーワードが一つ含まれているね。成因は氷河とは関係ないはずなので、これを解答とすればいい。

カルデラである。小学校や中学校でも勉強することだと思う(社会あるいは理科。もしかしたら修学旅行など)。阿蘇山は世界一のカルデラとして有名。火山の爆発によって山頂部分が吹き飛ばされ巨大なお椀のようなくぼ地になった山のこと。お椀というより円い灰皿でも思い浮かべた方がいいかな。

カールは氷河によって削られた巨大な谷のこと。出題例なし。

モレーンは氷河の堆積物。00B本第5問問6参照。

U字谷は氷河の流れた後にできる谷。河川の(つまり氷ではなく水によってつくられた)谷をV字谷というのと対照的。このU字谷が沈降し海水が浸入することによってできる深い入り江をフィヨルドという。

 

問5 ややあいまいな問題であるが、はっきりと誤りキーワードが使用されているので容易かな。

誤文は4。キーワードは「商品価値の高い作物」と「集約的」。高山のような自然条件の厳しいところで行われる農業は、自給的かつ粗放的になるのが普通。自分の食べるものを作るのに手一杯で、農産物の商業的な栽培を行う余裕はない。熱帯雨林地域の焼畑農業や、乾燥地域・高原・寒冷地域の遊牧などが、自給的農牧業の例。またそもそも高山地域では人口密度も希薄だと思われるので、集約的に農業を行う理由がない。雑で構わないだろう。上記の焼畑や遊牧も粗放的である。

ちなみに、同じく自給的農業であるアジア式農業(アジア式米作農業・アジア式畑作農業)は、人口稠密なアジアの胃袋を満たすために集約的となる。

また、自然条件の厳しい地域で見られる農業の一つであるオアシス農業については、灌漑によってむしろ農業に恵まれた条件を満たしていると考えてほしい。原則として自給的であるが、綿花など商品作物がさかんに栽培されている地域もある。土地生産性の高い集約的農業でもある。

1;高山地域はある程度の標高帯までは森林が茂っているかもしれないが、標高が高くなると森林が途切れ、草しか生えないところになってしまうものだ。選択肢1の文章にあるように「寒冷」となることもその理由としては重要だが、寒冷となることによって大気中の水蒸気量が減り、降水も少なくなることも重要である。樹木の生育に十分な水分が得られなくなるからである。そういった草原は放牧地となるしかない。アルプス山脈の高原にみられる放牧地アルプに関する問題が00B本第3問問4にある。

2;これもアルプに関する説明かな。アルプスなど高山地域では季節によって放牧地を移動する移牧が行われている。乳牛の飼育が中心である点から農業区分としては酪農の一種と位置付けられている。冬季は山麓の村のそれぞれの家の家畜小屋で飼育するが、夏季になると高原に設けられた村の共同放牧場(これをアルプという)で飼育する。

ちなみに低緯度地域ではそもそも季節の変化というものがないので、こういった放牧方式は行われていないと思う。

3;とくに否定する部分はないだろう。ジャガイモもトウモロコシもアンデス地域で伝統的に栽培されていたものであるが、冷涼な気候に強いジャガイモはやや標高の高いところで、温暖な気候条件が必要であるトウモロコシはやや低いところで、それぞれ栽培されていたのだろう。

4;前述のようにこれが誤り。しかし「寒冷な気候下でのみ生育可能な商品価値の高い作物」ってそもそも何だろう?っていうか、そんなんないやろ?(笑)

 

問6 ちょっと難しいかもしれないが、解答不能ではない。

誤文は3。「冬に寒冷となる高山地域」が怪しい。例えば、南アメリカ大陸のアンデス山脈の高原地域にいくつか大都市が位置するが、それらは選択肢1の文章にあるように「低地の暑さや病気を避け」このような高原地域につくられたもの。この地域って冬に寒冷となると思う?緯度が低いのだから季節による日射量の違いはないわけで、気温の年変化はほとんど生じない。02B追第1問問4選択肢2参照。「アンデス山脈にある高地では比較的涼しく」までは正解であるが「気温の年変化が大きい」が誤っている。00B本第5問問1選択肢2参照。ラパスの気候グラフ。低緯度であるので内陸部であろうがなかろうが気温年較差は小さい。

というわけで、アンデス高原のような高山地域においては「冬季に寒冷」とならないのである。

ではそれ以外の高山地域はどうか?さすがに緯度が高ければ季節の変化が明瞭となるので、冬季の気温は低くなる。でもここで疑問が生じるのだが、そもそも中緯度や高緯度の地域で高山年なんて存在しているのか?あったとしても規模は小さなものだろう。あるいはスキー場などがある観光保養都市となっていて、むしろ冬の方がにぎわうのかもしれない。もしくはその反対に、夏季に保養・避暑のためここを訪れる高原リゾート地になっているかもしれない。

いずれにせよ、通常は高原に居住し、冬季になると低地に避寒するというパターンは多くはなさそうだ(その逆で、通常は低地に住んで、夏季には高原に避暑に出かけるというケースは、多いと思われる)。

問7 風の問題。

1;貿易風は両半球の低緯度地域で卓越する風。北半球では北東風、南半球では南東風。図2を参照すると、この島においては(貿易風が吹くとすれば)北東風である。つまり文章にあるように「東部で降水量が多い」という点には納得。

しかし図2をみる限り、作物の栽培地域は島の南西側斜面に偏っている。ココヤシ・天然ゴム・茶、いずれも降水を必要とする作物であるので、この島は東側ではなく西側で降水量が多いと思われる。緯度(低緯度である)から考えて貿易風帯と見なされるのだが、どうやら貿易風の影響は強くないようである。

2;農作物の栽培地域が明らかに偏っているのだから、「斜面の向きの違いなどによる降水量の地域差」はかなり大きいと思われる。

4;緯度帯から考えて、偏西風の影響を受けているとは考えられない。

以上より消去法で3が残る。

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